あるもの探しの旅

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ボジョレー後日談&自然派ワインよもやま話

 今月20日(木)は「今年も当たり年?」の中で∋━ グサッ(゚ロ゚)━━ (`▼´) ウリャ! とばかりに槍玉に上げたボジョレー・ヌーボーの解禁日でした。ぶっちゃけ本音炸裂の言いたい放題ぶりからして、そして真紅のワインカラーからしても「血祭りに上げた」と表現したほうが的確かもしれない(笑)内容をご覧頂いた方は、よもやヌーボーなどお買いにならなかったと思いますが、いかがでしょう。

 そもそも勿体つけて"この日まで飲んじゃダメ" だなんて、エサを前に「待て!」と飼い主からお預けを喰らうワンコみたいだなぁ。ブツブツ...

 "飲みたい時が飲める時"を常とする一介の呑ん兵衛として、そんな偉そうな商法は甚だ不愉快。ブツブツブツ...

 フレッシュとかフルーティなどの常套句でいかに美化しようと、どう贔屓目に見てもその味は水っぽいし。ブツブツブツブツ...

 百歩譲って「飲んでよし!」の一声でありつけたソレが売り文句通りに美味しけりゃ、四の五の言わないんだけどねぇ。ブツブツブツブツブツ...

 立地条件や土壌以外に農作物であるブドウの作柄を左右する要因は、開花から結実して顆粒が熟してゆく過程における日照量と適度な降水量、そして収穫時の天候です。たとえ収穫直前まで生育が順調でも、収穫期に雨が続くと、それまでの苦労が水泡に帰することになります。イタリア人は何につけPassioneパッスィオーネ(情熱)の重要性を口にしますが、ブドウの栽培は自然相手の仕事である以上、作り手の熱い情熱をもってしても乗り越えられない壁は存在します。ヘミングウェイの「老人と海」ではありませんが、過酷な自然の前で人は自らの無力さを思い知らされる宿命にあります。

Fiori_uva.jpg【photo】花を咲かせたブドウの幼果

 現地からの情報によると、開花期の5月から太陽の力で糖度を上げてゆく8月末にかけて雨が多かった2008年。ボジョレーではブドウが侵されやすい「べト病」や結実不良が発生、北部ではゴルフボール大の降雹被害もあり、決して天候には恵まれなかったようです。ひと頃のブームが去った今も行われていることに私などは驚きを禁じえない東京での解禁パーティーに登場したボジョレー大手の生産者によれば、「今年のヌーボーは例年にまして凝縮度が高い良い出来だ」といいます。たとえ収穫期は晴れたにせよ、いかに選果を厳しくしたにせよ、前段を知っている以上、額面通りにその言葉を受け取るわけにはゆきません。「ナメとんのかワレ(`Д´*)?!」と、庄内系から関西系に豹変して突っ込みを入れたくなるコメントを吐いたこの生産者は、日本では「ボジョレーの帝王」と呼ばれています。現地価格が2~5ユーロ(240円~600円)程度の安酒の帝王と言われても、なんだか激安王のドン・キホーテみたい・・・。(笑)

 ここ何年か「自然派」という耳障りの良いカテゴリー名で語られるワインが一部の人々の間で持てはやされています。この概念を最初にもたらしたフランスでは「Vin Nature ヴァン・ナチュール」と総称される自然派ワインとは? ごく簡単に言うと、栽培や醸造段階で人工的な要素を排除した主にフランス・ロワール地方やブルゴーニュ地方などの生産者とワインを指します。もちろんワインは人が口にするものですから、除草剤を撒いたり化学肥料を多用する疲弊した土壌で、防疫のため薬剤を散布して造られるブドウを原料とするよりは、極力オーガニックな栽培環境のもとで造られるワインのほうが望ましいことは確かです。自然派の中には、有機農法だけでは満足せず、自然界のリズムを重視して天体の動きにあわせて農作業を行う「ビオディナミ」を取り入れる生産者もいます。醸造においては培養した酵母を使わず、無補糖・無清澄・無濾過など、古代ローマ時代さながらのワイン造りも行われています。

 輸送途中での温度変化による変質を避け、長期保存を可能にする殺菌効果や酸化防止効果を得るための最小限の(日本国内で販売されるワインは、食品衛生法で0.35g / ℓ以下と規定)亜硫酸塩すら添加しない場合もある自然派のワインは、雑菌による劣化リスクに加え、輸送や保管段階での環境変化に弱く、品質のバラツキが出やすいのが現実です。通常の飲酒量では亜硫酸塩による健康への影響は無いとされる以上、頭痛を発症するような過度の化学物質過敏症でもない限りは、雰囲気に流されて安易に自然派ワインに手を出さないほうがハズレを掴まされるリスクはずっと少なくて済むはずです。

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【photo】収穫を待つばかりのブドウ

 事実、自然派ワインには、自然派を名乗るための生産手段の確立そのものが目的であるかのような、味や品質をなおざりにしたシロモノが少なからず紛れ込んでいます。一般の飲み手にとってワインを飲む目的は、食事をより美味しく楽しむためだったり、作り手がこだわり抜いたワインのみが持つ高貴で深遠な世界を窺い知るためではないでしょうか。

 自然派だから美味しいという必然性はどこにもありません。"そう名乗れば、「なんとなくカラダに良さそう」と連想させるから、自然派の看板を掲げよう"という作為をそこに感じてしまうのは私だけでしょうか。

 美味しいワインを生み出す手段として辿り着いた手法が、ビオやビオディナミであったというのが自然な成り行きですよね。"自然派を標榜しながら不自然"とはこれいかに??

 にも拘らず、目先の目新しさばかり追いかける雑誌や酒販サイトのいくつかが、自然派と称するワインをこぞって持ち上げました。消費低落傾向が顕著なヌーボーに付加価値を付けるには絶好のキーワードだったのか、昨年ぐらいのヌーボー商戦から、「自然派ヌーボー」が登場しています。予想通り今年も作柄の良さを強調する商才に長けた「帝王」氏とは違って、丁寧な仕事ぶりに定評ある自然派の若手リーダーと目され、日本での人気が高いフィリップ・パカレ氏は、今年が厳しい作柄だったことを輸入元のサイトで率直に認めています。

 大方の皆さんがそうであるように、お付き合いで購入したというボジョレー・ヌーボーを「自分では飲みきれないから」という知人から頂いたので、仙台のとある業者が輸入元になっているLouis Joseph なる作り手のヴィラージュ・ヌーボーをものは試しに飲んでみました。私にとっては初めて口にするこの生産者、輸入元によれば「採用基準の厳しい地元ヨーロッパの多くの航空会社をはじめ、日本の航空会社でもビジネスクラス以上でサーブ」されているとのこと。さりとてヌーボーは概して年越しすら叶わない超・若飲みの酒ゆえ、さっさと空けてしまったほうが得策です。「とりわけ品質の優れたヴィラージュ地域から醸し出された逸品」と記されたバックラベルをヤブにらみしながらグラスに注ぐと、エキス成分由来の粘性が皆無な水のようにさらっとした触感が見て取れます。色調は果汁20%程度の加水ジュースかと思わせる薄いガーネット色。グラスをスワリング(撹拌)すると、ヌーボー特有のバナナ香がベリー系の香りに混じって立ち上ってきます。口に含むと、ジャミーで甘酸っぱい痩せた酸味がまずは押し寄せ、アフターに残るのは儚げな尖った酸のみ。日ごろ飲んでいるワインは、グラスの中で時間の経過と共に香りが開いて、味わいの変化を見せてくれるのですが、このヌーボーは酸化の進行が驚くほど早く、味の変化と言ってもワインヴィネガーのように痩せ細ってゆくだけでした。

bojyo-bojyo2008.jpg【photo】 バックラベルには全く非の打ち所がない品質であるかのような期待を抱かせる記載が並ぶ。一口含んで、思わずそれを読み返してしまったボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボーの色合い

 人さまから頂いたモノをとやかく言うのは野暮なことは重々承知の上で、敢えて感想を述べれば、「これはブドウから作ったアルコール飲料には違いないものの、果たしてワインと呼べるだろうか?」 というのが正直なところ。軽めの味付けのビーフストロガノフと共に、日頃使うことが多いRiedel 社のワイングラス「ヴィノム・ボルドー」で(→形状が異なる「ヴィノム・ブルゴーニュ」で味の違いを試すまでもないと判断したため)3杯までは飲みましたが、我慢もそこまででした。残りは調理酒としての用途しか無さそうです。もっともこの酒質では劣化が早そうなので、すぐにワインヴィネガーに化けるかもしれませんが...。一応ネットで価格を調べたところ、昨年は2,880円で売られていた商品のようです。ヌーボーのご多分に漏れず、これは明らかに品質と不釣合いな値段と言わざるを得ません。全身を流れる血液がイタリアワインで出来ている私にとっては、4年ぶりに口にした(前回も頂き物だったっけ...)ボジョレー・ヌーボーはどうやら輸血ミスに等しい選択だったようです。ヘモグロビンが欠如した血液のように貧弱なヌーボーの摂取によって、モヤモヤした枯渇感が後遺症として残ってしまいました。

 そんな急性ボジョレー中毒(?)の症状から脱するためには、やはり特効薬として真っ当に造られたヴィーノを服用するのが一番。古来より「酒は百薬の長」というではありませんか。アハハ・・・ と、いうことで、翌日さっそく実行に移された食事療法のレポは次回 !

次回「記憶を呼び覚ますヴィーノ~ルチアーノ・サンドローネ 訪問記」に続く

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