あるもの探しの旅

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皮から作るギョウザ教室

「仙台友の会」が伝える料理の心

 せんだい男女共同参画財団が主催する「エル・パークフォーラム2008」の一環として、11月29日(土)に「パパと一緒にランチ作り~皮から作るギョウザ教室」が行われました。有機リン系殺虫剤が混入した中国製冷凍ギョウザによる健康被害が発生、改めて食の安全に警鐘が鳴らされた2008年。比較的簡単に入手できる既製品の皮を使うのではなく、小麦粉から皮を作るところからギョウザ作りを教えて頂けるというので、娘と一緒に参加してみました。gyouza1.jpgデュラム・セモリナの生地に詰め物をしたパスタ、「Ravioli ラヴィオリ」や「Agnolotti アニョロッティ」「Tortellini トルテッリーニ」などに近しいギョウザには、ついシンパシーを感じてしまう前世イタリア人なのです。

 講習会の企画・運営に当たったのは、雑誌「婦人之友」の読者を中心に組織された「全国友の会」の仙台における地域組織「仙台友の会」の女性たち。青森県八戸市出身で日本初の女性ジャーナリストとなり、のちに婦人之友を創刊、学校法人「自由学園」を創設した羽仁 もと子の思想に賛同する約190名の会員によって、心豊かな暮らしを目指す会員相互の学習会や一般向けの講習会などが定期的に開かれています。当日会場となった仙台市青葉区一番町にあるエルパーク仙台「食のアトリエ」には、8組の親子が参加しました。そのうち父親が参加したのは3組。土曜日の催しだけに、主催者側はもっと多くの父親の参加を期待したはずです。土日でも仕事に追われるご同輩も少なくないとは思いますが、世代を超えて分かり合える食を通して子どもさんと触れ合う時間を持つことは、世の男性諸氏にとっても新鮮な発見があると思うだけに、ちょっと残念に思いました。

gyouza2.jpg【photo】会場となったエルパーク仙台「食のアトリエ」での講習の模様

 冷凍ギョウザに高濃度のメタミホドスが混入した事例以外にも、安さを売り物に市場を席巻する勢いだった中国産野菜で頻発した残留農薬や中国産乳製品と加工食品への化学物質メラミンの混入、三笠フーズによる事故米の不正転売、相次いだ食品への異物混入、廃業に追いやられた船場吉兆による使用済み食材の使い回しや産地偽装など、今年は食に関連するスキャンダルがイヤと言うほど頻発しました。昨年発覚したミートホープや不二家、赤福などによる不祥事に続いて食への不信が一層募った年だったという印象をお持ちの方が多いと思います。ずさんな衛生管理や悪質な偽装表示などで消費者が被害を受けた以上、食をあずかる自らの重責を忘れ、モラルが低下した企業の行いは糾弾されて然るべきです。これら一連の耳を疑う出来事からは、私たちの窺い知らぬところで命を支える食を取り巻く環境が、危うい不安だらけの状況に陥っている構図が浮かび上がってきます。

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【photo】講師の水野 幸さん

 「価格破壊」が、消費者から諸手を上げて歓迎された観のあるここ数年。地元スーパーの新聞折込チラシは勿論のこと、他地区の折込チラシまでもパソコン上でチェック可能な電子チラシにも入念に目を通す方が増えつつあるようです。"一円でも安いものを"とPCに向かう主婦(ときに主夫)の皆さんが、毎週のように目にしたのが、冷凍食品全品4割引というセールの見出しだったと思います。共働きの家庭が増える中、忙しい時間と家計をやりくりする上で、「レンジでチン」の手軽さと冷凍技術の進歩による商品ラインナップの充実が相まって、冷凍食品は年々消費を伸ばしてきました。

 「少しでも安いものを」という消費者ニーズの高まりに対し、原材料費など調達コストの効率化を迫られた供給側は、豊富で安い労働力に支えられた中国やタイなどアジア諸国に生産拠点を移すことで、低価格を実現させました。輸入量が最も多い中国製の冷凍食品は、過去10年で4万トンから20万トン余りと増加の一途を辿っています。昨年末から年初にかけて健康被害を引き起こした中国河北省にある「天洋食品」製のCO・OPブランド手作り餃子は、40個入り一袋の実勢価格が300円そこそこという低価格で店頭に並んでいたようです。天洋食品は最新鋭の生産設備を備えており、安全管理上の不備は認められないと中国側は事件発生当初から強調してきました。日本国内で農薬が混入された可能性を示唆するその主張は、中国国内でも同社製のギョウザで健康被害が出ていたことが8月に判明、脆くも崩れ去りました。過失による事故よりも、故意に混入させた可能性が強いとされる耳目を集めた事件の原因究明が待たれるところです。

【photo】力をかけずに軽く転がすだけの見事な手つきで娘に生地作りを指南する水野さん

gyouza4.jpg 問題となった冷凍ギョウザの国内への侵入を招いた水際での検疫体制に不備は無かったのでしょうか。全国の港湾・空港などに設置された31箇所の検疫所で働く食品衛生監視員は総勢330人あまり。食品衛生法の安全基準に沿って添付書類を審査の上、サンプル採取した食品について発ガン性物質の有無や基準値以上の農薬が残留していないかなどを検査します。平成19年度に検査を受けたのは20万件弱。通関の届出がなされた180万件に及ぶ輸入食品のうちの11%程度に過ぎません。法令違反が見つかり積み戻しや廃棄処分の措置がとられた事例は1,150件、届出件数全体の0.1%だといいます。全体の3割と届出件数が最も多く、違反も最多の376件と全体の32.7%に相当するのが中国産でした。

 供給は需要の上に成り立つ市場原理からすれば、ギョウザ事件は一概に中国側の非ばかりを責めるわけにはいきません。たとえ生産設備は最新鋭だとしても、農村部から低賃金で駆り出された中国人労働者には食べる人を思う気持ちなどないはず。BSEの不安が拭いきれないまま政治決断で輸入再開に踏み切った後も、危険部位の混入が幾度か報告されている米国産牛肉しかりで、海外に依存した価格の安い輸入食品ばかりを消費者が支持すれば、コストと手間をかけて確かな品質を維持しようとする国内の生産者は、ただ痩せ細ってゆくばかりです。本来私たちの食卓を支えてくれる善き隣人であるはずの国内の生産者や良心的な業者は、消費の減退と極端な価格下落傾向の中で喘いでいるのが実情です。食品スキャンダルが頻発する背景には、大切な家族の命を支える食べ物すら、作り手と食べ手が互いに顔の見えない関係にある輸入品に頼らざるを得ない日本の現実があります。悪徳業者がつけ入ったのは、食べ物をないがしろにし、目先の安さばかりに目を向けてきた消費者が増えた風潮にも一因があり、私たちはそのツケを払わされている気がしてなりません。

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 【photo】 麺棒を使って、いともたやすく生地ダマから丸く揃った皮を作る水野さん熟練の技

 皮肉な現象ですが、中国産冷凍ギョウザによる中毒事件の発生により、国内最大のニンニク生産地である青森産ニンニクの需要が業務用を中心に急増しています。卸値ベースで昨年比3割から5割高と価格が急騰、ニンニクの町として知られる田子町(たっこまち)では、収穫を間近かに控えたニンニクの盗難まで発生しました。価格の安さを武器に市場を席巻してきた中国産に押される形で、年々作付けを減らしている国内の農作物の例に漏れず、田子町でもニンニクの作付けは減少傾向にあります。昨年より作付け面積が減っていたため、逼迫する需要に応えられないジレンマにあるのだともいいます。40%に届かない食料自給率の向上の必要性は頭で理解していても、値段が安い輸入品を選んできた消費者が実際に国内製品を買い支えなければ、旱魃や病害虫の発生などの原因で輸入がストップした場合でも、放置された畑で急に自家調達に切り替えるわけにはゆかないのですから。

【photo】水野さんが講習会場に持参した馬遅伯昌さんが最初に著した「中国の家庭料理」(写真左・昭和32年刊)と昨年発行された最新刊の「馬家の家常菜譜」(写真右)

gyouza7.jpg 今回、手作りギョウザ教室の講師を務められたのは、83歳になる水野 幸(ゆき)さん。レシピのベースは、水野さんが長年に渡って愛用しているという中国料理研究家の馬遅伯昌(マーチーハクショウ)さんが1957年(昭和32)に著した「中国の家庭料理」で紹介した蒸餃子の調理法<前半click!><後半click!>です。馬遅伯昌さんは1917年(大正6)、中国ハルビンで実業家の家庭に生まれ、自由学園への留学を経て帰国後に結婚、1948年(昭和23)に再来日を果たします。戦中・戦後の激動の時代、不幸にして中国と日本の国交が途絶えた間も、両国の橋渡しをしようと、今日に至るまで20冊以上に及ぶ著作や講習などを通じて、中国家庭料理の普及に尽くされました。90歳を超えた今も次女の馬(マー)へれんさん、へれんさんの長女である馬衣真(マーイマ)さんの親子三代で料理研究家として活動を続けています。三人の共著として昨年発行された「馬家の家常菜譜」(婦人之友社刊)では、母から娘、娘から孫へと伝えられた家族を思う愛情に満ちた料理の心がそれぞれの言葉で語られています。

gyouza8.jpg【photo】無駄のない動きで生地を仕上げる水野さんには伊藤さん親子も見とれるばかり

 強力粉に熱湯を加えて、生地の表面が滑らかになるまで手ごねする水野さんの実演でいよいよ調理がスタートです。親子2組でひとつの調理台を使い、そこに一人ずつ仙台友の会の会員の方がサポートに付いて下さいました。ご一緒したのは、小学2年生の伊藤 杏樹ちゃんとお母さんの千春さん。最初は熱くないかと恐る恐るだった子どもたちも、粘土遊び感覚の作業に楽しそうに取り組みます。およそ5分も手ごねすると、もっちりとした触感に生地が仕上がります。濡れ布巾で包んで30分ほど生地を休ませる間に、中に詰める餡作りをしてしまいます。包丁を手に白菜やニラを刻み、調味料を加えて手で挽肉と練り合わせてゆきます。コツは「美味しくなーれ、美味しくなーれ」と念じることだそう。食べる人を思う愛情こそが、一番大切で欠かせない家庭料理の味付けになるのですね。

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 と、ここまで順調だったギョウザ作りの山場はそこから。細長く伸ばして直径4cm×厚さ3cmほどの大きさに刻んだ生地から、水野さんが麺棒を使って形の揃ったギョウザの皮を鮮やかな手つきで作り出すさまは、まるで魔法を見せられているかのよう。見よう見まねで生地の内側から外側に向けて麺棒を転がすものの、出来るのは不揃いないびつな形のものばかり。無理に形を整えようとすれば、皮が薄くなって破れてしまいます。ふぅ~、どうにもこうにも水野名人のようにはいきません。そりゃそうですよ、年季が全く違いますから・・・。

【photo】見よ、この見事なまでに形が不揃いな我ら大雑把なO型血液親子の迷作ギョウザ!!(笑)

 馬遅伯昌さんが馬へれんさんと馬衣真さんに伝えたのは、単に馬家に伝わる家庭料理の技術だけではありません。かつて自分がそう育てられたように、次世代にとって善き模範であるよう、たっぷりと愛情を込めて手作りした家庭の味を母から子へと受け継いでゆくこと。小さな頃から家庭で本物の味に親しんできた娘のへれんさんは、自ずと食の大切さを理解し、母を手本に研鑽を積んで身に付けたものを再び娘の衣真さんに伝えてゆきました。「人」を「良」くすると書く「食」という文字の意味を実践するかのように、悪戦苦闘しながらも和気藹々と皮作りに励む親子のもとを回りながら、お手本を披露する水野さん。その姿は、食べることを大切にしてきた馬家三世代の思いのように、尊いものであるように映りました。伊藤さん親子に寄り添って生地作りをしてみせる水野さんは、あたかも血の繋がった実のおばあちゃんのようですらありました。

 同じく手作りしたワカメスープが出来上がり、こんがりとギョウザがキツネ色に焼き上がったところで、お待ちかねの試食です。たとえ形はいびつでも、手のぬくもりが伝わるモチモチした香ばしいギョウザの味はまた格別です。伊藤さんとはお互いが作ったギョウザを交換して「美味しいですねー」と健闘を称え合いました。「ここで教わった手作りのギョウザをぜひ家庭でも作って下さいね」と仰られた水野さんの言葉を胸に家路に着いたのでした。

【photo】水野さんが作ったギョウザも試食。当然のことながらこちらも美味しかったぁ。

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【もちもち焼きギョウザ(30~40個分) 材料と分量】

①ボウルに粉を入れ熱湯を加え、箸で混ぜる。まとまってきたら滑らかになるまで良くこねる。濡れ布巾に包んで30分以上寝かせる。
②白菜をみじん切りにして、分量比1%の塩を振り、しばらく置いて水気をしぼる。(キャベツを使う場合は茹でる)
③挽肉、野菜、調味料をあわせて充分に練り混ぜる
④寝かせておいた生地を棒状にし、30~40個に切り分ける。
⑤打ち粉をした台の上で、手のひらで平らにつぶし、麺棒で7~8cm大の円形にする。
⑥皮が出来たら、具を載せてひだを取りながら包む。 ※閉じる際の水は不要
⑦熱した鍋に油を入れ、焦げ目がつくまで焼く
⑧熱湯をギョウザの半分くらい(1cm程度)まで注ぎ、蓋をして水分がなくなるまで蒸し焼きにする。
  タレは酢醤油、ごま油、七味唐辛子などを加え、お好みで
  水ギョウザ、蒸ギョウザの場合は、熱湯ではなく、水で練る

〈皮〉

  • 強力粉   2カップ(220g)

  • 熱湯  3/4カップ(150cc)

  • 打ち粉   薄力粉を適宜使用
  • 〈具〉

  • 豚挽肉  200g

  • 白菜   400g → キャベツでも可

  • ニラ  1/2把

  • 長ネギ   1/2本

  • ニンニク  小1ケ

  • ショウガ  小1ケ
  • 〈調味料〉

  • 酒  大さじ1 

  • 醤油  大さじ1

  • ごま油  大さじ1

  • 砂糖  小さじ1

  • 塩   小さじ 1/2弱


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    コメント

    ギョウザ作りに加え、友の会や自由学園の紹介に至るまで、余すところ無く伝えて頂き、友の会会員として大変感激しています。
    ありがとうございました。

    ▼伊藤様

     講習会当日は、水野様はじめ仙台友の会の皆様に大変お世話になりました。お母さんに手伝ってもらいながら一生懸命ギョウザ作りに取り組む杏樹ちゃんの頑張る姿がきらきらと光っていました。

     次回の仙台友の会月報には、ウチの娘の感想文が載るそうです。乞われるまま父親もコメントを寄せましたが、なにせこちらのレポートがあったものですから、月報はえらくあっさりした文章となりました。私の感想はここで述べさせていただきましたので、お許しください。

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