あるもの探しの旅

« Dicembre 2008 | メイン | Febbraio 2009 »

2009/01/31

冬季限定「滝の道」の名水

「鳥海三神の水」でプチ沢登り

 秋田と県境を接する山形県最北部に位置する遊佐町は、国土庁が平成6年に「水と緑の文化を育む水の郷100選」に選定した湧水の里。町内には数多くの湧水地点があり、その豊富な水は、"水筒要らずの山"といわれるほど水に恵まれた鳥海山の恩寵にほかなりません。

【photo】 稲刈りを終えた晩秋の遊佐町。雪を頂く鳥海山が里に冬近しを告げる

 清流「月光川(がっこうがわ)」沿いの道、酒田遊佐線を進むと、山の斜面に湧き出た伏流水が二筋の滝となって流れ落ちる有名な「胴腹滝(どうはらたき)」への入口が吉出地区の杉林の中に開けています。二筋の湧水はCa、Mgなどの成分上さして違いは無いものの、左側がきりっつと引き締まった硬質な味、右側は柔らかで優しい飲み口と、不思議なことに共に硬度が11の超軟水ながら、左右で明らかに味が異なります。そこに至る道は冬でも除雪されるため、年間通して水を汲みに訪れる人が絶えません。

doppara_yuza2006.jpg【photo】 山の斜面(胴腹)から伏流水が勢い良く出ていることから、安産を願う不動尊が滝の間に祀られた胴腹滝

 片道150km以上離れた仙台から鳥海山近辺まで足を伸ばすのなら、豊かな水の恵みを存分に堪能しない手はありません。そのため alfa Brera のトランクスペースには、いつも25ℓ容量のポリタンクが少なくとも二つは積み込まれています。しかしながら採水地から路肩の駐車スペースまで5分あまりズッシリと重い25kgのポリタンクを両手に抱えて苦難の道を戻らなくてはならない胴腹滝には、よほど気乗りしないと足が向きません。蒸発残留物が40~50mg/ℓ程度の良質な美味しい水なので、ペットボトルで持ち帰る程度なら別ですが、つい欲が出てしまって...(;^_^\

  鳥海山周辺には、多くの湧水スポットが存在し、そのいくつかは車で気軽に立ち寄れる場所にあります。口から喉を通ってお腹の中にすぅーっと吸い込まれてゆく柔らかな独特の飲み口が魅力の遊佐町女鹿地区の「神泉の水(かみこのみず)」と、同町三ノ俣(みつのまた)地区にある農林漁業体験実習館「さんゆう」前の「鳥海三神の水」は、気軽に車で立ち寄ることができる湧水ポイントの中でも、とりわけ美味しい水です。

sanyou2009_1.jpg 今回さんゆうを訪れたのは、1月11日(日)の夕闇迫る17時過ぎのこと。これまでも幾度となく通った道ですが、さすがに厳冬期に訪れるそこは、これまでとは様子がまるで違っていました。標高こそ海抜300m台とさして高くないものの、鳥海山の山懐へと分け入ってゆく三ノ俣集落に湧く鳥海三神の水を汲みに訪れるのは、山菜が出始める春から夏を経て美しい紅葉に山が燃え立つ時季だけ。降り積もった雪で一面の銀世界と化したそこを訪れるのは今回が初めてのことでした。人づてにそこが冬季間どうなっているのかを聞いてはいたのですが、そこには想像を超える「なんだこれ~!!?」という光景が待ち受けていたのです。

【photo】 標高2236m の頂きを雪雲のヴェールで包まれた鳥海山。山肌を覆う雪また雪。冬枯れのブナ。凍てつくモノトーンの世界。月光川大橋にて

 月光川に架かる旧朝日橋を右手に見ながら右折した道路は除雪されてはいるものの、白く輝く路面は圧雪が凍結し、ともすると車はハンドルをとられ、テールが流れ出します。そこは映画「おくりびと」で主人公・小林大悟(本木雅弘)が鳥海山をバックに堤防の上でチェロを奏でる場面と、身ごもった妻美香(広末涼子)に川原で石文(いしぶみ)を手渡すシーン、産卵のため遡上してくる鮭の姿などが撮影された場所です。

 ダッシュボードにデジタル表示された外気温はすでに氷点下。人家が点在する金俣集落を抜けると、月光川ダムに渡された月光川大橋に差し掛かりました。雪を縫うように眼下を流れる渓流と葉を落としたブナの原生林が広がる鳥海山とが織り成す水墨画のような風景に目を奪われます。命あるもの全てが雪に閉ざされ、じっと息を潜めているかのような静寂が支配するモノトーンの世界をカメラに収めようと、暖房の効いた車内から橋の上に出ましたが、あまりの寒さで早々に退散しました。

kanamata_takinomichi.jpg 橋を渡り切ると左カーブを描く雪道は、ほぼ直線の緩やかな上り坂となります。すでに陽は落ちて暗くなり始めていたため、最初はカーブから先が完全に除雪されてアスファルトの路面が顔を出しているかのように見えました。"何と完璧な除雪作業なことよ(*'0'*)"と感心する間も無く、よく目を凝らすと、そこは道幅いっぱいに水が流れているのです。

 「お、これが噂に聞いた"滝の道"かっ!」 道路は両側とも路肩が凹型にせり上がっており、上り坂の路面に流される水は、1~2cmほどの深さとなって流れて来るのです。それは世にも珍しい湧水が描き出す一筋の道なのでした。

strada_taki_sanyou.jpg【photo】路面を流れ下る湧水が川となって雪を溶かし、せせらぎとなった伏流水の道を「さんゆう」へ向かう

 そこまでは慎重な操作を強いられていたアクセルを踏み込むと、バシャバシャと派手な水しぶきが車のフェンダーから両サイドへと飛び散ってゆきます。路肩の枯れた雑草には、車に飛ばされた水が凍り付き、あたかも氷のオブジェのよう。温泉地で融雪のために温泉を道路に流している例は仙台近郊の秋保や鬼首などで目にしますが、距離にしておよそ1.4kmにも及ぶこの滝の道のスケールは、その比ではありません。そこでは滝登りする鯉や月光川を遡上する鮭の気分が味わえるはずです。

 三東ルシアが出演したTOTOホーローバスのCM(古っ!)「♪お魚になったワ・タ・シ」のフレーズを思い浮かべながら坂を進むと、さんゆう駐車場前に引かれた鳥海三神の水の水汲み場へと至ります。何やら由緒ありげな名前のこの湧水。本宮は夏山シーズンにだけ参詣が叶う鳥海山頂にあり、人里に置かれる口之宮が遊佐町吹浦と同町上蕨岡にある三つの鳥海山大物忌神社とは無関係だそうですが、この水を飲用水として使っている三ノ俣の住民の方たちが鳥海山の大いなる恵みに感謝して命名したそうです。

 鳥海三神の水は衛生上の配慮から、融雪に用いられる湧水の採水地とは少し離れた林の中に湧出する伏流水を引いています。駐車場のすぐ脇に水汲み場があることから、庄内一円はもちろん、県内外から多くの人々が訪れます。すっかり暗くなったこの日は、すでに人気は無く、勢いよく流れ出る清冽な水の音だけが響いていました。

【photo】 路面を流れる水は、道の先にある「さんゆう」の名水と同じ水脈。横着をしてその水を汲まないように。(←そんなズボラなヤツは居るまい) 名水と地元産ソバ粉を使う人気の「金俣そば」を、道幅いっぱいに流して、わんこソバも顔負けの食べ放題な「流しそば」にしてみては如何?

fiume_strada_sanyou.jpg 水汲みだけでは物足りないという欲張りな方は、さんゆうの産直施設と併設される飲食コーナーへもお立ち寄り下さい。産直では春先に出回るワラビやコシアブラなどの山の幸をはじめ、豊かな鳥海の水で育まれた個性的な古代米や、一般に流通している輸入物が霞んでしまうほど瑞々しいパプリカなどの地元の農産物を扱っています。飲食コーナーでは土日に20食限定で提供する地元産ソバ粉を鳥海三神の水で打った「金俣蕎麦」が人気。毎週水曜の定休日と週末には実施していないのが残念ですが、事前予約制で蕎麦打ちや豆腐・漬物・笹巻き作り体験(有料)も可能です。【旬の農産物カレンダーはコチラ

 遊佐町役場に問い合わせてみると、冬でも凍ることなく湧き出す伏流水を道路の融雪のために活用する事業は1981年(昭和56)頃に三ノ俣のほかに升川集落で行われましたが、今も稼動しているのは現在7世帯が暮らす三ノ俣だけだといいます。住民の高齢化のため、昨年からは町が11月中旬にそれまで住民が行っていた路面の清掃と補修を代行、集落から1kmほど離れた林間にある水源地の清掃を行い、雪が積もり始める12月から路面の雪が消える3月ごろまで住民の手で水が流され、保守管理がなされているそうです。「限界集落」という言葉がここにも翳を落としますが、湧水をこうして融雪に活用している事例は全国でも珍しいはず。鳥海山の恩寵である地域資源の水をこうして活用してきた住民の方たちに拍手を送りたいと思います。

fontana_sanyou.jpg【photo】 「鳥海三神の水」は駐車場に隣接しており、利便性が高い。駐車場の先は雪遊びが出来るスキー場になっている

 地区の飲用水や融雪用だけでなく、酒造りにこの水を用いているのが庄内町の造り酒屋「鯉川酒造」です。シーズンに1タンク分だけを仕込み、酒田周辺の一部酒販店で売り出される純米吟醸「極楽鳥海人」は、しぼりたての原酒では18度近いアルコール度数があるため、およそ15度まで度数を下げるための加水用に鳥海三神の水を使っています。蔵元の佐藤 一良社長によれば、この水を加熱して蒸発させると、鉱物成分である白い残留物が微量認められることから、日本酒の仕込み用としては不向きとのこと。それでも、1ℓ中の炭酸カルシウム含有量が12mg しかない超・軟水にカテゴリー分けされる鳥海三神の水は、当然殺菌は行っていませんが、汲んでから3週間程度ならそのままで飲んでもOKです。料理用はもちろん、お茶を入れたり、ご飯を炊く用途としても申し分ない美味しい水であることを申し添えておきます。

************************************************************************
農林漁業体験実習館「さんゆう」
住所)山形県飽海郡遊佐町吉出字金俣239-5
Phone)0234-72-4500
営)8:30-18:30 (3/15-10/31 は 8:00-17:00)
  水曜定休(祝日の場合は翌日休み)
  12/28-1/3休み
当然ながら「鳥海三神の水」は年中無休!

大きな地図で見る

baner_decobanner.gif

2009/01/20

父と娘のアップルパイ

「知憩軒」で知るぬくもりの味

 年末年始にかけてアルコールやクリスマスケーキで過剰摂取したカロリーをいまだに消費していない方も多いかと思います。先月中旬までは暖冬だったこの冬も、二十四節気の大寒を迎えて寒さが厳しくなってきました。そこで私が皆さんに推奨する防寒対策は、地球温暖化防止のためにも化石燃料を燃やして暖を取るより、"旬の冬の美味で皮下脂肪をたっぷりとmitsu_e_miyuki.jpg"蓄えること。 0o。 (;) 美味しくてあったかい一石二鳥でLOHASな(?)私の迷案に賛同頂ける方にしろ、そうでない方も皆、かつて楽園を追われたアダムとイブの末裔。今回ご紹介する禁断の知恵の果実、リンゴで作るドルチェの甘~い誘惑には抗うことなど到底出来ないはずです。

【photo】 知憩軒の女将、長南 光さん(右)と みゆきさん(左)

 昨年の冬から鶴岡市西荒屋にある「産直あぐり」に期間限定で店頭に出る「知憩軒のアップルパイ」がマイブームを呼んでいます。昨年までは生地に照りを出すための卵黄を使わず、言わばスッピンのまま焼き上げた素朴なアップルパイに目が留まったのが最初の出逢いでした。包装フィルムには、同店に年間通して美味しいおむすびをsalone_del_chikeiken.jpg 出している近くの農家民宿兼レストラン知憩軒(ちけいけん)の朱印が押されていました。初めてそこを訪れた6年前の初夏から、いつも変わらぬ柔和な物腰で訪れる人を迎え入れ、心和ませる女将の長南 光(みつ)さん・みゆきさん親子のことは、在来野菜の「沖田ナス」を取り上げた際、ほんのさわりをご紹介しています【Link to back number】

【photo】 いつ訪れても落ち着ける知憩軒(左上)。2007年秋、友人グループで訪れたイタリア・ピエモンテ州のアグリツーリズモ「Rupestr ルペストゥル」のオーナー、ジョルジョに贈った光さん手織りのタペストリー。ブドウをあしらったデザインも光さんご自身による(右下)

arti_per_giorgio.jpg 一人旅の宿泊客でも快く迎え入れる知憩軒の離れには、和室、茶室、ギャラリーを兼ねた板敷きの部屋と自炊・入浴施設が備えられています。そこには光さんが嗜む書や絵画、随筆などの作品が置かれ、農家の暮らしのありようをさりげなく語りかけてきます。岩手・花巻に生まれた宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を彷彿とさせる泰然自若とした強さを持つ野辺に咲く花のような光さんと接していると、慌しい日々を送る中で沈殿してゆく心の"淀み"がさらりと洗い流されてゆくのを感じます。

 農作業に追われ働きづめだったご両親のもとで育った光さんは、外の世界を知る機会すら無いお母様を目にしてきました。良くも悪くも都会では全てがめまぐるしく移り変わってゆきます。なかなか地元を離れることが出来ない農家の女性にとって、都市で暮らす人との交流を通して新たな知識を得る場として、また都市から訪れる人には伝統的な農家の暮らしの普遍的な価値をってもらうため、相互のいの場として自宅の先で民宿「知憩軒」を開業したのが1998年(平成10)のことでした。

nuova_chikeiken2.jpg
【photo】 母狩山を背景にリンゴの樹々に囲まれて建つ知憩軒の新たな離れ

 民宿の開業当初からサクランボやブドウの収穫などフルーツタウン櫛引ならではの農作業や、地元に伝わる「黒川能」で使用される能衣装に由来する綴織りを母屋に隣接する「土筆工房」で希望者に体験する場を提供してきました。光さんは昨年秋に新たな会員制の休憩施設を少し離れた場所に造りました。古民家の部材を随所に使用した建物は、月山と鳥海山を遠望するリンゴ畑の中にぽつんと建っています。レトロなタイル張りの流しと最少限の調理器具を備えたそこでは、お湯を使うにも水をヤカンで沸かさなければなりません。寒さの厳しい季節に備えてストーブは置いてありますが、板戸や黒光りする古民家の床板を活用した床には床暖房設備はもちろん、壁面に断熱材も入れていません。
nuova_chikeiken.jpg
【photo】 タイル張りの流しとコンロ、懐かしいアルマイトのヤカンなどが備え付けられた会員制の休憩施設。防寒用の綿入れも置いてある

 蛇口さえ捻れば給湯器のお湯がいつでも使える便利な暮らしに慣れ切った私たち。敢えて少し不便さを覚えるであろう設(しつら)えに留めた理由を問うと、「(モノが溢れた時代だからこそ、)体を動かすことの大切さを伝えたかったのよの」と光さん。基本はリンゴなどの収穫作業の合間にご自身が休憩するための施設ですが、入口の鍵を託される年会費制の会員になると、空きがあればいつでも自由にそこを利用できるのだといいます。リンゴやモモの花がほころぶ季節、あるいは実りの季節、会員となった人は畑の真っ只中に身を置き、その場所に流れてきた悠久の時を肌で感じることで、大地と共にあるその地の暮らしを窺い知ることが出来るでしょう。自分を見つめ直したくなった時、一人の時間を過ごす場所として、あるいはギャラリーなどにも活用して欲しいとのこと。そう語る光さんは、(財)都市農山漁村交流活性化機構が認定する「農林漁家民宿おかあさん100選」事業の初年度、平成19年度に全国から選ばれた20人の一人として認定されました。そんなことなど、おくびにも出さないのがいつも自然体な長南さんらしいところ。

mattina_chikeiken-1.jpg 【photo】 宿泊は一日一組限定のため、鳥のさえずりや蝉の鳴き声だけが聞こえる環境のもとで頂く 夏の知憩軒の朝食

 知憩軒にはネットに接続できるインフラはおろかテレビすら置いていない上、幸か不幸かケータイの電波状態もあまり良くないため、慌しい日常をリセットするにはもってこい。当初は自炊のみでスタートした宿泊客向けに食事を提供するようになったのは、みゆきさんが東京から戻った6年前から。「自分たちが伝統的に食べてきたものをお出しするのでよければ」と、黒と白を基調とする庄内地方特有の端正な外観の母屋1階を予約制の農家レストランとして改装、宿泊客もそこで食事ができるようになりました。趣味の良い調度類と季節の花が飾られた趣ある室内には、いつも穏やかでゆったりとした時間が流れており、心尽くしの料理をじっくりと味わうことができます。その日の畑と相談して献立を決める「おまかせコース」は自家製のコシヒカリと野菜が中心。予約なしでレストランを訪れた客には、自家製の梅干を入れてふんわりと優しく握ったおむすびが主役となる一汁一菜の食事を用意しています。いずれも滋味溢れる手料理は、光さんがお母様から受け継いだ庄内の農家に伝わる伝統の味に、みゆきさんとご長男のお嫁さんである歩美さんが新しい感覚を盛り込んだものです。

mattina_chikeiken2.jpg【photo】 しんしんと降る雪に全てが覆われる季節。 静まり返った部屋で心穏やかに頂く冬の知憩軒の朝食

 料理には化学調味料の類いを一切使用せず、どれも素材の持ち味を活かした薄味に仕上げられています。器が置かれた木製の卓は、そこがまだ「山添村」と呼ばれていた明治期に納税の証として拝領し、100年に渡って代々受け継がれたもの。「ずっと私たちが食べてきたものばかりで悪いのぅ」と控えめな光さんですが、いえいえどうして。決して華やかに盛り付けを施した料理ではありませんが、上品な出汁の使い方ひとつを取り上げても厨房を預かる長南さん親子の腕は推して知るべし。料理を運んで来る光さんと語らい、しみじみと味わい深い食事を終える頃には、心の底から満たされていることでしょう。

buonapetito_pie.jpg【photo】 これがデビュー2年目のこの冬、産直あぐりを舞台に熱い争奪戦が繰り広げられている(?)知憩軒のアップルパイ。ご覧の通り見た目の派手さこそ無いものの、楚々とした温かみのある味は、リンゴを慈しみ育てる父・恵三さんと娘・みゆきさんの共同作業ならでは。自家栽培したリンゴが無くなり次第終了

 「知憩軒のものなら間違いはないはず」と思い、店頭に並んでいたスイートポテトパイと一緒にそのアップルパイを買ったのは一昨年12月上旬のことでした。裏のラベルに記してある製造者を確認すると、娘の長南みゆきさんのお名前が。昨年まではスッピンだったアップルパイの生地には、今シーズンから焼き上がった際に締りが良くなるからと仕上げに卵黄で薄化粧を施してあります。パリパリと硬過ぎず、軽くしっとりとした絶妙な焼き加減は今年も健在です。主役のリンゴはシャキシャキした食感を残しており、ほのかなシナモンとナツメグの香りが果汁を吸ったジューシーなパイ生地と口の中で三位一体となって、なんとも美味しいこと ! 冬場はどうしても店頭が少し淋しくなる産直あぐりでしたが、それ以降は立ち寄る楽しみが増えました。

pie_mela.jpg【photo】 恵三さんが育てたリンゴ「ふじ」を、娘のみゆきさんが焼き上げたアップルパイ

 大方のイタリア人男性同様、甘いものもそれなりに好きな私ですが、実はどちらかといえばアップルパイは好みではありませんでした。柔らかく煮込んだどっちつかずな食感のリンゴ、ないしは甘酸っぱくコーティングされた生地。そのいずれかが当てはまるともうイケマセン。ホームメードな焼菓子としてポピュラーなアップルパイだけに、味付けにもさまざまあるとは思いますが、これは! というアップルパイに出くわしたことはなかったのです。突如そこに彗星の如く登場した知憩軒のアップルパイは、今まで私が出合った中では間違いなくNo.1に輝くもの。光さんに伺ってみると、それは文字通りホームメイドなアップルパイなのでした。というのも、材料となるリンゴを栽培するのは、父の恵三さんだったからです。父が育てたリンゴを娘がパイに焼き上げる。vendemia08meli_chounan.jpgそんな父と娘の合作によるパイが誕生する昨冬以前は、自宅レストランで提供するジュース(一杯200円)と、「西荒屋フルーツ加工研究会」の生産者名で産直あぐりで扱うジュース「林檎のしずく」(1ℓ容量/一本600円)用に収穫したリンゴ全量を用いていたそうです。

【photo】収穫の季節。豊かな実りに顔がほころぶ長南 恵三さん

sig.chounan.jpg

 昨年の11月中旬、長南さんのリンゴ畑を訪れてみました。そこでは父の恵三さんが「ふじ」の収穫作業の真っ最中でした。現在ご主人が育てるリンゴは二種類の「ふじ」と「紅玉」。遠赤外線による加工法を取り入れ、鮮やかな発色を残した「柿の実」の名で商品化した干し柿用の庄内柿の栽培にも力を入れています。今や全世界で最も生産量が多いりンゴ品種となったふじは、1962年(昭和37)に青森県藤崎町の園芸試験場で誕生した東北発の世界ブランドです。45年以上に渡って交配を繰り返した結果、数十種もの系統が生まれましたが、色付きを元に大別すると鮮やかな発色をするよう改良された「着色系」と、いわゆる原種の「ふじ」に大別されます。私の濃密な休日の一日をご紹介してきた「ごっつぉだの もっけだの」シリーズでレポートした昨年10月21日に伺った長南さんの納屋には、収穫したての真っ赤な紅玉がカゴに入れて置いてありました。昨年はパイ用には用いなかった紅玉も今シーズンは使っているそうです。

cutting_mela.jpg

 畑から戻って、みゆきさんにアップルパイの作り方を教えて頂きました。皮を剥いて薄切りしたリンゴに三温糖とブラウンシュガー、香り付けのためシナモン少々とナツメグを加えて20分ほど置きます。薄力粉を使った生地を丸い型に入れ、その上にリンゴを放射状に重ねてゆきます。最後にバター(有塩)を少量上に載せてパイ生地で覆います。飾りつけに細切りしたパイ生地を交差して載せ、卵黄を薄く塗り、200℃に設定したオーブンで焼くこと50分。冷めるまでしばらく置いてから切り分けて、ハイ召し上がれ。

mela_fuji_chounan.jpg

 昨年は果樹農家に落果の被害をもたらす台風の上陸が無かったこともあり、リンゴは作柄・収量ともに恵まれました。そのため、2月末までは産直あぐりにアップルパイを出せる見込みとのこと。それでも一日一台ずつしか焼かないため、数には限りがあります。私のようにその味に魅せられたリピーターがいるようで、休日の午後に産直あぐりを訪れても、すでに売り切れという状況がここ二回ほど続きました(T_T)。ゆえにこうしてご紹介することを最初は躊躇しましたが、この美味しさを皆さんと分かち合いたいと思います。

************************************************************************
◆農家民宿・レストラン「知憩軒」
  住所)鶴岡市西荒屋宮の根91
  Phone 0235-57-2130  Fax 0235-57-4185
 ※ レストラン(前日昼までの予約制 ・火曜定休)
   おまかせランチ(11:00-14:00) 1,200円
   おまかせ夕餉 (17:00-21:00) 2,100円
   おむすびランチ(小鉢・味噌汁・コーヒー付 / 予約不要) 650円

 pie_miyuki_chounan.jpg※ 宿泊(年中無休)
  宿泊人数 5名
 宿泊料金 素泊まり...4,000円  二食付き...6,000円

◆アップルパイby 知憩軒
 6つ切り 260円 / 8つ切り 280円
 こちらも美味なスイートポテトパイby 知憩軒  320 円
  ▲お求めは「産直あぐり」へ
    住所)鶴岡市西荒屋字杉下106-3
    営)9:00 ~ 17:00 (10月~3月 夏季は ~18:00 )
      第3水曜定休
      TEL 0235-57-3300

baner_decobanner.gif

2009/01/12

丑年なVinoでスタートダッシュ

 新たな年も早や12日が過ぎ、今年も残すところ353日となりましたが(?)、皆様いかがお過ごしでしょうか。 私は2009年の幕開けを1,100名あまりの皆さんと共に、新年を迎えるカウントダウンの大合唱の中で迎えました。と申しますのも、東北大学百周年記念会館「川内萩ホール」を会場に、大晦日(独語で「Jilvester ジルベスター」)の深夜に催された「東北大学ジルベスターコンサート2008-2009」の運営に携わったからです。仙台では今回が初開催となった東北大学・河北新報社・TBC東北放送の共催によるこのニューイヤーコンサートは、新装なった東北大学百周年記念会館「川内萩ホール」の世界水準とされる音響のもとで新年を飾るにふさわしいクラシックの名曲を楽しみながら、午前零時のカウントダウンを挟んで新年を迎えようというものです。聴衆としてではなく、仕事だったのはやむを得ませんが、会場を埋める聴衆の皆さんと夢のような時間を共有することができました。
2008.12.31 001.jpg
【photo】2008年秋に新装なった東北大学「川内萩ホール」。世界レベルの音響設計がなされたホール初の有料コンサートとなった「東北大学ジルベスターコンサート」のリハーサルの模様。本番前から熱の入った演奏を聞かせた山下洋輔さんと仙台フィル。本番では更に鬼気迫る熱演を繰り広げ、会場を熱狂の渦に巻き込んだ

 山下一史氏の指揮のもと、オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲でオープニングを飾った仙台フィルハーモニー管弦楽団とのコラボで、海外で輝かしい成功を収めている圧倒的なパフォーマンスを聴かせてくれたのはソプラノの田村麻子さん。2008年が生誕150周年に当たったイタリア中部トスカーナ州Lucca ルッカで1858年に生まれたジャコモ・プッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」のアリア『私のお父さん』を情感豊かに歌い上げました。恋する乙女心を切々と表現する田村さんの美声に聞き惚れるうち、歌詞にも登場するフィレンツェ・アルノ川に架かる「ポンテ・ヴェッキオ」の上へといつしか誘(いざな)われていました。歌劇「トスカ」より『星は光りぬ(←昨年亡くなったディ・ステーファノの冥福を祈って...) 、「トゥーランドット」より『誰も寝てはならぬ』という豪華カップリングで聴衆を魅了したのは、10月に開催された仙台クラシックフェスティバルでもお馴染みのテノール中鉢 聡さん。極めつけは、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を熱のこもったエネルギッシュな演奏で会場の大喝采を浴びたピアノの山下洋輔さん。とまぁ、ソリストといい、演目といい、なんとも贅沢なラインナップなこと!
lucca_casa_puccini.jpg
【photo】トスカーナ州北西部の城壁に囲まれた古都、Lucca ルッカのプッチーニ生家(背景奥の建物)の前に建つ凛々しい作曲家の銅像

 実はコンサートの進行役を務めたTBCの藤沢智子アナウンサーと舞台裏のスタッフは、時計と睨めっこで時間管理に当たる極度の緊張を強いられていました。演奏中に年をまたぐジルベスターコンサートという特別な日の演出上、予定のプログラム7曲をカウントダウンを始める23時59分頃までには終えなくてはならなかったからです。指揮者の山下さんと仙台フィルのメンバー、3人のソリストが揃ったステージと客席が一体になって新年のカウントダウンが始まると、会場の興奮は最高潮に。ステージの背景に映し出されたカウントダウンの数字がゼロになり、A Happy New Year! の文字が映し出されると、会場は一気に華やいだ雰囲気に染まりました。新年を飾る曲として演奏されたのが、19世紀半ばのイタリア統一運動(Risorgimento リソルジメント)を精神的に支え、今も「イタリアの父」と称えられるジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「椿姫」より『乾杯の歌』です。

 ワイングラスを高らかに掲げながらステージに登場した田村さん・中鉢さんのお二人。目にも鮮やかな赤いドレスをまとった田村さんが手にする赤ワインがステージによく映えます。時間を気にする必要が無くなったせいか、こちらもリラックスして二重唱の名曲を楽しむことができました。中鉢さんが「ルネッサーンス!」という髭男爵のギャグを飛ばしてくれなかったのが残念でしたが(笑)、所属する藤原歌劇団でも当たり役の青年貴族アルフレードが「Libiamo ne'lieti calici che la bellezza infiora,(友よいざ飲み明かそう、心ゆくまで)」と歌い出す「乾杯の歌」は、新たな年の幕開けにはぴったりの選曲ですよね。

Vernet-Barricade_Novara.jpg【photo】 街の守護聖人、聖ガウデンツィオを祀るサン・ガウデンツィオ聖堂が描かれたノヴァーラの対オーストリア市街戦を描いた19世紀の絵画

 ラヴェル作曲「ボレロ」の演奏が終わっても鳴り止まぬ拍手の中、アンコールはウィーンフィル恒例のニューイヤーコンサートでもお馴染みの「ラデツキー行進曲」。前世イタリア人にとって、ウィーンの楽友協会大ホールかと錯覚させるかのような客席の手拍子と共に演奏されたこの楽曲には、いささか複雑な思いがよぎります。というのも北イタリアがオーストリア・ハンガリー帝国の支配下にあった1848年3月、独立を勝ち取ろうと現在のピエモンテ州Novara ノヴァーラで決起したサルデーニャ連合軍を主体とする我が同胞は、オーストリア帝国のヨーゼフ・ラデツキー将軍によって殲滅されました。その勝利を称えるためにヨハン・シュトラウスが作曲したのがこの威勢の良い行進曲だからです。こうして私が前世を過ごしたイタリア統一運動(リソルジメント)真っ盛りの時代に活躍した作曲家の作品を中心としたプログラムで、気持ちが高揚したまま深夜1時30分過ぎに家路に着きました。

avignoneseidesiserio1995.jpg【photo】 深みとしなやかさを兼ね備えたアヴィニョネジのVino rosso、「Toro Desiderio トーロ・デジデーリオ」。エチケッタに描かれたキアーナ牛もまた、中身のヴィーノ同様に堂々たる体躯を備えている

 丑年の幕開けを祝うにふさわしいワインは無いかと、静まり返った深夜のリビングルームで一人思案しました。黒い闘牛がボトルに掛かるスペイン・カタルーニャ地方の大手ワイナリー「ミゲル・トーレス」は日本でも有名ですが、イタリアワインにほぼ占拠され、お目当てのヴィーノを探し出すのにひと苦労する(^^;我が家のセラーには、「牛の血」を意味する同社の看板ワイン「Sangre de Toro サングレ・デ・トロ」すらありません。

 イタリアでエチケッタ(=ラベル)に牛が登場するヴィーノといえば、「Avignonesi アヴィニョネジ」の「Toro Desiderio トーロ・デジデーリオ」というヴィーノを真っ先に思い浮かべました。世界最高峰のデザートワインに数えられる「Vin Santo Occhio di Pernice ヴィン・サント・オッキオ・ディ・ペルニーチェ」で名高いこの造り手が、トスカーナ州南部「Val di Chiana ヴァル・ディ・キアーナ(=キアーナ渓谷)」地帯に位置する「Cortonaコルトーナ」近くで栽培するメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンを混醸したワインです。幸福無事な一年の願いをかけるにはぴったりな「願望」を意味するイタリア語Desiderio の名が付いたこのヴィーノのエチケッタに描かれた白い雄牛(伊語でToro)はイタリアきってのブランド牛であろう「Chianina キアーナ牛」です。

mucca_chianina.jpg【photo】 オスは体重900kgから1,000kgもの巨漢になる世界最大級の牛、キアーナ牛

 ほとんどの観光ガイドブックに郷土料理として紹介されるほど有名な「Bistecca alla Fiorentina ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(=フィレンツェ風Tボーンステーキ)」に使われるのがこの牛です。一大観光都市でもあるフィレンツェでは、肉料理の目玉としてレストランのメニューによく登場しますが、月齢24ヶ月以下の雄牛の肉を厚切りにして炭火で「al sangue アル・サングエ」(=レア)に焼く本物のビステッカは稀だといいます。トスカーナ州南東部のキアーナ渓谷周辺で飼育される希少なこの牛は、5月上旬から11月中旬にかけて放牧肥育され、オスの体重は1トンにも及ぶ世界最大級の巨漢牛となりますが、優れた肉質と希少性からスローフード協会によって次代に残すべき食材を守る「味の箱舟」事業の保護(=プレジディオ)指定を受けています。bistecca_fiorentina.jpg以前取り上げた日本短角種のように噛み締めると肉の旨味が口の中一杯に広がる本物のキアーナ牛にありつきたい方は、モンテプルチアーノやコルトーナ周辺まで足を伸ばすことをオススメします。ただし、ほとんどの場合、ビステッカは二人分以上のボリュームがあるので、お一人で完食するのはまず無理でしょう。

【photo】 MontepulcianoにあるリストランテBorgobuioで正真正銘のキアーナ牛を使ったビステッカをオーダー。マダムのエルダさんに「少なめに」と伝えたものの・・・(上写真) ランボルギーニの名に恥じないスーパー・ウンブリアのセカンドヴィンテージとなった「カンポレオーネ'98」(下写真)

campolepne98.jpg

 私が所有するDeseiderioは、トスカーナが理想的な気候のもと作柄に恵まれた'04年ヴィンテージで、まだ飲み頃に達していません。そこで"牛つながり"でセラーから選んだのが、今回ご紹介するイタリア中部ウンブリア州で造られた赤ワイン、「Lamborghini-La Fiorita ランボルギーニ - ラ・フィオリータ」なる造り手の「Campoleone カンポレオーネ」の'98年ヴィンテージ。そう、'70年代のスーパーカーブームで有名になったあのランボルギーニ家が所有するカンティーナです。エミリア・ロマーニャ州Sant'Agata Bolognese サン・アガタ・ボロネーゼに本拠地を置く自動車メーカーのランボルギーニ「Automobili Lamborghini Holdings S.p.A」 (秀逸な「Pronti a correre?(=Ready to ride?)」の問いかけから始まるWebサイト(伊語・英語)こちらは、数度に及ぶオーナーの変遷を経て'99年以降はドイツのAUDI 傘下に入りました。しかしワイナリーは創業者であるランボルギーニ一族によって現在も運営されています。

 ちなみに北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州には「Ferrari フェラーリ」というスプマンテの著名な作り手も存在しますが、車のフェラーリとは全く関係ありません。イタリア伝統のベルカントなハイトーンを奏でながら8,000回転以上まで一気に吹き上がる官能的なエンジンを積んだランボルギーニやフェラーリの名が付いたヴィーノやスプマンテでも、酔いが回るのまで速いわけではありませんのでご安心を(笑)。跳ね馬をシンボルとするフェラーリに対して、ランボルギーニは牡牛座だった創業者にちなんだかどうかは判りませんが、猛々しく突き進むファイティング・ブル(闘牛)をシンボルマークにしています。

lamborghini_logo.jpg【photo】 猪突猛進(→ここでは「牛突猛進」?)するファインティング・ブル(闘牛)はランボルギーニのシンボル

 ランボルギーニ社の創業者であるフェルッチョ・ランボルギーニ(1916-1993)がイタリア最大の湖である「Lago Trasimeno トラジメーノ湖」を訪れた際、湖水を背景になだらかな丘陵が広がるPanicale パニカーレの風景に魅せられます。第一線を退いた'71年に32haの畑を購入し、「Sangiove サンジョヴェーゼ」や「Ciliegiolo チリエジョーロ」といったイタリア固有品種に加え「Merlot メルロー」と「Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン」といったボルドー原産のブドウの栽培を始めます。優秀なメカニックとして、エンツォ・フェラーリも一目置く存在だったフェルッチオは、もともとエミリオ・ロマーニャ州Ferrara フェラーラ近郊にある農家の出身でした。当初は自家消費を目的に楽しみで始めたワイン造りが転機を迎えたのは、'93年に亡くなったフェルッチオの後を'96年から継いだ娘のパトリツィアが「ミスター・メルロー」の異名を持つ有能なオルヴィエート出身の醸造家、リッカルド・コタレッラを醸造コンサルタントに迎えた'97年ヴィンテージから。パトリッツィアがベーシックラインのヴィーノ「Trescone トレスコーネ」について語るVideoはこちら。

   

 同年より赤をイメージカラーとするキャップシールとエチケッタ(ラベル)のコストパフォーマンスが高い「Trescone」と、黄色を基調としたフラッグシップに位置付けられる「Campoleone カンポレオーネ」というイタリアン・スポーツカーのメーカーらしい2種類のヴィーノにラインナップを一新。'03年にはミッドレンジとして「Trami トラミ」も第3のワインとして年産4,000本という少量だけながらリリースされています。それらのヴィーノのエチケッタには、誇らしげにLamborghini のロゴと小さく控えめに猛牛をあしらったシンボルマークが記されています。etichetta_campoleone.jpg著名な米国のワイン評論家ロバート・パーカーJr.が97点(/100点満点)を付けて世のワインラヴァーの注目を集め、ファーストヴィンテージとなった'97年産からカンポレオーネはシンデレラ・ワインとして鮮烈なデビューを飾りました。それはグラスに注いでも全く光を通さないほど真っ黒な色合いを呈する凝縮度の高いサンジョヴェーゼとメルローが50%ずつブレンドされたヴィーノでした。

【photo】 ランボルギーニの紋章、ファイティング・ブルをあしらったCampoleone のエチケッタ。およそ猛牛のイメージとはかけ離れた小柄でチャーミングな女性オーナー、パトリッツィアさんには不似合いかも?

 新年の一杯目として選んだCampoleoneセカンドヴィンテージの'98年は、10年を経てタンニンがこなれてきたものの、抜栓直後はいまだに硬さが残る印象を残します。徐々に妖艶な香りを漂わせるヴィーノをグラスで2杯ほど空けましたが、これはもう少し時間を置いたほうが良さそうだと思う間も無く、猛烈な睡魔が襲って来ました。そういえば紅白歌合戦の小林 幸子と美川憲一のド派手な衣装はどんなだったか? そして紅組・白組の勝敗はどうなったんだろう? という考えが中鉢さんの「Nessun dorma!=誰も寝てはならぬ!」というリフレインと共に脳裏をよぎりましたが、いつしかソファーで深い眠りについていました。Zzz・・・ 飲み残したCampoleone がスーパーカー並みの優れたポテンシャルを見せてくれたのは、優れたワインにはよくあるように翌日元旦と翌々日の2日のことでした。(ちなみにいずれの疑問についても未だにその解答を得ていません)

agri_lamborghini.jpg【photo】 トラジメーノ湖を望む美しい丘陵に建つランボルギーニのカンティーナ(手前) 

 イタリア国家警察が創設152周年を迎えた昨年、ランボルギーニ社から最新型フラッグシップモデル「Gallardo(ガヤルド)LP560-4」が記念に贈呈され、主にスピード違反を取り締まるためのパトカーとして稼動しています。(そりゃそうです、時にF1レーサーまがいのフェラーリやポルシェを追尾するのですから...←(・_・┐)))。メーカーによる特別な講習を受けた30名の警官だけがステアリングを握ることが許されるというのは、時速100kmに達するまでわずか3.7秒、最高巡航速度325kmに達するモンスターばりの性能ゆえ、運転にもそれなりの腕を要するということ。(圧倒的な加速性能を披露する動画はコチラをclick!

 不景気風を吹き飛ばすファイティング・ブルにあやかって上のGallardo LP560-4の動画ばりにホイルスピンをかけて猛烈なスタートダッシュを切るには最適なアイテムとして、皆様にもランボルギーニをオススメします。ちなみに日本ではGallardo LP560-4は一台2,500万円の高嶺の花、Campoleoneは5,000円台のまだしも手の届く価格で入手可能です。...いくら丑年の幕開けだからといって、新年最初の一本が牛ラベルのワインとは、いささか安直な選択だなぁ、と自省しつつ、今年もよろしくお願いします。m(_ _)m

   
大きな地図で見る

baner_decobanner.gif

Giugno 2016
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.