あるもの探しの旅

« 今年も当たり年! | メイン | 父と娘のアップルパイ »

丑年なVinoでスタートダッシュ

 新たな年も早や12日が過ぎ、今年も残すところ353日となりましたが(?)、皆様いかがお過ごしでしょうか。 私は2009年の幕開けを1,100名あまりの皆さんと共に、新年を迎えるカウントダウンの大合唱の中で迎えました。と申しますのも、東北大学百周年記念会館「川内萩ホール」を会場に、大晦日(独語で「Jilvester ジルベスター」)の深夜に催された「東北大学ジルベスターコンサート2008-2009」の運営に携わったからです。仙台では今回が初開催となった東北大学・河北新報社・TBC東北放送の共催によるこのニューイヤーコンサートは、新装なった東北大学百周年記念会館「川内萩ホール」の世界水準とされる音響のもとで新年を飾るにふさわしいクラシックの名曲を楽しみながら、午前零時のカウントダウンを挟んで新年を迎えようというものです。聴衆としてではなく、仕事だったのはやむを得ませんが、会場を埋める聴衆の皆さんと夢のような時間を共有することができました。
2008.12.31 001.jpg
【photo】2008年秋に新装なった東北大学「川内萩ホール」。世界レベルの音響設計がなされたホール初の有料コンサートとなった「東北大学ジルベスターコンサート」のリハーサルの模様。本番前から熱の入った演奏を聞かせた山下洋輔さんと仙台フィル。本番では更に鬼気迫る熱演を繰り広げ、会場を熱狂の渦に巻き込んだ

 山下一史氏の指揮のもと、オッフェンバックの喜歌劇「天国と地獄」序曲でオープニングを飾った仙台フィルハーモニー管弦楽団とのコラボで、海外で輝かしい成功を収めている圧倒的なパフォーマンスを聴かせてくれたのはソプラノの田村麻子さん。2008年が生誕150周年に当たったイタリア中部トスカーナ州Lucca ルッカで1858年に生まれたジャコモ・プッチーニの歌劇「ジャンニ・スキッキ」のアリア『私のお父さん』を情感豊かに歌い上げました。恋する乙女心を切々と表現する田村さんの美声に聞き惚れるうち、歌詞にも登場するフィレンツェ・アルノ川に架かる「ポンテ・ヴェッキオ」の上へといつしか誘(いざな)われていました。歌劇「トスカ」より『星は光りぬ(←昨年亡くなったディ・ステーファノの冥福を祈って...) 、「トゥーランドット」より『誰も寝てはならぬ』という豪華カップリングで聴衆を魅了したのは、10月に開催された仙台クラシックフェスティバルでもお馴染みのテノール中鉢 聡さん。極めつけは、ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を熱のこもったエネルギッシュな演奏で会場の大喝采を浴びたピアノの山下洋輔さん。とまぁ、ソリストといい、演目といい、なんとも贅沢なラインナップなこと!
lucca_casa_puccini.jpg
【photo】トスカーナ州北西部の城壁に囲まれた古都、Lucca ルッカのプッチーニ生家(背景奥の建物)の前に建つ凛々しい作曲家の銅像

 実はコンサートの進行役を務めたTBCの藤沢智子アナウンサーと舞台裏のスタッフは、時計と睨めっこで時間管理に当たる極度の緊張を強いられていました。演奏中に年をまたぐジルベスターコンサートという特別な日の演出上、予定のプログラム7曲をカウントダウンを始める23時59分頃までには終えなくてはならなかったからです。指揮者の山下さんと仙台フィルのメンバー、3人のソリストが揃ったステージと客席が一体になって新年のカウントダウンが始まると、会場の興奮は最高潮に。ステージの背景に映し出されたカウントダウンの数字がゼロになり、A Happy New Year! の文字が映し出されると、会場は一気に華やいだ雰囲気に染まりました。新年を飾る曲として演奏されたのが、19世紀半ばのイタリア統一運動(Risorgimento リソルジメント)を精神的に支え、今も「イタリアの父」と称えられるジュゼッペ・ヴェルディの歌劇「椿姫」より『乾杯の歌』です。

 ワイングラスを高らかに掲げながらステージに登場した田村さん・中鉢さんのお二人。目にも鮮やかな赤いドレスをまとった田村さんが手にする赤ワインがステージによく映えます。時間を気にする必要が無くなったせいか、こちらもリラックスして二重唱の名曲を楽しむことができました。中鉢さんが「ルネッサーンス!」という髭男爵のギャグを飛ばしてくれなかったのが残念でしたが(笑)、所属する藤原歌劇団でも当たり役の青年貴族アルフレードが「Libiamo ne'lieti calici che la bellezza infiora,(友よいざ飲み明かそう、心ゆくまで)」と歌い出す「乾杯の歌」は、新たな年の幕開けにはぴったりの選曲ですよね。

Vernet-Barricade_Novara.jpg【photo】 街の守護聖人、聖ガウデンツィオを祀るサン・ガウデンツィオ聖堂が描かれたノヴァーラの対オーストリア市街戦を描いた19世紀の絵画

 ラヴェル作曲「ボレロ」の演奏が終わっても鳴り止まぬ拍手の中、アンコールはウィーンフィル恒例のニューイヤーコンサートでもお馴染みの「ラデツキー行進曲」。前世イタリア人にとって、ウィーンの楽友協会大ホールかと錯覚させるかのような客席の手拍子と共に演奏されたこの楽曲には、いささか複雑な思いがよぎります。というのも北イタリアがオーストリア・ハンガリー帝国の支配下にあった1848年3月、独立を勝ち取ろうと現在のピエモンテ州Novara ノヴァーラで決起したサルデーニャ連合軍を主体とする我が同胞は、オーストリア帝国のヨーゼフ・ラデツキー将軍によって殲滅されました。その勝利を称えるためにヨハン・シュトラウスが作曲したのがこの威勢の良い行進曲だからです。こうして私が前世を過ごしたイタリア統一運動(リソルジメント)真っ盛りの時代に活躍した作曲家の作品を中心としたプログラムで、気持ちが高揚したまま深夜1時30分過ぎに家路に着きました。

avignoneseidesiserio1995.jpg【photo】 深みとしなやかさを兼ね備えたアヴィニョネジのVino rosso、「Toro Desiderio トーロ・デジデーリオ」。エチケッタに描かれたキアーナ牛もまた、中身のヴィーノ同様に堂々たる体躯を備えている

 丑年の幕開けを祝うにふさわしいワインは無いかと、静まり返った深夜のリビングルームで一人思案しました。黒い闘牛がボトルに掛かるスペイン・カタルーニャ地方の大手ワイナリー「ミゲル・トーレス」は日本でも有名ですが、イタリアワインにほぼ占拠され、お目当てのヴィーノを探し出すのにひと苦労する(^^;我が家のセラーには、「牛の血」を意味する同社の看板ワイン「Sangre de Toro サングレ・デ・トロ」すらありません。

 イタリアでエチケッタ(=ラベル)に牛が登場するヴィーノといえば、「Avignonesi アヴィニョネジ」の「Toro Desiderio トーロ・デジデーリオ」というヴィーノを真っ先に思い浮かべました。世界最高峰のデザートワインに数えられる「Vin Santo Occhio di Pernice ヴィン・サント・オッキオ・ディ・ペルニーチェ」で名高いこの造り手が、トスカーナ州南部「Val di Chiana ヴァル・ディ・キアーナ(=キアーナ渓谷)」地帯に位置する「Cortonaコルトーナ」近くで栽培するメルローとカベルネ・ソーヴィニヨンを混醸したワインです。幸福無事な一年の願いをかけるにはぴったりな「願望」を意味するイタリア語Desiderio の名が付いたこのヴィーノのエチケッタに描かれた白い雄牛(伊語でToro)はイタリアきってのブランド牛であろう「Chianina キアーナ牛」です。

mucca_chianina.jpg【photo】 オスは体重900kgから1,000kgもの巨漢になる世界最大級の牛、キアーナ牛

 ほとんどの観光ガイドブックに郷土料理として紹介されるほど有名な「Bistecca alla Fiorentina ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(=フィレンツェ風Tボーンステーキ)」に使われるのがこの牛です。一大観光都市でもあるフィレンツェでは、肉料理の目玉としてレストランのメニューによく登場しますが、月齢24ヶ月以下の雄牛の肉を厚切りにして炭火で「al sangue アル・サングエ」(=レア)に焼く本物のビステッカは稀だといいます。トスカーナ州南東部のキアーナ渓谷周辺で飼育される希少なこの牛は、5月上旬から11月中旬にかけて放牧肥育され、オスの体重は1トンにも及ぶ世界最大級の巨漢牛となりますが、優れた肉質と希少性からスローフード協会によって次代に残すべき食材を守る「味の箱舟」事業の保護(=プレジディオ)指定を受けています。bistecca_fiorentina.jpg以前取り上げた日本短角種のように噛み締めると肉の旨味が口の中一杯に広がる本物のキアーナ牛にありつきたい方は、モンテプルチアーノやコルトーナ周辺まで足を伸ばすことをオススメします。ただし、ほとんどの場合、ビステッカは二人分以上のボリュームがあるので、お一人で完食するのはまず無理でしょう。

【photo】 MontepulcianoにあるリストランテBorgobuioで正真正銘のキアーナ牛を使ったビステッカをオーダー。マダムのエルダさんに「少なめに」と伝えたものの・・・(上写真) ランボルギーニの名に恥じないスーパー・ウンブリアのセカンドヴィンテージとなった「カンポレオーネ'98」(下写真)

campolepne98.jpg

 私が所有するDeseiderioは、トスカーナが理想的な気候のもと作柄に恵まれた'04年ヴィンテージで、まだ飲み頃に達していません。そこで"牛つながり"でセラーから選んだのが、今回ご紹介するイタリア中部ウンブリア州で造られた赤ワイン、「Lamborghini-La Fiorita ランボルギーニ - ラ・フィオリータ」なる造り手の「Campoleone カンポレオーネ」の'98年ヴィンテージ。そう、'70年代のスーパーカーブームで有名になったあのランボルギーニ家が所有するカンティーナです。エミリア・ロマーニャ州Sant'Agata Bolognese サン・アガタ・ボロネーゼに本拠地を置く自動車メーカーのランボルギーニ「Automobili Lamborghini Holdings S.p.A」 (秀逸な「Pronti a correre?(=Ready to ride?)」の問いかけから始まるWebサイト(伊語・英語)こちらは、数度に及ぶオーナーの変遷を経て'99年以降はドイツのAUDI 傘下に入りました。しかしワイナリーは創業者であるランボルギーニ一族によって現在も運営されています。

 ちなみに北イタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州には「Ferrari フェラーリ」というスプマンテの著名な作り手も存在しますが、車のフェラーリとは全く関係ありません。イタリア伝統のベルカントなハイトーンを奏でながら8,000回転以上まで一気に吹き上がる官能的なエンジンを積んだランボルギーニやフェラーリの名が付いたヴィーノやスプマンテでも、酔いが回るのまで速いわけではありませんのでご安心を(笑)。跳ね馬をシンボルとするフェラーリに対して、ランボルギーニは牡牛座だった創業者にちなんだかどうかは判りませんが、猛々しく突き進むファイティング・ブル(闘牛)をシンボルマークにしています。

lamborghini_logo.jpg【photo】 猪突猛進(→ここでは「牛突猛進」?)するファインティング・ブル(闘牛)はランボルギーニのシンボル

 ランボルギーニ社の創業者であるフェルッチョ・ランボルギーニ(1916-1993)がイタリア最大の湖である「Lago Trasimeno トラジメーノ湖」を訪れた際、湖水を背景になだらかな丘陵が広がるPanicale パニカーレの風景に魅せられます。第一線を退いた'71年に32haの畑を購入し、「Sangiove サンジョヴェーゼ」や「Ciliegiolo チリエジョーロ」といったイタリア固有品種に加え「Merlot メルロー」と「Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン」といったボルドー原産のブドウの栽培を始めます。優秀なメカニックとして、エンツォ・フェラーリも一目置く存在だったフェルッチオは、もともとエミリオ・ロマーニャ州Ferrara フェラーラ近郊にある農家の出身でした。当初は自家消費を目的に楽しみで始めたワイン造りが転機を迎えたのは、'93年に亡くなったフェルッチオの後を'96年から継いだ娘のパトリツィアが「ミスター・メルロー」の異名を持つ有能なオルヴィエート出身の醸造家、リッカルド・コタレッラを醸造コンサルタントに迎えた'97年ヴィンテージから。パトリッツィアがベーシックラインのヴィーノ「Trescone トレスコーネ」について語るVideoはこちら。

   

 同年より赤をイメージカラーとするキャップシールとエチケッタ(ラベル)のコストパフォーマンスが高い「Trescone」と、黄色を基調としたフラッグシップに位置付けられる「Campoleone カンポレオーネ」というイタリアン・スポーツカーのメーカーらしい2種類のヴィーノにラインナップを一新。'03年にはミッドレンジとして「Trami トラミ」も第3のワインとして年産4,000本という少量だけながらリリースされています。それらのヴィーノのエチケッタには、誇らしげにLamborghini のロゴと小さく控えめに猛牛をあしらったシンボルマークが記されています。etichetta_campoleone.jpg著名な米国のワイン評論家ロバート・パーカーJr.が97点(/100点満点)を付けて世のワインラヴァーの注目を集め、ファーストヴィンテージとなった'97年産からカンポレオーネはシンデレラ・ワインとして鮮烈なデビューを飾りました。それはグラスに注いでも全く光を通さないほど真っ黒な色合いを呈する凝縮度の高いサンジョヴェーゼとメルローが50%ずつブレンドされたヴィーノでした。

【photo】 ランボルギーニの紋章、ファイティング・ブルをあしらったCampoleone のエチケッタ。およそ猛牛のイメージとはかけ離れた小柄でチャーミングな女性オーナー、パトリッツィアさんには不似合いかも?

 新年の一杯目として選んだCampoleoneセカンドヴィンテージの'98年は、10年を経てタンニンがこなれてきたものの、抜栓直後はいまだに硬さが残る印象を残します。徐々に妖艶な香りを漂わせるヴィーノをグラスで2杯ほど空けましたが、これはもう少し時間を置いたほうが良さそうだと思う間も無く、猛烈な睡魔が襲って来ました。そういえば紅白歌合戦の小林 幸子と美川憲一のド派手な衣装はどんなだったか? そして紅組・白組の勝敗はどうなったんだろう? という考えが中鉢さんの「Nessun dorma!=誰も寝てはならぬ!」というリフレインと共に脳裏をよぎりましたが、いつしかソファーで深い眠りについていました。Zzz・・・ 飲み残したCampoleone がスーパーカー並みの優れたポテンシャルを見せてくれたのは、優れたワインにはよくあるように翌日元旦と翌々日の2日のことでした。(ちなみにいずれの疑問についても未だにその解答を得ていません)

agri_lamborghini.jpg【photo】 トラジメーノ湖を望む美しい丘陵に建つランボルギーニのカンティーナ(手前) 

 イタリア国家警察が創設152周年を迎えた昨年、ランボルギーニ社から最新型フラッグシップモデル「Gallardo(ガヤルド)LP560-4」が記念に贈呈され、主にスピード違反を取り締まるためのパトカーとして稼動しています。(そりゃそうです、時にF1レーサーまがいのフェラーリやポルシェを追尾するのですから...←(・_・┐)))。メーカーによる特別な講習を受けた30名の警官だけがステアリングを握ることが許されるというのは、時速100kmに達するまでわずか3.7秒、最高巡航速度325kmに達するモンスターばりの性能ゆえ、運転にもそれなりの腕を要するということ。(圧倒的な加速性能を披露する動画はコチラをclick!

 不景気風を吹き飛ばすファイティング・ブルにあやかって上のGallardo LP560-4の動画ばりにホイルスピンをかけて猛烈なスタートダッシュを切るには最適なアイテムとして、皆様にもランボルギーニをオススメします。ちなみに日本ではGallardo LP560-4は一台2,500万円の高嶺の花、Campoleoneは5,000円台のまだしも手の届く価格で入手可能です。...いくら丑年の幕開けだからといって、新年最初の一本が牛ラベルのワインとは、いささか安直な選択だなぁ、と自省しつつ、今年もよろしくお願いします。m(_ _)m

   
大きな地図で見る

baner_decobanner.gif

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.