あるもの探しの旅

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場の空気に関する一考察

これぞイタリアン・ハイテクノロジー?

 偶然も積み重なれば、必然と考えるのが自然です。一定の状況下で、正規ディーラーにも原因を特定しえない「ある現象」が度重なって発生する我が Macchina Rossa マッキナ・ロッサ(= 赤いイタ車)の、摩訶不思議な現象がどうして起こるのか、原因を検証してみます。

 人間にとって欠かせないもの故に、当「あるもん探しの旅」では、たびたび水について取り上げています。体の組成の8割が水分の状態で生まれてくる人間は、産湯をつかって生まれ育った故郷の水に、おのずと体が順応してゆきます。小さな子どもは旅先で水が変わるとお腹をこわすなど、体の変調を訴えることがあります。そうしたことを「水が合わない」と言いますよね。これは人間だけに限った現象でなく、どうやら車においても起こることがあるようです。Alfa Brera が新車登録後2年半をもって、走行2万kmに達した日のこと。仙台から本州を横断して、んめものの里・庄内まで頻繁に往復するものの、意外と走行距離が伸びていない理由は、納車当初たびたび発生した現象によって、ディーラーへの入院を繰り返し、代車での移動を強いられてきたからです。

modello_concept_brera.jpg【photo】プロダクツデザインの巨匠、ジョルジェット・ジウジァーロのデザインを忠実に再現したAlfa Brera のコンセプトモデル

 いつでも里帰りが出来るよう、マニュアル車が主流となるイタリアのレンタカー事情を考慮して、左ハンドル6速マニュアルシフトのBrera 2.2 JTS Sky Window をチョイスしました。見通しの良い田舎道を走る際には、時々道路の右寄りを走り、そこがトスカーナの田園地帯であるかのような感覚を喚起して、イメージトレーニングにぬかりはないつもりでした。ところが、乾燥した地中海性気候の国で造られた車は、雨が降り出すと、時に異常を来たすのでした。通常のアイドリング時は9giri(giro=「回転」を意味するイタリア語の複数形)×100=900rpm(rpm=一分間当たりのエンジン回転数の単位) 程度のエンジンの回転数が、信号待ちなどでギアがニュートラル状態にある時でも、40giri×100(=4000回転)を超えるまで、徐々に上がってゆくのです。
alfa_brera_lucca.jpg【photo】 造形の天才たちが中世期より営々と創り上げてきたトスカーナの町並み。美しいランドスケープに溶け込むダイナミックでモダンなフォルムのAlfa Brera

 「おBrava!、アイドリング時でも4000回転を超えるとは、さすがラテンの車は熱いぜぃ!!」などと自虐的なボケを飛ばす間もなく、エンジンの異常を告げるエンジン警告灯が点灯するシャレでは済まされない状況でした。6800giri以上のレッドゾーンまで上昇を続けようとするタコメーターの動きに恐れをなし、エンジンを停止させなければ、エンジンの燃焼室が焼き付いてしまうかもしれません。クラッチを繋いで走り出せば回転数は落ちますが、警告灯が点いている状態では、安心できません。当然メーカーとしても、エンジンに致命的なダメージを与えることのないようにフェールセーフ機能を備えており、エンジン警告灯が点くと、コンピュータが自動的にエンジンの回転数を抑えるようになっています。そうなるといかにアクセルを踏み込もうと、トルクが得られず、上り坂では極端に速度が落ちてしまいます。

 雨が降ると必ず異常が発生するわけではなく、その現象が起こるのが、なぜか山形県内陸の村山地域をウロついている時にほぼ集中しているという事実に気付くまで、時間を要しませんでした。10km先の交差点で右折する車が、ず~っと右側の追越車線を時速50km以下で走り続けるため、山形市内を南北に貫く片側二車線のバイパスが、同じような速度で並走する車両で占められる特異な光景が常態化しているR13でのこと。降り出した雨の中で信号待ちをしていた際、ギアをニュートラルに戻していたエンジンが、突如回転を上げ、エンジン警告灯が点灯したのが最初でした。たまたま近くにあったAlfa Romeo のディーラーでエラー解除の措置を施してもらったところ、何らかの理由でエンジンを制御するコンピュータが異常を表す信号を感知したのだといいます。2度目は久々に車で行った東京からの帰路、東北自動車道川口料金所の手前で猛烈な雨に見舞われた時に同じ症状が。次は時折にわか雨が降る寒河江市内を走行中に。4度目は鍋越峠の手前で2009.1.24brera.jpg 雨が降り出した尾花沢市内で。5回目は再び雨の山形市内で。太陽の国イタリア生まれのグラマラスな曲線で構成されたMacchinaちゃん(→イタリア語で車は女性名詞。扱いが難しいからか?)は、雨降りがよほどお気に召さないようです。念のために申し上げておきますが、仙台は別として、その次に走る機会が多い庄内地方では、いかに大雨が降ろうと、猛吹雪に見舞われようと、車は元気ハツラツぅ?! なのだから不思議です。


【photo】 今年の「酒田寒鱈まつり」(1/24・25開催)は、大雪警報が発令される厳しい天候となった。会場のひとつ「酒田海鮮いちば」を目指す私が選んだのは、最上川沿いを進むR47。今季初のどんがら汁(=寒鱈汁)にありつこうというPassione(=熱意)を察知したのか、すぐ隣を流れる最上川が猛吹雪によるホワイトアウトで見えないほど過酷な状況下でも、安定感の高い走りで無事目的地に到着したAlfa Breraを降りると、精悍な顔つきのフロントグリルには分厚い氷がびっしり(【click】で拡大表示)

 異常が起こるたびに、ディーラーに持ち込んで、異常の原因と思われる電気信号が流れるケーブルやコネクターなど、国内在庫がある汎用部品のみならず、個々の車に応じてセッティングされるコンピュータ基盤をわざわざトリノのピニンファリーナ工場から取り寄せて交換してもらいました。それでも気難しいイタリアン・ビューティーさながらに扱いに手を焼くマッキナちゃんの異常は一向に収まりません。3回目の異常が起こる頃には、天候が悪い湿度が高い環境のもとでご機嫌を損ねることに気付いていたため、ディーラーのメカニックとも一考を案じ、5度目の入院に際しては、電気信号が伝わるコネクターとケーブルを絶縁性の高いグリースでコーティングするという、物理的な作戦に打って出ました。

brera4000rpm.jpg【photo】湿度が高い日に山形内陸地方を走ると、ギアがニュートラルにあっても、突如エンジンが荒々しい咆哮を上げ、タコメーターの針が4000rpmを超える

attenzione_brera.jpg【photo】アクセルを踏み込まずとも4000rpmを超えるエンジン。まもなく点灯するエンジン警告灯。同じ県内にありながらも、庄内系にとっては異郷に他ならない村山地方でエンジンの不調をしばしば訴える我がMacchina Rossaは、もはやラテン系ではなく筋金入りの庄内系に変身を遂げつつあるようだ

 これが見事に効を奏して、ここ一年ほどは鳴りを潜めていたMacchina Rossa が久しぶりに異常をきたしたのは、先にレポートした驚愕の看板が立つ「延命水【Link to back number】」と出くわした2月15日(日)のこと。庄内エリアとは違い、日ごろは近くを通り過ぎるだけで、立ち寄ることのない山形市の北部にある「シベールの杜 北店」を初めて訪れ、コッパとナスをトマトソースで和えたスパゲッティを頂きました。あまりに強烈な看板に驚き、そこが異郷であることに戸惑いを感じていたためか、料理の画像を写真に収めることなく、いかなるパスタであったかも詳細を忘れてしまいました。

 泉質の良い日帰り温泉施設がある大江町まで足を伸ばす頃には、それまで晴れていた空模様が次第に怪しくなって、シトシト雨が降り出しました。最上川に架かる柏陵大橋の上で走行2万kmを達成した後に、「道の駅おおえ」の駐車場で停車中、アイドリング中のエンジンが唸りを上げ、タコメーターの針が上昇を始めたではありませんか。もはや鬼門とも言うべき山形内陸・村山地方で、またもや「キターーーーッ !!!」 

brera20000km.jpg【photo】 遅ればせながら走行2万キロを達成した道の駅おおえの駐車場で。この直後、Breraはアイドリングの異常をきたした

 雨が苦手な"ラテン系気まぐれマシン"なのかとばかり思っていたマッキナ・ロッサちゃん。実体は「どうも内陸はしっくりこないのぅ」という庄内系ドライバーの心理状態や、そこが異文化の地であることを察知する場の空気に敏感に反応するセンサーを備えた"庄内系ハイテクマシン"として進化中なのかも...。Macchina Rossaに乗り換える前に乗っていた南ドイツ・バイエルン州ミュンヘンに本拠地を構えるBMWのクールで律儀な先代のクーペモデルE46には、そのような人間臭さは無かったなぁ。これも使う人の官能に訴え、人と共鳴することで輝きを放つイタリア製品ならではの奥深い神秘なのでしょう。そう自分に言い聞かせ、やれやれと溜息をつくのでした。

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