あるもの探しの旅

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スローフードフェスティバルin 庄内

【フェスティバル初日】
09年 スローフード全国大会
食の都庄内フェスタ

slow_food_festa.jpg 【photo】大会初日の会場となった庄内町響ホールでのパネルディスカッション

 去る3月7日(土)・8日(日)の二日間、山形県飽海郡庄内町と鶴岡市を会場に「スローフードフェスティバルin庄内」と銘打ち、「'09年スローフード全国大会 食の都庄内フェスタ」が行われました。主催はスローフードジャパンの国内47コンヴィヴィウム(=地方組織)のひとつスローフード山形と、山形在来作物研究会、庄内総合支庁、庄内地域2市3町と各農協、県漁協らで組織された食の都庄内フェスタ実行委員会。「待ってるからねー」を意味する庄内弁「待ってっさげのー『食の都庄内』スローフードの郷(さと)・発見!」をキャッチフレーズに催されたプログラムに参加しました。

Arcevia@alche06.JPG 【photo】2006年3月に開催された「地産地消とスローフードの祭典」の歓迎ディナーで。イタリア・マルケ州から訪れた食に関するプロフェッショナルからなる訪問団も絶賛したアル・ケッチァーノでの食事を終え、すっかり打ち解けたメンバー。美味しい料理と美酒は、いとも容易に国境を超える。左から4人目が若生会長

 スローフード運動発祥の地イタリアから数えて6番目の各国組織として、各地方組織の認証・調整役となる「スローフードジャパン」が2004年に発足して5年。同協会が特定非営利活動(NPO)法人化された昨年、宮崎で初の全国大会が開催されたのに続き、今年は大会の舞台を山形県庄内地方へと移しました。仙台に本部があるスローフードジャパンの若生裕俊会長とは、3年前に旧藤島町が主催した「地産地消とスローフードの祭典」で行われたトークショーで、コメンテーターとコーディネーター役としてご一緒しています。有機農業を通じた交流を行っているイタリアからの訪問団8名を交えて、全量を賄う精米や大豆加工品、およそ半数が地元産だという野菜類を使用した地産地消型の給食調理施設や生産現場を訪ねた後、アル・ケッチァーノで催された歓迎ディナーの席上、若生氏は「庄内にはスローフード運動が理想とする姿がすでに出来上がっている」とコメント。四季を通じて山海の素晴らしい食材に恵まれ、それぞれにストーリーがある在来種が数多く存在し、官民学さまざまな立ち位置の人が手を携えて質の高い地域の食文化を守り伝えているその地の魅力に圧倒されているようでした。日本のスローフード運動にとって、庄内は一度は訪れるべき「約束の地」でもあったのです。

Natsu_Shimamura@hibiki.jpg【photo】島村菜津さんの基調講演

 庄内町文化創造館「響ホール」が会場となった初日、ノンフィクション作家の島村菜津さんによる基調講演でフェスティバルは幕を開けました。著作「スローフードな人生」(新潮社刊)で日本に「スローフード」という言葉を紹介し、失われつつある特徴ある食材と生産者を守り、人同士の繋がりの大切さを普遍的な食を介して見直そうという運動の概念を根付かせる契機を作った島村さんの演題は「スローシティーで地域の活性化~食の都庄内への提言~」。私と同様、庄内の魅力に惹かれて何度もこの地を訪れているという島村さんは、毎年数ヶ月をイタリア各地で過ごしています。会場を埋めた230人あまりの聴衆を前にした講演では、1999年にイタリア・ウンブリア州Orvieto オルヴィエートから始まった「Cittàslow チッタスロー(=Slowcity スローシティ)」という運動が地域活性化の成功事例として紹介されました。

positano_al_mare.jpg【photo】絶景に見とれていると海にダイブしかねない高所恐怖症のドライバーには絶好のキモ試しにもなるサレルノ湾沿いのドライブ。岩肌にカラフルな住宅が張り付いたポジターノの町

 
 「スローなcittá (=「町」の伊語)」を意味するこの運動を提唱したパオロ・サトゥルニーニ氏は、トスカーナ州Greve in Chianti グレーヴェ・イン・キアンティ町長時代に、伝統的なワイン産地であるキアンティ地域の食文化を柱に、歴史遺産、景観、生活様式などの地域資産を対外的に発信することで、域外からの交流人口を増やし、地域の活性化に結び付けます。サトゥルニーニ氏は、彼の取り組みに賛同したスローフード協会のカルロ・ペトリーニ会長と共に、協会本部があるピエモンテ州Bra ブラと紺碧のサレルノ湾から立ち上がる急斜面の岩肌に営々と人々が切り拓いてきたレモン畑が点在するカンパーニア州logo_slowcity.jpgPositano ポジターノ、中部イタリアの先住民族エトルリア人の時代まで遡る気の遠くなるような歴史に彩られた崖上都市オルヴィエート、グレーヴェ・イン・キアンティの4つの街をCittàslowとして旗揚げしました。現在イタリア国内では50都市以上が登録するCittàslowスローシティのムーブメントは、イタリアのみならず、英国やドイツなど欧州14ヶ国と、豪州と韓国に広がりつつあります。

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【photo】パネルディスカッション「スローフードで地域に活力を」パネリスト(写真右より)宇生氏、齋藤 武氏、斎藤篤子氏、奥田氏 

 島村さんもアドバイザーとして加わった「スローフードで地域に活力を」と題するパネルディスカッションには、庄内の稲作農家・旅館業・飲食店・映画制作者という立場のパネリストが登場、山形大学農学部教授で山形在来作物研究会世話人の平 智氏のコーディネートのもとで、地域の魅力を発信するアプローチを探りました。冒頭、庄内映画村㈱代表取締役社長の宇生 雅明氏は、プロデュースした映画「おくりびと」のアカデミー賞受賞を祝う会場から喝采を浴びます。同賞にノミネートされた「たそがれ清兵衛」以降、庄内を舞台とする映画が立て続けに制作されていることを、宇生氏は人々の暮らしぶりを含めて、失われつつある日本の原風景が残る庄内が多くの映画人を惹き付けている点を指摘。松ヶ岡映画村資料館などにロケ地マップを手にした観光客が訪れている庄内には、今年、藤沢周平記念館が完成、新たな魅力が加わります。温海温泉の旅館つたや長兵衛の女将、斎藤 篤子さんは四季それぞれ食材に恵まれた庄内の郷土料理を宿泊客に提供し好評だといいます。鳥海山の裾野にあたる遊佐町白井新田の藤井地区にある棚田でコメ作りを行う鳥海山麓 齋藤農場の齋藤 武氏は、若い農業後継者らで有限責任事業組合「ままくぅ」を結成、在来の餅米「彦太郎糯(ひこたろうもち)」の復活に取り組んでいます。齋藤氏は都市生活者がお抱えの農家を持つことで、食べ物を身近かに感じ、相互に強い絆が生まれるよう提言しました。「食の都・庄内」の提唱者でもあるアル・ケッチァーノ奥田 政行シェフは、saitounoujyou@yuza.jpg 自身が実践してきた生産者の人となりを考えた物々交換に近い独自の食材調達法が、新たな人の輪を生み出していることを披瀝。2000年(平成12)の独立当初こそ素材集めに苦労したものの、店で使う食材の中で地元調達が不可能なパスタ用のデュラム小麦やオリーブオイルを除けば、庄内産の食材が9割に達していることを明かすと、会場からどよめきが起こりました。

【photo】鳥海山麓齋藤農場の棚田からは日本海が一望される。そこから海に沈む夕陽を眺めるのが好きだと語る齋藤氏

paolo_di_croce.jpg【photo】挨拶に立つスローフードインターナショナル国際事務局長パオロ・ディ・クローチェ氏

 会場にはかつて稲作に使用された農機具の展示コーナーのほか、米粉を使用した菓子や麺類の 試食コーナー 、地酒の販売ブースなど「庄内米ミュージアム」が設けられ、休憩時間には参加者が品定めする姿も見受けられました。午後はスローフード全国大会のプログラムが組まれ、スローフードインターナショナル国際事務局長パオロ・ディ・クローチェ氏の挨拶などの後、各地のコンヴィヴィウム代表による活動報告が行われました。「スローフードすぎなみTOKYO」と「スローフード横浜」の代表が食育に関する都市型スローフード運動の活動を紹介。昨年の全国大会が行われた宮崎のコンヴィヴィウムは、オリエンテーリング形式でさまざまな地元の食材を味わうスローフード祭りについて述べ、長崎のコンヴィヴィウムは日本で初めてプレジディオ認証を受けた「雲仙こぶ高菜」を取り巻く動きについて報告しました。活動事例報告の最後は、県下に130品目以上の存在が確認されている在来作物の研究と保護に取り組む山形在来作物研究会(略称:在作研)を代表して、在作研の江頭 宏昌准教授が登壇しました。在来作物は、特徴ある種の存在自体が貴重であるだけでなく、固有の調理法や栽培技術が受け継がれてきた知的財産そのもので、世代を超えて受け継がれてゆくべきであると訴えました。

 奥田シェフとは友人で、私とも知己の関係である江頭先生は、島村 菜津さんが初めてアル・ケッチァーノを訪れた時に偶然店に居合わせ、ご自身が研究テーマにしている温海カブの焼畑へと島村さんを案内して、山中に広がる庄内の焼畑文化について滔々と説明したのだそう。その出来事は、島村さんに強烈な印象を残したそうです。私もとあるご縁で島村さんと食卓を囲んだ経験があり、ミーハー根性丸出しで持参した「スローフードな人生」の初版本にしっかりサインを頂きました。食をめぐって数多くの出会いを経てきた私には、島村さんが基調講演の中で述べた「思いがけない人と人を繋ぐ超能力が食べ物にはある」という言葉に強く共感した初日となりました。

フェスティバル2日目レポートにつづく

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