あるもの探しの旅

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「芽出し」と「芽摘み」の春

芽吹きの季節@鶴岡

 4月11日(土)の夜、「アル・ケッチァーノ」の厨房を支える生産者が集い、今月30日に東京銀座にオープンする山形県のアンテナショップに併設されるリストランテ「ヤマガタ サンダンデロ」(ディナータイムの営業が始まるグランドオープンは5月12日)のスタッフ壮行会が「イル・ケッチァーノ」を会場に行われました。奥田シェフから直接「来てね」と電話連絡があった以上、参加しないわけにはいきません。この日も取材を兼ねて参加していたYBC山形放送の佐藤記者同様、生産者ではない私ですが、仙台から馳せ参じました。

sandandelo_20090411.jpg【photo】店を支える生産者と3店舗のスタッフが勢揃い。27名にも増えた店のスタッフのおよそ3分の2は、この一年で新たに加わったフレッシュな顔ぶれ

 テーブルを共にした「食の都・庄内」事業を推進する前・山形県庄内総合支庁長で、吉村新県知事のもとで副知事に抜擢された高橋 節氏と、荘内藩主 酒井家18代当主、酒井 忠久氏ご令室で致道博物館〈Link to Website〉常務理事の酒井 天美さんによれば、お二方とも前日の10日にシェフから参加を打診する電話があったのだとか... (-。ー;)。いくら忙しいからって、シェフったらー(笑)。当「あるもん探しの旅」でご紹介してきた生産者の皆さんを含め、これまでにお世話になった方たちと今後の夢を語り合えただけでなく、新たな出会いもあり、楽しくも有意義な時間を過ごせました。

mizubasho_matsugaoka.jpg ここで大切なポイントを押さえておきます。銀座店は庄内を中心に山形県産食材のエッセンスをPRする情報発信の役割を任されます。銀座店のプロデュースは手掛けたものの、奥田シェフ自身は今後も庄内を地盤として活動を続けます。新たな芽吹きの地となる銀座では異彩を放つであろう「山形イタリアン」を掲げる料理の真価を知るためには、実際に庄内に足を運び、一皿の料理の背景にある食材を作る人の表情や気候風土などを探って下さい。銀座でつまみ食いしたくらいでは、食の都の奥深い魅力に迫ることなど到底できませんから。

 【photo】桃の摘花作業が行われていた松ヶ岡農場の桃畑(下写真)。農場の先にある湿地にはミズバショウが可憐な花を咲かせていた(左上) 

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 その日は午前中から満開の桜を楽しむ花見客で仙台の西公園は賑わっていましたが、13時過ぎに到着した鶴岡の桜の名所である鶴岡公園赤川沿いのソメイヨシノはまだ開花前。ミズバショウがちょうど見ごろだというので、松ヶ岡開墾場(Link to Website)を訪れました。「あかつき」「川中島」など桃の産地として知られる松ヶ岡農園では、女性たちが桃の摘花作業を行っていました。脚立の上で作業にあたるお母さんに話を聞いてみると、剪定を終えた後、小枝に10個前後つくピンク色の花芽の中で残すのは一つだけ。4月下旬に花を咲かせた後に結実する桃がまだ青いうちの7月にさらに摘果を行い、実を大きく甘味が乗るよう育てます。主力品種となるあかつきが出荷の最盛期を迎えるのは赤川花火大会(今年は8月9日)の頃。愛らしく芽吹いた桃色の蕾は、大方が開花前に間引きされるため、ほんの一握りしか実を結ぶことができないのです。

【photo】より美味しく大きな実を結ぶためには、枝に残す花芽は一つだけ。黙々と摘花作業が続く(左写真)。可愛らしいピンクの桃の蕾は、花を咲かせることなくあらかた摘み取られてしまう(右写真)
         momo_tekka2.jpg momo_tekka3.jpg 

 「まだ桜が咲かぬなら」と向かった先は、梅の名所として知られる湯田川温泉。間もなく名産の孟宗が旬を迎える竹林に囲まれた湯田川梅林公園は、紅梅白梅およそ300本がまさに花盛り。鶴岡市の西方、金峰山の南麓に位置するそこは、大型の観光ホテルが無く、いつも落ち着いた雰囲気に包まれています。全身を柔らかく包み込んでくれる独特の湯触りのお湯は、疲れたカラダとココロを優しく解きほぐしてくれます。「御殿水」の別名を持つ岩清水神社の湧水がそうであるように、湯田川温泉の硫酸塩泉(含石膏芒硝泉)bairin_yutagawa.jpgは、飲泉すると、その類まれな柔らかさが確認できます。浴用が主流の日本の温泉とは違って、飲泉療養が主流のイタリアの「Terme テルメ(=「温泉」の伊語)」に前世で親しんだ私にとって、浴用して良し飲用して良しの湯田川はまさにParadisoパラディソ!(=「パラダイス」の伊語) 全ての旅館が源泉かけ流しという贅沢極まりないお湯の効能は、湯田川観光協会のWebサイトで。


【photo】花盛りの湯田川梅林公園(上写真)。芽出し作業の最盛期を迎え、種籾の入った袋が平積みにされた湯田川温泉街の手前にある催芽場(下写真)
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 温泉街の入り口にある「催芽場」と呼ばれる作業場では、稲の種籾の「芽出し」が行われていました。一般に稲の種籾は水に浸されて積算温度が100℃に達すると(10℃の水なら10日間)発芽するといわれています。重量で選別した種籾は、薬剤を使ったり、約60℃のお湯につけて一旦冷却するなどの消毒工程を経て、休眠状態にある種籾を水に10日~20日ほど浸す浸種(しんしゅ)をまず行います。その後サーモスタット機能付きのヒーターを装備した「催芽機」で30℃前後に加温した水に種籾を浸して発芽を促すのが一般的な方法です。催芽機が存在しなかった昔は、風呂の残り湯や調理で沸かしたお湯を使うなど、温度管理が難しかったため、寝ずの番を強いられるなど農家にとって芽出しは手間の掛かる仕事でした。

medashi_09.jpg【photo】一日の芽出し作業を終えて語らうお父さんたち(写真奥)が向かう先は、酷使した体をやさしくほぐしてくれる共同浴場「正面湯」(入浴料200円)かもしれない

 稲の種籾を温泉に浸して発芽を促す湯田川特有の芽出し法は、1848年(嘉永元年)に地元の農夫、大井 多右衛門が編み出しました。現在では深さ50cmほどのコンクリート製の水路が整備された催芽場に各旅館から排出されるお湯が引かれています。多右衛門自身の創意工夫と後に加えられた技術改良によって、芽出しが行われる4月ひと月だけで庄内一円はおろか、隣接する新潟県村上市の稲作農家から、あらかじめ10日ほど水に浸した「はえぬき」や「ひとめぼれ」「コシヒカリ」など200トンを超える種籾が持ち込まれます。4月2日に始まった今年の芽出し作業は、私が訪れた日までに作業のピークを迎えており、前日までに100トン以上の種籾を処理したといいます。30℃強の湯に12時間浸された後に湯揚げされ、水路に渡された板の上でムシロを掛けて半日ほど蒸らすと胚芽部分から均一な発芽が得られるのだそう。一連の作業はすべて人力でこなすのですから、コメ作りには大変な人手がかかるのですね。

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 芽出し作業を行っていた男性によれば、日本海に面した「湯野浜温泉」でもなく、260年の歴史がある朝市(4/1~12/5)や赤カブで知られる「あつみ温泉」でもなく、湯田川のお湯でなければ、芽吹きが満足に促されないのだといいます。さまざまな温泉が日本各地にありますが、こうしてコメ作りに欠かせない芽出しに温泉を有効活用している例はごく限られます。肌触りのよい柔らかなお湯という願ってもない地域資源をコメ作りに活かした160年前の先人の英知には、感心するばかりです。訪れる人を優しく包み込む湯田川のお湯は、コメにとってもさぞ心地の良い名湯に違いありません。


【photo】湯田川梅林公園の梅はとうに終わり、鶴岡公園や赤川堰堤の桜も散った5月の湯田川。お湯が抜かれた催芽場は静けさを取り戻していた

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山形イタリアン
  YAMAGATA San-Dan-Delo ヤマガタ サンダンデロ

  住)東京都中央区銀座1-5-10 ギンザファーストファイブビル
    山形県アンテナショップ「おいしい山形プラザ」2F
    Phone:03-5250-1755 Fax:03-5250-1756
  営)11:30-15:00(L.O.14:00)
     18:00-23:00(L.O.22:00)
  2009.5/12(火)グランドオープン


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