あるもの探しの旅

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郡上八幡で水づくし

庄内系 奥美濃路を行く vol.1

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【photo】緑したたる郡上八幡を流れる吉田川

 暦通りの休みがしばらくぶりに取れた今年のGW、土日祝日ETC装着車の高速道路料金1000円均一の恩恵を受けるべく、ここぞとばかりに遠征しました。午前2時30分に仙台宮城ICを出発。向かうは岐阜県郡上市です。東北道→磐越道→北陸道→東海北陸道を経由、途中3回の休憩をはさんで650kmを走破、郡上八幡ICのETCゲートを出たのが10時30分。

 庄内地方では決しては起こらず、滅多に行かない山形内陸をたまたま走行中に何故か頻発するマシントラブルの原因と思しきエンジン関連のハーネス(=機器配線)の全交換という荒療治を施したばかりのAlfa Breraは絶好調。MT車にもかかわらず装備されているオートクルーズコントロールを駆使して快適なロングドライブとなりました。料金所の電光板が1000円と表示されるのを見て、「こんなに走っても本当に1000円なんだ!」と感動しながら(笑)、ETCゲートを通り抜けて市営駐車場に車を停め、徒歩でじっくりと街を散策しました。

ETC_1000.jpg  【photo】仙台からの通行料金が1000円の表示を見た途端、そうと判っていても「シンジラレナーイ」と叫んでしまった郡上八幡ICの料金ゲートで

 1559(永禄2)年、戦国武将 遠藤盛数によって天然の要害となる八幡山(標高354m)の頂きに八幡城clicca qui が築かれます。そこに形成された城下町である旧岐阜県郡上郡八幡町は、夜を徹して踊りの輪が続く「孟蘭盆会(うらぼんえ・8/13~16)」に最高潮を迎える7月から9月にかけ、32夜にわたって踊りの輪が広がる「郡上おどりclicca qui」の舞台となります。2004年(平成16)3月に周辺7町村が合併し、郡上市となって以降も旧八幡町一帯は郡上八幡の名で通っています。市街を東西に流れる清流吉田川は奥美濃の山々に端を発し、小駄良川・乙姫川と合流しながら街の西側で鵜飼による鮎漁が行われる長良川へと注いでいます。せせらぎの音に彩られた郡上八幡は、四方を山に囲まれており、環境省が1985年(昭和60)に選定した名水百選で第1号の指定を受けたという「宗祇水」をはじめとする湧水や井戸が町の各所にあります。郡上市民4万7千人の上水道は、カルキ臭とは無縁の石灰岩土壌が広がる市南東部の犬啼谷(いんなきだに)で採水される湧水で賄われているそうで、なんとも羨ましい限り。そこは豊かな水の恵みを生活に活かす水場「水舟」や家並みに刻まれた水路が人々の暮らしを潤す"水の町"なのでした。

shinmachi_gujyou.jpg【photo】新町通の入口で3人の踊り手がお出迎え

 歴史を感じさせる格子窓の家々が建ち並ぶことから、別名"奥美濃の小京都"とも称される郡上八幡。どこかしらレトロな薫りが漂う大阪町から観光客で賑わう新町通へと移動し、8万個の玉石が敷き詰められた散策路と水飲み場や水路が1988年(昭和63)に整備された「やなか水のこみち」へと歩みを進めました。周囲の町屋と風に揺れる柳の木がフォトジェニックな空間を生み出すそこは、観光客にとっては絶好の撮影スポットでもあります。10時30分を回ったばかりでも、GW期間中とあって入れ替わり立ち代りでカメラを前にポーズをとる人たちで一杯でした。

【photo】風にそよぐ柳のもとで清水沿いのそぞろ歩きを楽しみたい「やなか水のこみち」(左下)清らかな水が流れ出るオブジェの脇にはコップが備えられ、湧水を味わうこともできる(右下)

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                                         別段「疲れた~ orz 」という自覚はありませんでしたが、そこは長時間の運転を終えたばかり。「疲れた時は甘いもの」と言うではありませんか。お約束の記念撮影を早々に切り上げて、やなか水のこみちと新町通りが交わる場所にある「やなか屋」に立ち寄りました。店頭に引いた伏流水と葛粉とで作る涼しげな水まんじゅうに強く惹かれたからです。こしあん・抹茶・いちご・柚子・さくら・黒糖の6種類すべて一個150円。柔らかく丸みがある水と溶け合うように程よい甘さの水まんじゅうは喉をプルンと通り過ぎてゆきます。

mizumanjyu_yanaka.jpgmizimanjyu_yanaka1.jpg【photo】「やなか屋」店頭には水槽に冷たい清水が流れ出ており、その中に色とりどりの水まんじゅうが並ぶ(左)ぐい飲みのような小振りな白い陶製の器に入った水まんじゅうを、ひんやりとした水と共にクイっと一飲み。ほのかな甘みが爽やかな余韻を残す。写真手前は淡いピンクのいちご風味(右)

【photo】「いがわ小径」西側の始点には、用水路の上に洗い場が設けられている(左) 用水沿いに延びる小径は、すれ違うのがやっとほどの幅しかない(中)小径の中ほどにある洗い場は大和ハウスのCMで終盤に登場。観光客にとっては鯉にエサを与える絶好のポイントでもある(右)
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 "力水"代わりの水まんじゅうでリフレッシュし、この町で最も水量が豊かな「島谷用水」が流れる水路沿いに整備された散策路「いがわ小径(こみち)」へと向かいました。民家の間を流れる用水沿いの狭い小径には、屋根が架かった3つの洗い場があり、今も利用者が組合を作って洗い場の清掃や管理を行っているそうです。水路には数百匹もの大きな真鯉やアマゴなどの川魚が群れをなしています。鯉に与えるエサが西側入り口に置いてあるので、観光客たちは一袋100円の顆粒状のエサを買い求めては大きく口を開けてエサに群がる鯉たちに歓声を上げるのでした。郡上鮎漁が解禁になると、篭に入れられたおとり鮎の姿もみられるのだといいます。小径の突き当たりでは、暗渠からコンクリート製の樋で吉田川の水を引いて生活用水として使っている様子が見て取れます。そこに近接して設けられた二つの洗い場は、食品や食器の洗浄用soba_heijin.jpgと下着やおむつの洗濯用とに用途が分かれており、後者の排水は用水にではなく、直接川へ流れるよう工夫されているのでした。かように水と共にあるこの地の人々の暮らしぶりは、2006年に制作された大和ハウス工業のTVCM 「共創共生 郡上八幡篇clicca qui」で紹介されました。

【photo】平甚の「もちもちざる蕎麦」(並盛・1300円)

 昼食は混雑が予想される時間帯は避けたほうが得策だろうと「そばの平甚」【Link to Website】へ。そこは多くの観光客が訪れる郡上八幡でも、最も賑わう界隈であろう宮ヶ瀬橋のたもとで、吉田川を眼下に望む絶好の位置にあります。11時を回ったばかりだというのに、でき始めた行列に並ぶこと5分。私は店の看板メニューである二八蕎麦「もちもちざる」を、家族は旬の筍を使った「若竹そば(並盛・1000円)と「とりそば(並盛・1100円)を頂きました。地元岐阜産のほか信州や北海道など国内産そば粉を八割、小麦粉を二割使用した更科系の蕎麦に欠かせないのが、冷たく清らかな水の存在です。わずかに甘めの付け汁で頂くモチモチした独特の食感の蕎麦にコシの強さを与えるのに欠かせないのが、茹で上げた蕎麦をたっぷりの冷水で締めることだとか。

【photo】軒に下がる杉玉ならぬ南天玉が目印の桜間見屋を折れると宗祇水への石畳の参道となる(左) 祠の中から湧き出す水は絹のように滑らか。室町時代の連歌師、飯尾宗祇が庵を結んだ故事にちなんで宗祇水と呼ばれる(右)
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 平甚と目と鼻の先にある昔懐かしいニッキ味の飴「肉桂玉」で知られる1887年(明治20)創業の「桜間見屋(おうまみや)」の角を折れた先の小駄良川沿いに、町随一の名水との誉れ高い湧水「宗祇水」があります。室町時代に形式が完成された連歌の宗匠、飯尾宗祇(1421-1502)は、各地を訪ね歩く中で、歌人として名高い郡上の領主・東常縁(とうのつねより)に古今和歌集の奥義を授かるため、郡上を訪れます。宗祇がおよそ3年の間草庵を構えたのが、この泉のほとりでした。応仁の乱以降、見直しの機運が高まった古典復興の動きの中で、伝統的な美意識を連歌に反映させた宗祇の作風は、konida_gawa.jpg後に松尾芭蕉にも影響を与えています。奉られた祠から音もなく湧き出す清水は、この地に留まった宗祇が愛飲したことから、歌人の名にちなんで「宗祇水」と呼ばれるようになったといいます。3年後の春、京に戻る宗祇は、古今伝授の師・東常縁との別れを惜しみ、この地で「三年ごし 心をつくす思ひ川 春立つ沢に湧き出づるかな」と詠みました。含んだ清水は歌人の明鏡止水な心情を表すかのように実に軟らかくまろやかな味でした。

photo】流れを間近かに清流のせせらぎに身を置くこともできる小駄良川。斜面に張り付くように狭小な敷地に建つ川沿いの人家は、3階建て・4階建ての特徴的な多重構造。裏手には川べりに降りる玉石積みの階段も備えている

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【photo】 旧越前街道沿いにある延命地蔵の右手には小さな水飲み場がある(左) 尾崎町にある水舟は住民の暮らしを支え、暮らしに潤いを与える(右)

 小駄良川に架かる朱塗りの清水橋を渡ると、鬱蒼とした雑木林に覆われた小高い山を取り囲むように旧越前街道沿いに家並みが延びる尾崎町となります。ふたつの川に挟まれた平場に寄り添うように立ち並ぶ家々の間に、清水が引かれた小さな水場を持つ延命地蔵尊と「尾崎の水舟」がひっそりとありました。街中にある水舟の多くが観光用に整備されている一方、こちら6ヶ所の水舟は生活に密着した本来の姿を留めるものです。郡上八幡の水舟は山形県遊佐町のkajimachi_gujyo.jpg湧水「神泉(かみこ)の水」などと同様に段差が設けられ、上段が飲用水、中段が食べ物の冷却用と洗浄用、下段が洗濯用となり、水と共に暮らす人々の知恵を窺い知ることができるのでした。

【photo】二階部分に斜めにせり出した防火壁「卯建」を備えた伝統的な郡上八幡の風情を漂わせる格子窓の屋並みが残る職人街、鍛冶屋町

 清水橋の上流にある洞泉橋を渡って本町を左に折れると、朱色ないしは黒格子の旧家が残る職人町・鍛冶屋町に至ります。隣家と軒を接する町屋造りの家々の二階には、防火のための袖状の白壁「宇立・卯建(うだつ)」が二階部分にせり出しています。こうした古い家並みが見られるもう一つの地区、柳町を経由したのち、濃厚な大豆の風味が味わえる「ざる豆腐」(たれ付450g500円/250g350円)が評判の「郡上豆腐」へ。昼食を済ませていたので、デザート代わりに杏仁豆腐(180円)を買い求め、宮ヶ瀬橋方向へ戻りながら食べましたが、これが美味しかった!! えてしてありがちな薬品っぽさを感じるゼラチン状の食感ではなく、まったりとした上品な甘さは癖になりそう。いっそ店に引き返そうかとも思いましたが、tirol_gujyo.jpg 子どもたちが夏場に勇気を試される吉田川への飛び込みを行うことで知られる新橋付近までその時点で戻っていたため、お替りは泣く泣く諦めたのでした。

 休憩に立ち寄った新町通の珈琲館「チロル」も、先ほどの郡上豆腐と同様、店先に清水が流れ出ています。自家焙煎したコーヒー豆をサイフォンで飲ませてくれるというので、通常の3倍の豆を使い、2/3の量しか抽出しない「ストロング」(450円)を注文しました。深いアロマに包まれたコーヒーが美味しかったのは勿論、何にもましてコップ一杯のひんやりした水の美味しさが際立っていたと言ってはお店に失礼でしょうか。

【photo】清水が流れ出す珈琲館「チロル」の店先(上) チロルの「ストロング」ブレンド(下)

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 「水の町」郡上八幡は、こうしてさまざまに水にまつわる表情を見せてくれました。「水の都」Veneziaヴェネツィアは世界的な観光地として俗化がいかに進もうと、それを補って余りある独特のオリエントの香りや地中海の覇者として君臨した栄華の遺香漂う魅力的な街ですが、奥美濃の水の町もなかなかに魅力的でした。水づくしがお題となったこの日の最終目的地、田植えを控え水を張った水田に散居集落の浮島が出現する奇跡の景観が広がる富山県砺波市へと東海北陸道を引き返す前に立ち寄らなくてはならない場所がありました。郡上市で産声を上げたという「食品サンプル」の製造現場レポートは次回「庄内系 奥美濃路を行く vol.2」でご報告!

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コメント

郡上八幡をたっぷりとご堪能いただいたようで、ありがとうございます。そちらはまだ何かと大変かと思いますが、またぜひ水の町に癒されにお越しください。
食品サンプルもお待ちしていますので~♪

▼ 郡上おどり子様
コメントありがとうございます。
郡上八幡のように清らかな水が豊かな所はいいですね。人の暮らしと密接に水か関わっている郡上市がすっかり気に入りました。
できれば郡上おどりの季節にも訪れてみたいです。

P.S.食品サンプルについて予告ホームラン(?)をしておきながら、途中で挫折しておりました(汗)出来れば年内に必ずや場外ホーマーを放つことをお約束いたしますm(_ _)m

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