あるもの探しの旅

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香り米

目を閉じれば、アラ不思議...

yuza_maruko.jpg【photo】頂きを雲の中に隠した夏の鳥海山。田んぼの浮島のような木立の中に田の神が祀られる典型的な庄内の田園風景。遊佐町丸子にて

 穀倉地帯の庄内で見られる田園風景の特徴のひとつが、海原に浮かぶ孤島のように畦道沿いにぽつんと植えられた松などの木立の中や、道沿いに祀られた祠(ほこら)や地蔵堂の存在です。田の神を祭った祠の大きさには大小ありますが、地蔵堂の多くには、これまた庄内地方でよく目にする寄進者が手作りした色とりどりの細長い円筒形の飾りが下がります。同じコメどころの宮城・新潟はもちろん、山形県内でも村山・最上などの内陸ではあまり目にしない人々の民間信仰の篤さを物語るこうした風景や習俗には、どこか心を和ませるものがあります。

yashiro_sakata.jpg【photo】祠や地蔵堂などに寄進される庄内の下げ飾り。地元の方たちも意外と知らない呼び名をご存知の方は、ぜひご一報を...

 2004年(平成16)1月にNHKスペシャルで放送された「鳥海山~水の恵みに暮らす」では、鳥海山の麓にある遊佐町藤井地区でコメ作りを行う一軒の農家の暮らしが丹念に描かれていました。雪解けと共に山から人里に下りて来る田の神を迎え入れる祠を、人々はコメ作りに欠かせない鳥海山の恵みである水で田畑を潤す水路同様、大切に守ってきました。

 代掻きから田植えに始まるコメ作りを行う間、田の神は祠に留まって人々を見守ります。稲刈りを終えた晩秋、田の神は再び山へと還ってゆきます。鳥海山頂に本宮がある大物忌神社は、五穀豊穣の神です。毎年7月14日には、行政区画上は遊佐町に位置する標高2236mの鳥海山頂・7合目にあたる同町御浜・同吹浦の西浜・酒田市の宮海・日本海に浮かぶ飛島の五箇所で同時に御神火を焚き、火の見え方によって農作物の作柄を占う「御浜出(おはまいで)」(通称:火合わせ)の神事が行われます。

Departures.jpg【photo】映画「おくりびと」のワンシーン。ロケが行われた遊佐町の月光川河川公園の堤防には、今も椅子が置かれている

 オスカーを受賞した映画「おくりびと」では、本木 雅弘演じる主人公が鳥海山を背景にチェロを奏でる場面が登場します。遊佐町を流れる月光川の河川敷は、ロケ地として一躍有名になり、堤防にぽつんと置かれた椅子に腰掛けて記念撮影をする観光客が今もそこを訪れています。ロケ地からすぐ近くの小原田地区の稲作農家に生まれた伊藤 大介さん(29)は、主力のササニシキ・ひとめぼれに加え、大正期に地元遊佐の高瀬地区で常田 彦吉が育種した餅米「彦太郎糯(もち)」と、長粒種「プリンスサリー」などの香り米、リゾットに適した大粒種「オオチカラ」、赤・黒の古代米、白ナス「遊佐のお嬢さん」、ソース加工用に適したイタリア種のトマト「サンマルツァーノ」などの、ちょっと珍しい農作物作りに挑戦する意欲的な若手農業者です。daisuke_ito.jpg伊藤さんは、3月に庄内町で行われた「スローフード全国大会【Link to back number】」のパネルディスカッションで、パネリストとして登場した斎藤 武さんらと有限責任事業組合「ままくぅ」【Link to website】を2004年に結成します。濃厚な餅の香りと耐冷性に優れるものの、1.5mまでも丈が伸びて倒伏しやすいため、作付けが途絶えて久しかった郷土在来のコメ・彦太郎糯の復活に取り組んでいます。メダカやタニシのいる田んぼで作られる彦太郎糯の栽培については、コチラをチェック願います。

【photo】鳥海山(背景の山)を間近かに仰ぐ水田で、特色ある農産物に意欲的にチャレンジしている伊藤大介さん

 R7沿いの道の駅「鳥海 ふらっと」には、地元の産直グループ「ひまわりの会」に加盟する生産者60名の手掛ける農産物と加工品が並びます。そこに伊藤さんの農産物が置いてあります。粒が真っ黒な古代米と共に店頭にあったのが、除草剤の使用を8割控え、化学肥料を用いずに育てた特別栽培米「香米」でした。商品のパッケージには「白米に一割混ぜて炊き上げると、香り高いご飯になります」と書いてあります。以前に彼が手掛ける絶品のパプリカを目当てに畑を訪問した折、数個のバケツで栽培中の米に目をとめた私に「今、ちょっとイタズラしてまして...」と悪戯っぽく笑った彼の顔が浮かびました。

kaorimai_daisuke.jpg【photo】伊藤さんの特別栽培米「香米」(300g入 / 税込300円)

 彼のコメなら面白そうだなと思い、一袋買い求めました。コメ自体は外見上の特徴はこれといってない中粒種米で、香り米とはいうものの、炊く前の生米の状態では、普通の精米と香りに変わりはありません。ところが、我が家の定番・鶴岡市渡前の井上農場産の「はえぬき」や「ひとめぼれ」に混ぜて炊き上げたご飯からは、明らかに特徴的な香ばしい香りが漂ってきます。それは、前回取り上げた鶴岡特産の「だだちゃ豆」を一緒に炊き込んだ「だだちゃ豆ご飯」のような良い香りだったのです。

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【photo】わかりやすいようハート型にしてみた(笑)井上農場産「ひとめぼれ」(写真右)と外見上は何ら変わらない伊藤さんの「香米」(写真左)

 香り米の薫香は、茹でた枝豆や小豆、あるいはポップコーンなどに例えられることがあります。ご飯を炊いた水は、香り米を買った日に立ち寄った遊佐町女鹿に湧く鳥海山の名水「神泉の水」。香り米のベースは、美味しさと安全性へのこだわりから月山のブナ原生林でたっぷりと養分を蓄えた梵字川水系の水を引き、抗生物質を与えない発酵鶏糞で土作りをした田んぼで育つ食味コンテストで数々の受賞歴に輝く井上農場の特別栽培米。ここまで役者が揃えば、向かうところ敵無しの美味しさは約束されたようなもの。無類の旨さを誇るだだちゃ豆を炊き込んだだだちゃ豆ご飯の香りに昇華しても何ら不思議はありません。私が目を閉じたまま、このご飯を食卓に出されたなら、間違いなくだだちゃ豆ご飯だと思うことでしょう。

riso_profumo.jpg【photo】香米を一割ほど混ぜて炊いたご飯からは、だだちゃ豆ご飯の良い香りがふんわりと...

 伊藤さんの香米が生み出すマジックをとことん楽しみたい方は、前回ご紹介したカニ汁の芳香に変化するだだちゃ豆入り味噌汁と一緒に召し上がってみてはいかがでしょう? エビやカニなど甲殻類とだだちゃ豆が良く合うことは、かつてアル・ケッチァーノのリゾットなどの創作料理で体験済みです。でも、白米なのにだだちゃ豆ご飯、だだちゃ豆入りなのにカニ汁...。 ?(゚_。)?
こりゃ、ややこしいったらありゃしませんね。

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道の駅 鳥海 ふらっと
住 所: 山形県飽海郡遊佐町大字菅里字菅野308-1
Phone: 0234-71-7222 (元旦以外無休・P有り)
URL: http://www2.ocn.ne.jp/~furatto/index.html

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コメント

うちの香米を紹介していただき、ありがとうございます。
あの後、神社の飾りについていろんな人に聞いてみましたが、
みんな存在は知っていても、名前はわからないと言う結果でした。
ここは当事者(?)の宮司さんにでも聞くしかないですかねぇ。

▼itou様
 コメントを頂きありがとうございます。また、私の質問に関してリサーチまでしていただいたとの事、御礼申し上げます。

 荘内神社の宮司さんにも例の飾りの名前を尋ねてみましたが、存在はご存知でも、いざ名前となると判らないとのこと。ある程度格式の高い神社よりは、村の鎮守などに寄進される場合が多いようですね、とも。いでは文化記念館でもお解かりの方はいらっしゃいませんでした。

 藤島在住の博識な知人は、「田の神よりは、お地蔵様に供える場合が多いので、子どもを間引きをしていた時代の供養の意味や、健やかに我が子が育つようにという願いを込めた民間信仰に由来するのでは?」とのことで、その方のお母様は飾りの上に小さな鈴を付けることから「すず」と呼び習わしているとのことでした。うーむ、謎は深まるばかり…。

そこでWANTEDです。
 どなたか庄内在住の方で、地蔵堂の写真に写っている色とりどりな円筒形の下げ飾りの名前や意味合いをご存知の方はいらっしゃいませんか?名前が判らずに悶々としています...(+_+?)

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