あるもの探しの旅

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2009/09/30

奇跡のリンゴ part 1

リンゴ農家・木村 秋則さんの金言
「大事なものは見えない 土も同じだ」

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 化学肥料や農薬に依存しない自然農法で栽培した野菜を我が家に届けてもらっている宮城県村田町の「ボンディファーム」の鹿股国弘さんと、その野菜を使った料理を店で提供する吉田克則シェフが仙台市青葉区で営むイタリアン「Enoteca il circolo エノテカ・イル・チルコロ」Link to backnumberの共催による「畑の真ん中で愛を叫びつつ、バーベキューパーティ」が8月上旬にボンディファームの畑で催されました。

 ボンディファームの顧客を対象とした収穫体験と作業後のバーベキューには、昨年も家族で参加していますLink to backnumber。この催しを主催したご縁の浅からぬ鹿股・吉田のご両人から、私はある特命事項を計画段階から託されていました。それは催しのキモとなる青森県弘前市で自然農法でリンゴを栽培する木村秋則さん(59)をお招きすることでした。昨年5月、木村さんはご不在でしたが、吉田シェフを一度木村さんの畑にご案内していたのです。

【photo】木村さんに頂いたサイン

 2006年(平成18)12月にNHKで放映された「プロフェッショナル-仕事の流儀」で紹介され、翌年1月に初の著作「自然栽培ひとすじに」(創森社刊)で無施肥・無農薬による自然農法に至る足取りと実践を語り、2008年(平成20)7月に、NHKの番組制作班による監修のもとノンフィクションライター石川 拓治氏が著した「奇跡のリンゴ―『絶対不可能』を覆した農家・木村秋則の記録」(幻冬舎刊)はベストセラーとなりました。今回の副題「大事なものは見えない 土も同じだ」はバーベキューパーティに持参した石川氏の著書に木村さんから頂いた直筆のサインに記してあった言葉です。

zuppa_yamazaki-akinori.jpg【photo】
木村 秋則さん(写真左)のリンゴにいち早く注目した地元弘前のフランス料理店「レストラン山崎」の山崎 隆シェフ(写真右)。冷製仕立てのクリームスープは店の看板メニュー


 メディアを通して紹介された現在に至る苦難の道のりと、飾らないお人柄から、にわかに時の人となった勢いは一向に衰えていません。所詮は自然の一部に過ぎない人間は、自然の摂理に逆らうことができないのだから、謙虚であるべきと説いた「リンゴが教えてくれたこと」(日本経済新聞出版社刊)と、UFOに拉致された驚愕の体験などをまとめた「すべては宇宙の采配」(東邦出版刊)を立て続けに上梓。畑の見学や自然農法についての講演依頼が後を絶たず、最近では国内各地は言うに及ばず、韓国やドイツなど海外からも農業指導の依頼が殺到、本業の畑仕事がちゃんと出来ているのかな、と心配になるほど多忙な毎日を送っておられます。

succo_melo.jpg【photo】古い洋館とフランス料理店が多い弘前を代表するフランス料理店「レストラン山崎」にて。木村さんのリンゴを使った冷製スープは夏場はなくなるものの、ジュース(写真中央)なら季節を問わず味わうことができる

 そもそも私が初めて木村さんを知ったのは、たまたま見ていたNHKの番組(プロフェッショナル~)を通してです。訥々(とつとつ)とした津軽弁でキャスターの脳科学者・茂木健一郎と住吉美紀アナに笑顔で語りかけるその人は、日本で初めて本格的にリンゴを無農薬・無施肥栽培することに成功したという弘前の農家でした。改めて確認した新聞のTV欄には「りんごは愛で育てる」という番組のタイトルが載っていました。

 温暖で多湿な日本では、病害虫に犯されやすい果樹栽培には、さまざまな農薬が使用されます。ことにバラ科のリンゴには一般的に幾度も散布が行われます。効能が異なる農薬の種類ごとに農協が散布時期を定めた防除暦では、年間で約10回の農薬散布が推奨されます。野生の原種をもとに近代になって品種開発された果樹は、草取りに明け暮れていた農家の労力を軽減する目的で開発された除草剤、病害虫の被害を防ぐための殺菌剤や殺虫剤、落果防止のためのホルモン剤などを使用することを前提にしていると言っても過言ではないかもしれません。果樹ではありませんが、私の自宅の庭で育つバラも、春先から夏にかけて、さまざまな病害虫に襲われるゆえ、リンゴを無農薬で育てることの困難さは容易に察しがつきました。それゆえ番組を見て「さすがはリンゴの里、津軽には並外れた生産者がいたもんだ」と感心することしきりでした。

akinori@azienda.jpg【photo】岩木山を背景とする南向きの傾斜地にある木村さんのリンゴ畑には、木村さんが「樹の実」と呼ぶリンゴにとって、自然にあるがままの理想的な生育環境が整っている。9年間の艱難辛苦の果てに理想とする自然栽培に至る軌跡について語る木村さん。笑いあり涙ありの話は2時間に及んだが、時が経つのを忘れた


 そんな私が弘前に木村さんの畑を初めて訪ねたのは、番組が放映されて8ヵ月後の2007年(平成19)8月のこと。その年の4月に弘前のフレンチ「レストラン山崎」の山崎 隆シェフがオリジナルレシピで作られた木村さんのリンゴを使用した冷製スープを頂いたのがきっかけです。かつては絶対不可能といわれた自然農法で栽培されたリンゴの皮と種を除いてスライスし、弱火でコトコト煮込んで作ったという冷製クリームスープは、TV番組で得た若干の予備知識も手伝ってか、生き生きとしたリンゴの風味に、生クリームのまろやかさとカルヴァドスの柔らかな香りが加わり、私を感動させて止みませんでした。人を感動させる料理との出逢いって、そう頻繁にあるものじゃありませんよね。"百聞は一にしかず"と言うではありませんか(?)。ここは是非ともリンゴを作った木村さんにお会いしたいと思ったのです。

fuji_akinori.jpg【photo】初秋の青空に一層映える"奇跡のリンゴ"。「自分は樹が実を結ぶのをお手伝いしているだけ」と木村さんご自身は語る

 8月にレストラン山崎を訪れた時は、リンゴの収穫前であったため、スープはありませんでしたが、木村さんのリンゴで作ったジュースは頂くことができました。食後に席にご挨拶にお見えになった山崎 隆シェフに、木村さんとの橋渡しをお願いしました。地元の素晴らしい素材を取り入れた弘前ならではのフランス料理を心掛けるという山崎シェフは、快く木村さんの携帯番号と畑の所在地の略図を書いたメモを渡して下さいました。事前にご自身が木村さんに電話を入れておくので、畑の場所がもし判らなければ、木村さんに直接電話してみてとも。ただ「携帯に電話しても、ほとんど出ないんだよね」と苦笑されました。その理由は、三回目の弘前訪問の折にご自宅に隣接した作業場にお邪魔して判明します。ご自宅の母屋脇にある作業場でリンゴの箱詰めと発送作業に追われる木村さんご夫妻の傍らには、注文を受けるFAX機能付き電話があります。お二人とも全く電話を取ろうとしないため、ひっきりなしにかかってくる電話は決して鳴り止むことがないのでした(笑)。

akinori_okusama.jpg 【photo】作業場に鳴り響く電話のコール音など意に介さず、仲睦まじく箱詰め作業にあたる木村ご夫妻。美千子さん(左)、秋則さん(右)

 弘前市中心部から鯵ヶ沢街道を岩木山の麓へと向かうと、次第にリンゴの樹が目立ってきます。通称アップルロードを右折し、目印とされた神社はすぐに判ったものの、周囲に広がるリンゴ畑のどこが木村さんものか皆目見当がつきません。神社に戻って木村さんの携帯をコールすると、山崎シェフの懸念が嘘のようにすぐに電話に出た大きな声の主は紛れもなく番組で耳にした木村さんその人でした。間もなく迎えに来て頂いた木村さんと簡単にご挨拶を済ませ、軽トラックで先導されて着いたリンゴ畑は、周囲の畑とは明らかに異質なものでした。下草がきれいに刈り込まれた他の畑とは対照的に、木村さんのリンゴ畑には一面の雑草が生い茂っています。その畑に腰をおろして45分弱に編集されたTV番組では語られることのなかったご自身の来歴やリンゴ畑で起きている奇跡に関するお話を2時間に渡ってじっくりと伺いました。

apple_road.jpg【photo】木村さんのリンゴ畑(下写真)は旺盛な雑草に覆われる一方、慣行栽培の畑(上写真)は丁寧に下草が刈り込まれ違いは歴然。自然の摂理通りに秋に紅葉する自分の畑のリンゴとは違い、農薬を散布したリンゴは雪が降っても紅葉することがなく葉が青いままという。そんなリンゴを不気味だと木村さんは言うakinori_hatake.jpg

 出版された3冊の本すべてで紹介されているので、ここでは詳しく繰り返しませんが、1978年(昭和53)、28歳になった木村さんが完全無農薬でリンゴを育てようとしたのは、当時は人体への悪影響について論議されることすらほとんどなかった農薬を散布するたびにしばらく寝込んでしまうほど化学物質に対して過敏な体質であった奥様、美千子さんのためでした。若い頃から大好きだった車のエンジン改造に関する本を探して入った書店でひょんな偶然から手にした福岡正信の著作「自然農法」に感銘を受けた木村さんが慣行栽培をやめた結果、病害虫にすっかり犯されたリンゴの樹は軒並み落葉し、秋に狂い咲きの花を付けた樹は翌年以降結実することをやめてしまいます。

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【photo】色付き始めたリンゴを慈しむように見つめる木村さんのまなざしはあくまでも優しげだ

 リンゴ農家としての収入が完全に途絶えても、なお無農薬栽培を諦めずに花すら咲かない病害虫の猛威に晒されたリンゴの樹と向き合った9年間の苦闘は筆舌に語り尽くせないものでした。当初800本あったリンゴの樹は葉を落として活力を失ってゆく8年の間に半数近くが枯れ果てたといいます。私が初めて伺った当時は幻冬舎から奇跡のリンゴが出版される前でしたから、40代にして木村さんが歯をほとんど失った理由は全くの初耳。日がな一日リンゴの樹の下で横になってシャクトリムシが葉を食べる様子を凝視し、害虫の生態を知るなどの徹底した自然観察や、酢やワサビなど思いつく限りの効果がありそうな食品の希釈液の散布をもってして、いかに手を尽くしても無農薬栽培法の答えを見出せなかったという木村さんの苦労話に引き込まれてゆきました。

 津軽弁で破産者を意味する「竈消し(かまどけし)」。婿入りした木村さんにとってはさぞ辛かったであろう不名誉な陰口を叩かれ、道で会っても挨拶すらされなくなり、家族を極貧に追い込んだという自責の念に駆られた木村さんは、無農薬栽培を試みて6年目の満月の夏の夜、もはや万策尽きたと死を決意します。畑の物置がわりに使われていた軽ワゴン車(昨年撤去された)を指差し、「ここから取り出したロープを手に、月明かりの中を山に入って首を吊って死のうとしたんだよ」と語りました。死に場所を求めてさまよい歩いた山中で、木村さんは一本のリンゴの樹を目にします。農薬や肥料を与えないのに青々とした葉を茂らせているように映ったその樹は、リンゴではなくドングリなのでした。まさに命を絶とうという極限状態で、その根元を支えていた柔らかく湿気を帯びた山の土にこそ、リンゴを自然栽培で育てる答えがあると直感したという木村さんの話を伺い、人間が持って生まれた宿命や天命の存在を信じずにはいられませんでした。

akinori_zassou.jpg【photo】大事なものは見えない。土も同じ

 土の重要さに気付いて以降、雑草を刈らなくなった木村さんの畑では多種多様な微生物・昆虫・ミミズ・野ネズミなどが生息する生態系が形作られてゆきます。マメ科植物の窒素固定作用や、耕土層の下にある岩盤層のミネラルをリンゴの根が吸収しやすいよう、雑草や地中深くに根を張る作物を活用し、本来の土の力を取り戻していきます。一匹ずつ手で駆除していたハマキムシなどの害虫の発生を抑えるため、バケツを活用した蛾の殺虫法やハチなどの益虫による駆除を取り入れるうちに、リンゴの自然栽培に理想的な局所環境を次第に作り出してゆきます。

 1988年(昭和63)、一本のリンゴの樹に7輪の可憐な花が咲き、秋に2つの飛び切り甘いリンゴが実ります(その樹の根は20m以上も地中で伸びていることが後に判明する)。翌春、木村さんの畑一面にリンゴが白い花を咲かせているのを発見した隣の畑の持ち主が、わざわざ木村さんに知らせてくれたのだそう。はやる気持ちを抑えて畑にバイクで駆けつけた木村さんは、9年ぶりに目にする光景を前に、奥様と手を取り合いながら涙が止まらなかったそうです。その時の感激を昨日のことのように語る木村さんの言葉に、私も我が事のように熱いものがこみ上げてくるのでした。

2008.5azienda-akinori.jpg【photo】岩木山の雪が解けやらぬ昨年5月中旬、エノテカ・イル・チルコロの吉田シェフご一家をお連れした木村さんの畑には、北国の遅い春の訪れを祝うかのように、白いリンゴの花々が一斉に咲いていた。21年前の春、木村さんご夫妻はどのような思いで豊かな秋の実りを約束するこの光景を見つめたのだろう

 昨年12月に東北6県のTV朝日系列の放送局で放送されたTV番組「るくなす」に登場した木村さんは、24年ぶりに山中で再会を果たしたドングリの樹に手をかけ、何度も「ありがとう、ありがとう」と万感の思いを込めて語りかけていました。自らの命を救い、答えに導いてくれたドングリに語りかける木村さんの言葉には、いささかの誇張や作為も感じられませんでした。木村さんは「自分はバカだから、リンゴが可愛そうに思って実を結んでくれたんだ」と笑います。人生の奈落をかつて経験した木村さんは、本当にカラカラとよく笑う方です。それでいてまっすぐな生き方を貫く津軽の「じょっぱり」を地でゆくような木村さんは、いかなる困難な状況にあっても己が信念を曲げませんでした。木村さんの芯が通った生き方は、閉塞感にとらわれがちな今の時代に生きる人々の強い共感を得ています。

 恐らく日本一有名なリンゴ農家となった現在では、残念ながら極めて入手が難しいのですが、大地の力を存分に取り込んで実を結ぶ木村さんのリンゴは、お人柄そのままの邪気のない味がします。akinori_smile.jpg放置しても腐敗しないというそのリンゴ果汁100%からなるジュースなら、仙台でも入手できる店があります。生涯忘れることがないであろう時を過ごした木村さんの畑で果たした出会いから、あまり時間を経過しないうちに、木村さんについて書こうと実は思っていました。しかし、その生きざまを直接伺うに及んで、若輩の私が軽々に木村さんについて語ることを躊躇するようになり、時間ばかりが無為に経過してしまいました。今回こうして、2年前の体験をまとめることができ、少し肩の荷が下りた思いです。

 【photo】畑からの去り際、カメラを向けると律儀に帽子を脱いだ上で満面の笑みで見送って下さった木村秋則さん

 木村さん人気(...言うまでもなく私のコトではない)で昨年に比べて倍以上の130人あまりが参集した先月のバーベキューパーティについては、奇跡のリンゴ part2 リンゴ農家・木村 秋則さんの金言 「奥歯見せて笑える一生」にて。

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2009/09/25

私がご案内します

10月24日・25日は聖地・庄内巡礼

かほピョンくらぶ「通旅」でご一緒しましょう

haguro_settembre2009.jpg【photo】豊かな実りに彩られる秋の庄内平野。稲穂が黄金色に染まる鶴岡市羽黒町戸野付近から鳥海山を望む

 昨日の河北新報朝刊9面「月刊かほピョンくらぶ」紙上と、かほピョンくらぶ会員様にはメルマガでご紹介しましたが、10月24日(土)・25日(日)の両日、仙台発着の会員向け「食の都・庄内 豊かな実りと癒しのバスツアー」が実施されます。「会員しか参加できないの~? 」との声が聞こえてきそうですが、東北6県在住の方ならば入会金・年会費無料でさまざまな特典が受けられるかほピョンくらぶ会員には、簡単にご入会頂けます。ご入会はコチラから

 庄内系を襲名した私がプロデュースした上は、当日のご案内役も私が務める今回のツアー。すでに会員となられた方にはメルマガで優先的にご案内しています。ツアーの申し込みが先か、入会申し込みが先か悩ましいところですが、まずは食の都庄内が誇る秋の実りと癒しに満ちた内容テンコ盛りツアーに参加申し込みを頂き、未登録の方は併せて会員への登録もお忘れなく。ツアーを運営する東北海外旅行の担当者からの報告では、初日の告知だけで、結構な数のお申し込みを頂いたようです。定員まであとわずか。善は急げっ!!

 今回の「通旅」は、通り一遍の一泊旅行では決して知ることが出来ない食の都庄内の奥深い魅力に触れて頂ける内容だと自負しています。行程は「山形 庄内 秋の"実り"味わおう」という大見出しで始まる9月24日の紙面、およびメルマガ添付のパンフレット【Link to pdf file】でご確認頂けますので、今一度熟読のほどお願いします。とはいえ紙面には限りがあり、今回のツアーがいかなるものか、十分に内容をご紹介できないのも事実。

 今回のツアーで訪れる先については、昨年の同じ季節に癒しを求めて私が秋の濃密な一日を過ごした内容をまとめた「ごっつぉだの もっけだの」シリーズ4部作であらかたご紹介しています。今回のバスツアーで立ち寄る先の飛びっきりなストーリー満載なプロフィールは、下記の「あるもん探しの旅」バックナンバーで今一度ご確認ください。


10月24日(土)の主な訪問先
◆減農薬栽培された大玉ブドウ狩りをお楽しみいただく予定の「佐久間ファーム」はコチラ(※「今年はブドウの動きが早いため、10月中旬過ぎに残っている品種数には限りがありそう」という佐久間さんからの最新情報が寄せられていますが、さて?)
◆庄内の農村に伝わる家庭料理に洗練された感覚を盛り込み、「家庭画報」や「ソトコト」など数々の雑誌で紹介された農家レストラン「知憩軒」はコチラ
◆自社敷地内に湧出する無菌超軟水である仕込み水を「月山深層天然波動水」として商品化するほどの優れた水に恵まれた「竹の露酒造」。亀ノ尾や出羽の里など地元で生まれたコメを蔵人自らが栽培する"地の酒"にこだわる。透明感のある芳醇端麗の飲み口と淡雪のようなキレが印象的な酒「白露垂珠」が生まれる現場を見学・試飲します。まずはコチラをチェック。
◆藤沢周平のペンネームの由来となった鶴岡市藤沢地区の山中で作られる幻の在来種「藤沢カブ」の種を受け継いできた後藤勝利さん・清子さんご夫妻についてはコチラコチラ
◆庄内地域では草分けとなる1977年(昭和52)から取り組んでいる環境配慮型農業は、今や資源低投入型へとバージョンアップ。自家栽培した無農薬栽培の在来野菜「民田ナス」などを、国内でも希少な「和辛子」を使って添加物を一切使用せずに仕込む漬物について、相馬一廣さんの大局的な見地に立った解説のもとで見学する「月山パイロットファーム」はコチラ
◆山口瞳や開高健らが「日本一のフランス料理店」と絶賛したル・ポットフー伝説を築いた功労者・太田政宏シェフが厨房を預かるフランス風郷土料理「レストラン欅」はコチラコチラ
◇レストラン欅のディナー後、20名限定のオプショナルツアーとして、徒歩2分の至近距離にある喫茶バー「ケルン」に移動します。日本が生んだ世界のスタンダードカクテル「雪国」を考案した82歳の現役バーテンダー井山計一さんが、1958年(昭和33)に寿屋(現サントリー)主催のホームカクテルコンテストに出品、見事グランプリを獲得した名作。誕生50周年を迎えた雪国(一杯800円)を、井山さんのお話と共に味わいます。

10月25日(日)の主な訪問先
◆鮭の遡上シーズン真っ盛りの採卵作業を富樫和雄組合長の解説のもと見学する「箕輪鮭孵化場」がある鳥海山の湧水だけでできた神秘の川「牛渡川」はコチラ
◆最上川交易によって上方よりもたらされたとされる在来野菜「平田赤葱」生産組合長、後藤 博さんはコチラ
◆伝統的な水苗代で在来野菜「ズイキ芋」を手掛ける植酸農法のパイオニア坪池兵一さんはコチラ
◆ササニシキ・ひとめぼれ・コシヒカリなど近代日本が生んだ優良米のルーツで、近年では酒米として注目されるコメ「亀ノ尾」。「亀ノ尾の里資料館」や「亀ノ尾発祥の地」を訪れて知る亀ノ尾を創選した阿部 亀治に関する物語はコチラ
◆アル・ケッチァーノご用達で各メディアに登場する上級編な産直「あねちゃの店」はコチラ

 「通旅」という名に恥じず、当ツアーで訪れる一般的な観光地は、先日TBS系列でオンエアされた映画「おくりびと」のロケ地となった月光川沿いの堤防を車窓から眺めるほかは、杉並木の中を徒歩で参詣する国宝の「羽黒山五重塔」と、最後のお買い物タイムに立ち寄る「庄内観光物産館」ぐらいです(笑)。生半可ではない庄内通を自認する私がセレクトした訪問先のうち、作り手の心が込もった食事を頂ける「知憩軒」や「レストラン欅」には、今回のツアーで訪問する藤沢カブや平田赤葱・ズイキ芋などの在来野菜をメニューに取り入れてもらうようお願いしてあります。これは生産者とのふれあいを通して、美味しい食事の背景もしっかりと皆さんに知って頂きたいという私の思いゆえのこと。お引き合わせする生産者は皆さん魅力的な方たちばかりです。

 当バスツアーでご参加頂く皆様に、豊饒の地・食の都 庄内の真髄に触れて頂き、新たな食の地平とのご縁が開けますよう、腕によりをかけてご案内致します。

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食の都・庄内 豊かな実りと癒しのバスツアー
旅行代金: おひとり19,800 円(税込)
出 発 地: 仙台駅西口 10月24日(土)7:30出発
宿  泊: ホテルイン酒田(一名一室)
添 乗 員: 同行します
日  程: 平成21年10月24日(土)~25日(日)
食  事: 24日/ 昼・夕  25日/ 朝・昼
募集人員: 先着30名様

▼当バスツアーでは、生産者が笑顔で迎えてくれる藤沢カブ・平田赤葱などの畑を徒歩で訪問します。運動しやすい靴でご参加下さい。

▼お申し込みは
 ■ 東北海外旅行 TEL 022-227-6106 へ
 ■ 旅行企画 かほピョンくらぶ

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2009/09/06

象潟の岩ガキ

旨さに参りましたっ m( _ _ )m
 @道の駅象潟「ねむの丘」直売所

 滋養強壮効果が高い栄養素が豊富で、まったりとしたその食感から「海のミルク」ともいわれる日本海の岩ガキ。そろそろ産卵期に入るため、最も水揚げが多い秋田県象潟(きさかた)周辺における今年の漁期は8月いっぱいで終了しました。そもそも食べ物には最も美味しい""があるからこそ、有り難みが増すのであって、年中同じものばかりでは季節感などあろうはずもなく、味気ない食生活になってしまいます。加温のために化石燃料を消費したり、海外から輸入するなど生産と輸送に余計なコストをかけてまで一年中同じものを食べようというのは、倣岸な発想だと思うのですが、いかがでしょう。

iwagaki_il_che.jpg【photo】 私がこれまで食べてきた鶴岡「アル・ケッチァーノ」の岩ガキ料理の中で最も美味しかったのは、今回象潟を訪れたちょうど1年前の2008年8月22日夜に奥田シェフが「イル・ケッチァーノ」を貸切のマンツーマンで作ってくれたこの温製岩ガキ。同店の人気メニュー「岩ガキの鳥海モロヘイヤのケッカソース」が、生の岩ガキを使用するのに対し、こちらは甘さがとろける絶妙な火加減で吹浦産の岩ガキが調理されていた。隠し味程度にほんのかすかに香る控えめなレモンとエシャロット、岩ガキの旨味が渾然一体となって調和するのは、まろやかなピュアオリーブオイルがつなぎの役割を果たすゆえ。シンプルなれどさすがのセンスが光る一品。Perfetto!!(ペルフェット!!=完璧)

 私が庄内系にメタモルフォーゼした2003年(平成15)の夏がそうであったように、太平洋高気圧よりオホーツク海高気圧が優勢な場合、北東から吹き付ける冷たい海風「やませ」の影響で、東北の太平洋側はすっきりしない天候の夏となります。今年も気象庁は東北の梅雨明けを特定しないまま9月を迎えてしまいました。そんな年でも東北を南北に貫く奥羽山脈が、季節風を遮って天候に顕著な違いをもたらすため、私のホームグラウンドである美味の宝庫・庄内地方を始めとする日本海側では、夏の陽射しを浴びることができる確率がぐっと高くなります。

nalanda_tandole.jpg【photo】酒田市あきほ町のインド料理店「ナーランダ」のタンドーリチキンセット。スープ・サラダ・仙台時代と変わらぬGANESHの「新茶の紅茶」を使用したアッサムティー(チャイ)などのソフトドリンクがセットで1,800円。この日の組み合わせはキーマカレー。タンドーリチキンまたはシシカバブの肉料理とカレー・ミニサラダとのセットは1,050円

 夏らしい夏を求めて訪れる庄内浜の夏の味覚といえば、何をおいても岩ガキを挙げなくてはなりません。南から鼠ヶ関・由良・吹浦と名だたる産地があります。なかでも鳥海山の伏流水が海中に湧き出してくる吹浦産の岩ガキは、象潟と並んで味には定評があります。マガキのヨード香が苦手ゆえ、生ガキを食べない私でも、庄内浜で揚がる天然物の岩ガキは全然オッケーどころか、大の好物。鳥海山の伏流水は養分が豊富で、そこに集まるプランクトンを餌に水温が低い汽水帯で5年以上、時には10年をかけてじっくりと育ったカキが水揚げされます。分厚く大振りな殻に入った身には海の旨味がたっぷりと詰まっています。マガキにはない濃厚な甘さは、岩ガキならではのもの。吹浦産の岩ガキがどうして美味しいかは、昨年6月に「プリップリでとろける吹浦の岩ガキ」【Link to back number】で触れています。

nalanda_maharaja.jpg【photo】ナーランダの看板メニュー「マハラジャカレー」。金管楽器のように突き抜ける鋭角的な辛さではなく、弦楽器や木管楽器なども加わったフルオーケストラの響きのように複雑で奥行きのある辛味に、まろやかな酸味も加わって見事な調和と厚みが生まれる。ライス付800円・ナーン付900円。要予約にてカレー(5人前)のテイクアウトも可

 象潟の温水路を訪れた8月22日(土)のこと。昼食は酒田市あきほ町のインド料理店「ナーランダ」でタンドーリチキンとキーマカレーのセットを頂きました。まだ時代が昭和だった頃、仙台市内の小松島に知る人ぞ知るインドカレーの名店ナーランダはありました。仙台で本格インド料理を提供する草分けであった1980年(昭和55)にオープンしたその店は、平成の世になり私が転勤で東京で暮らした6年の間に店を畳んでいたのです。消息が分からぬまま数年が過ぎ、オーナーの高橋ご夫妻と、桂小金治も思わずもらい泣きしそうな【注】 涙の再会を酒田で果たしたのが2003年の夏。じんわりとした辛味にもまして誠実なご主人の人柄が滲み出た旨味の勝った辛口のマハラジャカレーは、高橋オーナーが仙台時代からこだわりを持って作り続けている3日間じっくりと煮込んだ変わらぬ味が魅力です。店に立つお母さんの背中で眠っていた息子さんも今や高校生。たまに店の手伝いをしており、時の流れを感じさせます。私のように往時の味を懐かしみ仙台から足を運ぶファンも少なくないそうです。

tsuchida_kisakata.jpg【photo】道の駅象潟「ねむの丘」の直売コーナーにある2軒の鮮魚店のひとつ「土田水産」の店頭に並ぶ象潟産天然岩ガキ。捕獲後時間の経過と共に薄れてゆく海の塩味を生食で顕著に感じるのは朝採りゆえの新鮮さの証。一個600円(特大)から350円までと大きさによって値段が異なる

 この日、今シーズン最後となるであろう岩ガキを食べようと心に決めていました。当初は吹浦の道の駅 鳥海「ふらっと」と、道の駅象潟「ねむの丘」で岩ガキのハシゴをするつもりだったのですが、腹持ちの良いカレーセットとナーンでお腹は膨れたまま、一向に食欲は戻りません。そのため手前の吹浦はスルーして、にかほ市象潟へと直行しました。直売所には、佐々木鮮魚店と土田水産が軒を並べており、「今すぐむいて生で食べられます」と書かれた土田水産の店頭に並ぶ大きな殻付きの岩ガキを目にした途端、私の胃袋は蠕動(ぜんどう)運動を始めました。いわゆる別腹を確保しようという食いしん坊共通の生体反応ですね(^ー^)。その卓上には、道の駅象潟オリジナルのyuzuponz.jpg「ゆずぽんず」が置いてあります。土田水産会長の土田 吉樹さんによれば、当初はレモンを添えて岩ガキを出していた土田水産でも、柚子とローヤルゼリー・ハチミツが入った「ゆずぽんず」が岩ガキによく合うと好評なことから、近年ではゆずぽんずに切り替えたそうです。

【photo】岩ガキとの相性を考慮して製品化された道の駅象潟オリジナル「ゆずぽんず」(500mℓ入 / 577円・税込)。物産コーナーで購入可

 道の駅象潟に地物の岩ガキが登場するのは6月初旬から。鳥海山の伏流水が海中に湧出する場所が多い上、付近に生活排水が流れ込むような川が無いことから、とりわけ綺麗な海水に恵まれた小砂川(こさがわ)産が先陣を切ります。7月には月末まで漁が行われる小砂川と月初から漁が始まる象潟産が共に店頭に並びます。甘味が強く、地元でも時に人気が高い小砂川は、磯場近くの汽水帯で漁が行われます。かたや象潟では、比較的沖合いの水深7m~10mほどの海域で潜水漁が8月末まで行われます。そのため、ともに朝採りで店頭に並ぶ小砂川と象潟では、食べた時に感じる塩味や甘さの濃淡に違いが出ます。

iwagaki_kisakata.jpg【photo】象潟産天然岩ガキ。ふっくらとした身の中はさながらとろける生クリームのよう・・・。あぁ、来年の漁期が待ち遠しい

 象潟で代々鮮魚店を営む土田会長の説明によると、小砂川産の岩ガキは伏流水の影響で水温が低く、成長のスピードが遅いものの、豊富なプランクトンをたっぷりと採り込みながら大きくなってゆくといいます。小砂川産の岩ガキは、主に汽水帯に棲息するため、塩気はほとんど感じません。この日頂いた象潟沖の岩ガキは小砂川と比べれば伏流水の湧出口は少ないために甘味と同時に塩味を感じました。それでも海水がきれいなため、雑味の無い岩ガキ本来の味が楽しめるとのこと。確かにそのクリーミーな甘さは、吹浦産の上をいっているかもしれません。吹浦の岩ガキはプリッとした食感ですが、象潟のそれは加糖練乳のような甘くトロける食感なのです。これはもはや海のミルクどころか「海のコンデンスミルク」といった方がふさわしいでしょう。

 「(象潟・小砂川・金浦など)地元の岩ガキ以外は口にしたことが無い」と、なんとも羨ましいことを仰るにかほ市農林水産課の佐々木 善博さんは、半生になるまで火を通すことによって、より甘味を強く感じる「焼きガキ」もお薦めだと語ります。とろ~り半生で頂く小砂川の岩ガキ...。頭の中で想像は広がるばかりですが、こちらは来年の楽しみにとっておきます。


大きな地図で見る

(岩ガキとは全く関係のない蛇足ながら...)【注】 「ナーランダ」がまだ仙台にあった頃の1987年まで日本テレビ系列で毎週火曜日19時30分から放送されていた人探しとご対面が売りの公開TV番組「それは秘密です!!」をご記憶でしょうか? 司会の桂小金治が涙ながらに波乱万丈なエピソードを切々と読み上げた後に、一般視聴者が生き別れとなった親兄弟や恩人などと数十年ぶりに感動の再会を果たすというもの。ご対面を果たした一般視聴者を前に感極まって号泣する小金治をはじめ、レギュラー出演者であった三橋達也やケント・デリカットはおろか、会場の観客、恐らくは番組視聴者までがほぼ全員もらい泣きするという世にも稀な人情番組だった

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道の駅 象潟 ねむの丘
住所: 秋田県にかほ市象潟町字大塩越73−1‎
Phone: 0184-32-5588(代)
営:1F 物産館 9:00-19:00
  2F レストラン 眺海 11:00-16:00 17:00-20:30(L.O.20:00)
  4F 展望温泉 眺海の湯 9:00-21:00 
URL: http://nemunooka.jp/
◆土田水産  Phone: 0184-43-3052
◆佐々木鮮魚店 Phone: 0184-43-5650


インドカレーのやかた「ナーランダ」
住所:山形県酒田市あきほ町658-2
Phone:0234-24-9456
営:11:30-14:30(L.O.14:00)
  17:30-20:45(L.O.20:15)
定休:木曜(祝日の場合は営業)
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