あるもの探しの旅

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象潟の岩ガキ

旨さに参りましたっ m( _ _ )m
 @道の駅象潟「ねむの丘」直売所

 滋養強壮効果が高い栄養素が豊富で、まったりとしたその食感から「海のミルク」ともいわれる日本海の岩ガキ。そろそろ産卵期に入るため、最も水揚げが多い秋田県象潟(きさかた)周辺における今年の漁期は8月いっぱいで終了しました。そもそも食べ物には最も美味しい""があるからこそ、有り難みが増すのであって、年中同じものばかりでは季節感などあろうはずもなく、味気ない食生活になってしまいます。加温のために化石燃料を消費したり、海外から輸入するなど生産と輸送に余計なコストをかけてまで一年中同じものを食べようというのは、倣岸な発想だと思うのですが、いかがでしょう。

iwagaki_il_che.jpg【photo】 私がこれまで食べてきた鶴岡「アル・ケッチァーノ」の岩ガキ料理の中で最も美味しかったのは、今回象潟を訪れたちょうど1年前の2008年8月22日夜に奥田シェフが「イル・ケッチァーノ」を貸切のマンツーマンで作ってくれたこの温製岩ガキ。同店の人気メニュー「岩ガキの鳥海モロヘイヤのケッカソース」が、生の岩ガキを使用するのに対し、こちらは甘さがとろける絶妙な火加減で吹浦産の岩ガキが調理されていた。隠し味程度にほんのかすかに香る控えめなレモンとエシャロット、岩ガキの旨味が渾然一体となって調和するのは、まろやかなピュアオリーブオイルがつなぎの役割を果たすゆえ。シンプルなれどさすがのセンスが光る一品。Perfetto!!(ペルフェット!!=完璧)

 私が庄内系にメタモルフォーゼした2003年(平成15)の夏がそうであったように、太平洋高気圧よりオホーツク海高気圧が優勢な場合、北東から吹き付ける冷たい海風「やませ」の影響で、東北の太平洋側はすっきりしない天候の夏となります。今年も気象庁は東北の梅雨明けを特定しないまま9月を迎えてしまいました。そんな年でも東北を南北に貫く奥羽山脈が、季節風を遮って天候に顕著な違いをもたらすため、私のホームグラウンドである美味の宝庫・庄内地方を始めとする日本海側では、夏の陽射しを浴びることができる確率がぐっと高くなります。

nalanda_tandole.jpg【photo】酒田市あきほ町のインド料理店「ナーランダ」のタンドーリチキンセット。スープ・サラダ・仙台時代と変わらぬGANESHの「新茶の紅茶」を使用したアッサムティー(チャイ)などのソフトドリンクがセットで1,800円。この日の組み合わせはキーマカレー。タンドーリチキンまたはシシカバブの肉料理とカレー・ミニサラダとのセットは1,050円

 夏らしい夏を求めて訪れる庄内浜の夏の味覚といえば、何をおいても岩ガキを挙げなくてはなりません。南から鼠ヶ関・由良・吹浦と名だたる産地があります。なかでも鳥海山の伏流水が海中に湧き出してくる吹浦産の岩ガキは、象潟と並んで味には定評があります。マガキのヨード香が苦手ゆえ、生ガキを食べない私でも、庄内浜で揚がる天然物の岩ガキは全然オッケーどころか、大の好物。鳥海山の伏流水は養分が豊富で、そこに集まるプランクトンを餌に水温が低い汽水帯で5年以上、時には10年をかけてじっくりと育ったカキが水揚げされます。分厚く大振りな殻に入った身には海の旨味がたっぷりと詰まっています。マガキにはない濃厚な甘さは、岩ガキならではのもの。吹浦産の岩ガキがどうして美味しいかは、昨年6月に「プリップリでとろける吹浦の岩ガキ」【Link to back number】で触れています。

nalanda_maharaja.jpg【photo】ナーランダの看板メニュー「マハラジャカレー」。金管楽器のように突き抜ける鋭角的な辛さではなく、弦楽器や木管楽器なども加わったフルオーケストラの響きのように複雑で奥行きのある辛味に、まろやかな酸味も加わって見事な調和と厚みが生まれる。ライス付800円・ナーン付900円。要予約にてカレー(5人前)のテイクアウトも可

 象潟の温水路を訪れた8月22日(土)のこと。昼食は酒田市あきほ町のインド料理店「ナーランダ」でタンドーリチキンとキーマカレーのセットを頂きました。まだ時代が昭和だった頃、仙台市内の小松島に知る人ぞ知るインドカレーの名店ナーランダはありました。仙台で本格インド料理を提供する草分けであった1980年(昭和55)にオープンしたその店は、平成の世になり私が転勤で東京で暮らした6年の間に店を畳んでいたのです。消息が分からぬまま数年が過ぎ、オーナーの高橋ご夫妻と、桂小金治も思わずもらい泣きしそうな【注】 涙の再会を酒田で果たしたのが2003年の夏。じんわりとした辛味にもまして誠実なご主人の人柄が滲み出た旨味の勝った辛口のマハラジャカレーは、高橋オーナーが仙台時代からこだわりを持って作り続けている3日間じっくりと煮込んだ変わらぬ味が魅力です。店に立つお母さんの背中で眠っていた息子さんも今や高校生。たまに店の手伝いをしており、時の流れを感じさせます。私のように往時の味を懐かしみ仙台から足を運ぶファンも少なくないそうです。

tsuchida_kisakata.jpg【photo】道の駅象潟「ねむの丘」の直売コーナーにある2軒の鮮魚店のひとつ「土田水産」の店頭に並ぶ象潟産天然岩ガキ。捕獲後時間の経過と共に薄れてゆく海の塩味を生食で顕著に感じるのは朝採りゆえの新鮮さの証。一個600円(特大)から350円までと大きさによって値段が異なる

 この日、今シーズン最後となるであろう岩ガキを食べようと心に決めていました。当初は吹浦の道の駅 鳥海「ふらっと」と、道の駅象潟「ねむの丘」で岩ガキのハシゴをするつもりだったのですが、腹持ちの良いカレーセットとナーンでお腹は膨れたまま、一向に食欲は戻りません。そのため手前の吹浦はスルーして、にかほ市象潟へと直行しました。直売所には、佐々木鮮魚店と土田水産が軒を並べており、「今すぐむいて生で食べられます」と書かれた土田水産の店頭に並ぶ大きな殻付きの岩ガキを目にした途端、私の胃袋は蠕動(ぜんどう)運動を始めました。いわゆる別腹を確保しようという食いしん坊共通の生体反応ですね(^ー^)。その卓上には、道の駅象潟オリジナルのyuzuponz.jpg「ゆずぽんず」が置いてあります。土田水産会長の土田 吉樹さんによれば、当初はレモンを添えて岩ガキを出していた土田水産でも、柚子とローヤルゼリー・ハチミツが入った「ゆずぽんず」が岩ガキによく合うと好評なことから、近年ではゆずぽんずに切り替えたそうです。

【photo】岩ガキとの相性を考慮して製品化された道の駅象潟オリジナル「ゆずぽんず」(500mℓ入 / 577円・税込)。物産コーナーで購入可

 道の駅象潟に地物の岩ガキが登場するのは6月初旬から。鳥海山の伏流水が海中に湧出する場所が多い上、付近に生活排水が流れ込むような川が無いことから、とりわけ綺麗な海水に恵まれた小砂川(こさがわ)産が先陣を切ります。7月には月末まで漁が行われる小砂川と月初から漁が始まる象潟産が共に店頭に並びます。甘味が強く、地元でも時に人気が高い小砂川は、磯場近くの汽水帯で漁が行われます。かたや象潟では、比較的沖合いの水深7m~10mほどの海域で潜水漁が8月末まで行われます。そのため、ともに朝採りで店頭に並ぶ小砂川と象潟では、食べた時に感じる塩味や甘さの濃淡に違いが出ます。

iwagaki_kisakata.jpg【photo】象潟産天然岩ガキ。ふっくらとした身の中はさながらとろける生クリームのよう・・・。あぁ、来年の漁期が待ち遠しい

 象潟で代々鮮魚店を営む土田会長の説明によると、小砂川産の岩ガキは伏流水の影響で水温が低く、成長のスピードが遅いものの、豊富なプランクトンをたっぷりと採り込みながら大きくなってゆくといいます。小砂川産の岩ガキは、主に汽水帯に棲息するため、塩気はほとんど感じません。この日頂いた象潟沖の岩ガキは小砂川と比べれば伏流水の湧出口は少ないために甘味と同時に塩味を感じました。それでも海水がきれいなため、雑味の無い岩ガキ本来の味が楽しめるとのこと。確かにそのクリーミーな甘さは、吹浦産の上をいっているかもしれません。吹浦の岩ガキはプリッとした食感ですが、象潟のそれは加糖練乳のような甘くトロける食感なのです。これはもはや海のミルクどころか「海のコンデンスミルク」といった方がふさわしいでしょう。

 「(象潟・小砂川・金浦など)地元の岩ガキ以外は口にしたことが無い」と、なんとも羨ましいことを仰るにかほ市農林水産課の佐々木 善博さんは、半生になるまで火を通すことによって、より甘味を強く感じる「焼きガキ」もお薦めだと語ります。とろ~り半生で頂く小砂川の岩ガキ...。頭の中で想像は広がるばかりですが、こちらは来年の楽しみにとっておきます。


大きな地図で見る

(岩ガキとは全く関係のない蛇足ながら...)【注】 「ナーランダ」がまだ仙台にあった頃の1987年まで日本テレビ系列で毎週火曜日19時30分から放送されていた人探しとご対面が売りの公開TV番組「それは秘密です!!」をご記憶でしょうか? 司会の桂小金治が涙ながらに波乱万丈なエピソードを切々と読み上げた後に、一般視聴者が生き別れとなった親兄弟や恩人などと数十年ぶりに感動の再会を果たすというもの。ご対面を果たした一般視聴者を前に感極まって号泣する小金治をはじめ、レギュラー出演者であった三橋達也やケント・デリカットはおろか、会場の観客、恐らくは番組視聴者までがほぼ全員もらい泣きするという世にも稀な人情番組だった

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道の駅 象潟 ねむの丘
住所: 秋田県にかほ市象潟町字大塩越73−1‎
Phone: 0184-32-5588(代)
営:1F 物産館 9:00-19:00
  2F レストラン 眺海 11:00-16:00 17:00-20:30(L.O.20:00)
  4F 展望温泉 眺海の湯 9:00-21:00 
URL: http://nemunooka.jp/
◆土田水産  Phone: 0184-43-3052
◆佐々木鮮魚店 Phone: 0184-43-5650


インドカレーのやかた「ナーランダ」
住所:山形県酒田市あきほ町658-2
Phone:0234-24-9456
営:11:30-14:30(L.O.14:00)
  17:30-20:45(L.O.20:15)
定休:木曜(祝日の場合は営業)
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コメント

庄内系イタリア人様

ご無沙汰しています。
先週、酒田にいってきました。

でも「欅」と「ル・ポットフー」には残念ながらふられてしまいました。グスン。
で、仕方ないので酒田「海鮮市場」で夕食をたべましたが、これがまた安い、おいしい。

下の魚屋さんで岩牡蠣を3個500円で買って食べました。

何なんでしょうね、あの濃厚さは。松島の牡蠣もおいしいけれど別種のものですね。
産地で食べるのはやはり違いました。仙台で食べてもあまり感心しなかったもの。

2個食べたら、翌日はもう手が出ないくらいのコッテリ加減。(翌日の朝食ももちろん海鮮市場。ホテルからレンタル自転車でひとっ走りしました。)

欅とル・ポットフーが未消化なので・・・是非また行きたいです。

▼kuishinbo様

 コメントを頂き有難うございます。さかた海鮮市場の菅原鮮魚さんは、さほど広くはないものの、なかなかの品揃えなので、私も庄内浜の旬を知るのに重宝しています。

 お目当てのフレンチに入れなくて残念でしたね。それでも新鮮な日本海の幸を味わえる2Fの「海鮮どんや とびしま」で庄内浜の美味を堪能されたとのことで、何よりでした。もし酒田を再訪される機会があれば、水準が高い割にはぐっとリーズナブルな酒田の寿司屋さんもお勧めです。

 間もなくご紹介する10月実施の「かほピョン倶楽部」の庄内バスツアーでは、岩ガキはご用意出来ませんが、とびきり新鮮な庄内の魚介を寿司とフレンチで味わって頂くべく、酒田を代表する和洋の名店「鈴政」と「欅」をリザーブしています。

 ほかにも私が惚れ込んだ食の都・庄内の魅力を「これでもかっ!!」とばかりに詰め込んでおりますので、ご都合がつくようであれば、ぜひご参加下さい。決して後悔はさせませんので。
 

庄内系イタリア人様

そうそう、もちろん鈴政でお昼をたべました。

どんぴしゃ、通旅コースを狙ったんだけど。欅は貸切だったみたいでした。

欅とル・ポットフーはリベンジで通旅申し込みます。よろしく。

▼kuishinbo様

さっそくの参加表明、ありがとうございます。

腕にヨリをかけてツアーを仕込みますね。(・・・っていっても、実際に料理を仕込むのは、鈴政の大将・佐藤英俊さんだったり、欅のグランシェフ・太田政宏さんですけど。)

庄内系イタリア人様

アル・ケッチァーノには、行けそうもありませんが、カキ!が食べれそうなのでラッキーです。 
羽越本線を使って、行ってみます。kuishinboさんのおっしゃる3個で500円って、いうのもいいですね。

▼えつみ様

 なんともお気の毒ですが、絶品の象潟産岩ガキの漁期は8月末で終了しています。

 楽しみにされておられたアルケは定休日、岩ガキは旬が終わってしまっているということで、まことに残念ではありますが、庄内には他にも美味しい物が満ち溢れています。

 10月中旬にいらっしゃるのであれば、庄内浜の海の幸を味わえる寿司屋はいかがでしょう?

 最新の「私がご案内します」でご紹介したバスツアーで訪れる酒田の「鈴政」「こい勢」、鶴岡の「八方寿司」などは、特上握りでも2500円~3000円程度でイキの良い江戸前寿司が堪能できてお勧めできます。

 プラス思考で旅をお楽しみ下さいね。

庄内系イタリア人さま

なんとも、食運が悪いようです。また、計画を練り直します。バスツアーで江戸前寿司とか、素敵ですが この次にもっと時間が取れえる時に 是非参加させていただきたいと思います。楽しい企画があって、羨ましいです。絶対この次は、余裕を持って帰りますから、その時は、宜しくお願い致します。

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