あるもの探しの旅

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盛況御礼 

「食の都・庄内 豊かな実りと癒しのバスツアー」第1幕
  昼食つながりの藤沢カブ畑訪問まで

 定員ちょうどの皆様にご参加頂いた河北新報の読者会員組織「かほピョンくらぶ」会員様限定の通旅「食の都・庄内 豊かな実りと癒しのバスツアー」。催行前日に体調不良を訴えたお二方から無念のリタイア連絡を頂いたものの、前夜に決行したお天気祭りが功奏し(笑)幸い天候にも恵まれ、私を含め合計30名によるバスツアーとなりました。通旅の名に恥じないコース設定については、今一度「私がご案内します」を参照願います。

kusatsu_yawata.jpg【photo】杭掛けされた稲が夕陽に照らされ長い影を作る秋真っ盛りの庄内。日光川上流部の酒田市北東部、草津地区付近から鳥海山を望む

 10月24日(土)7時45分の定刻に仙台駅前を出発、東北道・山形道を一路庄内へと向かうバスの中で、初日の行程をご説明するうち、気がつくとトイレ休憩をする予定の寒河江SAはすぐ目の前。事前に配布した「2009 山形県庄内新潟デスティネーションキャンペーン」のパンフレット「ごっつぉだの もっけだの 食の都庄内」でも紹介されている農家レストラン「知憩軒」の長南光さんや「レストラン欅」の太田政宏シェフ、そこで頂く予定になっている在来野菜の作り手などの訪問先に関して興に任せてご紹介するうち、60分近く喋り続けていたのです。早朝に家を出発し、まだ少し眠そうな皆様に居眠りする隙を与えない熱いトークを炸裂させてしまいました。仙台出身の私が、山形に半年通い半年暮らして一年だけ赴任した6年前から、いかに地縁血縁のない庄内地方に養われて09sakuma_farm1.jpgいるかをご理解頂くため、車中で披歴したのが朝食のこと。ご飯はツアーの行程に組み込んである「竹の露酒造」の仕込み水で炊いた鶴岡市渡前の井上農場産「はえぬき」を食べて来ていました。

【photo】黄色に色付いたブドウ棚のもとでブドウ狩りに興じる皆さん


 到着したサービスエリアの売店を物色していると、庄内で時として起こるアンビリバボーな言霊現象が、そこでも起きました。所用で東京に向かう途中だという井上農場のご主人、井上 馨さんと鉢合わせしたのです。井上さんは自宅に立ち寄ってもらえれば、バスの皆さんに試食用の新米を差し上げるとお申し出になりました。お人柄を物語る「もっけだの」なオファーでしたが、中身がぎっしりと詰まった二日間の行程から、井上さんのもとに立ち寄るのはまず無理。09sakuma_farm3.jpgせっかくのご好意でしたが、これから冷え込みが厳しくなると、ほかの青菜類の追従を許さない極めつけの美味しさになる小松菜が旬を迎えます。話題の新品種「つや姫」も食べてみたいので「いずれまた寄ります」と言って笑顔の井上さんとお別れしました。

【photo】使用する農薬を最小限に留めている佐久間ファームは、多様な生態系を形成する小動物が棲息できる健全な環境を保っている。ブドウの枝でじっと動かないアオガエルは何を思うのだろう

 茶褐色に染まる月山道路沿いのブナ林に深まる秋を感じつつ、ブドウ狩りをする最初の目的地「佐久間ファーム」に到着しました。葉が黄色く色付いたブドウ園には、食べ頃を迎えたブドウが鈴なり。テーブルの上にはハニーシードレス・ピオーネ・巨峰・赤嶺の四種類の試食用のブドウが用意されていました。09sakuma_farm2.jpg農園主の佐久間みつさんをご紹介するや否や、ブドウに皆さんが一斉に群がりました。いずれも糖度が乗った美味しいブドウです。「枝が茶色に色付いた房を選んで下さいね」という私の耳打ちの後、収穫用のハサミを手にした皆さん。消毒回数を最小限に留めて栽培されたブドウの味に感激して、持ちきれないほど買い込む方もおいででした。


【photo】佐久間ファームでは、20種以上の多彩な生食用のブドウに加え、鶴岡市上名川のワイナリー「月山ワイン研究所」に納めるワイン醸造用のブドウ品種も手掛けている。ボルドー・ポムロル地区やトスカーナ西部・ボリゲリ地区で卓越した高貴なワインを生み出す品種「Merlot メルロ」を目ざとく見つけて目を輝かせながら味見する参加者

hatake09_chikeiken.jpg【photo】知憩軒の駐車場前にある畑を興味深げに眺める皆さん

 昼食の予約をしていた「農家レストラン知憩軒」には、予定より早く到着したため、皆さんを事前にカラドリ芋、もってのほか、丸ナスなどの秋野菜が育つ長南さんの畑にご案内しました。築50年になるという母屋の厨房では、お母様の光さん・長女のみゆきさん・長男の奥様歩美さんらが総出で準備中でした。慌ただしい厨房とは対照的にゆったりとした時間が流れる客席で待つ私たちのもとに、ほどなくして藤沢カブの浅漬けが運ばれてきました。パキっとした食感と共にすがすがしい辛味の余韻が残る藤沢カブのみずみずしさに、皆さん感激されたご様子。どうやらバスの中で畑を訪れることになっている藤沢カブにまつわるストーリー【Link to back number】をお話したのが美味しさを増幅させたようです。

tsutabi_chikeiken091024.jpg【photo】伝統的な庄内の農家の味をベースに、上品に洗練された滋味深い味付けがなされた知憩軒の昼食

 定番の鼈甲餡(べっこうあん)かけ胡麻豆腐、凍り豆腐と野菜の煮付け、季節を感じさせる秋刀魚の煮付け、是非ものでリクエストしたカラドリ芋の味噌煮と茎の胡麻がけ、自家栽培する特別栽培米コシヒカリの新米おにぎり、香ばしい焼き大豆の炊き込みご飯も登場、デザートのホイップクリーム掛けラム酒風味の平核無(ひらたねなし)に舌鼓をうち、庄内ならではの秋の味覚を堪能しました。食事を運び終えてから、女将の長南光さんが伝統的な農村の暮らしを伝えるために始めた知憩軒のことや、地域の特色ある食文化を支えてきた在来野菜の価値について参加者に語りかけました。本当はhanashi_mitsusan.jpg畑にも繰り出して長南さんのお話をじっくりと伺いたかったのですが、すでに予定時刻を回っていました。長南さんにご用意頂いた最上川を挟んで南側が主に赤ズイキ、北側が青ズイキに栽培地域が分かれる二種類のカラドリを皆さんにお目にかけたところで、長南さん親子にお見送り頂き、知憩軒を後にしました。


【photo】食事を終え、命の基本である食べ物を生み出す農地や在来野菜など、守るべき物の大切さについて語る長南 光さんの話に耳を傾ける参加者たち

 湯田川温泉街の手前にある藤沢集落でバスを降りて歩き始めると、私たちの様子を見ていた近所のおばちゃんが「ここから山の上に行くのは難儀だのぅ」と、声を掛けてきました。事情をご存じのようで、後藤さんのお宅へ入ってゆき、我々の到着を奥様の清子さんに告げてくれました。こうしたフレンドリーな敷居の低さは、同じ山形でも内陸地方ではまず起こり得ない庄内ならではの傾向で、イタリアにも相通じるラテン気質を感じます。前世イタリア人の私が妙にシンパシーを覚えるのもむべなるかな。

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 連作障害が出やすい藤沢カブは、毎年畑を変えるため、皆さんをご案内する前に下見をしようと後藤さんのお宅を9月に訪れていました。その時は残念ながらお留守だったため、電話で場所を伺っていた集落を抜けてすぐの林道沿いに、藤沢カブの畑があるのを確認していました。過去6年にわたって畑を見ているだけに「いやに今年は畑が狭いな」といぶかしく思ったのですが...。

【photo】下見の際に訪れた藤沢集落のすぐ近くにあった小さな藤沢カブ畑(上写真)

 奥様が作業場に声を掛け、中から出てきたご主人の勝利(まさとし)さんに伴われて、徒歩で下見をしていた畑に向かいました。その小さな畑に着くなり、後藤さんは「ここは趣味の園芸」と笑って、「今年の畑はこの上」と畑を取り巻く竹林となった斜面を指差しました。楽勝かと思った畑訪問のためには、粘土質の急坂を100mほど登らなければなりません。冗談を言いながらスイスイと坂を登る後藤さんについて竹林の中を進むと、突然視界が開けたそこが、山の斜面を覆い尽くす藤沢カブの畑でした。
fujisawakabu_bamboo.jpg【photo】孟宗筍の名産地、湯田川らしい竹林が下手に広がる今年の藤沢カブの焼畑。収穫を待つ藤沢カブが山肌を覆う

 今年は90アールの面積に三世帯でカブを育てており、山里に根雪が積もる頃までが収穫の最盛期となります。杉を伐採して搬出を終えたままの荒地に残る下草を刈り、周囲の樹木に延焼せぬよう入念な準備をした上で火を放ったのが、8月18日。今年は雨がちな気候で例年よりも一週間ほど火入れが遅れたそうです。まだ煙がくすぶっている状態の斜面に種を満遍なく手撒きするという後藤さんの説明に、皆さん驚いた様子。生育不良に見舞われた昨年の経験から今年は播種の量を減らした結果、作柄が良いそうで、大ぶりなカブが多いようにお見受けしました。
con_gotousan.jpg【photo】ご案内頂いた後藤 勝利さん・清子さんご夫妻を囲んで記念撮影

 求めに応じて大きなカブを探しに行った後藤さんの足取りは、まるで義経の八艘飛びを見るよう。その身軽さは到底65歳とは思えないもので、これまた一同ビックリ! そこに少し離れた畑におられた清子さんが「皆さんに山登りをさせたから」と、泥つきの田川カブが入ったビニール袋を携えて「お土産にどうぞ」と持って来られました。田川カブは湯田川に隣接する少連寺発祥の希少な在来種。勝手にこちらが押し掛けたにもかかわらず、そんな心遣いまで頂く後藤さんご夫妻の優しさに皆さん一様に感激されたようです。climb_fujisawakabu.jpg

【photo】「趣味の園芸」畑の急斜面の上が藤沢カブを育てて50年近くなる後藤さん(写真左)の技が光る立派なカブが育つ焼畑がある

 私が持ちますよと申し上げた田川カブが入ったビニール袋を肩にかけた清子さんは、所々ぬかるんだ斜面をおっかなびっくり下る私たちを尻目に、さっさと下ってゆきます。収穫したカブの搬出でいつもそうしているという後藤さんは慣れたもの。かたやご参加頂いた皆さんは仙台とその近郊の在住者ばかり。はからずも都市生活者のひ弱さを思い知らされたのでした。

bargain_gotou.jpg【photo】後藤さんのご自宅前で開かれた生産者直売の特設青空市。ご覧のとおりの活気あふれる大盛況

 後藤さんのご自宅に戻って、収穫したての藤沢カブとカブの甘酢漬を譲って頂きましたが、こちらもバーゲン会場も顔負けの熱気が渦巻く黒山のひとだかり。笑顔が素敵な後藤さんの魅力も手伝って飛ぶように売れてゆきました。本来の味は焼畑でなければ出せない藤沢カブ。その味を絶やしてはならないと、手間と労力のかかる焼畑栽培にこだわる後藤さんの奥様が漬け込んだ藤沢カブの甘酢漬け(税込315円)は、直販以外には湯田川温泉を奥まで進んだ「ぱろす湯田川」でも入手可能です。絶えようとしていた藤沢カブの種を受け継いで復活させ、私たちが今もその味を楽しむことができる恩人が作った正真正銘の焼畑藤沢カブの味をお知りになりたい方は、こちらへどうぞ。

 ご夫妻揃ってお見送り頂いた後藤さんに見送られてバスが向かったのは、今回のツアーでは数少ない通常のパッケージツアーにも組み込まれる観光地でもある国宝・羽黒山五重塔。次回は、そこは省略し(爆)、仕込み水の試飲から始まった「竹の露酒造場」訪問の顛末をご紹介します。


「食の都・庄内 豊かな実りと癒しのバスツアー」 第2幕
酔って候@竹の露酒造場 月山伏流仕込水
 へ続く

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コメント

ぎっしり中身の詰まった2日間に御礼です。庄内の懐の深さに脱帽でした。
帰仙した日に食した生の藤沢カブ、長南光さんレシピで漬けた藤沢・田川カブ。斜面と後藤さんご夫妻を想いながらいただきました。カブの頭を切っているのは、種(芽)が他所に出ていかないためなのかなぁなんて考えながら。

▼おこりんぼシーサー様
 先日はProduced by 庄内系イタリア人の酔狂なツアーにご参加頂き有難うございました。

 あの人に会わせたい、あそこで食べて欲しい、あの風土に触れてほしい、と日程を組み立てるうちに、あのような過積載な日程になってしまいました。ちょっと詰め込み過ぎだったかな? と反省しております。
 
 しかしながら、季節を変えれば風景も変わり、旬の食べ物も変わります。こう言ってしまっては元も子もありませんが、一泊二日だけでは到底私が足繁く足を運ぶ彼の地の魅力をお伝えしきれません。

 機会があれば、ぜひ今回生まれたご縁を生かして頂き、類い稀な食の都・庄内の深遠なる懐にもう一度飛び込んでみて下さい。決して後悔はさせませんので。

 庄内系イタリア人さま、いやぁ素晴らしくもディープなバスツアーになりました。料理や食材のみならず、その土地土地に生きる人にフォーカスをもっともっとあてていくべきだなぁと思いました。

 庄内にはそうした想いをしっかりと語れる人が多いですね。宮城もちゃんといるはずなので、庄内系さんに負けずに発掘していきますよー。

 で、私もレポートしないとと思いつつ、庄内系・木村さん、kuishibo・大河内さんと差別化したテイストで書かないとなぁと悩みが増えています。これは、いっちょっ動画レポートにしちゃおうかなぁ。それなら文才がないのがバレずにすみますしね。うふふ・・・。

濃厚すぎる2日間 本当にありがとうございました!!
庄内パワーも、それに魅了された木村さんのパワーもすごすぎです!

私も皆さんと内容がダブラない形で
後日レポを上げたいと思います。


▼畠山茂陽さま

 食WEB研究所とのコラボで実現した今回の通旅。私の解説に妙な突っ込みを入れるアシスタント・アテンダントぶり、お見事でした。

 知憩軒の長南さん、赤カブの後藤さん、パイロットファームの相馬さん、赤葱の後藤さん、ズイキの坪池さん、そして見事なフランス風郷土料理を出して頂いたグランシェフ太田さんなど役者揃いの「庄内んめものスペクタクル劇場」。

 今回の日程で、私の手の内の一部をご披露したさして広くもないあの地域だけで、あのキャスティングです。ご本人の言葉でライブ感のあるメッセージを発信するには、動画も良いですね。食WEB研究所の扱うコンテンツとして充分価値のあるものだと思いますよ。

▼おっかぁ早坂様
 24日夜に再会を果たしたゴールデンレトリーバーの紀香を含めて(笑)、癒し系のキャストを揃えた今回のツアー、濃厚すぎる日程でお疲れになったことでしょう。わんさと買い込んだ食材を両手に抱えて仙台駅の人ごみに消えていったおっかぁ早坂様の後姿に、母の強さを見ました。

 感想レポ楽しみにしています。大山新酒・酒蔵まつりでも何か企画を仕込みますか?
http://www.tsuruokakanko.com/season/fuyu/sake.html
最近ではあまりに数多くの愛好家で賑わうため、そんなに呑めないみたいですけど・・・

>大山新酒・酒蔵まつりでも何か企画を仕込みますか?
>http://www.tsuruokakanko.com/season/fuyu/sake.html

ぜっ…ぜっ…是非~!!!!

▼ おっかぁ早坂 様

 期待通り・予想通りのリアクション(笑)、有難うございます。

 厳冬期の庄内もいいですよ。んめものがいっぱいで。日帰りはちと厳しいかもしれませんが、ウチのアシスタント・アテンダント畠山とも相談してみます。

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