あるもの探しの旅

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春から縁起が良いのぅ

当たり年の予感 再び

 前年に引き続き行って参りました。7年連続で我が家の年末恒例行事となった"歳末食べ納め@al.chè-cciano アル・ケッチァーノ"(以下、アルケと略)。隣接地にil.chè-cciano イル・ケッチァーノ(以下、イルケと略)を開店して以来、原則として土田料理長がアルケの厨房を預かります。「本丸」の庄内で私は充分なので、およそ行く気がしない東京・銀座のアンテナショップ2Fに県の意向で出店したYAMAGATA San-Dan-Delo ヤマガタ サンダンデロも加わり、従前より明らかにオーバーワークな奥田シェフが鶴岡にいる時にイルケで料理を作るシステムが定着しています。

6_291209.jpg【photo】ズワイガニの内子・外子とブロッコリーのリゾット。アルデンテな庄内産「はえぬき」、ふんわりしたズワイガニの身、プチプチとした内子・外子の食感の違いが楽しめる

 4年前までは月平均2.5 回のヘビーローテーションで通っていたアルケですが、最近2年ほどはぐっと店を訪れる頻度が減りました。TV・雑誌でのメディア露出が重なるにつけ、店の混雑に拍車がかかった一方で、シェフが厨房を空けざるを得ない外部からの依頼が舞い込み、料理人の本業以外に割く時間が増えた結果は、そのまま料理に反映されます。本人は料理より菓子作りのほうが好きだと語っていたドルチェ類だって、雪化粧した月山をイメージした「Monte Luna」ひとつをとっても、ひと頃から比べると随分と東京ナイズされたコンパクトサイズになったしなぁ。(羽黒でサフォーク羊を育てる丸山 光平さんに飼育を委託するシェフ所有のヤギ「ロッソ」と「ビアンコ」の搾乳したてのミルクで作るジェラートを添え、櫛引産の佐藤錦を載せた'06年6月のモンテ・ルーナはコチラ) 厨房とフロアが絶妙の一体感で来店客を出迎えていたかつての姿を知らない一見客は、現在のアルケに感激しているようではありますが...。

7_291209.jpg【photo】庄内麩とマグロのソテー 辛子マヨネーズとバルサミコ風味。シェフいわく突然降りてきた料理。ミディアムに火を通したマグロの中落ちを庄内麩で包み、辛子菜と辛子マヨネーズの辛味と、バルサミコの酸味が複雑に入り混じる。ダイス状にカットしたレアのマグロと粒マスタードがアクセントに

 昨年10月中旬、連休を利用して食通の知人から勧められた(旧朝日村)鶴岡市大鳥の「青嵐舎」を訪れました。地元のご出身でかつて東京でフードライターをしていた経歴をお持ちの篠 育さんが、手付かずの自然が残る周囲の山々からご主人が採ってくる天然キノコをさまざまに調理する「キノコご膳」で楽しませてくれました。

 その翌朝のこと、たまたま目にした日本テレビの生放送番組に、芋煮とアケビを使った料理を紹介する奥田シェフらアルケの厨房スタッフが出演していました。栽培アケビの特産化に取り組み、河川敷に建設用重機を持ち込んで巨大な芋煮鍋を作り、"日本一"を売りに客寄せしているのは山形内陸です。いささかバリエーションに欠ける内陸とは全く食文化の質が異なる食の都・庄内を私が訪れている一方で、実りの秋を迎えた連休だというのに、店を空けて東京に行き、目的を推し量りかねるテレビ番組に出演している奥田シェフ。そんな逆転の構図に複雑な思いにとらわれたものです。

10_291209.jpg 期待と不安が入り混じる中、かつてない丸一年という長いブランクを置いてイルケを夜に訪れたのは、2009年12月29日のことでした。昨年のお任せコースの料理は「今年も当り年!」でご紹介しています。夜の営業は年内最後だというその日は「ぜひとも奥田シェフが作る料理を」と指名していました。

【photo】山伏豚と小野川豆もやしのクスクス風 白トリュフの香り。優しい火加減のふんわりとした山伏豚、米沢郊外の小野川温泉の伝統作物「小野川豆もやし」を具として、デュラム小麦に卵白を混ぜ水を加えた生地を大粒のクスクス風に仕上げる。白トリュフ(タルトゥフォ・ビアンケット)の何と魅惑的な香り!

 店の周囲が猟場にもなっているため、冬場にアルケを訪れると、さまざまなジビエが登場します。この夜はシベリアから渡ってきたアオクビ君こと、真鴨とゴボウのスープが出てきました。ムース状になったカリフラワーをスープに溶かして頂くというスペチャリテです。カリっと揚げたカッペリーニには、アオクビの砂肝が串刺しに。一年前のレポートにある通り、アルケで頂くジビエには、狩り物の証である散弾が残っていることがあります。9_291209.jpg狩猟文化が発達したヨーロッパでは、肉料理に紛れ込んだ散弾は幸福をもたらすとされます。かといって料理のプロが故意に弾を残すわけでは当然なく、仕込みの際、丹念に弾を取り除きますが、チェックをかいくぐって料理に紛れ込んだ散弾は、むしろ歓迎されるというわけです。

【photo】真鴨とゴボウのズッパ カリフラワーのムース風味。濃厚なアオクビの肉と内臓が野生的なゴボウの香りとあいまって、ズッパ(=スープ)に溶かし込んで頂くカリフラワーのムースと見事に調和する

 かつて「奇蹟のテーブル」で明かした通り、泣けるほどの感動にうち震えた「山伏豚と藤沢カブの焼畑風」がメインディッシュとして初めて出たのが2004年の食べ納め。その庄内の風土と作り手の思いが詰まった明確なメッセージが込められた空前絶後の「在来作物フルコース」は別として、近年では最も積雪量が多く、気象庁が「平成18年豪雪」と命名した記録的な豪雪の中を訪れた2005年の年末以降、仕事納めを終えてから毎年アルケで年末にジビエが登場しています。私にとっては、西銀座デパートのチャンスセンター以上の当選確率で当たりが出るアルケのジビエ。それを年末に頂くのは、新たな年の運試しも兼ねています。

 まずはコリコリした砂肝と香ばしいカッペリーニを頂き、真鴨の旨みと土の香りがするゴボウの風味が生きたズッパを一口。「ムースを溶かし込んで一緒に召し上がって下さい」というシェフに促され、スープ皿の縁にあるムースを合わせると料理の印象が一変しました。一般的なアイガモとは全く異質な引き締まった肉質のアオクビとゴボウの野生的な持ち味を、カリフラワーのクリーミーなムースが柔らかく中和し、心地よい香りと旨味が広がります。こうしたデリケートな演出は奥田シェフならでは技でしょう。腿肉を口に入れ、神経を集中させて肉を味わっていると、小さな金属質の異物を感知しました。

felice_nuovoanno.jpg【photo】家族で頂いた真鴨とゴボウのズッパ。三皿の中で唯一、私の皿の腿肉に一粒だけ隠れていたゲンの良い散弾

 キタキター、また当たりっ!!! 家族3人で食べていた皿の中で、私だけにまた散弾が一つ入っていたのでした。散弾は金属製ゆえに金運がアップするという人もいますが、昨年のキジ君から出てきた弾には、あまり金運面でのご利益はなかったようです。それでも大過なく一年を過ごせたことや、多くの人と食を通した尊いご縁が続いていることは、何よりのこと。「毎年当たりが出るなんて珍しいですね」とフロアの斎藤マネージャーも笑顔で祝福してくれました。

 紆余曲折を経て現在のスタイルとなったアルケ&イルケですが、今年3月ぐらいから奥田シェフが以前のようにアルケの厨房に入る予定とのこと。一年前の食べ納め同様、納得できる味と出合えたこの夜のように、ファンタスティックな輝きを取り戻してくれることを期待したいものです。食後にそんな事前情報を聞き出したうえ、鴨からは当たり玉も飛び出しただけに、今年は新春から縁起が良いカモ。 オソマツ...(д;)

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◇2009年食べ納めお任せメニュー@ イル・ケッチァーノ

  の番号をClickすると画像が出ます
1 :羽黒わんぱく卵の黄身と蔵王産カボチャのクリームペースト 生クリームとユリの蜂蜜
2 :60℃でじっくり炒めた玉ネギ グラナパダーノチーズと黒胡椒風味
3 :ズワイガニと・米沢雪菜・グレープフルーツのサラダ
4 :アラと岩手釜石産キャビアの冷製カッペリーニ
5 :温製ハマグリと櫛引安野農園のリンゴ デリケートなオイルの香り
6 :ズワイカニの内子・外子とブロッコリーのリゾット
7 :庄内麩とマグロのソテー 辛子マヨネーズとバルサミコ風味
8 :アラの頭グリエ フレッシュバジル風味のジャガ芋ペーストとともに
9 :真鴨とゴボウのズッパ カリフラワーのムース風味
10:山伏豚と小野川豆もやしのクスクス風 白トリュフの香り
11:庄内牛のロースト炭化させた平田赤ねぎの香り 京人参のムース
12:粉糖と頂くカラドリイモのモンテ・ビアンコとラフランスのジェラート

※Bevandi
1:Vino bianco 白ワイン
Esino bianco Roberta '08 / Azienda agricola Mognon Floriano
エジーノ・ビアンコ・ロベルタ '08 / モニョン・フロリアーノ

roberta_291209.jpg 1980年、イタリア・マルケ州アンコーナ県カステル・コロンナにヴェネト州から移住したフロリアーノ、ロベルタ夫妻が運営する小規模なカンティーナ。厳格な審査基準を設けているIstituto Mediterraneo di Certificazione(地中海認定協会)の有機認証を受けたVerdicchio ヴェルディッキオ種やMontepluciano モンテプルチアーノ種などから造るモニョン家の家族名を付けた日常使いに適したヴィーノはビオワインのコンテストで受賞多数。奥様の名前を付けたこのRoberta は隣接するマルケ州Jesi イエージ原産のブドウ、ヴェルディッキオと山岳地域を除くイタリア全土で栽培される白品種Trebbiano トレッビアーノの混醸
URL:http://www.vinimognon.com/

2:Vino rosso 赤ワイン
Grattamacco Bolgheri rosso superiore '04 / Podere Grattamacco Collemassari
グラッタマッコ ボルゲリ・ロッソ・スーペリオーレ'04 / ポデーレ・グラッタマッコ

grattamacco_291209.jpg カベルネ・ソーヴィニョンやメルローにとって理想的な栽培環境にあるトスカーナ州最南端ティレニア海に面したワイン産地としては新興ながら、国際的に高い評価を受けるボルゲリ。グラッタマッコは異業種から参入したピエルマリオ、パオラ夫妻が1977年に始めたカンティーナ。Sassicaia、Ornellaia、Le Macchiole などと共に、国際市場を意識したいわゆる「スーパートスカーナ」のスター的存在のひとつ。この天候に恵まれた'04ヴィンテージは高い次元で調和のとれた素晴らしい味わい。国の有機認証機関「AIAB」の認定を受ける有機栽培のカベルネ50%+サンジョヴェーゼ30%+メルロー10%の混醸
URL :http://www.collemassari.it/spaeng.htm


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