あるもの探しの旅

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お馬の親子

こどもの日生まれの寒立馬
  in 尻屋崎 @下北半島

shiriya_kandachi1.jpg 【photo】尻屋崎灯台へと向かう道すがら、のんびりと草をはむ寒立馬と出合える。こうした牧歌的な風景は北国に遅い春が訪れる4月末から雪の便りが届く11月までのみ。雪交じりの北西の寒風が吹き抜ける冬季は越冬用の牧草地に移動し、雪の下から下草を自力で掘り出さなくてはならない。これは群れのリーダー格に当たるメス馬たち

 本州最北東端の地で生まれたばかりの「寒立馬かんだちめ」の赤ちゃんと出合ってきました。寒立馬は駿馬の産地として平安時代より知られた南部地方で外国馬との交配から生まれた野放し馬と呼ばれた南部馬の田名部馬を祖とします。フランス・ブルターニュ原産の輓馬Breton ブルトン種と、厳冬期には氷点下40℃もの極寒の地で生きるモンゴル馬の血を引く小柄な馬は、粗食に耐えながらも持久力に優れ、かつては農耕馬や軍用馬として重用されました。

kandachime_2.jpg【photo】厳しい環境を生き抜くたくましさを感じさせる武骨なヒヅメと太い足。全体にがっしりした胴長短足体型の寒立馬。それぞれに飼い主がいる放牧馬であり、純粋な野生種ではない。農耕用・軍用ともに需要が多かった昭和10年ごろが荷役馬としての全盛期で150頭あまりが飼育されていた。食用でもあるこの馬を可愛らしいと見るか、美味しそうと見るかはアナタ次第
 
 農業機械の普及により、農耕馬としての需要が落ち込んだ高度成長期には、わずか9 頭にまで頭数を減らしたこともある寒立馬。行政が保護に乗り出した現在では成馬・仔馬あわせて30頭ほどが東通村尻屋崎周辺で古来より「四季置附(しきおきづけ)」と称する年間を通した放牧がなされています。2002年(平成14)に青森県の天然記念物に指定されて以降は観光資源にもなり、種馬となるオス以外の2歳になったオス馬は食用として出荷されています。

kandachime_3.jpg【photo】津軽海峡と太平洋に面した尻屋崎の海沿いが放牧地となっている。海に面したこの牧草地の南側に越冬放牧地のアタカがある

 寒立馬を管理する尻屋牧野組合の寺道 和廣 組合長の説明によれば、現在4つのグループに分かれて放牧が行われており、通年放牧されるのはメスと仔馬のみ。4月~12月は岬の牧草地を風向きや天候によって場所を移動しながら草をついばみます。寒さが最も厳しい1月~3月は、尻屋漁港北側のアタカ(画像はコチラという牧草地に集められて越冬します。氷点下10度を下回る吹雪の日には、避寒のために母親が仔馬を松林の中に入るよう促すのだといいます。厳しい本州最果ての地で冬を越せるように仔馬をある程度まで成長させるため、自然交配による出産シーズンが4月末から5月上旬となるよう、オスは一定期間群れから引き離されます。ゆえに私が訪れたこの日、オスはまだ群れの中にはまだ居ませんでした。今年は4月26日に初めて仔馬の誕生があったそうです。

shiriyasaki_todai.jpg【photo】本州最北東端にある尻屋崎灯台は東北地方初の様式灯台。1876年(明治9)年に建てられたレンガ造りとしては我が国最大の灯台。上にばかり気を取られていると足元にある寒立馬の落し物(写真手前)を踏みかねない。ご用心ご用心

 尻屋崎灯台へ続く道にはゲートが設けられ、朝7時にならないと車で中に入ることは出来ませんでした。私がそこに着いたのが早朝6時30分。奥の牧草地では5 頭の馬が思い思いに草をはんでいます。ゲートの脇に設けられたビジターセンター前に設けられたケージには、一組の黒毛の親子が寄り添っていました。居合わせた吉 幾三似の管理人・山本 光明さんの話によると、その仔馬は朝方5時40分に生まれたばかり。まだ足が震えている仔馬は、おぼつかない歩みで母馬のまわりを甘えるようにゆっくりと回っていました。母親のおっぱいを探すそぶりを見せますが、上手くゆかないため、母親が優しく後ろ足の付け根にある乳へと仔馬を促します。

kandachime_oyako.jpg【photo】生まれたばかりでやっと立ち上がった仔馬の体をなめる母馬に甘えるようにその周囲をゆっくりと回る仔馬

 群れを探しながら場所を移動すると、黒毛だけでなく淡い栗毛や白い毛の馬の姿も認められます。そこにいたのが、今年最初に生まれ、生後12日を迎えた黒毛の仔馬でした。先ほどの生まれたばかりの仔馬とは違って、おっぱいの吸い方も堂に入ったもの。よほどお腹が空くのでしょう、チューチューと音を立てながら母親のお腹の下に首をもぐりこませていました。そこに毎日バイクで馬たちの様子を見てまわるという自称・吉 幾三の兄こと管理人の山本さん(⇒別名:吉 幾二さん?)が登場、寺道 組合長と話し始めました。淡い栗毛の馬を指してサクラがどうした、若菜がどうしたなどと言っています。どうやら一頭ごとに名前がちゃんと付いているようです。

kandachime_4.jpg【photo】生後12日で体がひと回り大きくなっても、母馬のそばを離れようとしない仔馬

 春爛漫の桜を満喫した弘前城から風の岬ともいわれる竜飛崎へ、さらに下北半島まで青森を周遊した今年のGW。つがる市に残る日本最古とされるリンゴの木や、田舎館村にある弥生時代の水田跡から発見された家族の足跡がある垂柳遺跡など、かねてより訪れたかった地への訪問が叶いました。2年ぶりとなった弘前「ダ・サスィーノ」では、地方で食するイタリアンでは間違いなく頂点にある完成度の高いコース料理を堪能し、旅の終わりに優しい目をした寒立馬の親子に心和んだのでした。

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