あるもの探しの旅

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キアンティ・クラシコ協会会長が来仙

カステッロ・ディ・アーマ試飲会 with 醸造責任者
マルコ・パッランティ氏 @ENOTECA仙台店

 イタリアワインの産地としての知名度にかけては、バローロと双璧をなすであろうキアンティは、生産地域が広大なためにエリアによって持ち味が異なります。エリアの中心に位置し、品質的に高い水準にあるのがChianti classico キアンティ・クラシコです。その生産者組織である「Consorzio Vino Chianti Classico キアンティ・クラシコ協会」には現在597の生産者が加盟しており、このうち350のカンティーナが自社銘柄のヴィーノをリリースしています。同協会の会長を務めるMarco Pallanti マルコ・パッランティ氏が、ワイン専門店「Enoteca エノテカ」の招きで仙台を5月22日(土)に訪れました。

presidente_pallanti.jpg【photo】キアンティ・クラシコ協会会長マルコ・パッランティ氏

 今年3月に満を持して仙台市青葉区の藤崎一番町館1Fにオープンしたエノテカ(=イタリア語でワインショップの意味)仙台藤崎店(藤田 郁 店長)が企画したのは、マルコ・パッランティ氏が醸造責任者を務めるカンティーナ「Castello di Ama カステッロ・ディ・アーマ」の有料試飲会。3年前に宮城・ローマ交流倶楽部がピエモンテ州のワイン生産者を招いて会員向けに交流試飲会を催した例などを除けば、一般のワイン愛好家が生産者の生の声を聞きながら試飲ができる機会は、ほとんど仙台ではなかったと記憶しています。料飲関係者向けセミナーやFoodex のような主に業者を対象とする展示会が頻繁に行われる東京とは違い、仙台のワインラヴァーが、国外の生産者との接点を持つ機会はごく限られているのが実情です。

tutti_ama.jpg 【photo】試飲アイテム6本。左よりAl Poggio アル・ポッジョ'08(サイン入り)、Chianti classico Castello di Ama キアンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・アーマ'06、同'00、Chianti classico Vigneto La Casuccia キアンティ・クラシコ・ヴィネート・ラ・カズッチャ'04(サイン入り)、L'Apparita ラッパリータ'05、Vinsanto ヴィンサント'04 の豪華なラインナップ

 キアンティ・クラシコ協会第12代会長の要職にあるマルコ・パッランティ氏は、キアンティ・クラシコでも屈指の醸造家として知られます。イタリアを代表するワイン評価本であるGambero Rosso ガンベロ・ロッソによって最優秀醸造家に選出されたのが2003年。2年後にはカステッロ・ディ・アーマがベストワイナリー・オブ・ジ・イヤーの栄誉にも輝いています。カステッロ・ディ・アーマに関しては、2年前に「グレートヴィンテージ・1990年のキアンティ【Link to back numuber】」で詳しくご紹介しています。よもやイタリア屈指の醸造家と仙台でお会いできるとは思ってもいなかったのが正直なところ。ゆえに今回の催しは何としても見逃すわけにはいきませんでした。miyajima_isao.jpg会場に顔を見せた藤崎のワイン担当庄子さんも、まず仙台には来ない方ですよ!と参加者に力説していました。エノテカさん、あなたは偉い!

【photo】参加者の質問に気軽に応じるマルコ氏(左)とワインジャーナリストの宮嶋 勲氏(右)

 開始予定時刻の10分前に着いたとき、すでにマルコ・パッランティ氏は通訳として同行していたワインジャーナリストの宮嶋 勲氏とともに店においででした。国内消費は3割以下で、7割以上が国外で消費されるというキアンティ・クラシコ。世界をフィールドにビジネスを展開するキアンティ・クラシコ協会会長はイタリア人といえども時間に正確なのでした。1959年(昭和34)、京都に生まれた宮嶋氏は、某新聞社のローマ支局勤務中にイタリアの食文化、特にワインに魅了され現在の道に進んだといいます。帰国後はイタリアの権威あるワイン評価本「Le Guide de l'Espresso エスプレッソ誌」で唯一の日本人テイスターとして活躍する一方で、日本のワイン専門誌「Vinotheque ヴィノテーク」などでイタリアワインに関する紹介を続けています。

Guidoriccio_da_fogliano.jpg【photo】シエナ派の画家シモーネ・マルティニ作とされるグイドリッチョ・ダ・フォリアーノの騎馬像。騎乗の傭兵隊長が向かう先の砦が現在もフレスコ画に描かれた塔の痕跡が残るトスカーナ州グロッセート県のMontemassi モンテマッシ(上写真)
 カステッロ・ディ・アーマのヴィーノには、シエナの英雄グイドリッチョ・ダ・フォリアーノの騎馬像があしらわれる。誇り高き金色の騎士が描かれたのはマルコ氏にサインを頂いたお宝ワイン Chianti classico Vigneto Bellavista キアンティ・クラシコ・ヴィネート・ベラヴィスタ '97(下写真)

Bellavista_97.jpg 30名定員の試飲会に用意されたアイテムは白1本、赤4本、デザートワイン1本の計6本。カステッロ・ディ・アーマのエチケッタには全てシエナ派の画家 Simone Martini シモーネ・マルティニの手になる傭兵隊長グイドリッチョ・ダ・フォリアーノ像が描かれています。キアンティ・クラシコのエリアでも南端にあるガイオーレ・イン・キアンティは世界遺産の街Siena シエナのすぐ北側。13世紀に整備されたカンポ広場に面したPalazzo Pubblico(=市庁舎)の Sala del Mappamondo (=世界地図の間)に描かれたフレスコ画は、1328年にシエナが行ったMontemassi モンテマッシ攻略の功績を称えたものです。シエナの勢力拡大に尽力した英雄を描いたエチケッタには、銘酒キアンティの伝統を受け継ぐアーマの誇りと品質向上にかける決意が見て取れます。

 意気揚々と馬にまたがる傭兵隊長の派手な衣装とは対照的に、シックなissei miyake とyohji yamamoto が好みだというマルコ氏。この日はノーネクタイのホワイトシャツにゆったりとしたシルエットのブラックスーツに身を包んでいました。アルマーニやヴェルサーチェなどの高級イタリアンブランドではなく、日本人デザイナーの服を愛用していることを宮嶋氏に披露されてマルコ氏は苦笑い。私が学生時代に憧れたY'sや三宅一生がお好きだということで、親近感を覚えました。意外なネタばらしで場の雰囲気が和んだところで試飲会の始まりです。冒頭で挨拶に立ったマルコ氏は、カステッロ・ディ・アーマのブドウ畑は海抜500m前後という比較的標高の高い場所にあるため、寒暖の差がもたらすエレガントな酒質を備えていること、常にバランスの良い仕上がりを心がけていると述べました。
alpoggio_08.jpg       【photo】綺麗な印象のアル・ポッジョ'08

 まずはカステッロ・ディ・アーマ唯一の白ワイン、Al Poggio アル・ポッジョ'08から。フランス原産のChardonnay シャルドネを主体にPinot Grigio ピノ・グリージョを手摘みして混醸、24,000本だけがリリースされます。Poggio(=高台)という畑の名前から名付けられたこのヴィーノは、標高が高いTeritorio テリトーリオ(=仏語:テロワール→ブドウが栽培される環境・土壌の意)を感じさせるエレガントなトップノートに熟成で一部使用されるオーク樽由来のバニラ香が幅を与えます。仙台で牛タンを食べたと言うマルコ氏は、トスカーナ料理のボイルした牛タンとこのワインは相性が良いはずだと語りました。

 2本目・3本目はキアンティ地区において最も重要な品種とマルコ氏が語るSangiovese サンジョヴェーゼを80%、残り2割をMalvasia nera マルヴァジア・ネラ, Merlot メルロ, Cabernet Franc カベルネ・フラン 、Pinot Nero ピノ・ネロで構成する基幹アイテムのChianti classico Castello di Ama キアンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・アーマの'06と'00。熟成能力の高いワンクラス上のキアンティであるRiserva リセルヴァ表記はないものの、法定熟成期間26ヶ月をクリアするカステッロ・ディ・アーマは、並みいるキアンティ・クラシコの中でも別格のヴィーノです。
castelloama00_06.jpg【photo】収穫された6年の時間的な差異以上に熟成能力に影響するヴィンテージの違いが表れた'00と'06のカステッロ・ディ・アーマ

 ブドウの作柄がダイレクトに味に反映するワインは、収穫年によって熟成能力が異なります。それを如実に感じたのがこの2本でした。'00のトスカーナは収穫期に雨が降ったため、決して恵まれた作柄ではありませんでしたが、収穫後10年を経た今がすでに飲み頃を迎えており、鼻腔を満たす香りが全開。今飲むなら断然'00をお勧めします。かたや'06は'01,'04と並び称される2000年代の優良ヴィンテージ。試飲会の開始時刻にあわせて抜栓した店側の配慮もあり、いくばくかは開花させつつあるものの、'00と比べればまだ十分とはいえません。まだ固く閉じた状態ですが、良質な酸味とビシッと目の詰まったタンニンからは熟成能力の高さがうかがえます。

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【photo】ヴィンテージの違いを如実に感じたChianti classico Castello di Ama キアンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・アーマ'00(左)は熟成が進んでいるためオレンジ色を呈し香りも全開。かたや'06(右)はまだガーネットが主調の若い色。味もまだ固さが残る

 理想的な作柄に恵まれた'06ヴィンテージは、フィレンツェ大学で醸造学を学んだ後、キアンティ・クラシコ協会で働いていたマルコ・パッランティ氏がカステッロ・ディ・アーマの醸造責任者として迎え入れられた1982年から数えて25年目にあたります。そのため、特別に25の数字が浮き彫りされたボトルに銀婚式を意味するシルバーのキャップシールが施されています。エチケッタには、4組のオーナー一族の1人で妻のロレンツァさん自筆の 「Grazie Marco per questi 25 anni マルコ、この25年間ありがとう」というメッセージが記された特別なヴィンテージとなりました。

 20世紀最高のヴィンテージと騒がれた'97年以前は、とりわけポテンシャルの高いブドウが収穫される畑指定のブドウを用いた「Bellavista ベッラヴィスタ」と「Casuccia カズッチャ」の二種類のクリュワインが生産されてきました。 '64年から'78年にかけて植えられたブドウの樹齢が上がり、高い品質のワインが生産できると判断した'97以降は、特に優れた作柄の年(→'99・'01・'04・'06 の4つ)にだけ2種類のクリュワインが生産されるようになりました。この日はChianti classico Vigneto La Casuccia キアンティ・クラシコ・ヴィネート・ラ・カズッチャ'04 が試飲できました。

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【photo】グラスから立ち上るなまめかしい香りをお届けできないのが残念! 妖艶な表情で魅了するChianti classico Vigneto La Casuccia キアンティ・クラシコ・ヴィネート・ラ・カズッチャ'04 はキアンティの既成概念を覆す出色の出来(左) 偉大なワインの特徴であるベルベットのようにソフトな口当たりと密度の濃い複雑な構造が同居するL'Apparita ラッパリータ'05(右)

 用意されたリーデルのボルドーグラスをゆっくりとスワリングすると、色気のある芳香が立ち上ってきます。ひと口含んだ粘性の高い液体の何と表情の豊かなこと!! エッジが突出することのない見事な調和を見せながら、さまざまなニュアンスが山びこのように次々と現れてきます。男性的なBellavistaと比べて砂礫の多いCasuccia の区画は柔らかさが身上。サンジョヴェーゼにメルロを15%混醸したこのヴィーノのいつまでも消えることの無い余韻に浸りながら、まるで万華鏡を味わっているようだとマルコさんに感動をお伝えすると、醸造家は嬉しそうに微笑むのでした。

 トスカーナ州では初めて栽培に取り組んだというカステッロ・ディ・アーマのMerot メルロは、骨格を成すサンジョヴェーゼの補助的な役割で植えたにすぎないといいます。高評価の中で争奪戦が巻き起こり価格が高騰するトスカーナ産メルロワイン。その火付け役となったL'Apparita ラッパリータの'05ヴィンテージを赤の4本目に頂きました。何を隠そうイタリアの熟練の技が生む皮革製品に目が無い皮フェチな私。上質ななめし皮に喩えられるラッパリータのシルキーな持ち味は決して良い天候ではなかったこの年も全開です。vinsanto_ama04.jpg寸分の隙すら見せないさすがの出来でした。マルコ氏によれば、キアンティ・クラシコのブレンド用に使用するメルロの栽培区画と、このカルトワイン用の畑を分けているとのこと。

 【photo】淡い琥珀色のVinsanto ヴィンサント'04
 
 最後はデザートワインのVinsanto ヴィンサント'04。収穫した白ブドウMalvasia マルヴァジア とTrebbiano トレッビアーノを陰干しして1/5程度の重量にまで水分を除き、干しブドウ状態となったブドウを5年の長期に渡って温度差の激しい屋根裏部屋で作るトスカーナ伝統のワインです。カステッロ・ディ・アーマのヴィンサントは初めて口にしましたが、マルコ氏の解説通り、甘さを抑えた造りになっていました。トスカーナ料理の饗宴を締めくくる甘いドルチェやハチミツを垂らした羊乳チーズ「Pecorino Toscano ペコリーノ・トスカーノ」などと相性が良さそう。ブドウが持つピュアな甘さを極限まで抽出し、唯一無二の高みに昇華する「Avignonesi アヴィニョネジ」と「San Giusto a Rentennano サン・ジュスト・ア・レンテンナーノ」の二大巨頭が Vinsanto Toscano ヴィンサント・トスカーノの白眉と考えるゆえ、同じヴィンサントでもタイプが異なるものでした。

marco_article.jpg【photo】サイン欲しさに私が持参した「グレートヴィンテージ・1990年のキアンティ」の出力紙に目を通すマルコ・パッランティ氏

 ラ・カスッチャ'04とラッパリータ'05は、現在の価格が2万円前後の高級ワインゆえ、両方ともゲットするには相当の勇気を要します(笑)。イタリアワイン好きの私がここぞと奮発したのは、綺麗な酸味を伴うサンジョヴェーゼらしい珠玉の一本、ラ・カズッチャ'04です。加えて産地を訪れた年のワインは必ず口にするというポリシーに則ってキアンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・アーマ'06 のほか、今では稀少なバックヴィンテージの優良年'99を確保、いずれにもしっかりとマルコ氏のサインを頂きました。

 この日のためにプリントアウトした「グレートヴィンテージ・1990年のキアンティ」のブログ記事とともに差し出したのが、自宅のワインセラーから探し出して持参したChianti classico Vigneto Bellavista '97。世紀のヴィンテージ騒動がさめやらぬリリース直後にミラノのPeckで購入し、あまたのセラーアイテムとともに10年以上の眠りについていた一本です。まだ当分は開けるのがもったいないレア物のcon_marco.jpgエチケッタにもこうして作戦通りにサインを加えることができたのでした。

 めでたし、めでたし。
  (⇒ なんだ、セラーのコヤシ自慢かよっ ヽ(`ε´*)

【photo】購入したChianti classico Vigneto La Casuccia キアンティ・クラシコ・ヴィネート・ラ・カズッチャ'04 にもサインを頂き満悦至極の筆者とマルコ・パッランティ氏

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ワインショップ・エノテカ 仙台藤崎店
仙台市青葉区一番町3-4-1 藤崎一番町館1F
Phone:022-265-2303 Fax:022-265-2304
営:10:00~19:00
URL:http://www.enoteca.co.jp/
E-mail:Sendai_shop@enoteca.co.jp

Castello di Ama カステッロ・ディ・アーマ
Località Ama 53013 Gaiole in Chianti - Siena - Italia
URL:http://www.castellodiama.com/

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