あるもの探しの旅

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珠玉のパスタ、Gragnano グラニャーノ

「味の箱舟」にオンリストされるパスタ
 Fusilli Lavorati a mano 手作りフジッリ @EATALY 代官山

 オステリアとして生まれ変わった施設2Fの「オステリア・イータリー」を前回ご紹介した「Eataly 代官山」をもう少し掘り下げてみましょう。

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【photo】ピエモンテの製粉業者Mulino Marino の石臼挽きしたオーガニック小麦と天然酵母で自家発酵させたパン生地を店内で焼き上げるベーカリー(上)には本格的なパン釜(下)を備える。

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【photo】パン職人Panettiere パネッティエーレの仕事ぶりはガラス越しに眺めることができる

 1,200 種類以上の食品をイタリア本国から輸入するという Eataly 代官山では、マーケットエリアで扱う品数の多さにまず圧倒されます。ワインに薬草を加えたリキュール、ベルモット製造元のCarpano 社工場跡にできた14,000平方メートルもの広大なトリノ本店のキーコンセプトにはスローフード協会が全面的に協力しています。「Comprare, Mangiare,Imparare コンプラーレ・マンジャーレ・インパラーレ(=買って, 食べて, 学んで)」という本国で成功を収めているコンセプトは代官山にもそのまま反映されています。

eataly_formaggi.jpg【photo】鮮度の良い食肉加工品・チーズ類も豊富に揃う。ものによっては試食も可能

 ピエモンテ州・リグーリア州といった北イタリアを中心にワイン400種・食肉加工品40種・チーズ80種・パスタ70種もの豊富な食材が並ぶマーケット・エリアは、そこがニッポンであることを忘れさせるほどの充実ぶり。

 日本国内でも流通する大手メーカーの量産品ではなく、高い品質を備えた小規模な生産者の製品が Eataly のほとんどを占めます。
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 7年前に訪れたマルケ州のビーチリゾート、Senigallia セニガッリアの☆☆付きリストランテ「Uliassi ウリアッシ〈Link to website〉」と人気を二分する「La Modonnina del Pescatore マドンニーナ・デル・ペスカトーレ〈Link to website〉」の著名な料理人、モレノ・チェドローニのレシピを製品化したMarmellata マルメラータ(=ジャム)などの品も並ぶ店内に足を踏み入れた私が狂喜したのは言うまでもありません。


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【photo】Eataly 代官山のパスタ売り場はパスタの国イタリアさながらのラインナップ

 長さ5 mほどの陳列棚の前後左右4 面に並ぶパスタだけをとっても、ピエモンテ州では秋に白トリュフと共に食される卵黄の細麺パスタ「Tajarin タヤリン」、ジェノヴァ発祥のバジルソース、Pesto Genovese ペスト・ジェノヴェーゼのために作られたリグーリア州の「Trofie トロフィエ」、隠れ家的な仙台の新生イタリアン「CEPPA チェッパ」佐藤シェフが余りパスタ生地からよく作る不揃いな形の「Maltagliati マルタリアーティ」など、さまざまなショートパスタ、ロングパスタがズラリで目移りするほど。

 上の写真をご覧の通り2 面全てを埋め尽くし、最も幅を利かせているのが、ナポリから南東に20km下ったソレント半島の付け根にあたる人口3万人ほどの Granago グラニャーノで作られるパスタです。Città della Pasta(=パスタの町)として知られるグラニャーノは、パスタ作りにおける理想的な4つの条件を備えています。

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 南イタリア特有の強い陽光、背後に控えるラッターリ山(上画像・標高1,444m )とポンペイを挟んで北方のヴェスヴィオ山(標高1,281m )から吹き降ろす乾燥した風、サレルノ湾の海岸線から2kmという位置にあるゆえの適度な湿度、そしてラッターリ山系の良質な硬度の低い伏流水。これらがプーリア州やシチリア州など、イタリア中南部で生産される最高品質のGrano duro グラノ・ドゥーロ(=硬質小麦・デュラムセモリナ)を原料に、パスタ生地の表面から内側までじっくりと乾燥させる最適な環境を生むのです。

 19世紀後半、乾燥パスタの主原料となる硬質小麦の一大産地であった南イタリアから多くの移民が新大陸に移住しました。故郷の味を懐かしむイタリア系アメリカ人(⇒庄内系イタリア人を名乗る私の遠縁にあらず)にナポリ港から大量のパスタを輸出するため、1885年に敷設された鉄道がパスタの街グラニャーノの名声を高めるのに寄与しました。

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【photo】パスタ製造に理想的な環境に恵まれたグラニャーノでは、屋外でのパスタの天日干しが日常的な光景だったが、現在では見られなくなった

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 パスタ製造所が多く、パスタ職人通りを意味するVia dei Pastai パスタイ通りや目抜き通りのVia Roma ローマ通りには、かつてパスタを天日干しする光景が日常的に見られましたが、現在は衛生面への配慮から法律で禁止されています。

 乾燥パスタ作りに機械乾燥が全面的に導入された現在では、立地に関係なく大量生産が可能となりました。

d_alfonso_paccheri.jpg イタリア国内で最大のシェアを持つBarilla バリラ社は、中部イタリア、エミリア・ロマーニャ州パルマ近郊の高速A1(通称アウトストラーダ・デル・ソル)沿いに唖然とするほど巨大な工場があります。

 このポー川流域の肥沃な平原地帯では、乾燥パスタには用いないGrano Tenero グラノ・テネーロ(=軟質小麦)が生産されます。

【photo】ホースを輪切りにしたような形のパスタ「Paccheri パッケリ」。ソレント近郊の名リストランテ「Don Alfonso 1890 ドン・アルフォンソ1890」が"平手打ち"という意味のこのパスタを特注した先はグラニャーノのパスタメーカー「Di Nola ディ・ノーラ」

 2010年現在、イタリア国内には135のパスタメーカーがあります。乾燥パスタが主流となる南イタリアのグラニャーノでは、規模の大小はありますが、数十軒のメーカーが生産を続けています。谷あいにあるグラニャーノでは、おのずと規模の制約を受けますが、国内生産量の4.2%を占め、年産6万トンの生き生きとした小麦の香りが残る「低温・長時間乾燥」と、ころがり抵抗の強い青銅製の鋳型で表面がざらつくよう白っぽく形成する「ブロンズダイス製法」による高品質なパスタを生み出しています。

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【photo】イタリア食文化の精華を伝えるEataly の主力をなすパスタ、Afeltra アフェルトラ社の製品2種。Rigolosa リゴローザ 穴あきフジッリFusilli con buco は中心が空洞になるよう作られた青銅の型で成形する(写真右)。味の箱舟に登録される IL PASTAIO DI GRAGNANO イル・パスタイオ・ディ・グラニャーノFusilli Lavorati a mano フジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ(写真左)

IGP-Pasta-gragnano.jpg 近年のグローバル化と小麦価格の高騰は、500年近い伝統に培われた職人技に支えられてきたグラニャーノのパスタ産業にとって逆風となっています。ここ数年、廃業に追い込まれる業者が出る中で、2003年には地元の9 社からなる「Consorzio Gragnano Città della Pasta グラニャーノ・パスタの町協会が発足、グラニャーノ産パスタに関する普及啓蒙を行っています。

 EU域内で生産される農産物加工品の生産に関する要件を満たすことを示す「IGPIndicazione Geografica Protetta)保護地理的表示」に認定されたグラニャーノ産パスタは、その表示が認められ、以下の要件を満たすことが求められます。

・硬質小麦粉(デュアル・セモリナ)とラッターリ山系の伏流水を使用、グラニャーノで生産
・青銅製の型(ブロンズダイス)で成形する
・コシを生むタンパク質の主成分グルテンの熱劣化を避けるため乾燥は40℃~80℃で行う
・乾燥後は24時間以内に生産地から移動させることなく包装される

 協会加盟の生産者のうち、現在仙台で入手しやすいのは、明治屋仙台一番町ストアで売られる「 Garofalo ガロファッロ」と、南イタリア随一の著名なリストランテ「Don Alfonso 1890 ドン・アルフォンソ1890〈Link to website〉」が店名を冠したパスタを特別注文する先として選んだ1555年創業の「Di Nola ディ・ノーラ 」の二社でしょうか。

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【photo】 Afeltra アフェルトラ社を傘下に収める Eataly のイートインでは、レベルの高いグラニャーノ産パスタでも一目置かれる同社のパスタを提供する。一口食べれば、たちどころに格の違いを実感できるはず。

 スローフード協会が目利きしたEataly 代官山のグラニャーノ産パスタは、Di Nola ディ・ノーラと1848年に創業した「Afeltra アフェルトラ」のふたつ。アフェルトラについては比較的手頃な価格の赤い紙パッケージに入った「Rigolosa リゴローザ」と透明な包装フィルムの「IL PASTAIO DI GRAGNANO イル・パスタイオ・ディ・グラニャーノ」という二つのラインが揃います。初めてマーケットエリア内に設けられたイートインスペースで食べたエビとフレッシュトマトのグラニャーノ産スパゲッティに受けた衝撃は強烈でした。モチっとした腰の強い食感と小麦を噛みしめるかのような芳醇な薫りには、驚きを禁じえません。Eataly がこだわる本物の凄さは、このパスタを食するだけでもお分かり頂けるはずです。

◆グラニャーノのパスタメーカー、GENTILE 社の生産の模様はコチラ。2:03 頃からフジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ作りに携わる女性職人フジッライアが登場

afeltra-fusilli-a-mano.jpg グラニャーノ伝統の深遠なるパスタ文化に触れたい方は、「Fusilli Lavorati a mano フジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ」をどうぞ。フジッリ専門の作り手であるFusillaia フジッライアと呼ばれる女性たちが、細長い金属の棒に手作業でパスタ生地を巻き付けて螺旋状に成形するこのパスタは、文字通り手仕事(Lavorati a mano)によって一本ごと作られています。最近では、技能と根気を要するこのパスタ作りを受け継ぐ女性が少なくなってきました。そこでスローフード協会は、古き良き伝統を今に伝える Fusilli Lunghi a Mano をプレジディオ(=味の箱舟)に指定したのです。トリノのEatalyでもこのパスタは500gで€ 9,80と高めに価格が設定されています。

◆イタリアのジャーナリスト・TVコメンテータ、アントニオ・ラブラーノ氏がグラニャーノのパスタ作りを紹介する番組にも手作業で行われるフジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノが登場(2:05~)

 手仕事ゆえコイル状の形自体が不揃いで、長さもまちまちになりますが、それも味わいのうち。ブロンズダイスによる機械成形が生まれる以前の伝統製法によるこのフジッリは、長さが50cmほどもあります。パスタ作りにとって理想的なグラニャーノの水と挽いた小麦を真空で撹拌・混合することで、効率優先の機械乾燥にありがちな高温・短時間乾燥がもたらす温度上昇によるグルテンの劣化が避けられます。さらに風味を失わわぬよう、45℃から50℃未満で、形状ごと24時間から52時間をかけて低温・長時間乾燥が行われたそのパスタは、全てにおいて一線を画するものに仕上がります。

 マンマが手作りしたプレジディオのパスタを半分に折ってしまうのはもったいないし、よほど胴の長い特殊な鍋でなければそのまま茹でることは叶いません。いざ買ったはいいが、どうやって茹でるかが思案のしどころです。いっそのことパッケージの裏面に記載されたServizio Clienti(=顧客サービス窓口)の電話番号081-8736080 に「Pronto...(=「もしもし」の意)」と問い合わせしようかと真剣に悩む私なのでした。

Premiato Pastificio Afeltra グラニャーノにあるアフェルトラ社所在地 MAP】

大きな地図で見る

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Eataly 代官山
eataly-logo.jpg 住:東京都渋谷区代官山町20-23 代官山ラヴェリア2F
(東急東横線 代官山駅より徒歩2分)
Phone:03-5784-2736
営:マーケット 10:30‐21:30 
  イートイン 11:00‐21:00(L.O.)平日15:30-17:30休憩
  バール   11:00‐21:30
URL:https://www.eataly.co.jp/

※2016年追記:代官山店は契約満了により移転。現在は
           グランスタ丸の内・日本橋三越に出店中

Premiato Pastificio Afeltra
Via Roma,8/20 GragnanoNA
Phone:(+39)081‐8736080


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コメント

初コメントです。A●●C取材ではお世話になりました(Hです)。
以前はよくパスタを食べていたのですが、街場を離れてからはとんとイタリアンに行く機会が少なくなっています。
ブログ読んでいたら、美味しいパスタへの渇望が高まりました(代官山まで行くのは無理ですが)。
ところで50㎝のパスタは、無事茹でることできましたか(^^)

izumi様

初コメありがとうございます。お礼に耳寄りな最新情報をば。Eataly のオンラインストアが、この10日にオープンしましたっ!! Gragnano 産パスタでも別格のAfeltra 社の製品が豊富に揃いますので、覗いてみてはいかがでしょう? http://www.e-eataly.jp/

 話は変わってFirenze のリストランテLa Giostraで長らくシェフを務めたLuigiさん(日本人です)が若いイタリア人の料理人を伴って故郷仙台にオープンさせる本格イタリアンが、間もなく国分町にできます。内装を手掛けたのは、かの尾形欣一氏。そこでも美味しいトスカーナ料理が頂けそうですね。

 よほど胴の深い鍋でなければ茹でられない50cmのフジッリは、どうやら折って茹でるしかなさそうです。そもそもフォークで巻き取るのが大変だし、飲み込むのも一苦労でしょう…(^O^;)

尾形さんが内装なんですね!
あの森の中のアトリエから生まれたオガタイズムが、今度はトスカーナの食を彩る…。
どんなお店になるんでしょう。
探してみます。

izumi様
日伊の若手料理人の架け橋になりたいというLuigi氏の本場仕込みの料理ともども、マエストロOGATAの仕事にも期待しましょう!!

【追記】
施設の建て替えのため、代官山店は現在CLOSE。
現在営業している「日本橋三越店」を含む最新情報はこちらから。

http://www.eataly.co.jp/index.html

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