あるもの探しの旅

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What is AeroPress ?

欧州を席巻する新発想のコーヒー抽出器具
AeroPress エアロプレス

 低価格が売りのチェーン店とシアトル系コーヒーショップの台頭で、昔ながらのサイフォンやネルドリップの"珈琲"を飲ませる喫茶店は今や絶滅危惧種となりました。シアトル系コーヒーショップがエスプレッソと共に日本に概念を持ち込んだのが、スペシャルティーコーヒーと呼ばれる産地の個性が現れた高品質なコーヒーです。ウイスキーにおけるブレンドvsシングルモルトの構図と同様、複数の産地の豆をブレンドするのではなく、産地や農場ごとの個性を表現した単一産地のシングルオリジンと呼ばれるコーヒーが注目を集めています。世界で流通する生豆の中で、スペシャルティーコーヒーとしてランク付けされるのは5%にも満たないため、稀少性が高い豆です。

bal_mesette_kenya.jpg 【photo】 ケニア最良のコーヒー産地、ケニア山南麓のエンブ高原地域にあるGakundu Farmers Cooperative Society ガクンドゥ農協〈Link to website〉産のシングルオリジンコーヒー。仙台市泉区桂のカフェBal Musette にて

 昔ながらの喫茶店のカウンターで客がマスターと語らう光景は、もはや過去のものとなりつつあります。物事の移ろいが目まぐるしく人間関係が希薄になる一方の日本とは違って、人同士の結びつきが強いイタリア社会にあって、いかなる時代にあっても情報交換や絆を確認する場として滅びることがないBar バールについては、かつて不変の存在意義について語りました 《Link to back number》。

 バールの店主やカッフェをサービスする従業員「Barman バールマン」を指すイタリア語「Barista バリスタ」という言葉はある程度日本に浸透したように思えます。これはStarbucksやTully's など、エスプレッソベースのコーヒーで日本に進出したシアトル系コーヒーショップがこの言葉を使用したことによるものでしょう。呼称は同じでもテイクアウトが主流のシアトル系チェーン店と、店内である程度の時間を過ごす常連客へのきめ細やかな接客が求められるイタリアのプロフェッショナルなバリスタとでは、求められる職能要件が大きく異なるように思われます。

WCC-2006_Berne.jpg【photo】2006年、スイスのベルンで開催されたカップテイスターズ・チャンピオンシップ。8分の制限時間内に、3つのカップの中で異なるコーヒーを言い当てる正確さと速さを競う競技を8セット行う。競技者は大体5秒以内にはカップごとのテイスティングを済ませなければならず、その表情は真剣そのもの © Luca Siermann, Stuttgart/Germany 2006

 米国と欧州のスペシャルティコーヒー協会がバリスタの技能向上を目的に2000年から毎年開催しているのが、エスプレッソやカプチーノの抽出技能とスマートな所作を競うワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(以下、WBCと略)〈Link to website〉と、味利き能力を競うカップテイスターズ・チャンピオンシップ〈Link to website〉、カプチーノの芸術性を競うラテアート・チャンピオンシップ〈Link to website〉などの各種競技会です。変貌著しい世界のコーヒーシーンの最先端が垣間見れるこれら競技会においては、エスプレッソ発祥の地イタリアよりもデンマーク、ノルウェーといった北欧諸国や紅茶のイメージが強い英国の台頭が目に付きます。

2008-WLC-CP-5865.jpg【photo】2008年、デンマークのコペンハーゲンで開催されたラテアート・チャンピオンシップより。8分の制限時間内にカプチーノのミルクフォームやカフェラッテの上にさまざまな模様を描き出し、味と技能、独自性などを競う。ロンドンで開催された今年の大会には世界各国から33名のバリスタが出場、日本代表の村山 春奈さんが、日本人初となる優勝の栄誉に浴した© Luca Siermann, Stuttgart/Germany 2008

 WBCでは、フィレンツェのLa Marzocco 社製のエスプレッソマシンを使用します。バリスタに支持される高い機能性と安定性を兼ね備えたこのマシンは、ハンドメイドされるがゆえにエスプレッソマシンのRolls-Royceと呼ばれるのだそう。(もう一方のイタリアの雄、La Cimbali のエスプレッソマシンの例えに用いられるFerrari はそちらに譲るとして、華のあるそのフォルムからすれば、重厚な英国車ではなく、妖艶な色気が漂う Maserati がよりふさわしい、と私は思う)こうした競技会の一角に2008年から新たに加わったのが、World Aeropress Championships です。この競技会の特徴は使用するコーヒーの抽出器具にあります。

 スペシャルティコーヒー協会主催の各競技会が行われた今年の6月23日・24日の2日間、ロンドンで24名の競技者が参加した World Aeropress Championships が開催されました。大会を主催したのはノルウェーのカフェTim Wendelboe〈Link to website〉。首都オスロの住宅地の一角にあるこの小さなカフェは、過去10回のWBCで多くの入賞者を輩出しています。審査にあたったのは2004年のWBCで優勝、翌年にはカップテイスターズaeropress.jpg・チャンピオンシップの覇者となったティム・ウエンデルボー、ロンドンのSquare Mile Coffee Roasters からは、2009年のWBCで優勝したグィリム・デービスを育て、カップテイスターズ・チャンピオンシップで2007年に優勝したアネット・モルドヴァら、スペシャルティ・コーヒーの世界ではいずれ名の知れた8名の面々。

【photo】「これまで所有した中で最良のコーヒーメーカー」「人生で味わった最高のコーヒー」「フレンチプレスより早く、より美味しく、信じられないほどスムーズなコーヒー。後片付けも簡単」・・・。いささか大げさではないかというユーザーの賛辞がいくつも列記された「AeroPress エアロプレス」のパッケージ。さて、真偽のほどは?

 今年で3回目となる競技会場に仙台市泉区から乗り込んだのが、競技会の模様を伝える下記動画の画面左下にチラリと横顔が見えるカフェ「Bal Musette バル ミュゼット」のオーナーバリスタ、川口 千秋氏です。先日バル ミュゼットを訪れた際、六角形のパッケージに入った「それ」を目にしました。「日本で今コレを扱っているのはウチだけかも...」という所有欲を激しく突き動かすマダム・明子さんの一言に加え、川口バリスタが目の前で使い方を実演してみせた「AeroPress エアロプレス」で淹れたシングルオリジンコーヒー、ガクンドゥ農協産ケニアの持ち味と個性をくっきりと描き出すポテンシャルの高さに購入の意思を固めた次第。

  

 上記動画では今年のWorld Aeropress Championships におけるAeroPressを使用してのコーヒー抽出の模様が記録されています(仕上げに炭酸水製造具SodaStreamで作った炭酸水を少量加える演出がなされる)。飛行距離の世界記録を持つフライングディスクAerobie を設計した米国人発明家アラン・アドラー氏が開発し、欧州のバリスタたちが熱い視線を注ぐこの新発想のコーヒープレスツールについて、次回さらに迫ってみます。
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コメント

 ついにAeroPress 始動ですね。bal に入ってきたエルサルバドルのニュークロップ、これがまたすばらしいキャラクターを体験できます。AeroPress のクリア抽出でも出てくる上質な柑橘系の酸味特性が、エスプレッソだとさらに強烈なスパークリングが味わえます。
 なんとなくAeroPress とエスプレッソの両刀使いで世界との距離が近づいてている感じがするのは私だけなのでしょうか 日本の珈琲文化はクローバーやエアロプレスの普及に対しても言
えることなんですが大人の理由からこれまた閉鎖的な部分が多々あってなんとなくズレがあるように感じています。そんなところの断片を今回のリポートでも垣間見ることが出来ますね。
方向性はすこし違うかもしれませんが…。とにかくいわゆる日本の珈琲文化から隔離された東北でそんな流れがおきたら面白いかもしれませんね。ではネタの続きを楽しみにしています。

▼ haraiso21様
 前人未踏の高みを踏破せんと歩みを止めない求道者のごとき熱情あふれるコメントをお寄せ頂き有難うございます。我らが足元には川口バリスタのような世界最高峰の頂きに目を向けた願ってもないシェルパが存在します。

 北欧やロンドンを舞台に進化し続けるスペシャルティコーヒーの世界を、地元に居ながらにして窺い知ることができるなんて、千載一遇の幸運なめぐり合わせだと思う者のひとりです。

 CloverとAeroPressを両方とも配備し、その味を家庭でも味わうべく小売している(車1台分の値段に匹敵するCloverではありませんが…)カフェはBal Musette をおいて日本にはまずほかに存在しないでしょうから。

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