あるもの探しの旅

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Io sono il feticismo di cuoio 私、革フェチなんです。

魅了してやまない、頬ずりしたくなる革の質感
Peroni のコインケース

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 右写真は、ある会合で先だって伺った仙台市太白区の割烹で頂いたアマダイのお茶漬けです。ふんわりとした食感の白身もさることながら、パリッと香ばしく鱗焼きした皮の美味しさが際立っていました。かつて取り上げた新潟・村上「味匠 喜っ川」鮭の酒びたしの皮もそうですが、香ばしく火入れした魚の皮の美味しさは、魚好きならご存知かと思います。とはいうものの、今回は魚の皮フェチについてではなく、本題の前置きであった前回「革フェチまんじゅう」の核心について述べます。まんじゅうの核心=アンコとはいえ、およそ食べ物に関する内容ではないことは、あらかじめ申し上げておきます。

 仙台銘菓、玉澤総本店の黒砂糖まんじゅう。形といい、色あいといい、大きさといい、葛による照りが食欲をそそるお饅頭を連想させずにおかないのが、イタリア・フィレンツェの伝統技法を受け継ぐ皮革職人が作る一個のコインケースです。芸術振興に尽力したメディチ家の庇護のもとで誕生した芸術の域に達するようなフィレンツェ伝統工芸品のひとつが、Cuoio artistico fiorentino(工芸皮革細工)。

 マーブル文様紙を組み合わせた皮革ステーショナリー工房「Giulio Giannini e Figlio ジュリオ・ジャンニーニ・エ・フィリオ〈Link to website 〉」、所有欲を激しくそそる妖しい輝きを放つ「Il Bussetto イル・ブセット」、そして今回取り上げる「Peroni ペローニ」のような皮革細工だけでなく、この街の路地裏には珠玉の伝統工芸品を扱う工房が数多く存在します。 

feticismo di cuoio.jpg【photo】革フェチである確かな証しとなる庄イタの私物の一部。マーブル文様紙の内張りが魅力を倍増させるジュリオ・ジャンニーニのペンケース(写真左)、フィレンツェ銘菓 黒砂糖まんじゅう 。もとい、Peroni ペローニのコインケース(写真手前)と名刺入れ(写真奥)。多彩なカラーバリエーションの中から選んだのは、故意に色ムラを出すBriar ブライヤー仕上げのブラウン

 イタリアプロサッカーリーグ・セリエA2004-05シーズンに中田 英寿が在籍した「フィオレンティーナ」のホームスタジアムStadio Artemio Franchi スタディオ・アルテミオ・フランキのすぐ近く、ほとんど観光客は足を運ばないフィレンツェ市街地北部のカンポ・ディ・マルテ駅から歩いて15分ほどのVia Guglielmo Marconi グリエルモ・マルコーニ通りにひっそりと工房を構える「Fratelli Peroni フラテッリ・ペローニ」。Fratelli(=兄弟)という名が示す通り、この工房はピエロとロベルトのペローニ兄弟によって、1956年に創業しました。

peroni-briar.jpg 【photo】心地よく手に馴染む一枚皮から出来ているかに見える縫い目ひとつない艶やかな曲面のフォルム。開けばフタがコインの受けになり、使い勝手もすこぶる良いPeroni のコインケース

 3代続く皮革職人であった父の跡を継ぐため、兄ピエロは15歳からルネサンス時代の技術を受け継ぐ工房で修行の道へ進み、弟ロベルトもほどなく続きました。ピエロの息子であるマウリッツィオとマルコが工房に加わり、ロベルトが第一線を退いた現在は、ピエロを含めて8名の職人が500年以上続く熟練の技を受け継ぎ、およそ1,000種類もの製品を完全ハンドメードで生み出しています。

 Peroni の技術の粋が集約されているのが、継ぎ目のない一枚皮から造られたかのように仕立てられるPorta monete(コインケース)です。

 全製品の8 割が輸出されるPeroni を代表する人気商品で、豊富なカラーバリエーションを展開するコインケースは、とりわけ日本で需要が高いのだといいます。私のお気に入りは色ムラを出すよう仕上げた風合いがヴィンテージな雰囲気を醸し出すBriar と呼ばれるラインのアンティークブラウンのもの。クロコダイルやオストリッチ、リザードといった高級稀少素材も扱うPeroni ですが、生後1~2年のカーフスキンを用いた主力商品Linee standard のなかでも、とりわけ表情豊かな逸品です。

marco peroni.jpg【photo】500年前とほとんど変わらぬ手法で本の装丁作業を行うマルコ・ペローニ

 ひとつのコインケースを仕上げるための33 に及ぶ工程は、手間ひまを惜しまない職人技のなせるものです。世界最高水準の植物性タンニンを用いたなめし技術が受け継がれ、トスカーナ州ピサ県のアルノ川沿いの街、Santa Croce sull'Arno サンタ・クローチェ・スッラルノで加工された傷ひとつ無い珠玉の皮だけを使用します。型抜き・裁断・成型・染色・ツヤ出しといった一連の工程は一貫して手作業で行われます。縫い目すらない受けとフタは、驚くことに始めは別々のパーツとして作業が進行します。

 革は柔軟性を出すために、まず一度お湯に浸してから木型にはめ込んで乾燥させます。木製の台座の上で型抜きされた革を細釘で固定しながら工具で引き伸ばし、大まかな成型を行います。革が馴染むまでおよそ8 時間置いてから周辺部を切り除き、加熱したコテで滑らかな曲面を描く表面を丹念に仕上げてゆきます。隙間が出ないようぴったりとフタが閉じるよう、型通りに仕上がったところで、受けとフタの接合に移りますが、ここからが職人技の見せどころ。接着する部分をナイフで削り、接合部が全体と厚みが同じになるよう処理を施してからニカワで接着。接合部を木槌で叩いて馴染ませ、一体感を生みだします。

decora porte.jpg【photo】本の装丁でも使われる熱した鉄コテを用い、23金の金箔を圧着させて文様をつけたクラシックなPeroni のコインケース

 染色は合成染料ではなく、環境負荷の少ない植物性の染料を使用します。これによって、使い込むほどに艶に深みが増し、独特の風合いが生じるのだといいます。さまざまなカラーバリエーションがあり、丸みを帯びたフォルムとあいまってキュートな印象を与えるビビッドなイエローやピンクが作られる一方、クラシックな雰囲気を醸し出す金箔で伝統的な文様をフタに刻印した端正なモデルもあり、古都フィレンツェらしさを感じさせます。

peroni-briar_tutti.jpg【photo】豊富なカラーバリエーションから、一生ものとなる好みのひとつを選びたい

ルネッサンス期に確立した手法で作られた豪奢な装丁がなされた書物などの修復と、その技術を取り入れた新たな製品作りを行うプロジェクト「Museo Museo」にも協力するPeroni。彼らは伝統に固執するだけでなく、フィレンツェで毎年1月と6月に開催される世界最大規模のメンズモード展示会「Pitti Imagine Uomo」にGianfranco Ferré、Fendi、Gucci などのトップブランドとコラボした新作を出品しています。500年以上変わらぬ伝統の技が惜しげもなく注ぎ込まれたPeroni のコインケースは、完全ハンドメイドゆえ、ひとつとして同じ物は存在しません。だからこそ愛着がわくのですね。
 
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Fratelli Peroni フラテッリ・ペローニ
Piero e Maurizio s.n.c.
Adress:Via Guglielmo Marconi, 82, 50131 Firenze
Phone: +39 055 572520 • fax :+39 055 561029
URL:http://www.peronifirenze.it/home.ita.php
e-mail:info@peronifirenze.it.

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