あるもの探しの旅

« 酷暑を乗り越えた「初ゆき」の味 | メイン | 南三陸の新春を飾る「きりこ」 »

待望のピッツァ・ナポレターナ@仙台

新生「Pizzeria Padrino 」で
 県内随一のPizza Napoletana を

 皿の上だけでは、生命を健全に維持する食べ物の背景は見えてきません。自宅に居ながら食材が届くお取り寄せもまた同様です。実際に産地や料理の本場に足を運び、背景にある風土や歴史を知り、人と接することで、それまでは気にもとめなかったことが初めて見えてきます。

spacca_napoli1.jpg【photo】無秩序でも魅力的なナポリを象徴するSpacca Napoli スパッカ・ナポリ地区

 Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅~では、主観に基づく断定が氾濫する飲食店情報サイトのような個人的価値観を振りかざして飲食店の優劣を語ることをしていません。これは上から目線が鼻につく赤い装丁の某レストランガイド本が、☆の数で店をランク付けする手法を良しとしない私の考えによるものです【注1】。以上の原則をもってしてもなお、是非ご紹介したいピッツェリアを、今回は期待を込めて取り上げます。

 喧騒渦巻くナポリの下町で生まれた庶民の味ピッツァ。仙台におけるナポリピッツァ草分けの「Pizzeria de Napule ピッツェリア・デ・ナプレ」が、小麦をオーガニックに切り替えて以降、一番町に店があった頃から追求していた本場と寸分違わぬ食感が変わってしまいました。香坂ピッツァイオーロの不在が恒常化して以降、これぞ!と納得できる店が、仙台と名取・富谷など近郊には長いこと存在しませんでした。砂をかむような空白期間に終わりを告げる本物のピッツァ・ナポレターナを従来よりぐっとリーズナブルに【注2】味わえるピッツェリアが、このほど仙台に登場しました。以下、実食による速報レポです。

taihei_isawa.jpg【photo】薪窯を前に意欲を語る勝山企業 伊澤 泰平社長

 先月30日、東北No.1のリストランテを目指す「Padrino del Shozan パドリーノ・デル・ショーザン」を会場に催された「宮城・ローマ交流倶楽部」のクリスマスパーティで、勝山企業の伊澤泰平社長とお会いしました。パーティがはねた後、リストランテの入口に設置されたひときわ目を引くピッツァ窯が、いかに性能が良く、いかに造作にこだわったかを30分以上に渡ってご説明頂きました。芸術的な板金加工で注目される宮村浩樹氏〈Link to website〉が手掛けた窯は、本場でも滅多にお目にかかれないような、一見の価値があるゴージャスで美しい窯です。

 宮村氏の見事な職人技が光る銅製の天蓋と煙突、打ち出しによる「PADRINO」の銘板が正面を飾るその窯は、ナポリで最も信頼される薪窯工房「Gianni Acunto ジャンニ・アクント〈Link to website 〉」による完全オーダーメード。ピッツァを載せる炉床には熱伝導が穏やかなソレント近郊の粘土を用い、6人の職人が窯ひとつを4~5日かけて仕上げます。この窯を東北で使っているのは、知る限りにおいて宮城調理製菓専門学校併設の実習カフェ・ピッツェリア「Il Viale イル・ヴィアーレ」を除けば、鶴岡「穂波街道 緑のイスキア《Link to backnumber》」のみ。今年8月オープンした弘前「ピッツェリア・ダ・サスィーノ」では、同社の技術を受け継ぐジャンニの弟マリオのブランド「Mario Acunto マリオ・アクント〈Link to website〉 」 を導入しています。日本では輸送コストが上乗せされるイタリア製を導入せず、コスト面から日本製の窯を使ったり、自作する場合すらありますが、耐久性や性能では、やはりイタリア製に及びません。

acunto_napoli.jpg

 「窯の中に手を入れてみて下さい」という伊澤社長に促され、開口部を覆う銑鉄製の蓋を外した窯に手を入れてビックリ。昼の営業終了後の15:30過ぎに火を落としたという窯の中は、6 時間あまりを経てなお、サウナどころの熱さではなく、一瞬で手を引っ込めてしまいました。「この断熱と保温性能の素晴らしさこそイタリア窯の良さです」と伊澤社長。リストランテを兼ねるピッツェリアでは、朝一番に前夜の余熱でパンを焼いてしまうというのも頷けます。

takehiko_chiba@padrino.jpg

 伊澤社長は「ナポリの庶民の味であるピッツァが手頃な値段であるように、もうすぐ素材のクオリティとピッツァの美味しさはそのままに、価格の大幅見直しをしますよ!! 期待してください」と語りました。今から2010年前、救世主の誕生を心待ちにしたベツレヘムの羊飼いの心境はかくありなんと、リニューアルした「Pizzeria Padrino ピッツェリア・パドリーノ」を先週から今週にかけて2度訪れました。まずは自分の舌でナポリを代表するピッツァ、マルゲリータとマリナーラを実食するためです。

【photo】調達しうる最高の素材と窯で本場仕込みのピッツァ・ナポレターノを提供する千葉 壮彦ピッツァイオーロ

 窯を預かるのは、本場ナポリで2年半腕を磨いた登米出身の千葉壮彦(たけひこ)ピッツァイオーロ。聞けば2000年(平成12)から2年間、ピッツェリア・デ・ナプレで、香坂師匠からナポリ仕込みの味をたたき込まれたのだそう。後半の1年間は、店に寝泊りして基礎を固めたそうです。「冬は良かったのですが、夏は大変でした」と千葉さん。そりゃ、そうでしょう。体の芯から暖まる遠赤外線を発する薪窯の暖房完備のもとで寝なければならないのですから(笑)。

takehiko_chiba2@padrino.jpg ペルージャでの語学研修の後、千葉さんは単身ナポリに渡ります。2003年に誕生し、のちに国内外に95店舗を展開するまでに急成長した「Fratelli la Bufala フラテッリ・ラ・ブファーラ」のナポリと近郊のカセルタにあるグループ店舗で働きます。ピッツェリア・パドリーノの生地に同じ小麦の配合を取り入れたという名店「Di Matteo ディ・マッテーオ」でも2ヵ月腕を磨き、都合2年半、本場で研鑚を積みました。2002年冬に帰国後は、古巣のピッツエリア・デ・ナプレを経て、五反田の「Galibardi ガリバルディ」を立ち上げた後、日本におけるピッツァ・ナポレターナの第一人者、渡辺 陽一氏の店「パルテノペ恵比寿」の厨房で南イタリア料理もマスターします。

【photo】生地の向きを変えながら、窯の中の対流熱で一気に焼き上げる

 期待を胸に訪れたピッツェリア・パドリーノは、チケット前払いのセルフサービスによるカジュアルなシステムを取り入れています。9時に薪で火入れした窯の炉床は理想的とされる450℃~485℃を維持するよう目を配ります。小麦粉は名だたるピッツァイオーロが厚い信頼を寄せ、ナポリにおけるシェアが7割を超えるという製粉メーカー「Antimo Caputoアンティモ・カプート〈Link to website〉」のピッツァ専用小麦粉、小麦の芯の部分を細挽きしたRinforzato tipo"00" リンフォルザート(通称Sacco rosso サッコ・ロッソ=赤袋)とPizzeria ピッツェリア(通称Sacco blu=青袋)の二種を配合して使用します。

【photo】窯の目の前でアツアツを味わえる至福のピッツァ・マルゲリータ

margherita_padrino.jpg テイクアウトにも対応しますが、ピッツァは焼き立てが一番。チケットを購入して南欧の雰囲気を漂わせる開放的なテーブル席で頂くとしましょう。サイズはS(直径14cm)M(20cm)L(28cm)の3つ。ナポリでは、おおよそ28cm がスタンダードな大きさとなります。ナポリピッツァの代名詞ともいえるマルゲリータの重要なファクターであるモッツァレラ・ブファーラ(水牛乳のモッツァレラチーズ)とフィオール・ディ・ラッテ(牛乳のモッツァレラ)は、発祥の地カセルタで伝統製法による少量生産を貫く「Caseificio Ponticorvo カセイフィチョ・ポンティコルヴォ〈Link to website 〉」から出荷後24時間以内に日本へ届く鮮度の高いものを、週3回空輸で取り寄せているそうです。

 能書きはこのぐらいにして、お味のほうが気になるところ。窯を目の前にしたポールポジションで焼き立てを味わえるのがうれしい限り。ナポリのピッツァ好きたちは、なるべく窯に近い席に陣取り、ピッツァが運ばれてくると、それまで身振り手振りを交えて夢中になっていたおしゃべりを止めて食べ始めます。日本で言えばカニを食べる時の真剣さに似ているかもしれませんね。最初に頂いたマルゲリータ、後日頂いたオレガノが香ばしい生地と絡み合うマリナーラともに、非の打ち所がなく一気に食べ切ってしまいました。

marinala_padrino.jpg【photo】マリナーラ。チーズを用いず、生地の上にトマトソース・ニンニク・オレガノ・バジルをトッピングするナポリ伝統のピッツァ。このようにピッツァ・カッターでカットされた上でサーブされる

 現状ではカトラリーが簡易なプラスチック製のため、本場とは違ってカッターで6つに切り分けてサービスされます。私が頂いたLサイズは、6等分してあっても一口では食べきれないため、更に半分に切り分け、中心からコルニチョーネと呼ばれる盛り上がった縁へ向かってクルクルと生地を巻いて頂きました。嬉しいことに価格が手頃なので、小ぶりなSサイズならば、2種類の異なるピッツァを時間差でオーダーしてもいいでしょう。

banco_padrino.jpg

 私が頂いたマルゲリータ、マリナーラともにピッツァ・ナポレターナの風味を忠実に伝えるものでした。千葉ピッツイオーロによれば、オリジナルメニューの「ヴェルデ・ポッロ」(マリナーラ+サニーレタス・エンダイブ・トレビス、トマト、ローストチキン、マヨネーズドレッシング、パルミジャーノ)と「パルミジャーナ」(マルゲリータ+メランザーネとミートソースのグラタン)も是非味わってみて下さいとのこと。まずは私が頂いた基本の2品から、お熱いうちにBuon appetito ~♪

************************************************************************


URL:http://www.shozankan.com
 
<メニュー一例>
マリナーラ :S500円 M700円 L1,000円
マルゲリータ:S600円 M850円 L1,200円
ヴェルデ・ポッロ / パルミジャーナ:S710円 M1,000円 L1,500円
※テイクアウトは上記と同額。リストランテからもピッツァはオーダー可能

【注釈1】 八つ当たり気味の本音炸裂トークは「ルチアーノ・サンドローネ訪問記」冒頭部分を参照願います 

【注釈2】スパッカ・ナポリ地区にある名店 Di Matteo では、マリナーラ2.5エウロ、マルゲリータ3エウロ、小腹が空いた時に食べる生地を揚げただけのPizza fritta は1エウロ。軽食がとれるBar(バール)以外のイタリアの飲食店では、少なくとも一食につき20エウロ以上の出費が必要だが、ピッツェリアは例外。一皿で完結する食事を意味する「Piatto unico ピアット・ウニコ」を手軽に食べることができるピッツェリアは庶民の味方である

baner_decobanner.gif

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.