あるもの探しの旅

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南三陸の新春を飾る「きりこ」

大漁を願う祈りの造形

 大雪に見舞われた北東北各地と山陰地方、暴風雪警報が発令された北日本の日本海側を中心に、新年の幕開けは大荒れとなりました。雪と強風による交通機関の乱れで、やっとの思いで帰省された方もおいででしょう。鳥取では1,000台もの車両がR9号の路上で立ち往生して一昼夜を明かし、係留中の漁船が雪の重みで転覆する被害が出ました。まずは被災された方たちにお見舞いを申し上げます。

capodanno2011.jpg【photo】先端に葉のついた竹に大漁旗や国旗を掲げた漁船。気仙沼市本吉町日門(ひかど)漁港にて ※Photoクリックで拡大

 一方で年末年始は大荒れとの予報に反して、宮城では穏やかな新年を迎えました。薄曇りの空模様のもと、家人の実家がある気仙沼を元旦に訪れました。一般家庭では伝統的な正月の風情が薄れる一方の仙台とは違って、大漁旗を掲げた漁船が、晴れがましい新たな年の訪れを告げています。こうして正月に気仙沼を訪れるたび、存在が気になっていたものがありました。

 新年を迎える気仙沼・南三陸の家庭の神棚には、独特な紙飾りが飾られます。年神様を祀る南三陸地方の家庭では、5枚ほど重ねた白い和紙を切り抜いて網にかかった真鯛や末広の扇などをかたどった「切紙(きりこ)」を神棚に祀る伝統があります。「刻みもの」「お飾り」「恵比寿ご幣(へい)」などとも呼ばれる切紙は、漁の無事と豊漁を願う意匠が伝わる宮城北部の南三陸沿岸地域のほか、農村部では野菜類や米俵を、商家では七福神などの縁起物が飾られてきたそうです。

kiriko1_2009.jpg【Photo】新たな年神様をお迎えする神棚を飾る投網にかかった真鯛と末広を切り抜いた気仙沼伝統の切紙(きりこ) ※Photoクリックで拡大表示

 全国的に見られる一般的な幣束とは異なり、複雑な絵柄を切り出す南三陸伝統の切紙は、江戸時代中期から伝わるそうです。漁師町・気仙沼一帯に多い投網にかかった魚をかたどり、注連縄(しめなわ)のように展開させるもの、南三陸町周辺に多い四角い和紙に七福神や伊勢エビ・宝船などを切り抜くものがあります。その複雑な造形を生み出すため、代々伝わる型紙をもとに、神社でお盆過ぎから製作に取り掛かる切紙は、年の瀬になると神職が氏子の家庭に届けに来るのだといいます。

 各家庭では、大晦日に神棚を清め、新たな切紙を飾り新年を迎えます。宮城に見られる見事な造形を生み出す切紙は全国でも珍しいのだとか。こうした伝承はいつまでも受け継がれてほしいもの。宮城県石巻市北上町橋浦から移築された県指定有形文化財の今野家住宅を一般公開する東北歴史博物館では、切紙ほか井戸神・釜神など、さまざまな正月飾りを1月5日(水)~20日(木)まで展示します(今野家住宅は入場無料)。信仰と結びついた伝承の成り立ちやその由来などを知る好機ではないでしょうか。

◆ 肝入・今野家の正月飾りに続く

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