あるもの探しの旅

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2011/04/24

桔梗が花開く日を信じて

Pasqua パスクア(復活祭)の日に

TorinoUmi.jpg【photo】阿武隈川河口(写真下)と汽水湖「鳥の海」。南側の浜堤部に平坦な防潮林が続く先に見える牛橋河口近くで、宮城県唯一の自家詰めワインが造られていた

 那須岳と連なる旭岳北側に端を発し、福島・宮城を北上した東北第二の大河、阿武隈川が太平洋へと注ぐ海沿いにあるのが、亘理(わたり)郡です。阿武隈山地が北西風を遮り、海洋性の温暖な気候に恵まれ、東北の湘南と形容される山元町も、3月11日の東日本大震災で発生した15mもの高さに達する大津波の惨禍から逃れることはできませんでした。

thedayafter20110311.jpg【photo】海岸線(写真右)から800mほどしか離れていない平坦な地にある「桔梗長兵衛商店」の醸造所(赤いピンマーク)とブドウ畑は、襲い掛かった津波にのみ込まれてしまった

 亘理町から山元町にかけては、ビニールハウスによるイチゴ栽培が盛んで、「仙台いちご」の一大産地として知られています。国道6号線をはさんで海沿いを走る県道38号線には、観光農園が点在し、別名「ストロベリーライン」と呼ばれます。それに対して内陸部を南北に走る道は「アップルライン」と言われる通り、海抜50m~60m前後の亘理丘陵一帯には、リンゴ畑が広がっています。

vini_kikyoya.jpg【photo】店頭で津波にのまれたものの、割れずに残り、汚れを流したエチケット(ラベル)が擦り切れている「桔梗長兵衛ワイン 赤・白」、山元町産のリンゴ紅玉を用いたアップルワイン「紅玉」。松島町「むとう屋」にて

 海浜部ゆえの茫漠たる砂地と沼沢地で、かつては不毛の土地といわれた亘理町浜吉田南部から山元町山下地区にかけて、痩せた土地でも育つブドウ栽培が始まったのが、今を遡ること109年前の1902年(明治35)。昭和30年代までは、県内随一のブドウ産地でしたが、よりブドウ栽培に適した他県の産地に押される形で、ブドウ畑はイチゴのビニールハウスへと姿を変えていったのだといいます。

nama_mutouya.jpg【photo】デラウエアのピュアで爽やかな凝縮した透明感の高い甘味が心地よい「むとう屋生詰めワイン」

 宮城県内唯一のワイナリーが、創業者の名を屋号とする「桔梗長兵衛商店」。醸造免許を取得した1910年(明治43)以降、大正期にはアルコール発酵させない「ぶどう液」の製品化にも成功、ワインと並ぶ特産品として親しまれてきました。見学や試飲ができる施設を造るでもなく、畑仕事に精を出し、ワイン醸造職人に徹した当主の桔梗 幸博さんもまた、花好きだったお母様のよし子さん共々、醸造所を壊滅させた津波で帰らぬ人となりました。享年54歳。心からご冥福をお祈りいたします。

watari_wine.jpg 【photo】桔梗長兵衛商店の「わたり」は、主に生食されるブドウ「キャンベル」を使用した可憐でソフトなワイン。造り手が亡くなった今、エチケットの「わたり」の文字が、哀しみを表すかのように薄墨で書かれている偶然に胸が痛む

 ブドウの個性がストレートに味わえる非加熱・無濾過の酵母入り生詰めワインの製造を持ちかけ、1998年(平成10)から「むとう屋生詰めワイン」として商品化したのが、松島町の酒販店「むとう屋」の佐々木繁社長。東京農大で醸造を学んだ根っからの職人気質の幸博さんに惚れ込み、宮城県唯一の生詰めワインを生むきっかけを作った佐々木社長も道半ばにして逝った醸造家を悼みます。

 むとう屋の佐々木社長は、多くのファンがいた生詰めワインをこうした形で途絶えさせるのは無念だし、かといって他の醸造所に製造を委託するのも忍びないと胸の内を語ります。

 朴訥で飾らない人柄を物語るような"その土地ならではの味がするワイン"を造り続けた幸博さんが情熱を注いだ醸造所は、建屋の残骸が残るのみとなりました。幸博さんと奥様の間には、現在大学で醸造学を学んでいる娘さんがおいでです。

 非業の最期を遂げた家族の後を継いだ女性が素晴らしいワインを造り続けている醸造所は、今日がPasqua パスクア(= イースター・復活祭)にあたるイタリアを例に挙げると、病で急逝した夫の遺志をチンツィア夫人が継いだ「Le Macchiole レ・マッキオレ〈Link to website〉」や、耕作中の事故で命を落とした夫が夢なかばにした醸造所をオルネッラ夫人が継承した「Matteo Correggia マッテオ・コレッジャ〈Link to website〉」があります。

 桔梗の花言葉は「変わらぬ愛」「気品」「誠実」「従順」「変わらぬ心」だそう。全てを失った今は悲しみに打ちひしがれているであろうご家族も、いつの日か、また新たな一歩を踏み出すことを切に願っています。
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mutouya_2011.4.24.jpg

■ 桔梗長兵衛商店
宮城県亘理郡山元町山寺字牛橋19

■ むとう屋
宮城県宮城郡松島町松島字普賢堂23
Phone:022-354-3155(代) FAX:022-354-3156
URL: http://www.mutouya.jp
※ 現在店舗2階で仮営業中

2011/04/16

This is real Fukushima 

風評被害に負けない! 福島

 新潟を含む東北ブロックで、唯一Viaggio al Mondo で取り上げていなかったのが福島です。正直、このような形で母の郷里について語るのは、忸怩たる思いです。

【Movie】3月21日にイタリア放送協会RAIのニュースチャンネルTG3が伝えた福島第一原発事故を巡るニュース「Fukushima, emergenza e speranza(=福島、緊急事態と希望)」

 この一ヵ月、Fukushima が世界の耳目を集めています。国際評価基準(INES)の暫定評価でレベル7という原発事故としては最悪の暫定評価となった事態を受け、EU諸国は日本からの輸入食品に安全性を証明する書類の添付を義務付けるよう求めています。

 人々の暮らしを根こそぎにする惨禍をもたらした地震と津波は抗いがたい天災ですが、東京電力福島第一原子力発電所で起きている事態は、地震への備えを怠った慢心が招いた人災といわざるをえません。資源の乏しい日本が、過剰なまでに膨大な電力の使用を前提に繁栄を謳歌するために、原子力発電は国策として推進されてきました。

hanamiyama_2010.4.jpg【photo】まさに「うつくしま ふくしま」。花盛りの福島市花見山(撮影:2010年4月24日)

 推進派の主張通りに原子力発電所が安全な施設なら、供給エリアに原発があっておかしくありません。年間総発電量の5%前後が失われる送電ロス削減のためにも、エネルギーの一大消費地である東京都心に造るべきです。

 にもかかわらず、国は巨額の交付金を還元してまで、産業基盤が限られた地方で原発建設を進めてきました。今回の事態を招いた東電を例に挙げれば、東京都心からおよそ200km離れた福島や新潟、現在建設が進む青森県東通村に至っては、550kmもの遠隔地です。こうした不条理なエネルギー政策を決定する経済産業省がある霞ヶ関や、東電本社がある内幸町から遠く離れた立地ばかり自己保身をするかのように選んだ理由は、今回の震災によって皮肉な形で白日のもととなりました。

enbangyoza_yamame.jpg【photo】福島名物「円盤餃子」

 チェルノブイリ原発事故の記憶から抱いてきた漠然とした不安は、今や現実として私たちの目の前にあります。対峙する放射能が目に見えない相手であることと、セシウムやヨウ素など放射線についての知識が、一般人には欠如していることが不安を増幅させています。東大病院で放射線治療を担当する専門家集団「チーム中川」によるブログやツイッターによる解説が、放射線がヒトに与える影響について分かりやすく解説しています。

                       ■ ブログ: http://tnakagawa.exblog.jp/
                       ■ ツイッター: http://twitter.com/#!/team_nakagawa

 かき菜やホウレンソウなど、3月中の検査で福島と茨城の葉物野菜の一部からヨウ素(I-131)やセシウム(Cs-137)などが検出されたことがセンセーショナルに報じられました。対象品目の残留放射性物質は、4月に入っていずれも基準値を下回るようになりました。大気中に放出された放射性物質の影響を受けにくいハウス栽培や、問題の原発から離れた産地の野菜は、安全性が確認されています。ここは、やみくもに恐怖心を抱くのではなく、正確な情報収集に努めて冷静な対応をしたいところ。

fragora_fukushima.jpg【photo】福島の生産農家が丹精込めたハウス栽培の青果物。極めて美味。なのに出荷できず廃棄せざるを得ないのが現状

 食品による健康被害を気にするのなら、栄養バランスや加工食品に使用される食品添加物の過剰摂取にこそ気を遣うべき。成長期の子どもの前でタバコを吸うなど、もってのほかです。ところが、食品衛生法が定める安全基準をクリアして出荷された生鮮品や乳製品の多くが、福島や茨城産というだけで買い叩かれ、一般消費者から敬遠され、売り場から姿を消しているのが実情です。原発の事態収拾の目処が立たない現状では、この状況がいつまで続くのか全く見通しがつきません。

 おそらくは長期化が避けられない逆境にあっても、決して負けない福島を発信する取り組みが始まっています。県観光物産交流協会が東京・東葛西に設置しているアンテナショップ「ふくしま市場〈Link to website〉」では、今月上旬から「東北大震災に負けるな! フェア」を実施、都内在住の県出身者らで賑わっている様子が報道されています。

 昨年10月、株式会社第一印刷(本社:福島市)の呼びかけに応じた福島県内の各業種30社ほどで発足したプロジェクト「福の鳥」は、世界に通用する新たな地域ブランドを創出しようというもの。同プロジェクトでは、焼き鳥や牛乳味噌鍋などを新たな名物に育てようと活動してきました。
 ForzaFukushima.jpg  ■ 「がんばっぺ! 福島」トップページURL: http://fukunotori.com/fight/index.html

 県土面積が全国第3位と広い福島は、原発から半径30km以内に設定されている自主的避難を求める「緊急時避難準備区域」外の放射線による健康への心配がないエリアがほとんどです。原発事故が引き起こした風評被害の広がりを受けて、プロジェクトでは桜の名所として知られる福島市の「花見山」を第一弾として取り上げるなど、福島の魅力を紹介するサイト「がんばっぺ! 福島」を立ち上げました。

ganbatte-zzoi.jpg【photo】
例年、多くの花見客で賑わう福島市の桜の名所「花見山」で開催を予定していたという物産市。今回の事態を受け、会場を急遽仙台に移して実施した。山形県米沢市でも今月中に開催予定とのこと

 風評被害に負けない福島をPRするプロジェクトによる「がんばってっつぉい福島! いちば」が、4月8日(金)~10日(日)の3日間、仙台市青葉区本町で開催されました。物産市の会場となったのは本町家具の街。本町商店街振興組合理事長で「家具の大丸〈Link to website〉」代表取締役社長の大村 正さんと、各地の産直施設と独自のルートをもつイベント会社Y.M.O代表 湯浅 輝樹さんが、企画実現に協力しました。

IMG_5327.jpg IMG_0176.jpg【photo】「がんばってっつぉい福島! いちば」当日の模様 〈右写真協力:(株)第一印刷〉
※photoクリックで拡大

 旬を迎えたハウス栽培のニラ・キュウリ・イチゴといった青果物のほか、スルメとニンジンを醤油ベースで和えた福島北部地域の郷土の味いかにんじん・あんぽ柿・味噌・漬物などの加工品、手ぬぐい・会津木綿製品・ポストカードなど福島の各種産品が出品され、3日間で30万円ほどの売り上げがあったといいます。

DVC00355.jpg DSC08414.jpg【photo】「がんばってっつぉい福島! いちば」当日の模様 〈写真協力:(株)第一印刷〉
※photoクリックで拡大

 福島市郊外の飯坂温泉「佐久商店〈Link to website 〉」店長の佐藤ユウ子さんは、店頭で元気と笑顔を振りまいておいででした。自信作のいかにんじん「錦秋」を味見をした私は、鮮度抜群のイチゴやキュウリとともに、購入を即断しました。タレントの佐藤B作さんの弟さんが営むという同店は、取り扱う果物にも品質へのこだわりが感じられます。

ikaninjin_kinshu.jpg【photo】佐久商店のいかにんじん「錦秋」

 店頭を今回のイベントに提供した大村社長は、「被災者同士、カラ元気でもいいから前に向かって進む姿を発信したかったのに加え、自分たちが取り扱う品に絶対的な自信を持つ福島の方たちとコラボすることで、ホンモノだけを扱う本町家具の町の魅力を伝えたかった」と今回の試みについての意義を語ります。本町商店街振興組合では、今後も福島とのコラボによる催しを検討してゆくそうです。

 4月17日(日)には、宮城郡大和町宮床の「大師山 法楽寺〈Link to website 〉」で、福島産野菜の即売会が実施されます。福島の農家が置かれている現状に心を痛めた住職の遠藤龍地さんが、JA福島に話しを持ちかけて実現の運びとなりました。前日ご自身がワゴン車を運転して福島に出向き、仕入れた青果類を午前10時から境内で即売します(雨天時は本堂で実施)。

 「良いことも悪いことも、自らの行いの結果。だから福島で起きていることは、決して他人事ではなく、これまでの自分の生き方や暮らしのありようを見つめ直す機会として考えて欲しい」と遠藤住職。仙台方面からは、泉パークタウンを大和町ミヤヒル36ゴルフクラブ方向に向かい、宮床小学校の右側です。買い物袋を持参の上、お越し下さいとのこと。売り切れの際はご容赦を。

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大師山 法楽寺
宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1
Phone: 022-346-2106
法楽寺URL:http://www.hourakuji.net/index.html
住職のブログ「想いの記」より
東北関東大震災・被災の記(その29)「福島県の野菜を食べよう会」を行う理由

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2011/04/03

Percarlo per Carlo.

身代わりになったVino

cave_electrolux.jpg【photo】高さ1,735mmの大型ワインセラー上部に取り付けていた転倒防止ポールとあいまって、セラーの扉が開くのを阻止し、大切なセラーアイテムを守ってくれた樹脂製のベルト型開放防止器具。Good job !!!

 3月11日に発生した東日本大震災では、自宅2階に設置しているワインセラーが、扉のロックをしていたにもかかわらず、詰め込んだワインの重さで3台とも全て鍵が押し開けられてしまいました。206本収納できる大型セラーは、念のため取り付けておいたベルト型の開放防止器具が功を奏して無事でしたが、扉が開いた2台の中型セラーは、寝かせていたワインの一部が外に飛び出てしまいました。

broken_percarlo.jpg

 折り重なるように床に散乱したワインの中で、唯一割れてしまったのが、娘のバースデーヴィンテージである'98vin の「ペルカルロ Percarlo / サン・ジュスト・ア・レンテンナーノSan Giusto a Rentennano」。これまでも幾度か触れてきた私が好きなトスカーナ産赤ワインの一つです〈Link to back number〉。

 生まれ年のワインを、いつか人生の節目に開けてもらおうとした当の本人は、中学校で被災しましたが無事でした。その日、私は出張先の弘前市にいました。地震発生時刻は、仙台へと向かう高速バスが震源から遠く離れた青森県碇ヶ関付近を走行中で、乗員乗客は誰一人として地震発生に気付くことすらなかったのです。

 イタリア語では「H」を発音しないため、本名では「iroto」となるため、Carlo(カルロ) と呼んでもらうことにしている私は、割れてしまった'98ヴィンテージのPercarloが、文字通り"per Carlo"(=カルロのために)身代わりになってくれたのだと思っています。

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