あるもの探しの旅

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2011/07/30

10年もの岩ガキ @象潟

鳥海山が育んだ海の加糖練乳・岩ガキ &
  この道50年以上、加藤名人との出会い

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【photo】岩ガキ漁に用いる小型漁船が陸揚げされた小砂川漁港

 にかほ市象潟町小砂川(こさがわ)は、山形県飽海郡遊佐町と県境を接する秋田最南端の地。沖合いの洋上には飛島を、緑の段丘の先には溶岩や火山灰が幾層にも重なった典型的なコニーデ式火山の扇形をした稜線を描く鳥海山が間近かに迫ります。海沿いを進む旧7号線・羽州浜街道沿いに人家が点在する小砂川は、農地には不向きな起伏に富んだ地形ゆえ、おもに漁業を生業とする280世帯が暮らします。


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 山形県境となる三崎公園の周辺は、鳥海山の溶岩流が日本海の荒波によって浸食された断崖の岩場となっています。かつては浜街道きっての難所とされた三崎峠も、現在はキャンプ場を備えた公園として整備されました。海沿いを走るR7にせよ、車窓に美しいオーシャンビューが広がる羽越本線を利用するにせよ、現在では想像すらつきませんが、1804年(文化元年)に発生した大地震で象潟一帯が隆起して陸地化する前は、松島のような幾多の浮島・九十九島(つくもじま)が織りなす見事な美観だったといいます。

marina_kosagawa.jpg【photo】砂浜の至るところから夏でも10℃ほどしかない鳥海山の清冽な伏流水が湧き出す。湧水が幾筋もの流れを砂浜に刻みながら日本海へと戻ってゆく小砂川海水浴場

 今から322年前の1689年(元禄2)6月16日(陽暦8月1日)、俳聖・松尾芭蕉は、おくの細道の最終目的地・象潟を訪れます。景勝地として知られた象潟への道すがら、酒田からの道筋で最も難渋した三崎峠には、有耶無耶の関があったと伝えられます。9世紀に朝廷が蝦夷に備えた有耶無耶(うやむや)の関は、宮城・山形県境の笹谷峠に設置されたとする説もあり、時を隔てた今となっては、その在り処は文字通りうやむや...。

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 秋口の産卵を控え、たっぷりと抱卵したミルキーな岩ガキを目当てに象潟まで足を延ばした2年前の8月、県境手前の脇道を入った小砂川漁港を訪れました。港へと向かう道筋に数軒の番屋があり、午前の素潜り漁を終えた漁師たちが休憩時間を過ごしていました。そこでお会いしたのが、加盟する15人の組合員全てが夏は岩ガキ漁を行う小砂川漁協の組合長を務める菅原 光禧さん(75)。

【photo】松尾芭蕉を慕って明治26年におくの細道を巡り、紀行「はて知らずの記」を残した正岡 子規が象潟を訪れた際、ウチに立ち寄ったんだよと語る菅原 光禧さん

 海流の関係で、湾内に砂が堆積しやすい小砂川は、定期的に浚渫する必要があるのだそう。漁港を維持するのもご苦労が絶えないのです。山形県吹浦から象潟にかけての一帯は、至る所で膨大な年間雨量に達する鳥海山の伏流水が湧出する地点があります。それは海中とて同じで、養分豊富な海水のもとで増殖する植物プランクトンを目当てに動物プランクトンが集まります。そうした場所にはプランクトンを餌にする天然岩ガキの群生がわんさと見られます。人家が多い象潟市街中心部や酒田市街から離れた小砂川のエメラルドグリーンの澄んだ海は、生活排水が流れ込む川が無いため、とりわけ岩ガキにとって恵まれた環境となります。

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【photo】店頭で殻を開けサッと水洗い。産地ならではの鮮度抜群の岩ガキゆえ、レモンを利かせ過ぎないほうが、持ち味を満喫できる

 例年6月末から7月上旬に解禁となる岩ガキ漁は、8月いっぱいが漁獲期。庄内浜から由利沿岸の天然岩ガキ漁は、素潜りで行われます。昨年「カワいすぎる海女」で有名になった岩手県久慈市小袖地区で100年以上の伝統がある北限の海女を挙げるまでもなく、素潜り漁は女性のイメージがあります。由利から吹浦にかけての漁場では、水深5~15mの岩場やコンクリート製テトラポットに張り付いた天然ものを専用の金具を用いて捕獲しますが、海に入るのはもっぱら男の仕事です。

maestro_sumoguriryo.jpg【photo】どうです、この風格。今年で82歳ながら現役バリバリ素潜り漁名人、加藤 長三さん

 「誰よりもいい岩ガキを採ってくる」と7歳後輩の菅原さんが語るのが、80歳を越えながら、海が荒れない限りは漁に出ているという加藤 長三さん(82)。加藤さんは現在のように岩ガキが一般に流通する以前から、半世紀以上に渡って素潜り漁を続けてきたのだといいます。海を知り尽くした寡黙な海の男は、多くを語るでもなく窓の外に広がるグランブルーな大海原へと目線を送るのでした。冬が旬のマガキ特有の香りが苦手な私をも虜にする今が旬の岩ガキ。冬ガキにはない甘味の強い風味が広く知られるようになりました。シーズンの週末ともなれば、岩ガキ目当ての長い行列が道の駅に出現します。

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 賢明なViaggio al Mondo 読者は、そうした長蛇の列には並ばず、象潟や吹浦にある鮮魚店を覗いてみることをオススメします。小砂川・象潟・金浦などの産地名・船名など、トレーサビリティ情報を表示した保冷ケースから取り出した鮮度抜群のリーズナブルな岩ガキを店頭で食することができます。

 最後に私の握りこぶしよりも遥かに大きな小砂川産10年もの岩ガキのあで姿お見せしましょう。養分豊かな海水温が低い海域の岩場に張り付き、長い時をかけてじっくりと栄養を蓄え、卵を孕んだ熟女ならではのフェロモンがムンムン(笑)。いかがです? ヨダレが垂れてくるでしょ?!

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2011/07/23

アクロバットもスゴイんです

プルチネッラ.jpg世界第3位・銅メダルの妙技。
飛ばして、回して、回って、回る~ 夢想花ならぬ
夢想ピッツァ@Pizzeria Padrino

 本場ナポリの味を伝える「真のナポリピッツァ協会」認定店の証しである道化プルチネッラの看板を、私の気持ちの中では既に掲げている「Pizzeria Padrino ピッツェリア・パドリーノ」〈Link to backnumber〉。イタリア・ナポリから5月にやって来るはずだった認定審査員が、震災と原発事故のため来日を取りやめたため、宮城初の認定店誕生は秋に延期となりました。Twitter で庄イタをフォローして下さっている方にだけは、一次審査をパスした時点で、店名を伏せてつぶやいていましたが。

 本登録に向けた肩慣らしを兼ねてか、プリモ・ピッツァイオーロの千葉 壮彦(たけひこ)さんが、先月ナポリ郊外の町「Nolaノラ」にある大規模な商業施設内で開催された「PizzaFesta ピッツァフェスタ」の「X Campionato mondiale del pizzaiuolo 第10回ピッツァ職人世界選手権(通称:Trofeo Caputo カプート杯)」に出場しました。

全員集合.jpg【photo】イタリア各地はもちろん、アメリカ・ブラジル・日本・スペイン・フランス・イギリスなどからピッツァ職人世界選手権に出場した各国のピッツァイオーロ

 「Associazione Pizzaiuoli Napoletani ナポリピッツァ職人組合」が主催するこの競技会には、イタリア本国はモチロン、北米・南米・ヨーロッパ各国など世界中から腕自慢のPizzaiuolo(ピッツァイオーロ=ピッツァ職人)が参加します。メイン競技となるピッツァナポレターナS.T.G.部門で、昨年イタリア人以外で初優勝したのが、名古屋市中区にある真のナポリピッツァ協会認定店「Cesari チェザリ」牧島 昭成さん。

東北魂.jpg【Photo】競技に臨む千葉 壮彦さん(左)と、昨年の世界最優秀ピッツアイオーロ牧島 昭成さん(右)

 ナポリピッツァ本来の姿を追求する牧島さんが在籍するチェザリは、ピッツェリア・パドリーノと同じくセルフサービスを導入、直径25cmのマリナーラを350円、マルゲリータ550円という、あっぱれなナポリ現地価格で提供。いつも長蛇の行列が絶えないのだといいます。

 現在のところ3人しかいない「ナポリピッツァ世界大使」としてナポリピッツァ職人組合から任命された牧島さんは、本場の味を多くの人に楽しんでもらおうと、ナポリピッツァを提供する店が無い空白地域や今回の震災被災地に赴き、移動式の薪窯で焼きたてを無償提供する「夢ピッツァ」活動も実践しています。

     

 全国から駆けつけた35人のピッツァイオーロによる宮城県山元町・亘理町などで行われた炊き出しには、地元からピッツェリア・パドリーノ千葉さんや車に窯を積んだ移動ピッツェリア「ベルテンポ」荘司 洋典さんらが参加。東北からは盛岡「Piace ピアーチェ」八柳 達彦さん、横手市十文字町「こじこじ」佐藤 直樹さん、鶴岡「緑のイスキア」庄司 祐子さん・健人さん〈Link to backnumber〉らが参加。食を通して被災地の子どもたちを支援しようというOne Life Japan プロジェクト発起人のサルヴァトーレ・クオモ氏と協力して七ヶ浜町や南相馬を訪れるなど精力的に活動。今後は石巻や陸前高田での炊き出しも予定しているとのこと。

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 第9回大会で世界最優秀ピッツアイオーロの称号を手にした牧島さんの余勢を買い、国外では最大規模となる40名のピッツァイオーロが今年エントリーしたのが日本。千葉さんは、独学でマスターしたというアクロバット部門にエントリーしました。なでしこジャパンの世界一達成という偉業に隠れてしまった格好ですが、結果は3位。

 先日、14時前にピッツァ・マリナーラを食べに行った際、オネダリをして銅メダルの妙技を披露してもらいました。忙しい時間を除けば、練習用の生地でその技を快く見せて頂けるかもしれません。純粋にエンターテインメントとして、専用のピザ生地を回転させながら観客に向かって投げ飛ばすThrow Dough なるパフォーマンスとして変化させたアメリカのような国もありますが、ピッツァは食べてなんぼ。パフォーマンスだけをお願いするのはご遠慮くださいね(笑)。まずは下記動画でその技をご覧下さい。

  

 焼いて良し、飛ばしてよし、回してよしのこの見事な腕前。ナプレの香坂師匠やナポリのDi Matteo だけでなく、海老一染之助・染太郎師匠にも弟子入りしてたんじゃ...。(「Bravo!!」と声を掛ければ、いつもより余計に回してくれるはず)

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Pizzeria Padrino ピッツェリア・パドリーノ
住:仙台市青葉区上杉2-1-50 勝山館1F
Phone:022-222-7834
営:昼11:30~15:30 夜17:30~20:30
  月曜定休(祝日の場合は翌日休)
URL:http://www.shozankan.com

2011/07/17

酪農県の誇り、岩泉ヨーグルト

もうひとつの世界が認めた東北のこころ

IMG_2848-1.jpg【photo】昔ながらの山里の暮らしが息付く「バッタリー村」こと岩手県久慈市山形町荷軽部。放牧される牛が厩舎で過ごす冬に与える飼料用デントコーンと牧草が山あいの耕作地で育つ。岩手北東部では、3年に一度は冷害に見舞われ、栽培技術が向上する大正時代までは稲作が困難であった。五穀豊穣の五穀が、水稲・麦・アワ・小豆・大豆の5種類を指すように、弥生時代にコメが伝来する以前より、人々の命を支えた雑穀の豊かな文化が育まれた

2007_10kuji.jpg【Photo】内陸へ物資を運ぶ古道「塩の道」が通っていた山あいに開かれた久慈市山形町の牧草地で放牧される黒毛和牛と短角牛

 東北で酪農が盛んな地域といえば、旧南部藩が治めた岩手県北部の北上山地周辺を真っ先に思い浮かべます。農業生産の9割を酪農が占め、市町村単位では全国で2番目に酪農を営む戸数が多い葛巻町は、8,000の人口に対し、乳牛の数が11,000頭あまり。伊達62万石を支えた水田と屋敷林「イグネ」が平地に広がる旧仙台藩領の岩手県南部とは明らかに異なる傾斜地が多い北の風土のもとで、山の恵みを活かした炭焼きと牛飼いを生業とする循環型の暮らしが営まれてきました。

 農林水産統計によれば、肉用牛・乳牛とも飼育数が全国で最も多いのは、延べ面積が広い北海道。岩手は栃木に次いで乳牛飼育数全国3位、肉用牛は鹿児島・宮崎・熊本に続く5番目。一戸当たり平均飼育数は、全国平均で前年比微減の乳牛67.8頭・肉用牛38.9頭。県別では経営規模が大きい北海道が、乳牛107.5頭・肉用牛178.3頭と桁違いに多いのに対し、岩手は各34.7頭・14.9頭という少なさ(H22年度調べ)。山間地という地理的palazzo_kimoiri.jpg制約ゆえですが、言い換えれば、目が届く範囲の牛を手塩にかけて育てていることを意味します。

【Photo】7棟の南部曲り家を移築、江戸の山里を再現した「遠野ふるさと村」最大の古民家は、地元・附馬牛(つきもうし)の庄屋が暮らした江戸末期の家。写真右手が住居、左手は厩舎(右写真)

早坂高原【岩泉町】.jpg【Photo】標高900m前後の山間地になだらかな草原が広がる岩泉町早坂高原。冷涼な高原性の気候のもとで放牧される日本短角種(左写真)

 高原に開かれた牧草地「野場(やば)」では、春の訪れとともに牛の放牧が始まります。その群れは種付け用の牡牛1頭に対し、雌牛が40頭前後。牧草地を思い思いに移動しながらひと夏を過ごした牛たちは、晩秋に人里の厩舎へと戻され、自然交配によって春先に生まれた子牛が、母牛と共に野に放たれます。この冬季舎飼ないしは夏山冬里の暮らしのなかで生まれた人家と厩舎がL字型で一体となった「南部曲り家」は、牛馬を家族と同じく大切に扱うこの地域特有の住居形態です。

 久慈・野田・普代・宮古など三陸沿岸から内陸部の盛岡や鹿角へと続く「塩の道」を通り、塩や海産物を運ぶ賦役についたのが、在来の南部牛。黒毛和牛とともに、この地域で数多く飼育される日本短角種〈Link to backnumber 〉のルーツとなった牛を曳いた牛方が、山中で歩みを進めながら口ずさんだ牛方節をもとに作られたのが、「♪ 田舎なれども 南部の国は 西も東も 金の山」 と唄われる南部民謡「南部牛追唄」です。

 ホルスタイン種が葛巻町や岩泉町などに導入されたのは明治20年代後半。以来、酪農は農業生産額のほとんどを占める基幹産業として地域と暮らしを支えています。1976年(昭和51)には、のちに環境共生型の町おこしで目覚しい成果をあげる「葛巻町畜産開発公社」が発足。1984年(昭和59)岩泉で入植以降、畜舎に牛を戻さない日本初の通年昼夜放牧や、国産飼料だけによる牛の飼育をいち早く導入した中洞 正氏が、「中洞牧場」(2008年「しあわせ乳業」に社名変更)で森林資源維持にも寄与する山地(やまち)酪農を実践するなど、可能性に富む酪農が行われています。

袖山高原2-1.jpg【Photo】「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」を標榜する葛巻町のシンボル、風力発電の風車が回る袖山高原に放牧されるホルスタイン

 山林面積が町全体の93%で、森林の年間酸素排出量が400万人分の年間呼吸量に該当する107万1212トンに達する岩泉。1992年(平成4)に「酸素一番宣言」を行うほど、大気中の酸素量が多いのがこの町。豊かな森の2/3を占める広葉樹林が恵まれた水資源をもたらす素晴らしい環境のもとで牛たちは育ちます。2004年(平成16)には、町が事業主体となった第3セクター「岩泉乳業」が設立され、各町内の酪農家が出荷する高品質の原乳を使用した乳製品を製造・出荷しています。

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 生乳を全て岩泉乳業に出荷する沢中地区の阿部 隆一さん(53)は、脱サラしたお父様の跡を継いだ二代目。飼養するホルスタインは、徐々に頭数を増やし、現在38頭。奥様の恵美子さん・お母様の良子さんの3人で牛の世話をしています。飼料は自家調達するイネ科の牧草が中心で、全体の7割を占める粗飼料類の自給率は100%を達成。スノーブランドの信用を失墜させた食中毒事件で注目された生乳の衛生管理の信用度を知る指針となる細菌数は、国が定めた安全基準の1/2に過ぎない15,000/mℓという確かな品質。

 「基本に忠実なだけです」と控えめに語る隆一さんですが、酪農家同士の情報交換などを通し、品質を高めることに日々余念がありません。高タンパクの濃厚飼料を給餌する割合を高めて確保する搾乳量の全国平均が一頭当たり8,500kgといわれるなか、阿部さんは年間7,000kg余りに留め、牛に無理をさせません。牛にとって、岩泉は宮沢賢治が言うところの理想郷「イーハトーブ」にほかならないようです。

iwaizumi_plant_nuovo.jpg【Photo】今年5月下旬に完成した岩泉乳業のヨーグルト製造専用工場

 そんな恵まれた環境のもとで育つ牛から搾った生乳の風味を活かすよう、岩泉乳業では牛乳製造工程において一般的な120℃~150℃で2~3秒の超高温瞬間滅菌ではなく、85℃で15分間殺菌を行う高温保持殺菌を採用しています。これはタンパク質の熱変成によって牛乳本来の味を失わないため。脂肪球を破砕しないノンホモジナイズ製法で75℃15分の殺菌を行い、甘味の強い生クリーム成分がビン上部浮いてくる「くずまき高原牛乳」、63℃30分低温殺菌のしあわせ乳業「四季むかしの牛乳」ともども、牛乳本来の味を知る意味で、一度は試してみる価値はあります。

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 私が美味しさにハマっているのが、2006年夏に岩泉乳業が発売した「岩泉ヨーグルト」。同社には「岩泉のむヨーグルト」や生乳100%を発酵させたカップ入り「岩泉プレーンヨーグルト」もありますが、イチオシはたっぷり2kg容量(1,200円)とジャストサイズな1kg(800円)の2種類がラインナップされる業務用の加糖タイプ(右写真)。クリーミーでまったりとした口どけ、ほのかな酸味と優しい甘さの黄金比率、記憶の奥底に刻まれた離乳前の幸せが蘇る(?)おっぱいの香り...。そのいずれもがこれまで食べてきたヨーグルトには無かったものです。原料表示に生乳・砂糖・乳製品(=乳酸菌)とある通り、素材は至ってシンプル。加糖してはいますが、生乳由来の甘さを感じる程度で、甘さにしつこさはありません。

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 保存料や食感を良くする増粘剤のペクチン・香料など食品添加物を加えず、この素晴らしい風味を生み出す要因は、原料乳の厳しい品質管理と発酵過程にあります。85℃15分間殺菌された生乳を35℃まで温度を下げ、種菌となる乳酸菌を加え、容器に充填の上、18時間をかけてじっくりと発酵を待ちます。一般的には、40℃の状態で4~6時間程度の発酵で酸度が0.8%程度に達した時点で、温度を一気に10℃ほどに下げて、乳酸菌の発酵活動を止めてしまいます。冷蔵状態でも乳酸菌の活動はわずかに進みますので、店頭に製品が並ぶ時点で酸度1%前後の食べ頃を迎えるのです。

 じっくり時間をかけて製造される岩泉ヨーグルトは、1/3 の時間で作られる大手の観点からすれば、はなはだ非効率的(笑)。なれど、家族同様に牛を大切にする酪農に生きる地域の皆さんでなければ、この味は出せないはず。地元の後押しや口コミでその美味しさが伝わり、売り上げは右肩上がりだといいます。昨年は需要に供給が追い付かず、品薄状態が続きました。そのため今年5月に生産設備を増設し、増え続ける需要に応えています。

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 今年5月、ベルギーに本部がある品質認証機関「モンドセレクション」は、岩泉ヨーグルトと岩泉のむヨーグルトに食品部門の金賞を授与しました。これは透明度世界一に認定される地中湖がある岩泉町の鍾乳洞「龍泉洞」で採取した伏流水を同町の第三セクター「岩泉産業開発」が製品化した「龍泉洞の水」が2001年に最高金賞に輝いたのに続く受賞です。食品の評価は、味・香り・外観・アロマ・舌触りなど官能上の基準と、成分・パッケージ・調理法なども加味した客観評価を照らし合わせて最低8人の専門審査員が100点満点で評価するのだといいます。金賞は出品されたなかから、平均総合点80点以上の製品に対して与えられます。

 岩泉乳業に生乳を全量出荷している前出の阿部 隆一さんは、今回の受賞は、生産者にとっても励みになると語ります。古くは日清製菓のココナッツサブレが金賞受賞を、最近ではサントリーのプレミアムモルツが最高金賞受賞をPRしたことで有名になったためか、日本からの出品ばかりが多いモンドセレクションが認めるまでもなく、その美味しさは以前からこのヨーグルトを愛用していた私が太鼓判を押します。そう、Viaggio al Mondo セレクション最高金賞として。
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岩泉ヨーグルト
製造元:岩泉乳業株式会社
Phone:0194-22-3800
URL:http://www.iwaizumilk.co.jp/cm/index.html
※ 仙台周辺では、スーパーモリヤ系列のビッグハウス富谷店・八乙女店・大野田店・小牛田店・築館店で岩泉ヨーグルト(1kg)と岩泉のむヨーグルト(750mℓ)を、それぞれ580円・295円の売価で扱う。
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2011/07/09

光の魔術師 Ver.2

 今回もWeb Piatto Mobile Piatto の「こぼれ話」にアーティスティックな味付けを加えたViaggio al Mondo 仕様ゆえ、「Ver.2」です。
    Piatto8_cover.jpg Piatto7月号で特集したCover Story 「ハートを届ける手紙」の撮影が行われたのは、仙台市青葉区立町にあるレターグッズと雑貨の店「yutorico(ユトリコ)」。オーナーである高橋 智美さんのセンスが投影されたかわいらしい店内をお借りしました。

kobore7_1.jpg お店では陳列台として使っているヴィンテージもののデスクを店の入口に移動させて準備完了。そこで手紙を書き始めた場面を押さえる予定でした。モデルを務めたのは、編集スタッフのSさん。(左写真)

 特集のイメージカット(上写真)では、自然光のもとでソフトな感じの一枚を狙ったのですが、天気が良すぎて強い陽光が店内に差し込むため、光を反射するレフ板を当ててもカメラが狙う腕の内側に影が色濃く出てしまいます。そこで一計を案じたフォトグラファーH氏。まずはアシスタントを店の入り口に立たせて日差しを和らげました。

kobore7_2.jpg  次に光を吸収する黒っぽい服装だったSさんに土俵入りで力士が着ける化粧まわしのように(笑)白いシーツを巻きつけたのです。これで右から差し込む光が和らぐとともに、左手のレフ板、前面の白い壁、そして手前からの四方から光が交差し、腕の内側にできる影を消すわけです。うーむ、これぞプロの技。

Vermel-wien.jpg 話変わって、17世紀オランダの画家ヨハネス・フェルメールの作品が宮城県美術館(仙台市青葉区川内)に今年の秋やってきます。デルフトに生まれた画家の作品とは、ウィーン美術史美術館で対峙したことがあります。オーストリア・ハプスブルグ家が蒐集したブリューゲル、デューラー、ルーベンス、ベラスケスなど傑作揃いのコレクションの中でも埋没しない印象を残したのが、日本では「画家のアトリエ」ないしは「絵画芸術」と呼ばれるこの寓意画でした。自身の投影とされる画家が描いているのは、名声を表すトランペットと歴史を象徴する書物を手にした女神クリオに扮した女性です。(※左画像クリックで拡大)

Woman_reading_a_letter.jpg 仙台で開催される特別展「フェルメールからのラブレター展」(10/27~12/12)で出合えるのは、現存する真作が30点ほどしかない寡作の画家が、円熟期に描いた光の微妙な陰影をとらえた静謐な人物画「手紙を読む青衣の女」「手紙を書く女」「手紙を書く女と召使い」の3作。奇しくもPiatto今月の特集テーマ「手紙」を題材とした作品ばかり。手紙を読む青衣の女(上左写真)は本邦初上陸で、公開直前に本国オランダでの修復が完了したそうです。当時は極めて高価な顔料だった天然ウルトラマリンやラピスラズリを使ったフェルメールブルーが鮮やかに蘇ったとのこと。

"Woman in Blue Reading a Letter" ©Rijksmuseum,Amsterdam.
On Loan from City of Amsterdam(A.vander Hoop Bequest)

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"A Lady Writing"©National Gallery of Art,Washington,DC.Gift of Harry Waldron Havemeyer and Horace Havemeyer,Jr., in memory of their father,Horace Havemeyer "Woman writing a Letter with her Maid"Sir Alfred and Lady Beit Gift,1987 National Gallery of Ireland Collection Photos ©National Gallery of Ireland.Photographer:Roy Hewson

  「光の魔術師」と呼ばれ、世界的に人気の高い17世紀オランダの巨匠だけでは、食に関する話題を扱う食WEB研究所としてはいささか不適切のそしりを免れません。そこで、物足りなさを補って余りあるほど食べ物がわんさと登場する絵も取り上げましょう。これは16世紀のミラノに生まれ、のちにオーストリア・ハプスブルク家の宮廷画家としてルドルフ2世などに仕えた一人の画家が描いた絵。それは食べ物が題材とはいえ、一般的な静物画などではなく、ちょっと風変わりな人物画です。

      Arcimboldo2_Summer.jpg  wassar-Arcimboldo.jpg
 
 ウィーン美術史美術館を訪れた際、しばらくその絵の前で足を止めた連作「四大元素」(上右写真:61種類の魚介類で顔ができた「水」)や、連作「四季」(上左写真:夏野菜で顔ができた「夏」。パリ・ルーブル美術館も同タイトルの連作を所蔵)などの奇想天外な肖像画で知られるジュゼッペ・アルチンボルドをご存知でしょうか。(※クリックで画像拡大。いささかシュールな作風ゆえ心の準備をお忘れなく)

kobore7_3.jpg 空気・水・火・土という当時いわれた四大元素や、四季を寓意化した要素から構成された肖像画の数々。デフォルメされない写実的なモノたちが、複雑にコラージュされることによって、肖像画へとメタモルフォーゼしてゆくさまはトリックアートそのものです。このマニエリスムの画家は、まるで視覚の魔術師のようではありませんか。

 外から差し込む光を自在に操る光の魔術師ぶりはPiattoの撮影をお願いしているわれらがフォトグラファーHさんとて同じこと。背中に挟んだ洗濯バサミがご愛嬌のSさん。フェルメールの創作意欲をかき立てるに違いない(?)不肖・庄イタのベストショットを最後にお届けします。

 題して「シーツで簀巻きになり手紙を書く女」(♥^0^♥)

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2011/07/02

手紙とは切っても切れない切手のハナシ Ver.2

Piatto2011_7.jpgお腹がすく切手・飲みたくなる切手

 久しぶりの「Piatto こぼれ話」カテゴリですが、本日付で更新されたWeb Piatto Mobile Piatto のそれとは異なり、コテコテにイタリアンな味付けのViaggio al Mondo 仕様ゆえ、あえて「Ver.2」というタイトルにしました(笑)。

 さて、7月号の特集テーマは、七夕に詩歌を詠じた旧習から名付けられたとする説がある「文月(ふみづき)」にちなんだ「手紙」。表紙には消印のついた3枚の外国切手が登場しています。日本国内から投函する郵便物には、外国切手は使えませんが、文面を演出する小道具としては、凝ったデザインの外国切手を使う手はあります。

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 撮影現場には、ポストカードやレターグッズを扱う仙台市青葉区一番町4丁目の「inc-tec(インキュテック)」で30枚入り525円で売られていた海外の使用済み切手が持ち込まれていました。チェコやルーマニアといった旧東欧圏やHELVETIAというラテン語の呼び名が記されたスイスの切手などです。(※左Photoクリックで拡大)

 数センチ四方の小さな切手にも、お国ぶりがしっかりと表れるのが興味深いところ。旅先で印象に残った出来事やライブな感動を、土産店で売っている写真入りのポストカードにしたため、旅日記がわりに自分あての便りとして出してみるのもまた旅の楽しみ方と言えます。

 そこに貼られた旅行先にゆかりのある切手は、旅の記憶を呼び起こしてくれることでしょう。イタリア国内にある世界で5番目に小さな国サンマリノ共和国を訪れた際、留守宅にいる幼稚園に通っていた頃の娘あてにハガキを投函しました。すべて平仮名書きの便りに貼られたのは、ティターノ山の頂きで威容を誇る崖上国家の姿がイタリアカサマツの背景として描かれた切手でした。
san_marino_2003.jpg pinus_pinea.JPG【Photo】切り立った岩肌の峨々たるティターノ山頂に築かれた空中要塞都市サンマリノ共和国(左写真)アッピア街道など古代ローマが敷設した道沿いに並木を形成し、作曲家レスピーギが「ローマの松」の題材にしたイタリアカサマツの背景にサンマリノの姿が描かれた共和国発行の切手(右写真)

 英語では7月をJulyと呼びますが、これは7月に生まれた古代共和制ローマ時代の指導者Julius Caesar ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)に由来するもの。よって7月は、混迷の世を導く指導者として歴史に卓越した足跡を残した英雄に由来する月でもあるのです。戦乱の絶えなかった地中海世界にパクス・ロマーナをもたらしたカエサルの没後、帝政に移行するも東西ふたつの帝国に分裂、AC476に西ローマ帝国が滅亡した後は、近世に至るまでイタリア半島は分離独立の都市国家として、また外国勢力による支配を受けるなど、1861年の国家統一まで長い紆余曲折を経ます。
garibaldi@poste_italia.jpg【Photo】イタリア統一運動で赤シャツ隊とも呼ばれた千人隊を率い、目覚ましい活躍をみせた英雄ジュゼッペ・ガリバルディの統一150周年記念切手

 今年で統一150周年を迎えたイタリアでは、年間通してさまざまな記念行事が行われます。Poste Italiane(イタリア国営郵便)による切手の発行もそのひとつ。祖国統一の国民的英雄、ジュゼッペ・ガリバルディや、初代国王ヴィトリオ・エマヌエーレ2世など、リソルジメント(祖国統一運動)に功績を残した10人の人物を取り上げたシリーズの切手も登場しました。
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 祖国統一150周年の祝杯を上げたくなる切手がコレ。イタリアン・シャンパーニュとも呼ばれる高い酒質を備えた北イタリア・ロンバルディア州Franciacorta フランチャコルタ地方のスプマンテ醸造元「Berlucchi ベルルッキ」が、今年設立50周年を迎えたのを記念したもの。女性の憧れ「Made in Italy」製品を取り上げるシリーズの一枚です。

farfalle.jpg ローマにある「Museo Nazionale delle Paste Alimentari (国立パスタ博物館)」の切手もイタリアらしい絵柄。世界中で愛されるパスタの歴史や製造機の変遷などを展示する世界で唯一のパスタ専門博物館の切手には、蝶の形をしたパスタ「Farfalle ファルファッレ」が舞っています。ローマが州都のラッツィオ州とアブルッツォ州の境にあるアペニン山脈に抱かれた小さな山里 Amatrice アマトリーチェの郷土料理がお馴染みの「Amatriciana アマトリチャーナ」。グアンチャーレかパンチェッタといった豚肉の塩漬けベーコンに玉ネギとペコリーノチーズ・少量の唐辛子を加え、オイルと白ワインで風味付けするトマトソース風味のパスタ料理です。
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 昨年創立120周年を迎えたローマのビスケットメーカー「P.Gentilini ピエトロ・ジェンティリーニ」創業当時のパッケージの切手も美味しそう。子どものおやつ向けのビスケットだけでなく、イタリア人の朝食には、飛び切り甘いパンやビスケットがカプチーノととも食卓に上がります。biscotti_gentilini.jpg
 今年発売されたMade in Italy シリーズで秀逸なのが、ゴルゴンゾーラ(ピエモンテ州)、パルミジャーノ・レッジャーノ(エミリア・ロマーニャ州)、モッツァレラ・ディ・ブファーラ・カンパーニャ(カンパーニャ州)、ラグザーノ(シチリア州)というイタリア各地の代表的なD.O.P(Denominazione d'Origine Protetta 原産地呼称統制)チーズを題材にした4枚。どれも美味しそうなチーズの絵柄で、見ているだけでヴィーノが飲みたくなり、おなかが空いてくる罪作りな切手ばかり。
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 イタリアから今年届いたハガキを見て「おや?」と、思ったことがあります。以前は0.85ユーロで日本まで郵送できたPoste Italiane(イタリア国営郵便)の料金が、ほぼ倍額の1.60ユーロに今年1月から値上げされたとのこと。

amintore_fanfani.jpg ゼロがやたらと多い「Lire リラ」が通貨だったかつての時代から、ユーロが導入されて以降、桁が少なくなったのをいいことに、便乗値上げが相次いだイタリア。1ユーロ切手に肖像が描かれたアミントレ・ファンファーニが首相を務めた1950年代から'80年代のほうが暮らしやすかった、なんて声も聞かれるとか。世の東西を問わず、せちがらい世の中のようで...。


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