あるもの探しの旅

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ばんつぁん市 I'll be back.

まだ見ぬ憧れの君は年上の...
 @大崎市岩出山

karinto_okubo.jpg 仙台からR4を北上、県下で唯一の村となった大衡で枝分かれするR457を色麻・加美と進むと、旧岩出山町(現大崎市)となります。米沢から移った伊達政宗が仙台に居城を構える前、本拠地としていた岩出山は、落ち着いた城下町の面影を残します。一斗缶に入った「おおくぼのかりんとう」でも有名ですね。

【Photo】大久保製菓の定番かりんとう。ごま・黒ごろもの2種類が入ったこの一斗缶(2,100g)のほか、ビニール袋入り(400g)も。R47「あ・ら・伊達な道の駅」(大崎市池月)ほか、R457を町内に入り最初のT字路角にある店頭に一斗缶を山積みしている坪田菓子店などで取り扱う

door_k'santique.jpg【Photo】エッチングガラスのエレガントな文様が気に入って岩出山にあったころのK'sアンティークで購入した19世紀末英国製パイン材ドア。現在はキッチンの扉として納まっている ※click to enlarge

 5年ほど前、仙台市泉区に移転した庄イタご用達のアンティーク家具を扱うショップが、以前は岩出山にあったので、当時は毎月のようにルートとなるR457を通っていました。その頃からずぅ~っと気になっていた店と呼ぶには、いささか気が引けるような年季の入った建物が道沿いにあります。看板には「ばんつぁん市」とあり、毎週水曜・土曜のみ営業とだけ最初の頃は書かれていたように思います。しかしながら、そこが開いているところに出くわしたことは一度たりともありません。
 
 高齢化が進む農村だけに、閉鎖されたまま放置されているのかとも思い、岩出山町民のアンティークショップ・オーナーKさんにその店のことを尋ねると「すごいよあそこは」という返答が帰ってきました。どのようにスゴいのかはこの目で確かめたわけではないので、その言葉の意味するところは謎のまま。これまで宮城県の農業は、米作中心だったため、在来作物の宝庫・庄内のように地域性のある特徴的な産直施設に出くわしたことがないというのが偽らざる私の本音。

bantsuan_ichi.jpg 【Photo】土壁が落ち、和製アンティークのような佇まいを見せていた(?)かつての「ばんつぁん市」。R457(写真左)沿いに建つ

 お姉さんを指す庄内弁が店名となった「あねちゃの店」(鶴岡市羽黒町狩谷野目)も特色ある産直が居並ぶ庄内でも屈指の"濃い"店ですが、宮城県北の方言で、おばあさんを意味する「ばんつぁん市」は、決して負けていません。キュウリはキュウリ、ジャガイモはジャガイモと臆目もなく売っている没個性な産直には事欠かない宮城にあって、異彩を放つ強烈なインパクトがありすぎるネーミングではありませんか(笑)。古びた納屋を利用した素っ気ない店が気になりつつも、ついぞそこに足を踏み入れることはありませんでした。

 岩出山に足繁く通っていた当時から、よく立ち寄っていたのが色麻町R457沿いの自然食レストラン「Rice Field ライスフィールド」です。浦山利定さんが自然農法で育てるササニシキと自家製野菜や山の恵みを中心にしたオーガニック料理を頂くことができます。27日(土)、毎年これを食べないと夏の訪れを感じなくなくなった夏限定「トマトとナスの冷製スパゲッティ」を今季初めて堪能、土曜日で営業しているはずのばんつぁん市を目指しました。

ricefield_pomodorimeranzani.jpg ricefield_urayama.jpg【Photo】色麻町「Rice Field ライスフィールド」の夏季限定メニュー「トマトとナスの冷製スパゲッティ」は、ご覧の通り夏の陽射しをたっぷりと浴びた具材がてんこ盛り(800円・左写真)
気さくに常連客との会話に応じるオーナー浦山さん(右写真)は、フレンチの鉄人・坂井宏行シェフと見まごう風貌の持ち主。仙台市役所前の勾当台市民広場で毎月開催される「朝市夕市ネットワーク」定期市にも出店、自然栽培のコメなどを販売

sign_bantsuan.jpg ばんつぁん市に着いたのが13時すぎ。久々に訪れた店の前は道路が新たに整備され、立て看板が少し増えていました。変わらないのはこれまでと同様店を閉めていたこと。おかしいなぁ、と思いつつ、「毎週水・土曜日 午前6:00~午 :00 ちょこっと寄ってがいん!(=「ちょっと立ち寄っていって!」を意味する宮城県北の方言)」という看板に促されるように敷地の奥に建つお宅へと足を踏み入れました。

 窓が開かれた居間の網戸越しに聞こえてくるのは、楽しげな女性たちの声。声の感じからそれなりにお年を召された女性たちであろうことが窺えました。こちらから中に声を掛けると、網戸越しに振り向いたのは3人のおばあちゃん。御簾(すだれ)越しに会話する平安貴族のような(?)状況です。

 「恐れ入りますが、ばんつぁん市は今日お休みでしょうか?」
 
 網戸越しゆえ、紗がかかって表情まではよく見えませんが、一番奥にいらした方があっけらかんと答えて言うには
 
 「朝からやってたけど、もう今日は終わりました」

bantsuan_ichi2.jpg その言葉で私はおおよその事情を察しました。夜がまだ明けやらぬうちに農作業は始まります。朝6時から営業とだけ看板にある通り、売り切れ次第終了なのです。お三方は、ばんつぁん市を支えるメンバーなのでしょう。おばんつぁんたちは、午前中で生き甲斐でもある店を閉め、昼下がりの茶飲み話に花を咲かせていたのです。

【Photo】店の周囲が小ぎれいになり、縦看板が設置されたばんつぁん市 ※click to enlarge

 産直施設は全国にさまざまありますが、朝6時から始まり、午前中で終わってしまう店は、そうは無いでしょう。無駄足になったにもかかわらず、楽しげに談笑するおばんつぁんたちの様子に、私まで愉快になりました。あのパワフルさなら、またいつでも訪れることができるはず。日本軍の侵攻でコレヒドール島を撤退するマッカーサー、ないしはシュワルツェネッガー演じるターミネーターの心境に至ったのでした。

 「また出直します(≒ I shall return.ないしはI'll be back.)」そう言い残してそこを後にしました。冬ごもりに入る11月末までに、店の奥に談話スペースがあるのを目にしたあの店で、まだ見ぬおばんつぁんの君と逢瀬を果たすため、光源氏のようにいそいそと足を運ぶつもりです。

 いづれの御時にか、おばんつぁん、あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき庄内系にはあらぬが、すぐれてときめきたまふ。
Genji_emaki_TAKEKAWA_Large.jpg【Photo】ばんつぁん市には未到達ながら、御簾(みす)越しに繰り広げられた平安貴族の恋物語「源氏物語」さながらの状況を体験した夏の終わりの昼下がり... 

国宝「源氏物語絵巻」より「竹河」/ 徳川美術館所蔵


【注】女性を放っておかない典型的なイタリア男カサノヴァのようなプレイボーイの日本における代表格といえば光源氏(ローラースケートを履いていない方)。紫式部風に締めくくりましたが、庄イタは光源氏ほど女性の守備範囲は広くはなく、ましてや倒錯的な過熟女趣味はありません(爆)

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ばんつぁん市
住:大崎市岩出山下野目南原95
Phone:0229-72-3206
営:5月~11月 6:00~なくなり次第終了
水曜・土曜日
Pあり(普10台)
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コメント

何を隠そうこのわたくし血の半分は中新田なので、庄イタ様がこのあたりとりあげてくださったのは有難いです。
今度は是非、もう半分のふるさと伯楽星の三本木へ。

▼とのP様
中新田。サヴォイアキャベツとバッハオニオンの里ではありませんか!
三本木の新澤酒造店さんがひとめぼれを磨きぬいて醸す「ひと夏の恋」。そのお相手こそが網戸越しに垣間見た岩出山のおばんつぁんなのです。(⇒変な意味じゃありませんよ)

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