あるもの探しの旅

« 2011年・世界チャンプバリスタが来仙 | メイン | 仙台初「真のナポリピッツァ協会」認定店が誕生 »

女川再生への第一歩

がんばっぺ女川
蒲鉾本舗 高政 女川本店「万石の里」開店

 昨日の河北新報朝刊TV面には、黒地を背景にうっすらキツネ色に焼きあがった美味しそうな笹かまぼこの写真が掲載されました。それは宮城県牡鹿郡女川町の蒲鉾店「高政」(高橋正典社長)が、9月1日に稼動した新工場内に昨日開店させた本店「万石の里」誕生を告げる広告です。 ※(クリックで拡大)

takamasa_adv.jpg

 一見、何気ない新店OPENの広告ですが、そこには震災で町の8割が壊滅した地元・女川の再生にかける高政の決意が込められています。その熱き思いを示すかのように湯気がうっすらと立ち上る蒲鉾の写真に魅せられた私は、自宅近くのスーパーにある高政の売り場に直行、笹かまぼこと揚げかまぼこがお買い得価格でセットされた「開店記念セット」をゲットしたのでした。うー、広告効果抜群!?


大きな地図で見る

 高政の本社工場がある万石浦は、石巻市渡波から女川へと向かうJR石巻線沿いに広がる内海です。外海に面した開口部が250mほどしかなく、津波による被害が甚だしかった石巻と女川の境界にありながら、宮城県内では唯一ほとんど津波被害を受けませんでした。そのため、カキやホタテの養殖いかだが無傷で残っています。

mangokuura_2011.9.1.jpg【Photo】全国屈指のヒラメ釣りのメッカでもある万石浦は、宮城県内では唯一、津波による被害を受けなかった。2011年9月、船上でカキ養殖棚の手入れをする万石浦の漁師

 とはいえ、入り江が深く切れ込んだ女川湾に面して建っていたマリンパル女川の外壁だけを残して町の中心部を壊滅させた津波は、R398沿いでは最も高台となった同町旭ヶ丘付近をも越えて万石浦方向へと抜けて行きました。高政の本社工場がある女川町浦宿浜は、万石浦の最深部にあたり、標高が比較的高い場所だったため、建物が浸水被害を受けることはありませんでしたが、自宅にいた高橋政一会長ほか、従業員が津波の犠牲となりました。

takamasa_kaitenkinenset.jpg【Photo】高政「開店記念セット」笹かまぼこ(吉次2枚・石持2枚)揚げかま(上からプレーン「たかまさ」具だくさんの「海老」「五目」「貝柱」)一口サイズの「ぷちあげ」で1,000円のお買い得価格

 被災前はおよそ40軒の水産加工業者が町を支えていた水産の町・女川にあって、元々は新鮮な魚のすり身を製造するのを本業としていた高政。現社長の祖父で創業者の高橋政助氏が鮮魚商を始めたのが1937年(昭和12)。自社ブランドの蒲鉾で市場に参入したのは1994年(平成6)からと、県内の大手かまぼこ製造業者の中では後発組と言ってよいでしょう。

 それでも素材を扱ってきた長い経験を活かし、すり身を加工する段階で魚肉の純度を上げるために通常は3回繰り返す「水晒し」工程を多くても2回までに留め、噛めば噛むほど原料の吉次やイシモチなどの風味が味わえる独自の製法を編み出しました。仙台市内の老舗百貨店に直営店を構えて以降、贈答用としても全国の百貨店・大手スーパーとの取引を開始、順調に業績を伸ばしています。

     takamasa_kichiji.jpg takamasa_kichiji2.jpg
【Photo】高級白身魚の代名詞「吉次」を使った高政の肉厚な笹かまぼこ。上品でふんわりとした素材の持ち味を生かすため、焼きは弱めに入れるのだという。そのままガブリ!

 「会社は地域の皆んなによって生かされている」が口ぐせだった政一会長の遺志を受け、正典社長を先頭に応急修理で復活させた製造ライン1系統で、冷蔵していたすり身から揚げかまぼこの製造を再開したのが3月28日。揚げたてのかまぼこ延べ10万食以上を避難所で配布しました。冷たいおにぎりしか口にできなかった当時、通常の5割増の厚さに仕上げた善意のかまぼこは、笑顔を忘れていた被災地に温かな心も届けていたのです。

takamasa_shinkoujyou.jpg 【Photo】笹かまぼこ製造ラインが2セット、揚げかまぼこが3セットの新工場は従来の4倍の製造能力を備える

 3.11と4.7に起きた震度6の揺れで製造設備に被害が出たため、4月18日に直営店舗での販売を再開したものの、製造ラインの一部だけで操業を強いられてきました。当初計画から3ヶ月遅れで新工場の「火入れ式」が行われたのが9月1日のこと。その日、石巻を経由して訪れた女川は、廃墟となった町が折からの猛烈な雨に打たれて一層くすんで見えました。その日私が女川を訪れたのは、事業再開に向けて歩みだした企業の食品を使ったお弁当の製品化しようという仙台のお弁当製造会社の取材に同行したため。

 ご対応いただいたのは社長のご子息で取締役企画部長の高橋正樹さん。製造工程でCO2を排出しない業界初となるオール電化工場は、旧工場の4倍の製造能力を備えています。食べる人の安心のため、スクリーニング放射線測定器を導入して原料の安全性を確認しています。この測定器は、一部で水揚げが再開した地元の漁師にも貸し出されるのだといいます。

takamasa_ishimochi.jpg

 地域復興のために取り組んだのが、新工場稼動によって使わなくなった隣接する旧工場と300tの収容能力を備えた冷蔵施設を被災した地元の同業者に無償で提供すること。あわせて今回の新工場・新本店の稼動によって、高政では52名を新規採用しました。町の中心部が建築制限区域に指定され、復興へのロードマップが見えてこない中、人口流出を少しでも食い止めるため、年度内に新卒者の採用を予定するなど、生き残った企業としての責務を果たすのだと正樹さんは力強く語りました。

【Photo】キツネ色になるまで焼き目を付ける「石持」笹かまぼこ。使う素材によって、焼き加減を変えるのも高政のこだわり

 最新鋭の製造ラインの見学コースが設けられた工場に併設される本店には、笹かまぼこの手焼き体験コーナーと揚げたてのかまぼこを頂ける一角を設置。数量限定「御膳蒲鉾」は本店でしか入手できない職人こだわりの逸品です。再起を目指す地元同業者の製品や「がんばっぺ女川! おだつなよ(=石巻地方で「いい気になるな」を意味する方言)津波」とプリントされたTシャツなども販売しています。

 16日から19日(祝)までの4日間はグランドオープンフェアを開催。毎日先着200名に工場で焼きたての笹かまぼこと「笹かませんべい」各1枚づつがプレゼントされるようです。この連休は石巻・女川へGo!!
*********************************************************************** 
takamasa_mangoku.jpg高政 女川本店「万石の里」
住:宮城県牡鹿郡女川町浦宿浜字浜田21
Phone:0225-53-5411
営:8:30~18:30 不定休
駐車場:大型バス4台・乗用車20台
URL:http://www.takamasa.net/.
baner_decobanner.gif

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.