あるもの探しの旅

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Aroma classico アロマ・クラシコ

※タイトルからして、原田慎次シェフが手掛けた東京品川にある名高い同名のリストランテ「Aroma classico」実食レポートかと思われた方がおいでかもしれません。が、浮き沈みが激しい料飲業界の寵児とは全くもって関係のない話題ですので悪しからず。

トリノの獅子
 Pastiglie Leone パスティリ・レオーネ

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【Photo】イタリアのバールやタバッキのレジ脇にしばしば置いてあるのは、20世紀初頭にトリノで流行したリバティ様式(=アールヌーボー)のパッケージで売られる「Pastiglie Leone」(1箱2€~2.25€前後)

 砂糖菓子を「梅ぼ志飴」と名付けた洒脱な「榮太樓總本鋪」が江戸日本橋で創業した1857年(安政4)、遥かサルデーニャ王国(現イタリア・ピエモンテ州)の街 Alba アルバで、ルイージ・レオーネが小さな菓子工房を創業しました。それは4年後に成立する統一国家イタリア王国の国王となるサヴォイア家のヴィットリオ・エマヌエレ2世が統治していた時代です。

 高貴なヴィーノを生むブドウ「Nebbioro ネッビオーロ」と、いかなる黒トリュフも及びがつかない官能的な芳香を放つ「Tarufufo bianco 白トリュフ」を産する地上屈指の美食の地・ランゲ丘陵。そこに自生するハーブや各地の果物を加工したルイージの砂糖菓子は、初代イタリア王国首相となるカミッロ・カブールや貴顕たちに愛されます。

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 19世紀に豊かな菓子文化が華開いたTorino トリノへと移転、創業から150年以上の時を経た今も、当時のエレガントなトリノ気質を伝えるパッケージのドロップ菓子を、イタリア各地にあるBarバール《Link to back number》のバンコ(=カウンター)やイタリア版コンビニのような小売店Tabacchi タバッキのCassa(=レジ)脇で目にします。

 それが今回取り上げる「Pastiglie Leone パスティリ・レオーネ」というPastiglia パスティリア(=ドロップ飴)です。(上写真)

 デザインに惹かれてレオーネのパスティリアをジャケ買いしたのが、15年以上前にローマで立ち寄ったバールでのこと。創業者の名前に由来するライオン(Leone)背伸びをする男の子の後姿とがトレードマークであるレオーネのパスティリアは、ポップなパッケージデザインが多い菓子類の中で異彩を放っていました。19世紀末に流行したリバティ様式のピューター(錫)製の美しい金属ボックスには、熱心なコレクターもいるようです。

leone_tinbox.jpg【Photo】Leone Pastigleのコレクターズアイテム。左上より順に1880年製、1905年製、1924年製、下左より1940年製、1961年製、現在

 現在36種類が揃うラインナップ豊富なLeoneのパスティリアはパッケージともども色とりどり。フルーツ味のミックス「Miste Dissetanti ミステ・ディッセタンティ」のほか、「MENTA(=ハッカ)」、「LIMONE(=レモン)」「ARANCIA(=オレンジ)」、「FRAGOLA(=イチゴ)」、「LAMPONE(=ラズベリー)」などは察しがつきますが、「RABARBARO(=ルバーブがベースのリキュール)」、「PRINCIPE DI NAPOLI(=ナポリの王子)」、「LIQUILIZIA(=甘草・カンゾウ)」となると、味の想像すらつきません。
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 「Assenzio(=アブサンの伊名)」のパッケージは特に印象的。フィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)禍でヨーロッパのブドウが壊滅、ワインが飲めなくなった時代、アブサン中毒者が続出します。この酒に溺れた挙句、耳を切り落としたのはゴッホ。幻覚を招くとされたアブサンを「The Green Fairy(緑の妖精)」と称したオスカー・ワイルドのほか、ボードレール、ロートレックらパリを舞台に活躍した19世紀末の芸術家をこの酒は虜にしました。アルコール中毒者を多数生むとして、1913年に禁制としたイタリアのみならず、大方の欧米諸国では20世紀末までアブサン愛好者は地下に潜伏したのです。

【Photo】国外向けには「ABSINTH(E)アブサン」、イタリア国内では「ASSENZIO」と表記されるElisir della Fata Verde(=緑の妖精のリキュール)風味のPastiglie Leone。幻覚作用でパッケージの表情のようにラリるかどうか、口にする勇気を持ち合わせているかが問われる(上写真) Pastiglie Leoneの錫製ボックス。味によって色分けされ、ANICEは涼しげな水色をまとう(下写真)

anice_leone.jpg 現在では向精神作用に疑問符が付けられ、危険性を疑われた成分を除いた製品がEU圏内で流通しています。1980年代後半から日の目を見たリキュール・アブサンと角砂糖を載せて水を垂らして飲む専用スプーン、上目遣いの表情が印象的な定番のパスティリアとチョコレートのアソートセット「Absinthium」がレオーネ創業150周年を記念して商品化されました。目移りするほど種類があるラインナップの中から迷った挙句に選んだのが、淡いブルーのパッケージ「ANICE アニス」。「ん?どこかで聞いたことがあるような、ないような。」未知の味に興味を覚えた私は、その小箱を手にCASSAへと向かいました。

pastiglie2_leone.jpg 包装紙の中はレトロなデザインの紙箱で、そこにゴツゴツとした小さな不揃いの円柱形をしたタブレットが入っています。一粒つまんで口に入れると、その香りには覚えがありました。イタリアで食前・食後に愛飲されるリキュール「Sambuca サンブーカ」と相通じる香りだったからです。サンブーカの主原料となるハーブのひとつがアニスの実。地中海東部地域が原産となるセリ科の植物で、その実であるアニスシードは古くからスパイスとして用いられてきました。良質の上白糖を用いたほどよい柔らかな甘さとアニスが奏でるそのデリケートなアロマは、メンソールや果汁系のキャンディーが多い日本では出合えないエキゾチックなもの。

【Photo】紙製ボックス入り「Miste Dissetantiミステ・ディッセタンティ」(下写真)は、イチゴ・ラズベリー・フサスグリといったフルーツ味のミックス(上写真)

 1861年のリソルジメント(国家統一)を遡ることはるか以前の1563年、フランスを追放したサヴォイア公エマヌエーレ・フィリベルトがトリノに居城を構えて以降、後にイタリア王国を統治するサヴォイア家の居城「Palazzo Realeパラッツォ・レアーレ」をはじめとするバロック様式の王宮群がこの街のシンボルでした。市街地が整備された20世紀初頭、一世を風靡したアールヌーボーは、この地で「Livertyリバティ」と名を変えて建築物の様式として流行します。反ファシスト運動の拠点でもあったトリノは、戦後発展した自動車産業とともに活況を呈し、同社の衰退を経て現在に至ります。150年以上に渡ってトリノの変遷を見つめてきたLeoneのパッケージには、今も誇らしげにサヴォイア家の紋章が記されます。

miste_dissetanti_leone.jpg 日本ではお目にかかれないと思っていたレオーネのパスティリアと再会したのが、「EATALYイータリー代官山」《Link to backnumber》でのこと。ARANCIA、FRAGOLA、LAMPONEといったイタリア語を解さずとも風味が分るイラスト入りパッケージのPastiglie Leone定番商品や紙ボックス入りチョコレートタブレット「Fondente」などが揃います。運営元が新横浜ラーメン博物館と同一であるためか、今さらながらのパリへの憧憬が強い印象を拭えない「新横浜ラントラクト」内にある「ブティック ラ メゾネ」でも'01欧州最優秀工房に輝いたピエモンテ州クーネオ県のチョコレート工房「Silvio Bessone シルヴィオ・ベッソーネ」と共にLeoneを取り扱います。

 サヴォイア家の都・トリノの"Aroma classico(=クラシックな遺香)"を、パッケージと共に味わってみてはいかがでしょう?

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Eatalyジャパン
URL:http://www.eataly.co.jp/top/welcom.html
オンラインストアURL:http://www.e-eataly.jp/
 ※Leoneはオンラインストア「お菓子」カテゴリーから購入可

ブティック ラ メゾネ
住:横浜市港北区新横浜2-15-4 新横浜ラントラクト1F (新横浜ラーメン博物館の隣り) 
Phone:045-474-3832
営:11:00~19:00 月曜定休
オンラインショップURL:http://shop.maisonnee.net/
 ※同上

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コメント

アブサン入りの
Pastiglie Leone パスティリ・レオーネ
やみつきになりそうですね
素敵なデザインです

アブサン 学生の頃飲みました
まだ禁止になる前です
今は別名で売られていますね

▼ryuji_s1様

コメントをお寄せ頂き有難うございます。

私はまだ試していませんが、パスティリ・レオーネでもリキュールのアブサンを売っています。
学生の頃にお飲みになられたというのは、サントリーの前身である壽屋のエルメスや、禁止となった成分を含む輸入ものだったのでしょうか?

フグの白子でオールド・アブサンをキュッと一杯!!なんて、オツな呑み方をしていたら、命がいくらあっても足りませんね(笑)。

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