あるもの探しの旅

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利府長十郎、おぬしやるよの

※時代劇のセリフのようなタイトルですが、剣術遣いの達人に関する話でもなければ、伊達家の重臣・片倉小十郎の影武者・長十郎の存在を捏造するわけでもありません。

梨の里・利府町伝統の「長十郎」を見直すの巻

rifunashi_1.jpg【Photo】大型のショッピングセンターと住宅展示場に隣接して、豊かに実を付けた梨園が共存するのも、仙台のベッドタウンとして人口増が続く利府ならではの光景

 仙台市の北東部に位置する宮城郡利府町のこの季節の名産といえば、和梨が思い浮かびます。宮城では蔵王町と並ぶ梨の主力産地である利府町。三陸自動車道が開通する以前は、仙台と松島を結ぶ利府街道沿いには、秋ともなれば数多くのナシ直売所が軒を連ねていました。
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 現在の主力3品種、「幸水(早生)・「豊水(中生)・「新高(にいたか)」(晩生)といった和ナシは、我が国で独自に品種改良されたもの。耐冷性に優れた梨は、東北の寒冷な気候にも適合しました。

 塩釜との境界となる丘陵地帯の一角・森郷地区に初めて梨が植えられたのが1884年(明治17)のこと。石巻で栽培されていた梨の苗木150本を譲り受けた日野藤吉が、森郷仲町に所有していた水田を梨園に変えたのが利府梨の始まり。その跡地にある公園には、日野藤吉の頌徳碑と、今も小さな実を結ぶという樹齢127年を越える古い品種「真鍮」の古木とが残ります。

【Photo】茶色に色付き、収穫を待つ最晩生「新高」

 我が本拠地、庄内で梨の名産地として産地名がブランドとして確立している「刈屋梨」と同様、仙台では知らぬ者がない「利府梨」こと「長十郎」が偶発品種として登場したのがそれから11年後の1895年(明治28)、神奈川県川崎市の当麻梨園でのこと。病気が発生し、軒並み梨が枯れる中で一本だけ残ったというこの梨が、利府で栽培品種の主力として普及していった影には、1925年(大正14)に77歳で亡くなるまで、梨の品質向上に一生を捧げた藤吉ら先人のたゆまぬ努力がありました。

origin_rifunashi.jpg【Photo】JR利府駅近くにあった日野藤吉の住居跡は、現在公園として整備され、利府梨の礎となった「真鍮」の古木が残る。恩人の功績を称えるため、町の有志が1958年(昭和33)に建てた頌徳碑の脇にあるこのマザーツリーの世話をしている。石巻から苗木が移植されて127年を経た現在もなお、その樹勢に衰えは見られない  ※Photoクリックで拡大

 藤吉がそうだったように、塩釜から仕入れた魚粉で土作りを行うなど、手間を惜しまぬ栽培技術向上への努力が重ねられるなかで、利府梨の屋台骨を支えた主力品種の長十郎は、1980年代に入ると次第に育てやすい後発品種へと植え替えが進み、現在では栽培品種が10種類以上に多様化しています。春先の剪定に始まり、収穫期を迎える8月末から11月まで、幸水を皮切りに次世代の主力品種と期待される中晩生種「あきづき」から最晩生の新高まで、梨の出荷は続きます。

rifunashi_3.jpg【Photo】利府梨発祥の地・森郷地区に隣接した三陸自動車道 利府・塩釜IC近くの加瀬地区にも梨園を所有するという伊藤梨園。直売所奥の畑のすぐ隣りは歯科の駐車場。ほぼ収穫を終えた枝に袋がけされて残るのは、わずかに数えるばかりだけとなった「あきづき」。品種登録されてまだ10年ほどの新しい梨だが、利府でも作付けが増えている

 私が小さかった頃は、梨といえば千葉県松戸市二十世紀ヶ丘が原産地の水気と酸味が多い「二十世紀」と長十郎ぐらいしか、食べたことがありませんでした。それだけに、昭和60年ごろから市場の主役となった幸水のみずみずしく甘味があり柔らかな果肉と出合った時の驚きは鮮烈でした。以来、私にとっての梨の旬は、それまでの秋口から幸水が出回るお盆過ぎ前までに変わったように思います。

rifunashi_5.jpg【Photo】秋晴れの空のもとで本日訪れた利府町伊藤梨園での収穫。(写真左から)あばた顔でいびつな形がユニークな「新星」、コロンとした姿格好がカワイイ「あきづき」、利府梨の代名詞ともいえるこの「長十郎」の直径はなんと12cm!!

 本日、用事があって利府を訪れました。以前に担当していた頃は頻繁に足を運んでいた総合住宅展示場の隣りに直売所を構える「伊藤梨園」さんの直売所に立ち寄りました。当時は来場者プレゼントとして購入していたものの、自身では何故か食べる機会に恵まれなかったように思います。残留放射性物質の安全性をアピールする検査結果証明書が掲げられたそこで指名したのは食味の良いあきづき。今年は着色が良く味も良いとのことで、そろそろ最後の新高に切り変わる時期だとのこと。「畑に採りに行きましょう」と、ネットを潜り抜けて中でもぎ取りできるのは産地ならでは。

rifunashi_4.jpg【Photo】枝からもぎたてを試食させて頂き、味に納得して購入した伊藤農園の梨3種類。1カゴ分の対価である1,000円札と比較してみると、新星と長十郎の大きさがおわかりいただけるかと

 案内された梨園には、接ぎ木した樹齢15年ほどの比較的若木に大ぶりな新高がわたわわに実を付けています。1カゴ1,000円とのことで、味見させて頂いたのが、あきづきと「新星」。食感と味が幸水と近いあきづきはモチロン、いびつな外見ながら食味のよい新星も気に入りました。

 そこに試食用として出されたのが、一般的には固めの果肉と穏やかな甘さに酸味も伴うことから、国内でもわずか1%しか栽培されず、最近はほとんどお目にかかれなくなった長十郎です。伊藤農園さんでは、この品種にひときわ愛着を持っておいでのようでした。果肉がわずかに黄色みがかった特徴的な長十郎を一切れ口に入れた途端、それまで長十郎に対して抱いていた先入観が音をたてて崩れていったのです。

rifunashi_6.jpg 糖度の高さは、あきづきに勝るとも劣りません。他地区ではともすると、水分が少なくガリガリ感すらある果肉の食感も、ジューシーで心地よいもの。これぞ適地適作の利府梨ならではの美味しさであり、梨栽培を主力に専業で培われた栽培技術の賜物。そこで浮かんだのが、今回のタイトル「利府長十郎、おぬしやるよの。」長十郎の魅力を再発見したことを告げると、どう見ても1カゴから溢れるであろう新星とあきづきを袋詰めして頂いただけでなく、「ちょっと形は悪いけど、どうぞ」と、ずしりと重い大きな長十郎を4個もお土産に下さったのでした。

 結局、あきづき・新星・長十郎による利府梨3番勝負は、ハチミツのような甘さ充分の長十郎の圧勝となった次第。灯台下暗し。伊藤梨園さん、また行かなくちゃ。

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伊藤梨園直売所
住:宮城県宮城郡利府町八幡崎前
  ※イオン利府ショッピングセンター西側
    「河北・TBC利府ハウジングギャラリー」と「利府デンタルクリニック」の間
    直売所が閉まっている場合は、下記伊藤恒雄さん宅に問い合わせを
Phone:022-356-2233

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