あるもの探しの旅

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和ナシのルーツのハナシ

利府で長十郎を指名買い
番外編・ナシの原木「ヤマナシ」の古木は300歳!?

itounashi_2.jpg【Photo】利府町加瀬の伊藤恒雄さん宅で指名買いした「長十郎」とお土産に頂いた「二十世紀」。郷土資料館向かいの公園にある日野藤吉が初めて利府で栽培を始めた「真鍮梨」の古木の赤く色付いた葉が華を添える
 
 直売所で試食した刹那、その味に魅了された長十郎を生産する梨栽培農家・伊藤恒雄さん宅を訪れ、長十郎を指名買いした日、気になる情報を郷土資料館で入手しました。前回述べたとおり、利府における梨栽培は先駆者となった日野藤吉以来127年の歴史があります。資料館で手にした利府町誌には利府町大町の板橋繁春さん宅に推定樹齢300年の古木があるという記述があったのです。

 リンゴの古木を訪ねてつがる市を訪れるなど《Link to backnumber》、果樹の古木には目がない(笑)私の好奇心がムクムクと頭をもたげる情報ではありませんか! ここは仙人のような古木とお目にかからなくては、とリサーチ開始です。

nashikoboku_1.jpg【Photo】利府町大町の板橋繁春さん宅の敷地内にある梨の古木。一説には樹齢300年ほどだという自生種のヤマナシ ※Photoクリックで拡大

 郷土資料館の裏手には「十符の里農産物直売所 ふれあい館」があり、そこに居合わせた事情通の男性客から、250軒ほどの梨生産農家があるという利府でも伊藤さんが五本の指に入る梨農家であること、味の決め手はどれだけ手間と愛情をかけるかであることなどを伺いました。ところが梨の古木について話が及ぶと、その方はおろか、直売所の職員兼生産者の方たちでも、町誌に記述されていた梨の古木については、一様にご存知ないのでした。


 資料館の方から頂いた地図を手に徒歩で訪れたのが、そこからすぐ近くの板橋重春さん宅。ご高齢の板橋さんは体調が優れず、玄関先で応対して下さったのですが、裏手の畑にその樹があるとのこと。お許しを頂き伺った畑の片隅で、古木は突然の訪問者の私を出迎えてくれました。
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 二階の屋根を越える10mあまりの高さで幹が切られた古木は、町が立てた標柱によれば、梨の原種「ヤマナシ」という品種。地表から斜めに生えた周囲3mほどの幹の根元には大きなウロがあり、そこから真上にくの字に折れ曲がって緑の葉を茂らせています。下から見た限りでは、実をつけているようには見えませんでした。

 現在の栽培品種のような食感ではなく、小粒で硬いため、今では食用とされなくなったこの梨。かつては「石子梨」と呼ばれたのだとか。晩秋の霜が降りる頃になって甘味が出るため、その昔は多くの実を結ぶ石子梨は食用にもされたようです。

【Photo】訪れる人もない古木の片わらに利府町が立てた標柱

 その豊産ぶりを示す原種梨に通じる梨の古木の姿は、果樹栽培が盛んな福島で見たことがあります。福島市置賜町の東北電力福島営業所前には2本の梨の古木があります。さまざまな花々が色彩豊かに咲き揃う福島市郊外の花見山を訪れた昨年の4月24日(土)夕刻、福島駅前にある「山女」で名物の円盤餃子を食べに行く途中、白い花を咲かせた梨の古木を目にしました。

nashi3_fukushima.jpg【Photo】清楚な白い花を愛でるには、皮肉なことに縦横に走る電線が玉にキズ。東北電力福島営業所(写真右)前にある梨の古木

 それは大正期まで酒造業を営んでいた加賀屋総本家別邸に植えられたという樹齢100年~150年と推測される2本の梨。社屋の前を通る吾妻通りの慢性的な渋滞解消のため、道路拡張に伴う移植計画が浮上したこともありますが、枯死のリスクを避けるため、梨を愛する地元の強い要望を受ける形で、移植が実行に移されることはありませんでした。

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【Photo】地元の要望を受けて当初計画が変更となり、移植を免れた東北電力福島営業所の梨 ※Photoクリックで拡大

 溢れんばかりに花を咲かせた梨の樹は、中国唐代の詩人・白居易が長編漢詩「長恨歌」の一節で「梨花一枝春帯雨」と詠じた涙を流す楊貴妃の美しい姿を想起させました。遥か昔の故事に思いを馳せながら梨の花を愛でるのも結構ですが、やはり梨は美味しく食べてナンボ。

 放射線スクリーニング検査で安全性が担保されている福島産の梨生産農家の梨の作柄も利府梨同様に今年は良い出来だといいます。利府のように糖度の高い長十郎は栽培されていませんが、晩生の「新高」が間もなく旬を迎えます。寒暖差が大きく果樹栽培に適した福島盆地の梨も美味しいですよ。
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