あるもの探しの旅

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よみがえりのレシピ

山形発・在来作物と種を受けつぎ守る人々の記録

 プロの役者でも大根役者でもなく、ココロ震える値千金の千両役者ぶり発揮する出演者で占められる映画「よみがえりのレシピ」をご存知でしょうか? 鶴岡市出身の映像作家・渡辺智史さん(30)が、山形県内各地の在来作物の種を受け継ぎ、次代に伝えようとする人たちの営みに焦点を当てた95分のドキュメンタリー映画です。

 「藤沢カブ」後藤勝利さん、「宝谷カブ」畑山丑之助さん、「外内島キュウリ」上野武さん、資源低投入型循環有機農業のパイオニア「月山パイロットファーム」相馬一廣さん...。これまで「Viaggio al Mondo~あるもん探しの旅」でもご紹介してきた私の琴線に触れる尊い仕事をなさっておいでの生産者の皆さんが数多く登場するとあって、製作段階からその完成を心待ちにしていました。11月5日(土)から始まった山形市での一般公開(~18日)に続いて、12日(土)からは「鶴岡市まちなかキネマ」での公開が始まりました(~25日)。

recipi1_tsuruoka.jpg【Photo】鶴岡での公開初日の初回上映後、舞台あいさつに立った渡辺智史監督、冨樫裕子さん、畑山丑之助さん、「この映画を観るのは3回目だけれど、同じ場面で感動する」と感極まって涙ぐむ後藤勝利さん

 公開と機を一にして、TPP参加の是非に関する議論が巻き起こっています。賛否渦巻く交渉のテーブルに日本をつかせようという米国は世界に冠たる農業国。東北のように中山間地が多く地理的制約で経営規模が小さな農業者が多い島国日本で、いかに大規模集約化をしたところで、その営農規模は日本の比ではありません。

frier_resipe.jpg【Photo】映画のポスター・フライヤーには、寒河江市風間地区が発祥とされる「山形赤根ホウレンソウ」が登場(写真撮影:東海林晴哉氏)

 我が国にも国内法人がある米国の巨大企業が、自社の除草剤とセットで遺伝子操作で耐性を得たF1種子の販売権を独占しています。農業分野における米国の狙いは明白なのです。TPP推進派の経済界をはじめ、日本中に蔓延している効率優先の考え方や拝金主義とは対極にある世界をこの映画は淡々と描いています。登場するのは、経済最優先の時代には金にならないからと生産農家が消えていった在来作物を今も作り続ける生産者と、加工業者・研究者・料理人ら、互いに支えあう周囲の人々の人間模様。

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 二粒入りの鞘のうち、巾着型でシワの寄った種だけを選び、選抜を重ねてゆく鶴岡市白山の「だだちゃ豆」生産農家・冨樫裕子さんの自家採種の模様や、孫が通っている小学校で子どもたちと栽培から種採りまで一緒に行うことで、作物の一生を学ぶ機会を持たせた外内島キュウリの生産農家・上野武さん、安い輸入材に押されて森林が放置され山が荒れてゆく中、藤沢カブの収穫後に植林まで行う後藤勝利さんの伝統的な焼畑農法が、化学肥料や農薬を一切必要とせず、森の再生を促す自然のサイクルにかなった農法であることなどが、山形大学農学部 江頭宏昌准教授による解説などを交えて描かれています。

【Photo】まっ暗いうちに始まる焼畑作業があらかた終わったところにノコノコ伺う羽目になった2010年8月9日朝6時過ぎ。鶴岡市湯田川近くの金峰山中で行われた藤沢カブの火入れの模様を撮影するよみがえりのレシピ渡辺監督らスタッフ

 昨年、真夏の鶴岡の夜空を彩る赤川花火大会が催された翌朝、藤沢カブの火入れが行われるというので、投宿していた鶴岡市西荒屋の「知憩軒」から、土地勘のある金峰山の山中へと夜がまだ明けやらぬ早朝に車で向かいました。前夜の酒も手伝って到着が遅くなってしまいましたが、そこには後藤さんご夫妻や江頭先生や在来作物の撮影を続けている写真家の東海林晴哉さんの顔もありました。その現場に渡辺監督ら映画の撮影クルーもちょうど居合わせたのです。

seedtalk1_nagai.jpg seedtalk2_nagai.jpg【Photo】「未来への種まきトーク in 置賜」より。進行役は渡辺監督、基調講演後はコメンテーターを務めた島村菜津さん(左写真)、吉田昭市さん、鈴木徳則さん、井沢良治さん(右写真)

 昨年12月、よみがえりのレシピ製作委員会の主催で山形県長井市で行われた「未来への種まきトーク in 置賜」では、映画では山中で藤沢カブにかじり付く姿が登場するノンフィクション作家の島村菜津さんが「スローな生き方」と題して講演。その後、米沢雪菜の生産者・吉田昭市さんや、高畠町二井宿小学校で11年前から子どもたちに自分たちが食べる給食の野菜栽培を行う取り組みを行なった元校長先生・井沢良治さん、スローフード山形事務局長・鈴木徳則さんらが、島村さん・渡辺監督とともに登壇し、トークセッションを行いました。

recipe2_tsuruoka.jpg 【Photo】鶴岡公開初日の初回上映後「鶴岡まちなかキネマ」でのアフタートーク。23年前に後藤さんの奥様・清子さんに「この種をあなたが守ってほしい」と託した近所に暮らす渡会美代子さんが、ご自身も出演したこの映画の完成を待たず、今年の9月に急逝されたことが渡辺監督から明かされた。10年後・20年後を考えた時、この映画は貴重な映像記録となるはず

 80名が観賞した鶴岡での初上映後は、渡辺監督と映画に登場した冨樫裕子さん、畑山丑之助さん、後藤勝利さんの舞台あいさつがありました。心揺さぶられる映画の内容が素晴らしいことは勿論、ご縁あって「未来への種まきトーク」打ち上げと鶴岡初上映後、市内の知る人ぞ知る超・穴場の蕎麦店を貸し切って行われた昼食会に居合わせた関係上、恩義のあるこの映画は応援しなくてはなりません。酒田・仙台でも上映に向けた機運があるといいます。今後の詳細については、下記公式サイトを参照願います。

やまがた発長編ドキュメンタリー映画
よみがえりのレシピ公式サイト
 http://www.y-recipe.net/

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コメント

地域の食と地域に住む人を映像や映画に残すことに最近興味が湧いている私です。この活動にも大注目です。

藤沢カブの後藤さんが涙する場面、私も早く見たいです。仙台での上映はぜひ庄内系イタリア人さんのプロデュースでお願いしますよ~。

▼ 畠山茂陽@食WEB様

 お久しぶりです。「ばあちゃんの漬け物が食べたいって言われるから、こうしてカブラを毎年作ってるんだの」と言ってステキな笑顔を見せる田川カブ生産者・武田彦恵さん(76)は、後藤勝利さんのお姉様。

 こうした貨幣価値には換算できない守るべきものを伝える人たちの多くは高齢者です。今残しておかないと、永遠に私たちが知ることがないまま消えてゆく運命にある作物が東北には数多く残っています。

 スローフード宮城が、上映に向けて動き出しているとのこと。私は渡辺監督やスタッフの皆さんとつながっているので、宮城上映にあたってのお手伝いを約束しています。もう少しお待ちください。

ふるさとを大切にされている皆さんの努力素晴らしいですね
きっと大きな力の塊になってくことでしょう

▼ryuji_s1様

ありがとうございます。
口コミで感動の輪が広がり上映は連日盛況、25日までだった上映期間の延長も決まりました。

波乱万丈なシナリオや派手な演出は一切ありませんが、じんわりと心温まる映画です。機会があればぜひご覧ください。

飯能市に在来種を販売している野口種苗店があります。私は今年友人から勧められて畑を借りて作物を作っています。そこで不思議に思った事は、なぜ雑草が何も肥料を与えないのに元気で、作物は肥料を必要としているのか?そんな疑問からこの在来種にたどりつきました。
F1というタネがほぼ全てであり、それを知らずに多くの人たちが食しているという事実。野口さんのお話を聞いて、この映画のようにできれば自分でタネを取り、毎年その地方独特の栽培方法で作物を収穫出来れば最高です。
来年度は少しでもこの在来種でおいしい作物を収穫する事を目標にしたいと思います。

▼バタフライ様
コメントをお寄せいただきありがとうございます。
野口さんの著作「タネが危ない」が、TPP論議が巻き起こった今年上梓されたということは非常に意義深いことでした。
工業製品を輸出するためには、地域の英知や文化の結晶である在来の固定種など取るに足らぬと説く目先の利益を追う人々とは同調することなく、これからも胸を張って地域文化の体現者であり続けて下さい。

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