あるもの探しの旅

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ボジョレー騒動はさておき...

地球上で唯一オフヴィンテージが存在しない奇跡のブドウ産地・ボジョレー
VS 解禁日に飲んだ今年のヴィーノ

※商戦が盛り上がりに欠けた昨年は、怒りの矛先を向けずにスルーしましたが、ユーロ安が追い風となって関係者の鼻息が荒い今年は負けずに行きまっせーっ!!  Boooo...q(`ε´q)

georgesdubouef-001.jpg 今月18日、仙台では平年と比べて8日遅く初霜を観測しました。こうして寒さが増してくると本格的な赤ワインシーズンの到来です。

 そこに巡ってきた11月の第3木曜日。そう、ボジョレー・ヌーボーの解禁日ですね。

 今年もプロモーションのため、ボジョレー地区最大手のネゴシアン(=酒商)「ジョルジュ・デュブッフ」が、ヌーボー最大の得意先であるニッポンにオーナー自らやって来ました。


【Photo】ボジョレーの帝王ことジョルジュ・デュブッフ氏 (大きな声では言えないが、我がホームグラウンド庄内ではお目にかかれないタイプのアクが強いこの御仁。ブドウを手にほくそ笑む表情からは、畑仕事に精を出す醸造家よりも商売人の印象を受ける。仮面ライダーに登場した悪役・死神博士に似ていると思うのは私だけ?)

 商魂むきだしのボジョレー・ソードー(=騒動)に黙っていられないのが、真っ当に造られた美味しいワインを愛する庄イタなわけで...(笑)。したたかなフランス人に踊らされている日本に警鐘を鳴らすべく、これまで2度ほどViaggio al Mondoで孤独な戦いを繰り広げてきました(2008年9月27日「今年も当たり年? ボジョレー・ソードーは日本固有のお祭り」、同年11月28日「ボジョレー後日談&自然派ワインよもやま話」参照)

 自国の文化や価値観が最も優れていると考える中華思想においては、本家中国と肩を並べるフランス。東京電力福島第一電子力発電所の事故直後、日本では菅首相(当時)が原発推進路線からの転換を表明したのとは対照的に、サルコジ仏首相は自国の重要な産業である原子力発電の推進にご執心です。

lacrima_1morro.jpg【Photo】イタリア・マルケ州の在来ブドウ「ラクリマ・ネラ」を使った「ラクリマ・ディ・モッロ・ダルバ」3種。家族経営による「ジュスティ・ピエルジョヴァンニ」の「ルッビヤーノ」(写真右)「ルイジーノ」(写真左)、マルケ州最大手の「ウマニロンキ」の「フォンテ・デル・レ」(写真中央)

 東大名誉教授の故・木村尚三郎は、米国は "巨大な島国に過ぎず、自国と相いれない文化を決して受け入れようとはしない国家"と評しました。

 銃規制の動きに真っ向から対立する「全米ライフル協会」や共和党の支持基盤となる保守的な考えを持つ人々にその傾向は顕著でるように映ります。

 この戦後を代表する西洋史研究家の洞察は、20世紀末に顕在化したイスラム文化圏との衝突や、実態は自国の権益を押し通そうという意図が明白なTPP交渉をみれば、正鵠を射た慧眼であったと納得がゆきます。

 日本の輸出産業に打撃を与えんとする米国主導の円高誘導と、信用不安に端を発したユーロ安を追い風に、今年もJaponで荒稼ぎしようと、フランス食品振興会(SOPEXA)や酒販業界は一丸となって多様な販促活動に躍起です。東京港区白金台にある「八芳園」で、17日の午前零時にブドウジュース もとい、ヌーボーで乾杯する派手な解禁イベントを仕掛けたのは前述のSOPEXA。仙台でも地元プロスポーツチームのスポンサーになっている大手流通が、ベガルタ仙台手倉森監督などをゲストに深夜のカウントダウントークショーを実施するなど、今年も日本各地でお祭り騒ぎが繰り広げられました。

lacrimautumno.jpg【Photo】収穫期を迎えたラクリマ・ネラ

 それにしても喧伝されるボジョレー・ヌーボーの作柄を自画自賛する誇大表現には、ほとほと閉口します。天候による劇的な品質向上など望むべくもない酒質のヌーボーをして、今年も判で押したようなお約束の「グレートヴィンテージ」だそう(デュブッフ社の日本輸入元サイトはコチラ

 ジョルジュ・デュブッフ社サイトでは、2011年のボジョレー・ヌーボーを "Full,Smooth body with a fine,silky harmonious texture and exceptional richness."と表現しています。これはボージョレ地域の主力ブドウ品種「Gamayガメ」以外のブドウで造られるワインは口にしたことがない中華思想の持ち主による評価なのでは??と勘ぐりたくなる内容です。

 ボジョレー・ヌーボーは、普通のワインとは全く異なり、通常で2~5日の極めて短期間の発酵で仕上げる突貫工事のような特殊な製法で醸造されます。私が思うにボジョレー・ヌーボーは、どう転んでも複雑味に欠けるタンニン成分が少ない軽くsmoothとも言う)平板なsilkyとも言う)味わいの酒です。間違ってもジョルジュ・デュブッフ社が言うところのフルボディのワインでは断じてありません。

az.ag.giusti.piergiovanni.jpg【Photo】糖度が上がってくる収穫期に実割れを起こしやすく、栽培が難しいラクリマ・ネラ種から熟成能力の高い素晴らしいヴィーノを生産するジュスティ・ピエルジョヴァンニ醸造所。アンコーナ・ファルコナラ空港近くのアドリア海から2kmほど内陸に入ったそこは、比較的平坦な地形だが、海風による昼夜の気温差がブドウ栽培に適した微気候を生む

 SOPEXAが言うように2011年ヴィンテージが「3年連続のとても偉大な品質〈Link to website〉」だとしても、それは通常の醸造法で醸された「Morgon モルゴン」「Chénas シェナス」「Fleulie フルリ」といった素性が明らかなクリュ・ボジョレーに限った話。2~3ヵ月の寿命しか持ち合わせていないヌーボーに偉大という賛辞を当てはめるのは土台無理な相談でしょう。

 一部のスーパーが競って導入しているペットボトル容器と円高ユーロ安の恩恵で、現地価格(2€~5€)に近い価格で出回っている今年のヌーボー。酒販業界では前年比2%増の60万ケースの売り上げを見込んでいるといいます。お手並み拝見といったところですが、解禁初日の売り場には、ヌーボー目当ての来店客がそれなりに群がっていたように思います。そんな人たちを煽るかのように前例踏襲の各メディアも、ヌーボー解禁を毎年ニュースとして取り上げます。自分がメディアに身を置くゆえに声を大にして言いたいのです。「もうやめませんか、"売らんかな"の片棒担ぎは」と。今年も私の闘いはまだ道半ばであることを思い知らされたのでした。

lacrima_tagawakabu.jpg【Photo】ジュスティ・ピエルジョヴァンニの「ルッビヤーノ・ラクリマ・モッロ・ディ・ダルバ'03」を頂き物の田川カブ甘酢漬とともに。和洋の希少な在来種同士の組み合わせだが、これがまたピタピタと合う

 そんなお寒い状況の中、赤ワインが一層美味しくなる季節となる11月第3木曜日に庄イタが開けたボトルはこれ。古来から中部イタリア・マルケ州アンコーナ県のごく限られた地域に伝わる土着品種「Lacrima Nera ラクリマ・ネラ」を使って「ジュスティ・ピエルジョヴァンニ」という真摯な作り手が仕込んだ「Rubbjano Lacrima di Morro d'Alba 2003 ルッビヤーノ・ラクリマ・モッロ・ディ・ダルバ'03」。

 神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世は、拠点となる港湾都市アンコーナ攻略のため、アドリア海から10kmほど内陸側の丘陵地帯にある「Morro d'Alba モッロ・ディ・ダルバ」の要塞に拠点を構えます。そこで出合ったのが、うっとりするようなバラやスミレの顕著な香りがするこのヴィーノ。その特徴的なアロマに魅了されたフリードリヒ1世は、このヴィーノを愛飲したという12世紀の記述が今に残ります。

 霜害のリスクが高い早春に発芽する上、収穫時期の見極めが難しいこの品種。熟した顆粒からあたかもLacrima(=涙)のように果汁がしたたり流れることから、この名が付いたともいわれます。19世紀に欧州のブドウを壊滅させる猛威をふるったフィロキセラ禍以降に導入せざるを得なかった台木との適合性が判明するのに時間を要したことも、このブドウ品種が作付を減らす要因となりました。

giusti_piergiovanni.jpg【Photo】父親が早逝したため、23歳からワイン醸造の世界で独り立ちしたというジョヴァンニ・ジュスティ

 1985年にDOC(統制原産地呼称)指定を受けた際、イタリア各地で栽培される代表的な赤ワイン用品種サンジョヴェーゼと、マルケ州で最良の結果を生む品種モンテプルチアーノを15%までは混醸が認められたラクリマ・モッロ・ディ・ダルバですが、当時ほとんど栽培されなくなっていた品種「Lacrima nera ラクリマ・ネラ」の可能性に着目、一時は幻とまで言われたこの品種の復権と品質向上に携わったのが、1920年代に先々代が興した醸造所を継いだ父ルイジーノの傍らで幼少時代を過ごした現当主のジョヴァンニ・ジュスティでした。

 かつては若飲み向きとされたこのヴィーノ。ジュスティ家では、フローラルに香り立つラクリマ・ネラの美点を活かした体躯のしっかりとした極めて香わしく、数年の熟成に耐えうるヴィーノを他品種との混醸なしで醸します。この日セラーから取り出した2003年は、この希少なブドウとオリーブの畑が連なるなだらかな丘陵地が広がるモッロ・ディ・ダルバや隣町の「Monte San Vito モンテ・サン・ヴィート」などを訪れた思い出深い年。イタリア全土が酷暑に見舞われてブドウが焼けた中、作柄に恵まれた'03vinのマルケ州産ヴィーノはしっかり確保してあります。

 映画「よみがえりのレシピ」庄内公開初日、後藤勝利さんの藤沢カブ畑に伺った帰りに湯田川温泉に立ち寄った折、定宿の「ますや旅館」の女将・中鉢泰子さんから頂いたのが、焼畑で作られた比較的辛味の少ない在来種「田川カブ」のお手製甘酢漬。自家製ならではの心和む自然な味付けの漬物をつまみながら、8年の熟成を経て角が取れたはずのこの作り手のミドルレンジに当たるラクリマ・ネラ100%の年産わずか3,400本しかない「Rubbjano ルッビアーノ'03」を開けました。

rubbjano03_2011.jpg【Photo】かつては若飲みといわれたラクリマ・モッロ・ディ・ダルバ。ジュスティ・ピエルジョヴァンニの手になる瓶詰め後7年を経たルッビヤーノ'03は、快活で魅力的な作り手そのままの生き生きとした素晴らしい香りと風味で楽しませてくれた。フラッグシップとなる「Luigino」は敬愛する父の名を冠した更に熟成能力が高いヴィーノ。我がセラーに眠る3本の'03vinをいつ開けるかが思案のしどころ

 手摘みされたブドウだけを除梗・発酵後、バニラ香の強いバリック新樽を4割使用、10ヵ月の樽熟成と6ヵ月の瓶熟成を経てリリースされます。抜栓直後はその優美な香りが閉じた印象でしたが、1時間を過ぎる頃には蕾が花開いて芳醇な色香を漂わせ始めました。キメ細やかなタッチ、目の詰まったシルキーなタンニン、適度な樽香が溶け込んだインクのようなスモーキーなフレーバーの後、スミレ・バラ・湿った落ち葉の香りが幾重にも重なり、ブラックチェリーやカシスのような澄んだ綺麗な酸が長い余韻を残してゆきます。う~ん、オイシイ。

 前回「よみがえりのレシピ」で述べたように、経済効率とは関係なく、自分が生まれ育った土地固有の資源の価値を大切にしようという思いは世の東西を問いません。ボジョレー・ヌーボーの販促活動に見られるような行き過ぎた商業主義とは無縁の人々とその仕事をこれからもViaggio al Mondo ではご紹介してゆきます。

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Azienda Agraria Giusti Piergiovanni
アジェンダ・アグラリア・ジュスティ・ピエルジョヴァンニ

Via Castellaro, 97
60010 MONTIGNANO
- (AN)
Phone&Fax: +39 071 918031
Fax: +39 071 918031
URL:http://www.lacrimagiusti.it/italiano/home.html


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