あるもの探しの旅

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復活宣言

絶品「さんまつくだ煮」を再び@気仙沼

 盆暮れの家人の里帰りなどで、年間に何度か気仙沼を訪れる私がこれまで試した中で、最も美味しいサンマ佃煮の造り手としてご紹介した(有)ケイ。「自分や家族が食べるものなら、安心できない素材は使わないでしょ?」と語るのは、魚の扱いを知り尽くした元・網元の菅原 啓さん・義子さんご夫妻。

kei_sanma.jpg 【Photo】ケイの「さんまつくだ煮」の詰め合わせ用パッケージには、代表の菅原義子さんの手になる大海原を行くサンマ漁船が描かれている

 地元の味噌醤油醸造元「平野商店」が、化学調味料や防腐剤などを使用せずに仕込んだ味噌と醤油で、素材のうま味を手間を惜しまず引き出すケイの「網元逸品 さんまつくだ煮」は、海と共にある漁師町・気仙沼の心意気を示します。

 3.11直後、情報が寸断して混乱した状況下、気仙沼を襲った大津波の映像を見るにつけ、気仙沼湾に面した魚町に建つケイの社屋兼住居に暮らす菅原啓さん、義子さんご夫妻の安否が気にかかっていました。その無事を知った顛末は、「海の男は不屈だった」Link to backnumberでご紹介した通り。

kobayashi_osechiS.jpg【Photo】東日本大震災で被災したものの、復興に向けて歩み出した食品加工業者・生産者の製品を積極的にメニューに取り入れた「㈱こばやし」のおせち新聞広告※Photoクリックで拡大

 それから半年を経た9月初旬、仕事で気仙沼を訪れる機会がありました。仙台のお弁当製造会社「こばやし」が、被災企業支援のため、来年のおせちと本日12月3日に東京駅で先行発売される新商品「ありがとうの詩(うた)」に使う具材の製造元を訪れ、少しずつでも事業を再開し、復興に向けて歩み出した姿を取材するというものでした。

bento_grazie.jpg【Photo】お弁当に添付されるリーフレットには、支援に対する被災地からのありがとうの気持ちを綴った最優秀作5点のいずれかが収録される。悲しみの淵にあっても、人をおもんばかる投稿者の優しさに胸が熱くなること必至。幕の内弁当「ありがとうの詩」1,000円(税込)12月9日よりJR仙台駅売店・首都圏主要駅売店・こばやし本社ショールームで販売するほか、宮城県内での各種会合・会議にお届け可

 「ありがとうの詩」は、国内外から寄せられた支援に対する被災地からの感謝の言葉をしたためた詩を河北新報社が募集、詩集や曲として発売し、売り上げを被災地復興に役立てようという企画です。被災3県から460点以上の応募があり、最優秀に選ばれた5作品が本日の河北新報朝刊18面に掲載されています。優秀作の45点も、今後随時朝刊紙上で発表して参ります。

 企画趣旨に賛同し、本日先行発売されたこばやしの新商品には、最優秀5編のいずれかが、具材を提供した6つの生産者紹介とともに入っています。いずれも心に響く言葉が並ぶ秀作揃い。来週9日(金)には仙台駅店頭にも並ぶとのこと。被災地域支援のため、県に売り上げの一部を寄託するというこの新商品。作り手の顔が見える具材ともども、くれぐれもかみしめてお召し上がりください。

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【Photo】稼働したばかりの新工場で取材に応じて頂いた女川町「蒲鉾本舗 高政」菊地繁志工場長の取材風景(左写真) 万石浦に面した加工場が被災したものの、アワビの養殖を再開した石巻市「ヤマサ正栄水産」阿部正栄社長(右写真)

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 時折激しい雨が降るあいにくの空模様となった取材当日。訪れたのは活アワビ柔らか煮を提供する石巻市「ヤマサ正栄水産」、御膳蒲鉾穴子の製造元・女川町「蒲鉾本舗 高政」、そして4月に被災見舞いに伺った際、津浪で流されなかった"奇跡の"と形容詞をつけたくなるさんまつくだ煮をお土産に頂いた気仙沼「ケイ」の3社。偶然にもその日の朝食に並んだのが、頂戴したのち冷凍保存していたケイのさんまつくだ煮・醤油味でした。

【Photo】被災前に作ってあったというケイのさんまつくだ煮醤油味が、偶然にも訪れる日の朝食として食卓に並んだ

 地殻変動により平均70cm前後の地盤沈下に見舞われた南三陸地域にあって、ケイは気仙沼湾に面した魚町に社屋があります。伺ったのが大潮の時期だったこともあり、津波に耐えた鉄筋3階建てのケイの社屋は、夕刻になると海水が基礎部分までヒタヒタと上がって来るのでした。

kei_2011,09,01.jpg【Photo】地盤沈下のため、気仙沼市魚町に建つケイの社屋前は、大潮の時期ということもあり冠水被害が著しかった

 難を逃れた菅原ご夫妻と久々の再会を果たした後、建屋の3階で話を伺うことができました。かつては事務室として使っていた1階部分を仮設の加工場に改装、保健所の許可を得てプロパンガスを熱源に佃煮の製造を一部再開する段取りであること、少し離れた場所に小さな加工場を新たに設ける予定であることを伺いました。

2011.09.01yoshiko_sugawara.jpg【Photo】気仙沼湾に係留されたサンマ漁船を前に「5年以内に後継者も見つけなきゃ」と語る菅原義子さん。御歳72とは思えないパワーにはいつも圧倒される

 目黒さんま祭など、首都圏で開催される物産市でも多くの固定ファンを獲得しているケイのさんま佃煮。ほかでは真似のできない美味しさであるケイの佃煮をまた食べたいという声に背中を押されたと語る義子さん。「津波に負けてはいられない。もう歳だけど、あと5年は頑張ろうと思うようになったのよ」と語ります。その力強い言葉を伺ったのち、サンマ船やカツオ漁船が接岸する桟橋へ移動して撮影となりました。

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 取材を終え、帰りしなに頂いたのが、地元の酒蔵「角星」に依頼され、「がんばろう...けせんぬま!」の手書き文字入りラベルを絵心のある義子さんが描いたという「金紋両国 吟醸酒」。気仙沼産の酒造好適米「蔵の華」を使ったその酒を、菅原さんは支援してくれた方たちへの返礼に贈っているのだそう。

【Photo】義子さんお手製ラベルの「金紋両国」には、仲睦まじいご菅原夫妻のようなイキの良さそうなサンマと颯爽と海原をゆくサンマ漁船が描かれている。背景に見える法被(はっぴ)は、かつて網元だったご主人・菅原 啓さんと義子さんに知り合いが大漁旗を加工して贈ったもの

 一昨日、宮城県庁1階ホールで行われていた気仙沼物産市で、ケイのさんまつくだ煮を売っているところに被災後初めて出くわしました。義子さんのように元気な網元あみちゃんのパッケージを目にした私は、嬉しさのあまり思わず大人買い。久々のさんまつくだ煮は、ケイが製造を再開した暁に祝杯を上げようと取っておいた義子ラベルの金紋両国の酒肴として感慨深く頂きました。

 ささやかな復活を果たしたケイ。水産関連業などの事業再開の知らせが届くようになった一方、皮肉なことに被災地への関心は薄れるばかりです。3.11から間もなく9カ月を迎えようという被災地をいま訪れると、瓦礫の撤去は確かに進んでいます。それでも厳しい雇用環境が続く中、生活再建の目途すらつかない方たちが大勢いらっしゃいます。被災地域の自立のためには、もはや施しだけではなく事業再建に向けて立ちあがった人々を支えることが肝要。これからも末長いご支援をお願いします。

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さんまつくだ煮 (有)ケイ
住:気仙沼市魚町2-5-17
Phone:0226-22-0327 Fax:0226-22-3331
E-mail:sanmakei@yahoo.co.jp

◆さんまつくだ煮(味噌味・醤油味) 各420円 化粧箱入りもあります

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