あるもの探しの旅

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大山新酒・酒蔵まつり part.2

これぞハシゴ酒の醍醐味!! 酒蔵めぐりスタンプラリー

大山新酒・酒蔵まつり part.1 日本酒カクテルのパラダイス@鶴岡市大山コミセン続き

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【Photo】4つの蔵元と「漬物処 本長」、休憩所「どまんなか商店街」、野鳥観察会を実施する「おうら愛鳥館」のうち4カ所以上を回るとハズレなしの抽選会に参加できる

 まだ昼前だというのに4杯のカクテルを頂き、着物女子の皆さんのお話を伺っているうち、時刻は正午になろうとしていました。この催しの存在を知ってから足かけ9年、12時から始まるという酒蔵巡りに満を持して出発です。

mappa_oyama.jpg【Photo】大山新酒・酒蔵まつり実行委が用意するこのマップ(クリックで拡大)を手に酒蔵めぐりへと繰り出す

 天領地として独自の気風が育まれた大山にある4つの酒蔵のうち、酒造りの歴史に関する資料を網羅した出羽ノ雪酒造資料館を併設する渡會本店(出羽ノ雪)は4年前に訪れたことがあります。新酒が仕上がる日本海寒鱈まつり〈2008.1拙稿「寒中に寒鱈で乾杯 庄内の美味を堪能する会《前編》」参照〉の時季限定で出回る生原酒「和田来 純米吟醸 美山錦」を気に入ったのがきっかけでした。昔の酒造りで使われた道具や資料類を見学した後は、利き酒コーナーで故事に倣った「壺中之天」と「祇王祇女」という純米大吟醸2本を買い求めたのでした。

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 今回も発売してすぐに売り切れたという500円のスタンプラリー前売券は、100枚だけが当日券として1,000円で売り出されます。そのプレミアチケットまでご用意いただいた上は、4ヵ所以上回れば参加できるという大抽選会にも挑戦したかったのですが、この日は15時までに鶴岡市羽黒町へと移動、竹の露酒造場での「鶴岡食文化女性リポーター」オフ会に混ぜて頂くことになっていたのです。

【Photo】13代当主・加藤有慶社長(写真右)が出迎えに立つ冨士酒造は安永年間の創業。今年で234年目の歴史を刻む現在の蔵は築108年。雪で厚化粧をした落ち着いた大山の町並みにしっとりと溶け込む
 
 いかに徒歩圏にあるとはいえ、4つの蔵全てを2時間あまりで制覇するのは難しそう。ここはまだ訪れたことのない蔵元から回るのが得策です。そこで向かった先は、栄光冨士の銘柄で知られる「冨士酒造」。新酒が仕上がったばかりであることを示す青々とした酒林が軒に掲げられた趣ある蔵には、既に100人ほどが列をなしていました。

 この日の鶴岡は、時折日差しがのぞくものの、正午でも気温は氷点下2℃。アペリティフのカクテル4杯でちょっぴり温まっていても、行列している間に底冷えがしてきました。1778年(安永7)創業の冨士酒造。創業者の加藤専之助有恒は、虎退治で知られる肥後(熊本)の武将・加藤清正の嫡男・加藤忠廣が改易で現在の鶴岡市丸岡に流され、そこでもうけた一男一女の女子の血筋だといいます。

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【Photo】3代前となる冨三郎の時代であった昭和初期の額(左) 昭和30年代に「栄光冨士」と酒銘を変更する前は「冨士」と名乗っていた歴代の銘柄をあしらった銀屏風(右)

 1904年(明治37)に10代目冨三郎が建てたという現在の蔵。入口では13代目当主・加藤有慶氏にお出迎え頂きました。冨三郎が1928年(昭和3)の昭和天皇即位の礼で用命を受け、全国清酒鑑評会で優等賞を受領した折の額や、加藤清正公の家紋「桔梗」と「蛇の目」が染め抜かれた暖簾、代々の銘柄を散りばめた銀屏風など、由緒正しきこの蔵の歴史を物語る品々が目を引きます。

 奥行きある蔵をゾロゾロと列をなして進みながら、蔵人が注いでくれる酒を小さなプラスチック製のお猪口で試飲してゆきます。後方から次々と行列が進んでくるので、1ヵ所に留まって2杯目をお願いするのは、よほど強心臓の持ち主か、すっかり出来上がったヨッパライでなければ無理でしょう(笑)。なかにはマイお猪口を持参する常連と思しき人たちも。な~るほど、この手があった。ヨシ、次回はマイ1合枡を持参、ダメもとで蔵人に差し出してみよう...。

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【Photo】純米吟醸「心鍵」は辛口のすっきりした淡麗タイプ(上左) 大吟醸「古酒屋のひとりよがり」はこの蔵の看板銘柄。庄内砂丘名産のマスクメロンのような芳醇な香りと豊かな味わいの逸品。「お代わり下さい」の一言が言いだせない小心者の庄イタなのだった(上右)
「しぼりたて仙龍」はこの時期限定のフレッシュでいきいきとした生酒(下)

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 華やかな吟醸香と深くまろやかな旨味に魅了される「大吟醸 古酒屋のひとりよがり」までも試飲でき、上々のスタートを切った酒蔵巡り。新酒瓶詰め体験コーナーで販売していた、この季節限定の本醸造しぼりたて「仙龍」1本だけを買い求めました。お気に入りの酒を箱買いする人たちも少なからず見受けましたが、蔵巡りの出だしから欲を出しては、この先荷が重くなります。

kahachiro1.jpg【Photo】午後1時を過ぎた頃、2軒目で訪れた蔵元が大山で現存する4つの蔵元では新参ながら最も石高が多い「大山」銘柄の「加藤嘉八郎酒造」。その前にも長ーーーーーい行列

 とはいうものの時刻は間もなく13時。1時間ちょっとで鶴岡駅前まで戻らねばならない身としては、それから行けるにしてもせいぜい1軒。

 冨士酒造から一番近くにあり、その親戚筋にあたる初代・加藤有元が1872年(明治5)に創業以来、「大山」銘柄の酒を醸す「加藤嘉八郎酒造」が次の訪問先で決まりです。

kahachiro2.jpg【Photo】新酒の旬ならではの青々とした酒林と注連縄が架かる加藤嘉八郎酒造の正面入口

 4代目の加藤有造氏が当主を務める加藤嘉八郎酒造。温度管理などモロミの状態を自動制御で櫂入れを行う「OS式タンク」と、麹菌を理想的な環境で培養できる「OKS自動製麹装置」を1970年代に自社で開発。杜氏や蔵人の熟練の技を活かすべきところは活かしつつ、伝統を踏まえつつ進取の気質のでより高い品質を目指すこの蔵の姿勢は、当時の酒造業界では異端児と評されたこともあったそうです。たゆまぬ工夫と努力の甲斐あって、全国清酒鑑評会で立て続けに金賞を獲得しているこの蔵の実力は確かなもの。

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 加藤嘉八郎酒造に並ぶ列の最後尾につくと、見覚えのある横顔がすぐ前に。声をかけると鶴岡在住で私の呑み友達であるTさんでした。フードアナリスト仲間と、ご自身の郷里・仙台のご友人ら数名を酒蔵めぐりに案内しており、ここが2軒目なのだとか。酒蔵めぐりに参加することはFacebookを通じて知っていましたが、延べ3,000人以上が繰り出すこの催しで出くわす奇遇に驚きつつも、類は友を呼ぶといいます。こうして出会うのも必然なのかも...(笑)。

【Photo】揃いのタグゆえパックツアー客と思いきや「日本酒 命」??

 「ご一緒しませんか」と、お誘い頂いたのですが、ほんの一瞬だけ逡巡しました。何故なら、その御一行様は"日本酒 命"という揃いのお手製タグを付けており、行列の中でも異彩を放っていたのです ( ̄▽ ̄;)。それでもあまりに日本酒命チームが楽しそうなので、心の動揺を悟られてはならずと間髪をおかずに笑顔でお仲間に加えて頂きました。

 蔵に入ると、すぐにホッカホカの湯豆腐の振る舞いがありました。ダシのコクが効いて美味しいなぁ、と感心していると、奥の方で鰹節を削って使っているのが見えました。ちょうど小腹が空いてきたところに嬉しいサービスであるばかりでなく、こうしたところも手を抜かないこの蔵の姿勢が垣間見え、一気に好感度アップです。

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【Photo】注文を受けると、写真奥に見える充填機で新酒を瓶詰めし、客の目の前でラベルを貼る本醸造無ろ過生原酒「大山槽前」(写真左) 唯一の欠点は非売品であることぐらい。湯煎された大山の甘酒は、酒米の旨さが凝縮した左党にとっても堪らない美味しさ(写真右)

 その日の朝に醪(もろみ)を槽(ふね)で搾ったばかりだという本醸造無ろ過生原酒「大山槽前(ふなまえ)」は、キレのある鮮烈な味わいが印象的。先ほど試飲した栄光冨士の搾りたてよりも辛口なのはこの蔵らしいところ。ともにアルコール度数が18~19%と高め。すぐに気持ち良くなれそうなので(笑)、こちらも購入しました。

kihachiro7.jpg【Photo】酒造りの最後の工程で、もろみを圧搾して清酒を搾ったた後の副産物・板粕は、タンパク質・ペプチド・各種アミノ酸・ビタミンB群などの栄養素の宝庫。もはやカス呼ばわりは出来なくなる酒粕を熱した焼粕のサービスコーナー

 試飲コーナーの先では板粕を電気コンロとホットプレートで焼き目をつけた焼粕と、この日に合わせて仕上げたという甘酒が振舞われていました。湯煎して燗をつけた温かい甘酒は、麹と米だけで醸し出される上質な甘さと香りに満たされヤミツキになりそう。なれどこの甘酒は非売品。かくなる上は、さきほどの冨士酒造で、古酒屋のひとりよがりを注いでくれた蔵人に対して言えなかった一言を発するしかありません。

 「あんまり美味しいので、すみません、もう一杯下さい!

 笑顔で応えていただいた2杯目の甘酒を満喫したところでタイムアップ。「鶴岡食文化女性リポーター」オフ会に潜り込ませてもらう羽黒町「竹の露酒造場」へと移動する時間となりました。3軒目の蔵めぐりへと勇んで出発したツワモノ揃いのチーム日本酒命とはここでお別れです。

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 9年越しの念願叶って参加できた大山新酒・酒蔵まつり。訪れた2つの蔵元で、それぞれ搾りたて新酒(上写真)を入手することができました。しかし、大山最古の1592年(文禄元年)創業「羽根田酒造(羽前白梅)」と前述の「渡會本店(出羽ノ雪)」の訪問は断念し、スタンプラリーを途中離脱。ゆえに"めでたさも中ぐらいなり おらが冬"、といった小林一茶の諦念と、"I shall return." というダグラス・マッカーサーの再訪を誓う熱い思いを胸に、大山を後にしました。

To be continued.


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コメント

「大山新酒・酒蔵まつり」を、大変美しく掲載していただき、またトラックバックしていただき、本当にありがとうございます。今後も楽しいブログを拝見させて頂きたいと思います。
ありがとうございました。

▼ 大山観光協会の皆様

 大山コミセンの受付においでだった三浦様にお心遣いをいただき、今年も諦めていた大山新酒・酒蔵まつりに期せずして参加することができました。

 参加者に楽しんでもらおうという大山を愛する皆様の気概を肌で感じました。4つの蔵元が徒歩圏内にあるという願ってもない大山の地域資源をうまく生かした催しだなぁと、感心することしきりでした。

 おかげさまで心底楽しい時間を過ごすことができました。来年の新酒・酒蔵まつりへの再挑戦は勿論ですが、季節が良くなったら大山のそぞろ歩きをしてみたいと思います。

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