あるもの探しの旅

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2012/03/18

ありったけの竹の露 =後篇=

Whole lotta ♥ HAKURO-SUISHU.
「鶴岡食文化女性リポーター」オフ会打ち上げ @手打ちそばしげ庵

shigean_2012.2.jpg【Photo】鶴岡市街中心部から羽黒山方面へと向かう羽黒街道を東進、赤川に架かる羽黒橋を渡り、3つ目の信号が黒瀬交差点。「手打ちそば しげ庵」は、旧藤島町渡前方向に左折し、黒瀬川を背に右手に建つ

 4杯の日本酒カクテルで幕を開けた「大山新酒・酒蔵まつり」Link to Backnumberの日。2つの蔵元で搾りたての新酒を味見した後、純米大吟醸の原酒ばかりを舐めつくした竹の露酒造場で3時から2時間半をかけて仕込み現場をひと通り見学。不肖 庄イタを含め、蔵元の説明を聞いてか聞かずか、恍惚の表情を時おり浮かべて試飲を続ける鶴岡食文化女性リポーターの皆さん。その脇で、ずーっと呑まずにいた女将の相沢こづえさんが運転する車で、すぐ近くにある「手打ちそば しげ庵」に移動しました。
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【Photo】鼠ヶ関の岩ノリ採取体験をしたメンバーからなる鶴岡食文化女性リポーターオフ会は、竹の露酒造場からほど近い「手打ちそば しげ庵」に会場を移し、蔵元の相沢政男・こづえ夫妻を囲んで和やかに第二幕が開けた。さぁー呑むぞっ!と臨戦態勢の女将(奥左から2人目)の脇で甲斐甲斐しくお燗の準備に余念がない蔵元

 羽黒街道は頻繁に通るゆえ、かねてより店の存在は認識していましたが、訪れるのはこの日が初めて。庄内系に突然変異して以来、蕎麦屋とラーメン店ばかりが目立つ山形内陸をスルー、食の都・庄内を訪れると、内陸地域でほとんど食べ尽した蕎麦とはどうしても違う系統に足が向くのですLink to Backnumber。ゆえに濃密な庄内での食遍歴で、蕎麦を食したのは10回にも満たないはず。旧櫛引町時代の「宝谷そば」、鶴岡「大松庵」、酒田生石「大松屋」など、訪れた蕎麦屋は6~7軒がせいぜい。

 「そば街道」と称し、板蕎麦を観光の売り物にしている村山地域と境を接しているため"山形イコール蕎麦どころ"と擦り込まれている仙台では、私が庄内の食事情に明るいと知った方から「庄内で美味しい蕎麦屋はどこ?」とよく訊かれます。海・里・山の美味に溢れた庄内に足を延ばしてまで、元来は山間地などの土地が痩せた地域の食糧であった蕎麦を食するのは、もったいないと思っていました。つい最近までは...。

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【Photo】冬季限定・300本限定醸造の「白露垂珠 無濾過純米 超にごり活性微発泡23BY」(上左写真)口に含むと炭酸ガスの刺激を感じ、タンクの醪(もろみ)をそのまま呑み干す気分(上右写真)

 新潟県境にほど近い旧朝日村大鳥は、1193年(建久4)に伊豆から落ち延びた武将・工藤大学の末裔が暮らす落人の里Link to Backnumber 。その地の出身だという工藤姓のご主人が営む手打ちそば しげ庵。蕎麦&山海のおかずバイキングという画期的なシステムで、食い倒れ寸前になること必定の鶴岡市山王町の旅館山王荘の主人が蕎麦を打つ「野房 そばの木」同様、"もっと早くこの店に来ればよかったのに" と後悔するまで、さして時間を要しませんでした。

shigean2012.2_2.jpg【Photo】蕎麦屋とはいえ、豊かな山海の幸を味わうことができる小鉢が並ぶのは食の都・庄内ならでは。これら地元の直材は、地の米・地の水で醸す白露垂珠の絶好の肴となる

 "こんな四股名の力士がいたっけか?"と、どうでもいい考えが浮かぶ酒造好適米「出羽の里」を精米歩合77%に留めた冬季限定「白露垂珠 無濾過純米 超にごり活性微発泡」で、まずは乾杯。火入れをしておらず酵母が生きており、瓶内でも発酵を続けるために発生する炭酸ガスで、下手をすれば中身を噴出させる憂き目に遭うこの酒。冷温状態でも必ず噴き出る酒、田酒を醸す青森・西田酒造店の地元向け銘柄「外ヶ濱 吟醸生にごり FLOWER SNOW」ほどでないにせよ、取扱いには注意を要します。

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【Photo】うっすらとした澱が漂う「純米吟醸 雪ほのか 無濾過本生 出羽の里初しぼり」は、醪を搾ったままで濾過せずに瓶詰めされる。料理を引き立てるまろやかな味わいは冷やで楽しみたい(右写真) 蔵元が燗をつけた「はくろすいしゅ 純米吟醸無濾過原酒 生詰 亀ノ尾」は、しっかりした香りとうま味が際立ち、食中酒としての実力を遺憾なく発揮(左写真)

 やっと参加できた大山新酒・酒蔵まつりの打ち上げに、F1レースの表彰式ばりにシャンパンシャワーならぬ"超にごり酒シャワー"も悪くないなぁ(*゚゚)ノλ*・'゚'・*、などと思ってみたり(笑)。そんな邪念を抱く若干1名が潜り込んでいることを知るはずもない蔵元は、一滴も噴出させることなく開栓してしまいました。(⇒こんな言い回しは不謹慎極まりない)鼠ヶ関で岩ノリ採取を体験した女性リポーターの皆さんにとっても、岩ノリの板海苔が出来上がったお祝いにもなったのに。・・・うーん、残念!?

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【Photo】一昨年の12月に購入した「白露垂珠 無濾過純米 超にごり活性微発泡 21BY」。うめっけのぅ~。(左写真) 天然マイタケとゼンマイの和え物、蕎麦切りの唐揚げ(右写真)

 精米歩合77%の出羽の里で仕込んだ300本の最後だというこの1本は、にごり酒なれど日本酒度+4という辛口。鶴岡銀座にある酒販店で一昨年12月末に購入したオレンジ色ラベルの白露垂珠 無濾過純米 超にごり活性微発泡21BYが、精米歩合65%で日本酒度+-0だったのとは異なる仕上がりです。ベタつかず綺麗に後味が引いてゆくのはこの蔵らしいところ。きりっと冷えた芳醇なにごりならではのトロリとした旨さが沁みわたります。

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【Photo】香ばしくカラっと揚った天ぷら(左写真)は、しっかりとした旨味を感じる「はくろすいしゅ 純米吟醸原酒 生詰 改良信交」(右写真)とも好相性

 相沢さんが持ち込んだ白露垂珠は合計9種類。「古い酒米から呑んでゆきましょう」という蔵元自ら、燗をつけて下さったのが「はくろすいしゅ 純米吟醸無濾過原酒 生詰 亀ノ尾」。竹の露では、醪(もろみ)を搾ったままの純米吟醸クラスの原酒は平仮名書きで「はくろすいしゅ」、特撰純米などの吟醸以外が漢字の「白露垂珠」。その酒が一番旨いと蔵人が感じるまで加水したのが白ラベル。原酒のラベルは酒米の種類別に色分けされているので、選ぶ際の目安にしやすいかと。

shigean2012.2_9.jpg【Photo】蕎麦がき入り鴨鍋。醤油ベースのつけだれに練り粕ペーストを加えると、より一層のコクが加わる

 燗と冷やの両方で頂いた「白露垂珠 無濾過純米原酒 生詰 京ノ華」とも合った天然物のマイタケやゼンマイの和え物、「ひろっこ」または「きもど」と庄内では呼ばれるアサツキとイカの酢味噌和えなどの小鉢料理も美味しかったのですが、蕎麦がきの入った鴨鍋と燗酒との相性は抜群。ここで相沢さんが取り出したのが、白露垂珠の酒粕をペースト状に加工したオリジナルの練り粕でした。

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【Photo】 藤島川沿いの笹川扇状地の田んぼで蔵元が育てる「京ノ華」は、昭和初期に鶴岡で生まれた酒造好適米。「白露垂珠 無濾過純米原酒 生詰 京ノ華」(左写真) 酒どころゆえ、練り粕を用いた食文化が根付く庄内地方。我が家の常備品、はくろすいしゅ吟醸粕と、この日お土産に頂いた練り粕ペースト(写真右)

 水と米を庄内の生産者から直接調達する我が家では、酒粕食文化が発達した鶴岡に見習えと、山伏豚ロースのブロックハムを漬け込んだり、自家製の鵜渡川原キュウリLink to Backnumber 粕漬けを仕込むため、「はくろすいしゅ吟醸練り粕」を常備しています。この日お土産としても相沢ご夫妻から頂いた練り粕は、はくろすいしゅ吟醸練り粕よりも白色度が高く、より滑らか。タンパク質・各種ビタミン・アミノ酸など、うま味成分と栄養素の塊とも言うべき酒粕を醤油ベースの漬け汁に加えた鴨鍋は、具材から滲みだした風味に更なる深みが加わります。

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【Photo】「白露垂珠 生詰 純米吟醸 美山錦」を‐3℃で2年間氷温貯蔵した「21BY瓶囲ゐ」(右写真)と「23BY寒造り」(左写真)。ふっくらとした味わいの熟成酒と、溌剌とした新酒それぞれに良さがある

 おりがらみ「雪ほのか 純米吟醸 初しぼり 出羽の里」に続いて開けたのは、「はくろすいしゅ 純米吟醸原酒 生詰 改良信交」。生まれ故郷の秋田より、誕生して50年を経た現在では、山形と新潟のごく限られた蔵元が使う酒造好適米「改良信交」で仕込んだ酒です。丈が長いために倒伏しやすく、秋田ではほとんど姿を消していますが、持ち味であるふっくらとした味わいに魅せられた一部の蔵元によって、吟醸クラスの酒に用いられます。「白露垂珠 純米吟醸 生詰 美山錦 瓶囲ゐ」は、‐3℃で氷温貯蔵した平成21年醸造年度の1本。今年搾ったばかりでフレッシュな香りがはじける「寒造り」との対比では、寝かせた日本酒のしみじみとした旨さが冴えわたるのでした。

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【Photo】 芳醇淡麗なこの蔵らしさが極まった綺麗な仕上がりが素晴らしい「はくろすいしゅ純米大吟醸 生詰 出羽燦々」(左写真) 燗上がりする「白露垂珠 生詰 無濾過純米 ミラクル77 出羽の里」(右写真)

 2009年4月、162の蔵元が359銘柄の酒を出品し、ロンドンで開催された「IWCインターナショナルワインチャレンジ」「sake部門」純米吟醸・純米大吟醸のカテゴリーで、最高賞であるGold prizeを受賞した「はくろすいしゅ 純米大吟醸 生詰 出羽燦々」までが登場した頃、トドメの蕎麦が出て来ました。ダシが効いた辛めのタレで頂く二八だという香り高く咽喉ごしの良いこの蕎麦、庄内で食べた蕎麦では間違いなく指折りの旨さ。んめものの宝庫、食の都・庄内で、また行きたい店のバリエーションが広がったのは収穫でした。

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【Photo】 蕎麦はコシのある二八(左写真) デザートのバニラアイスには蕎麦の実が入る(右写真)
 
 蔵元ご夫妻を交え、女子会ならではの和やかな雰囲気のもと、話に花が咲いたオフ会も23時前にはお開きとなりました。雪の降りが一層強くなる中、宿の部屋に入るや、胸一杯になるまで杯を重ねた白露垂珠の心地よい酔いが回り、Whole Lotta Love (邦題:胸いっぱいの愛を) by Led Zeppelin が頭の中を駆け巡り、ほぼ12時間に渡って日本酒を堪能しきった長~い1日を反芻するうちに、やがて意識が混濁し、zzzzzz...。

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手打ちそば しげ庵そば(蕎麦) / 鶴岡)
夜総合点★★★★ 4.0

2012/03/10

ありったけの竹の露 =前篇=

Whole lotta ♥ HAKURO-SUISHU.
「竹の露酒造」再訪 in 「鶴岡食文化女性リポーター」オフ会 潜入レポ

 「鶴岡食文化女性リポーター」オフ会に混ぜてもらうお膳立てをして下さった山菜卸問屋「遠藤商店Link to Website」の遠藤初子さんから、竹の露酒造場に3時集合とのお達しがあり、酒蔵めぐりスタンプラリーを切り上げて大山を立ったのが2時前。

TAKE2012._1.jpg【Photo】2年続きの大雪となった羽黒の冬。搾り作業真っ最中の「竹の露酒造場」で私たちをまず出迎えてくれたのは、この蔵を代表する銘柄「白露垂珠」・「はくろすいしゅ」の数々

 鶴岡食文化女性リポーターは、ユネスコ食文化都市の登録を目指す鶴岡市が、季節ごと多彩な表情を見せる山・海・里をフィールドとするフードツーリズムを創出しようという社会実証実験です。食に関する宝庫・鶴岡の海の幸・山の幸、特色ある在来作物や旬の郷土料理などを単にPRするだけでなく、現場に出向いて生産者や料理人から来歴や背景を聞き出し、その背景の物語を共有しようというもの。市民目線で鶴岡の食文化の魅力をブログやFacebook・Twitterなどソーシャルメディアを通じて発信しています。

TAKE2012.2_2.jpg【Photo】試飲用に用意された「白露垂珠」の大方は、割り水で調整していない新酒鑑評会仕様の純米大吟醸。含んだ酒を吐き出す容器が用意されたのも鑑評会と同様。その容器には目もくれず、真剣な表情で原酒を呑み干してゆくタフなメンバー揃いなのだった

 「Viaggio al Mondo~あるもん探しの旅」のキモである"足もとの地域資源に光を当て、輝きを放たせよう"というコンセプトとの親和性を感じるこの取り組み。事業が始まった2011年度は、藤沢カブの生産者・後藤勝利さんのお姉様であり、映画「よみがえりのレシピ」に登場した田川カブ生産者で田川赤かぶ漬グループ代表の武田彦恵さんを昨年10月に、厳冬期に採取の旬を迎える天然岩ノリの漁場である鼠ヶ関の漁師・佐藤準さんと同地域協議会の五十嵐一彦さんのもとを今年1月に訪れています。

take_hikitsuna.jpg 鼠ヶ関の反省会を兼ねるというこの日のオフ会。乗せて頂いた遠藤さんが運転する大型の商用バンは、「雪の降るまちを」の舞台となった鶴岡市街でリポーターメンバー4名を順次ピックアップしながら、つい10日ほど前にも水を汲みに来た「竹の露酒造場」へと到着しました。ほどなく佐藤・五十嵐のお2人も鼠ヶ関から加わり、オフ会メンバー7名+庄イタで計8名が勢揃いです。

【Photo】屋根の積雪はゆうに1mを超える。雪景の中に佇む竹の露酒造場。合掌部に掛けられた「引縄」は、羽黒山神社で大晦日に行われる「松例祭」の大松明引きで使われた引綱を組み直し、家の魔除けとして奉納される

 1858年(安政5)創業というこの蔵。代表社員の相沢政男・こづえ夫妻の"習うより舐めろ"というご厚意で、清酒鑑評会の出品仕様の加水していない白露垂珠の試飲から。卓上にズラリと並ぶは、鑑評会への出品番号タグが付いただけでラベルレスな純米大吟醸の無加水原酒ばかり6本、通常出荷向け加水調整済み4本からなるヨダレものの計10本の一升瓶。壮観なラインナップを前に、早くもアドレナリンが分泌されてきました(笑)。和らぎ水は仕込み水を瓶詰めで商品化した「月山深層天然波動水」。

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【Photo】明治から大正にかけて庄内の先人が生んだ品種「亀ノ尾」(左)と「京之華」(右)(左写真) 70年前に誕生した「京之華」(左)と心白部の大きさなどの見た目はさして変わらない「出羽の里」(右)(右写真)竹の露では蔵元・蔵人自らコメ作りも行う

 思い思いに試飲を始めた私たちに、相沢さんは庄内で誕生した酒米の説明からまず始めました。

 ササニシキ・コシヒカリ・ひとめぼれ・あきたこまち・つや姫など、近代日本が生んだ優良うるち米のルーツにあたり、酒米として近年価値が見直されている「亀ノ尾」。東北が大冷害に襲われた1893年(明治26年)秋、東田川郡立谷沢村(現庄内町)中村地区の青立ちした早生種「惣兵衛早生」の中で3本だけ黄金色の穂を垂れた稲をもとにLink to Backnumber阿部亀治(1868~1928)が育成した品種です。

dewa_33.jpg【Photo】コンピューター制御による精米技術が進んだ今日では、かつては成しえなかった精米率10%台前半という、コメの心白部を欠損させることなく表層部から9割近くまで削り落とすことも可能になった。竹の露酒造場では、酒米の品質向上をはかることで、7割程度の精米歩合をもって、酒造りに適した特性を持つ心白部だけを残し、頂点を狙える酒造りを行っている。精米前(左)と精米率33%(右)の出羽燦々

 西田川郡京田村(現鶴岡市中野京田)の育種家・工藤吉郎兵衛(1860~1945)は、亀ノ尾の直系品種として生み出した2つの品種「亀白」と「京錦1号」から1924年(大正13)に人工交配した東北初の酒造好適米「酒之華」を創出。翌年には兵庫から取り寄せた「山田錦」の先祖である「新山田穂」と酒之華の交配に着手、1931年(昭和6)に新品種「京之華(竹の露では「京ノ華」と表記)」と命名。1940年(昭和15)には、京之華を1921年(大正10)に秋田県国立農事試験場陸羽(りくう)支場で我が国初の人工交配で育成された「陸羽132号」と交配した酒造好適米「国之華」を生み出します。

take2012.2_5.jpg【Photo】加圧して醪(もろみ)を搾る一般的な方法ではなく、布袋に醪を詰め、竹竿に吊るした袋から自然に滴り落ちる贅沢な造りが雫酒。杜氏が育てた「出羽燦々」を精米率40%まで磨き、仕込みタンクから1升瓶換算で100本~150本程度しか造れない「純米大吟醸 白露垂珠 吊雫原酒 出羽燦々20BY」。低温貯蔵によって適度に練れた旨みが後を引く

 独自に編み出した人工交配技術で、38もの新品種を編み出した吉郎兵衛。そのひとつで戦後の食糧難の時代に多収性から重宝された「日の丸」は、農事試験場の技師で同郷の加藤茂苞(しげもと)を介して入手した一大穀倉地帯の北イタリアから取り寄せた稲との交配により吉郎兵衛が育成した日本初の外国品種との交配種です。この日試飲した6本にも使われ、山形での作付が近年増加している酒造好適米「出羽燦々」を育成した山形県農業試験場のような官主導ではなく、こうした民間育種が盛んだった背景には、「沈潜の風」を尊しとする勤勉な庄内人気質があるように思います。

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【Photo】種籾を選抜してゆく中で、吸水が遅く、35%以上に磨き上げても破砕しにくい理想的な酒造好適米に進化したという自家栽培の出羽燦々。精米率33%の出羽燦々から醸した逸品2種。相沢さん、正直に申し上げます。あまりに旨さが沁みわたるので、3杯ずつ呑み干してしまいました m(_ _)m

 次に蔵元が触れたのは仕込み水のこと。3年前の秋に実施した「食の都・庄内 豊かな実りと癒しのツアー Link to Backnumber」で詳細に触れているのでここでは割愛しますが、このph7.7の弱アルカリ性、硬度19mg/ℓの無菌超軟水は、シリカ(SiO2・微粒二酸化ケイ素)成分を39mg/ℓ 含みます。これは粘土層に上下を挟まれたケイ素からなる石英質の砂礫層から汲み上げているため。美容液で使われる成分だけに、肌の保湿効果や、コラーゲンの再生・維持が期待できるのだといいます。

take2012.2_8.jpg【Photo】上水道の水源が美味しいと評判だった地下水から月山ダムを水源とする塩素消毒した水に切り替わるのを契機に井戸を掘削。地下300mの水晶地層帯で遭遇したのが、この月山水系の伏流水。22℃と水温が高いため、1週間をかけて冷却・濾過するタンク。貯蔵後半になると、タンクの中には、あたかも水が存在しないかのように透明度が増してくる

 水道の蛇口からこの水が出てくるという羨ましい蔵元のお顔は、男性ながらスベスベのもち肌。女将のこづえさんのお肌もぷるんぷるん。"使用後"のお二方の美肌ぶりに、いやがおうでも説得力が高まるというもの。「肌が滑らかになるので手にとって擦り込んでみて」という蔵元の言葉に促された女性メンバーは、歓声を上げながらその効果を実感。呑んでよし、肌磨きに用いてよし。めでたしめでたし。

take2012.2_10.jpg 全国新酒鑑評会で山田錦以外の酒米を使った酒を審査する第1部に於いて、6年連続金賞受賞という記録を打ち立てたこの蔵。精米率33%まで磨き上げた出羽燦々を丹念に仕上げた吟醸麹と卓越した匠の技で仕込んだ鑑評会仕様の白露垂珠が備えた芳醇淡麗な旨さは、もはや必然の成り行きかと。

【Photo】高温過乾燥状態のもとで麹を狙い通りの突破精(つきはぜ)状態に仕上げる杉材で造られた麹室(上写真)。1升分の蒸米が入る柾目の杉製「麹蓋(こうじぶた)」を用い、蔵座敷に泊まりがけで蔵人が二昼夜付ききりの世話をする。コメの表面のみならず内部にも菌糸が多く繁殖し、旺盛な糖化力で低温下にある酒母の発酵を促し、旨味と引き(キレ)が相まった白露垂珠ならではの個性が生まれる
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 説明で興味を引いたのが、精米歩合がわずか77%の白露垂珠。2005年(平成14)に純米酒の精米歩合規定が規制緩和で撤廃されて以降、それまで軽んじられてきた精米率70%に満たない普通酒の一角に、米を磨く割合を2割程度に留めた精米率80%前後の「低精白酒」と呼ばれる清酒が登場しています。酒造りにおいて雑味の元となる米の表層部分を2割程度しか除去しないことを意味する精白率33%(=精米率77%)の「無濾過純米 白露垂珠 ミラクル77 2009BY」は、昨年8月にスローフードジャパンと酒文化研究所の主催で行われた「第3回燗酒コンテスト」に出品した全国158蔵元の254銘柄のうち、720mℓ1,000円以下の部で金賞に輝いた36銘柄のひとつに選ばれました。燗をつけた白露垂珠の実食レポートは次回ご報告。

【Photo】後味がスッキリした辛口ゆえ、食中酒に適した「無濾過純米 白露垂珠 ミラクル77こく辛 出羽の里 2010BY」は、燗映えのする酒。地元の契約農家が、特別栽培で育てた原料米を2割強しか磨かず、白露垂珠でありながら1,800mℓ 2,100円(税込)というリーズナブルさ(上写真)  醪を搾ったばかりの原酒が流れ出る圧搾機を前に、思わずヨダレも流れ出る(下右写真)醸造所内には神棚と魔除けの引縄が奉られ、酒袋を吊る雫酒タンクには注連縄も(下左写真)

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 仕込み水を濾過して適温に下げる6基の貯蔵タンクと酒米を蒸し上げる大型ベルト式横型連続蒸米機について説明を受けた後、2階にある麹室と蔵人が仕込中に寝食を共にする蔵座敷を見学。階下に戻って蛇腹状のろ過布に醪(もろみ)を送り込んで清酒を圧搾する圧搾機では、瑞々しい新酒が搾られるさまに一同目が釘付けに。

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【Photo】羽黒山神社に奉納する御神酒は、古式に倣って醪に焼酎を加える「柱造り」。出羽三山の神々に柏手を打ってから、発酵中の酒母をすくい上げる相沢政男さん(左写真)発酵が進行中のため、ピリっとした炭酸ガスの刺激が醪の香りを際立たせる(右写真)

 蔵見学の最後は、酒母(もと)が入った発酵タンクへと移動です。そこには1基だけ注連縄を張られたタンクがありました。それは羽黒山神社から発注を受けたお神酒を仕込むタンクなのでした。一同柏手を打った上で、蔵元がタンクからすくい上げた酵母の作用で発酵中の醪を味わうという、山伏見習いとしては願ってもない幸運に恵まれました。

take2012.2_15.jpg【Photo】蔵元が汲み上げた御神酒に群がる女性リポーターの皆さん

 コメ作りから蔵人が行う「地の酒」にこだわる酒造りの現場を見学した仕上げは、竹の露フルコース食事会場へと移動です。4杯のカクテルから始まったこの日、最終的に何種類の酒を味わったのか記憶が定かではありませんが(笑)、失速せずラストスパートをかけてゆきます。


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2012/03/03

わんぱくたまご

Piatto 3月号こぼれ話ver.2

piatto201203.jpg 19世紀英国では、産業革命による粗悪な大量生産品の氾濫に対し、暮らしに芸術を取り入れ、豊かな創造性を取り戻そうというアーツ&クラフツ運動が起こりました。その精神的な支柱となったのが、テキスタイルデザイナー・詩人・空想的社会主義者のウイリアム・モリス(1834‐1896)です。

 ヴィクトリア朝英国に花開いたラファエル前派や世紀末ウイーンを妖しく彩ったウィーン分離派、フランス・ベルギーのアール・ヌーヴォー運動にも影響を与え、モダンデザインの祖とも呼ばれるモリス。21世紀を迎えた現在も色褪せないその思想を具現化した樹木や草花・鳥など自然のモチーフを取り入れたインテリア製品の数々。生命の芽吹きを感じさせるこれからの季節、暮らしの中に取り入れてみては。

 昨年はモリスが設立した「MORRIS&Co.」(モリス商会)Link to Website創立150周年でした。キイチゴをくわえたツグミを意匠化した「Strawberry Thief いちご泥棒」柄のファブリックの前に立つモデルの高以亜希子さんが表紙のPiatto Link to Website3月号は本日発行。巻頭特集のテーマは人の往き来が増えるこれからの季節、大人の女子会にお勧めの3店をロケーション別にセレクトしました。

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 随時募集中の読者モデルとしてご登場頂いた高橋由香さん、佐藤久美子さんのお2人に召し上がって頂いたのは、仙台市戦災復興記念館の脇にある「土井親方のこだわり料理 縁(えん)」の親方おまかせコース。お品書きにあった「カニ入りだし巻き玉子」で使っているという玉子に「おぉ」と反応した庄イタなのでした。

【Photo】土井親方のこだわり料理 縁のだし巻き玉子は3種類の味付け。プレーン(500円)やくらい山葵(550円)カニ(写真・650円) 全てお持ち帰り可

 それは先月末からオンエアが始まった日本生命のCMに出演している千葉県八街市「エコファーム浅野」浅野悦男代表や東京表参道「bar&enoteca Implicito」松永聡オーナーらが、海・山・里に珠玉の食材が揃う食の都・庄内の視察に訪れた折に見学した鶴岡市羽黒町「わんぱく農場」の「わんぱくたまご」でした。地に足が付いた仕事をしていた頃の「アル・ケッチァーノ」奥田政行氏をガイド役に伺ったのは、高病原性鳥インフルエンザが問題となり、部外者が鶏舎への立ち入りを一般に制限されるようになる1年前の2004年6月のこと。

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 運営元の(株)エコ・オフィス代表取締役 松浦眞紀子さんご案内のもと見学したわんぱく農場は、狭苦しいケージに鶏を押し込んで卵を産ませる養鶏場とは全く異なるものでした。数ある玉子の中で、みやぎ食材伝道師である土井親方の厳しいお眼鏡にかなった鶏卵を産む2,000羽のニワトリたちは、クラシック音楽が流れるストレスフリーな開放鶏舎と自由に行き来できる庭で放し飼いにされていました(現在は3,000羽を飼育)。

1pakuegg.jpg【Photo】一般的な卵と比べて高タンパク低コレステロールなわんぱくたまご。生臭さのないハリのある黄身、ぷっくりした白身の盛り上がりが品質と鮮度の良さを物語る。
こうした状態を維持する期間が普通の卵より長いのもこの玉子の特徴

 地元で調達した米ぬか・大豆かす・トウモロコシなどの穀類、おから・庄内麩、採卵後に粉末化された鮭や牡蠣殻など、入手経路が明白な材料だけを高温発酵装置で自社加工し、配合飼料となります。この完全発酵飼料を与えるため、不快な臭気をほとんど感じさせない鶏フンは、大豆やダイコンなどの農園内で栽培する野菜類の有機肥料として活用されます。与える水は総面積4,500坪の敷地に掘削した井戸で地下80mから汲み上げたミネラル成分豊富な月山水系の伏流水。養鶏場といえば、ニワトリの排泄物による特有の臭気を感じるのが普通ですが、こちらはその限りではないのがとても印象的でした。
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 そうした環境のもとで抗生剤を投与されずに伸び伸びと育つ鶏たちが生む卵もまた健康そのもの。白身の盛り上がりが高く、ハリのある黄身はご覧の通り針ネズミ状態になってもぷるんとしたまま。たまごかけご飯にしてよし、加熱調理してよし。「仙台でこの玉子を使っているのはウチだけかも」と土井親方。並々ならぬ素材に対するこだわりを垣間見たのでした。

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土井親方のこだわり料理 縁(えん)
住:仙台市青葉区大町2丁目13-9 幸田ビル1F
Phone:022-263-1030
営:昼11:30~13:30(要予約・5名以上から)
  夜17:00~22:00
定休:日曜・祝日
URL:http://kodawari-en.com/index.html

わんぱく農場
住:鶴岡市羽黒町荒川字漆畑33
Phone:0235-78-0232
購入はフリーアクセス:0120-189-414
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