あるもの探しの旅

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パスタに見る日伊の差異

(伊語表記)
Tempi di Cottura:Decidete voi secondo la cottura...Lasciteli al Dente
(日本語訳) 
調理時間:アルデンテかどうか、自分で判断して下さい

fusilli1_a_mano.jpg【Photo】パスタの聖地カンパニア州Gragnanoグラニャーノで「Fusillaiaフジッライア」と呼ばれる女性たちが細長い棒にパスタを1本ずつ転がしながら巻き付け、螺旋状に成形する根気の要る手仕事で作る「フジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ」。形も長さもさまざま

 スローフード協会が、絶滅の危機に瀕する守るべき食材「プレジディオ(味の箱舟)」に指定するパスタとして以前ご紹介した「Fusilli Lavorati a Mano フジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ」 《2010.7拙稿「珠玉のパスタ、Gragnano グラニャーノ」参照》。一本ずつ手巻きされ、長さ50cmほどにもなる螺旋状に仕上げる超・ロングパスタに関する後日談を、ショートパスタのごとく短かめにお伝えします。

 何を今更とお思いかもしれませんが、マ・マーやSHOWAなど、日本製のパスタには、例外なく5分・9分・11分などと茹で時間がパッケージ表面に明記されます。乾燥パスタでイタリア国内トップシェアを誇り、日本法人もある「Barillaバリラ」、日清フーズが取り扱うNo.2の「DE CECCO ディ・チェコ」、エスビー食品が販売する「AGNESIアネージ」など、イタリア製パスタのパッケージにも、6min,12minと、決め打ちで茹で時間が記されます。

fusilli2_a_mano.jpg【Photo】スパイラル状の曲線を描くフジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ。表面にはブロンズダイス成形特有のザラ付きがあり、生地の押し出し成形時に中心に空く穴とあいまってソースがよく絡むが、まずはさておき低温長時間乾燥ゆえの小麦本来の香りを噛みしめたい

 イタリア料理がすっかり定着した最近では、日本でも輸入パスタの選択肢が増えました。パスタの街Gragnanoグラニャーノ産乾燥パスタの中で明治屋が取扱う「Garofaloガロファロ」のバックラベルには、「標準ゆで時間」という表現が使われ、少し幅が出ます。「Divellaディヴェッラ」「Voielloヴォイエロ」「Martelliマルテッリ」などもまた同様。

 ところが、東京圏で増殖中のイタリア食材専門店「Eatalyイータリー」で扱うグラニャーノで1848年に創業した老舗「Afeltra アフェルトラ」製パスタの表記は一味違います。調理時間を意味するTempo di Cotturaは、9/11min,8/11min など3分程度の幅があるのです。これは、好みの硬さをこまめに確かめるよう、作り手の自主性を求める個人主義のヨーロッパらしさであり、南イタリアならではの"緩さ"の表れともいえます。

fusilli7_a_mano.jpg【Photo】A Mano(=手作り)ゆえ、てんでバラバラでまとまりのないフジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノとは対照的に、機械成形されて行儀のよい規則正しい螺旋形をしたフジッリ・コン・ブーコ。その名が示す通り、中心にはBuco(=穴)が空いている

 その極みが、プレジディオに登録されるフジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノ。青銅製の金型で押し出しながら成形する一般的な乾燥パスタとは異なり、手で成形するこのロングパスタは、一本ずつ姿形が異なります。バラバラで型にはまらないそのさまは、まるでイタリア人(笑)。そんなパスタを食す前から、まず面食らうのが( ̄ ̄;)、バックラベルの調理時間表記です。

 同じ穴あきフジッリでも機械成形の「Fusilli con buco フジッリ・コン・ブーコ」は、9-11分と茹で時間が指定される一方、フジッリ・ラヴォラーティ・ア・マーノのパッケージには具体的な茹で時間の記載はありません。そこには今回の副題と日本語訳にある通り、Decidete voi secondo la cottura...Lasciteli al Denteと記されるのみ。これでは埒が開かないと輸入元のEatalyジャパンが作成したバックラベルの調理方法がコレ。

ricetta_fusilli_mano.jpg 茹で時間が15-25分。・・・10分も幅があるなんて...((((((( ;゚Д゚)))。緻密なドイツ人やマニュアル通りに動く生真面目な日本人には、なんともアバウトかつアンビリーバボーな指示に戸惑いが隠せないはず。

amerigo_clema_parmiggiano.jpg そこで慌てず騒がず対応するのが大人というものですぞ。この緩さを受け入れる人間的な幅がある方は、個性を尊重し臨機応変なイタリア向きです(笑)。15分を過ぎた頃合いを見計らって噛んでみてちょうど良いと感じたのが23分。

【Photo】イタリアきっての美食の街ボローニャ郊外Savigno サヴィーノにある「トラットリア・ダ・アメリゴ」併設の食品店「La Dispensa da Amerigo」のみならず、リバティ様式で統一されたこの有名トラットリアのレシピによるソース類やチーズペーストなどの食品はEataly各店でも購入可能

 味付けは、同じくEatalyで調達した近郊パルマで作られるパルミジャーノ・レッジャーノに地元エミリア・ロマーニャで冬季間採取される希少な白トリュフTartufo Bianchetto を少量加えたチーズペーストのソースにしました。スローフード協会が創刊したガンベロ・ロッソや、非スノッブを標榜するIL MANGIAROZZOなど、多くのレストランガイドで高い評価を受けるボローニャ郊外「Trattoria da Amerigo トラットリア・ダ・アメリゴ」Link to Website のレシピによるものです。

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【Photo】ラグーやチーズなどの濃いめの味付けでもしっかりとした存在感を示すフジッリ。千両役者同志を組み合わせた料理の相伴は、わずか5haの畑で栽培されるサンジョヴェーゼ90%+カベルネ・ソーヴィニヨン10%を、天才醸造家ルカ・ダットーマが持てる技量を惜しげもなく注ぎ込んで混醸したトスカーナ産ヴィーノ・ロッソ「Gaglioleガッリオレ'99」。シルキーで上質なタンニン。豊かな香り。そして長い余韻。セラーでの眠りから目覚めたこのヴィーノが、熟成の極みに差し掛かかりつつあることを黒ずんだエチケッタが物語る

 濃厚なクリームソースに負けない生半可ではないパスタの弾力と小麦の香り。小麦と水だけで作られるパスタをして、これだけの違いを生むグラニャーノの凄さ。多様な形状を持つパスタひとつにも、お国柄が表れるものですね。

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