あるもの探しの旅

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2012/05/27

1年ぶりの青森美味巡礼

花の命は短くて...。2012春

 GW直前までは平年を下回る肌寒い陽気が続いていた東北各地。例年にない雪解けの遅れにより、稲作には平年と比べて2週間程度の遅れが出ています。本州最北の青森で田植えが始まったのは、5月の第2週に入ってから。植え付けの最盛期は、幾分とも水が温み始める3週目となりました。

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【Photo】岩木山と花ざかりの弘前城公園

 東北では2年ぶりの桜といわれた今年。事実、私も昨年は桜の記憶が全く飛んでいます。これは私に限ったことではなく、周囲でも多くの人が口を揃えてそう言います。震災による混乱の渦中にあった昨年は、被災地では誰もがそれどころではありませんでした。長かった冬の終わりを実感し、花鳥風月を愛でる心のゆとりを取り戻すため、2年ぶりの桜を愛でに連休後半は「弘前さくらまつり」開催中の弘前へと向かいました。

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【Photo】ライトアップされた夜桜があでやかに咲き誇る夜の弘前城公園

 桜の盛りに一度は訪れることを強くお勧めしたいのが、49.2haの園内に2,600本もの手入れが行き届いたソメイヨシノを中心に50種類の桜が咲き乱れる弘前城公園です。ニッポンに生まれて良かったと誰もが実感するであろう見事な桜との2年ぶりの再会は、一番の楽しみでした。とはいえ、美味との出合いのためなら野を越え山を越えることを厭わない私が、喰い気をなおざりにして満足するはずはありません。

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 そこで選ぶべきは、いま東北で最も注目に値する青森イタリアンです。その両雄たる「Osteria Enoteca Da Sasinoオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ)」(弘前市)と、「AL CENTROアル・チェントロ)」(青森市)の2店を桜の時期にあわせて予約したのは、当然の成り行きでした。

 5年前の8月、リンゴの自然栽培に挑んだ木村秋則さんのもとを訪れた日〈拙稿「奇跡のリンゴ」2009.9参照〉に初訪問、翌年5月の再訪で確信を深めた上でViaggio al Mondoでご紹介したオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ〈拙稿「自給率100%のレストラン」2008.5参照〉。オーナーシェフである笹森通彰さんは、同年7月にオンエアされたTBS系「情熱大陸」や専門誌・一般情報誌など各メディアから注目され、全国から訪れる食通を唸らせています。

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【Photo】1年間封印していた昨年3月10日夜@オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノのアンティパスト2皿 / 真ダラの白子のすり身をふっくら香ばしく焼き上げた「鱈のスフォルマティーノ 菊芋のピューレ」(左) 素材感の組み合わせが活きる「藤崎町産ホワイトアスパラガスのソテー 家飼いウコッケイ半熟卵と自家製フォルマッジョ」(右)
 

 東北新幹線が青森まで延伸した一昨年12月、青森駅近くに開業した複合商業施設「A‐FACTORY」2Fに「Galetteria Da Sasino ガレッテリア・ダ・サスィーノ」をJR東日本の依頼により出店、それに先駆けてジャジー牛乳の自家製モッツァレラを使うナポリピッツァの店「Pizzeria DA SASINOピッツェリア・ダ・サスィーノ」を弘前市内にオープンさせています。

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【Photo】プリモピアット2皿 / 自家菜園のカボチャとお米のトルッテリーニ(左) 大鰐町産青森シャモロックのクレスペッレ(=クレープ)(右)

 店舗を増やし拡大路線に転じた飲食店が、質の低下に陥るお決まりの轍を踏むことなく、業態が異なる新店は、信頼の置けるスタッフに任せる賢明さを持ち合わせていた笹森シェフ。ご自身は以前と変わらずオステリアに身を置き、全てを取り仕切っています。食べ手である客がいてこそ成り立つ飲食店の道義として当然のことながら、いかに名前が売れようと料理人の本分を貫き、いささかのブレもない「じょっぱり」の面目躍如たるサスィーノ再訪は、必須のミッションなのでありました。

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【Photo】セコンドピアット / 七戸健育牛サーロインのビステッカ(左) ドルチェ / ウコッケイ卵のティラミスとレモンのソルベ(右)
  
 そして私の中では昨年最大の発見だったAL CENTRO。翌日起こる事態を知る由もない昨年3月10日、東北新幹線延伸に関連した仕事で青森に出張しました。オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノを夜に予約していたため、昼に初見参したこの店。東通村で暮らす祖母に栽培を任せている野菜など地元の素材を中心に"手間を惜しまず 手を加えすぎない"という葛西 淳オーナーシェフが創意を凝らしたセンスが光る料理は、鮮烈な印象を残しました。

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【Photo】アル・チェントロのランチコース(Pranzo-b 2,800円) 付きだし / 豚肉のさまざまな部位を使う自家製ソプレッサータ、キッシュなどのアンティパスティ・ミスティと呼んで差し支えない内容(左) アンティパスト / 下北産タコのテッリーナと古代小麦ファッロ、ポモドーリセッキ(右)

 「ちゃんと出張先で仕事してんのかよ!!」とのごもっともなツッコミは、どうかなさらぬよう(笑)。14ヵ月ぶりの"じょっぱりイタリアン"を再訪することなくしては、青森を訪れる意義が半減するというもの。笹森シェフへの事前のヒアリングで、桜が見頃を迎えるであろうGW後半で予約を入れました。さらに今回は、本州最北端の地・大間まで足を延ばすことを画策。そう、築地市場経由で銀座の寿司屋で食そうものなら、ウン万円の出費を覚悟せねばならぬマグロ界のエース、世に名高い大間のクロマグロ(ホンマグロ)が目当てです。

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【Photo】プリモピアット / ファッロを練り込んだ自家製パッパルデッレ 春野菜と県産黒豚のラグー(左) 絶妙な火加減がもたらすカリカリの皮とジューシーな白身。陸奥湾の天然ヒラメのクロッカンテ(右)

 ところが、あれもこれもと欲張ったのが災いしたのでしょうか、出発前にギックリ腰をやらかした上、3日間の青森滞在中は、雨続きのあいにくの天候。加えて計算外だったのは、それまでの寒さが一転、GW直前に気温が一気に上昇したこと。これにより、平年より遅れると予想されていたソメイヨシノは4月27日に開花、5月1日には満開が宣言されました。そこに花散らしの雨が連休後半は降り続いたため、3日にAL CENTROで葛西シェフの料理を味わうべく前泊した強風と雨の青森市でも、弘前の桜がいかなる状態であるかが、気がかりでした。

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【Photo】ドルチェ / イタリア版のクレームブリュレ、「クレマコッタ」ないしは「クレマカタラーナ」。サルディーニャでは「クレマ・ブレチャータ」と名前を変える  Bevande / カッフェ

hotokegaura2012.5.4_.jpg【Photo】下北半島の霊場「恐山」ともども、この世のものとは思えない「仏ヶ浦」の奇観。大間まで足を延ばすのであれば、青森市から4.5時間を要するとこを覚悟の上で、車でのアクセスを

 相変わらずの雨模様となった4日朝、具合の思わしくない腰をかばいつつ北緯41度線を越え、奇岩が連なる景勝地・仏ヶ浦を経て訪れたのは、大間漁港すぐ近くの「浜寿司 Link to Website」。大将の伊藤晶人さんは、大間伝統の近海一本釣りで捕えるクロマグロでも、スジ目の少ない150 kg超級の高級品しか扱わないのだといいます。

oma_2012.5.4.jpg【Photo】「こヽ本州最本端の地」と刻まれた石碑が建つ大間崎の先は、クロマグロの漁場である津軽海峡にウミネコが群れ飛ぶ津軽海峡

 産地でとことんクロマグロを堪能しようと、はるばる訪れた大間です。ここは大間鮪丼 特上(1人前3,900円)を奮発。5月は漁期ではないものの、冷凍技術の進歩により、赤身からしてすでに異次元領域へと誘う大間産ホンマグロは期待に違わぬ旨さ。しつこさを感じさせない上質な脂が乗った中トロ、さらにノリノリの大トロに至っては・・・。画像を見てヨダレを垂らしておいでの皆さまご想像通り(笑)。

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【Photo】シャリが見えないほど豪勢に盛られた大間クロマグロの赤身・中トロ・大トロ(右写真)が存分に味わえる浜寿司の「大間鮪丼 特上」(左写真)

 幸福ではなく"口福"と表現したくなるクロマグロの余韻に浸りながら3時間を要して訪れたオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ。アペリティーヴォ(=食前酒)ともなる1杯目は、自家製ワイン醸造挑戦2年目の「Sasino Bianco 2011」をオーダーしました。自家製ヴィーノの予想以上のバランスの良さに、笹森シェフが食材自給率100%を達成する日が、そう遠くないことを確認できたのは、この日持ち込みした「Brunello di Montalcino Pian delle Vigne1997 / Antinori」の素晴らしい熟成ぶりとともに望外の収穫となりました。

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 連休中とあって、満席でフル回転する厨房とフロアの両方を忙しく行き来しながらも、シェフ本人がきちんと手をかけてくれた料理は、いつもながらの完成度の高さ。前回は自家製リモンチェッロ(下右写真)を呑みながら、店が引けた後もシェフと語り合ったのですが、今回は23時までライトアップされる夜桜が、昼間とはまた違った妖艶な姿を見せてくれるはず。締めのカッフェ(下左写真)だけで食後酒を封印、一縷の望みを抱いて弘前城公園へと急ぎました。

caffe_sasino2012.5.4.jpg Limoncello_sasino2011.3.11.jpg

 しかーし、「もはやこれ以上、多くを求めるな」ということなのでしょうか。お濠には、散った桜が浮かぶ「花いかだ」が見られたものの、もはや盛りを過ぎたソメイヨシノは、すでにそのほとんどが枝先にはなく、そぼ降る雨に濡れながら地面を桜色に染めていました。まだ見ごろだったシダレザクラを愛でながら城内を散策して30分ほどで照明が落ち始め、2012桜シーズン@弘前は儚く散ったのでした。

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AL CENTRO アル・チェントロ
住:青森市長島2-15-2
Phone: 017-723-5325
営:‎11:30~14:30(L.O. 14:00)
   18:00~22:00(L.O. 21:00) 日曜定休   
URL:http://www.al-centro.jp/

AL CENTROイタリアン / 青森駅

夜総合点★★★★ 4.0
昼総合点★★★★ 4.0

大間 浜寿司
住:青森県下北郡大間町浜町69-3
Phone:0175-37-2739 不定休
営:17:30~22:00 (※昼は要予約)
URL:http://www4.ocn.ne.jp/~oma/index.html

Osteria Enoteca Da Sasino
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

住:弘前市本町56-8 グレイス本町2F
Phone:0172-33-8299
営:11:30-13:30(L.O.) 18:00-21:00(L.O.) 日曜定休
URL: http://www.dasasino.com/

オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノイタリアン / 中央弘前駅弘高下駅

夜総合点★★★★★ 5.0


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2012/05/06

お見逃しなく ヴェネツィア展

frier_veneziani.jpg アドリア海の女王と称えられたヴェネツィア共和国。

 仙台市青葉区の宮城県美術館で開催中の世界遺産ヴェネツィア展-魅惑の芸術‐千年の都-。もうご覧になりましたか?

 前回のエトナ山とシチリアの白日夢に束の間のカタルシスを得た私のように、重度のイタリア禁断症状に陥っておいでの方は、カンフル剤代わりに何をおいてもさておき。この世に二つとない海上に築かれた迷宮都市を訪れた甘美な記憶を呼び戻したい方もぜひに。まだ足を運んでおらず、ラストチャンスとなる次の週末、特に予定がないと仰る宮城とその近県の方も、目の保養を兼ねてよろしければ。

 ラグーナ(潟)の一角にヴェネツィア共和国が誕生してから1315年。今も華麗な輝きを放つ文化遺産140点が日本で公開されています。あらゆるモノと情報が集中する東京以外では、なかなか触れる機会のない海洋国家の繁栄ぶりを物語る精華の数々。ヴェネツィア商人マルコ・ポーロが、13世紀末にシルクロードを旅して訪れた中国での伝聞から、黄金で造られた国と形容したジパングを11月まで全国6都市を巡回しており、現在開催中の仙台での会期は、今月13日(日)までとなりました。

FrancescoFoscariBastiani.jpg【Photo】国家元首であるドージェの正装は金と緋色の衣装とコルノ帽。34年の在任期間は、歴代ドージェで最長。名君の誉れ高い65代ドージェ、フランチェスコ・フォスカリ。コッレール美術館所蔵のラッザロ・バスティアーニが描いた肖像画(1455-1460?)も仙台展に登場

 7世紀末に成立し、1797年に終焉を迎えたヴェネツィア共和国は、人類史上最長の共和制を維持しました。国の舵取りは、120人が名を連ねた「Dogeドージェ」と呼ばれる終身制の総督を頂点に、貴族階級から選出される大評議会と十人委員会からなる独自の政体に委ねられました。海上交易で空前の繁栄をみた千年の都は、オリエントと西洋が渾然一体となった独自の文化を開花させます。西暦828年、二人のヴェネツィア商人がエジプト・アレキサンドリアから遺骸を持ち帰った聖使徒福音記者・聖マルコを祀るサン・マルコ寺院を見るだけでも、その特異性は明らか。

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 11世紀末に完成した現在の聖堂は、紀元前4世紀にギリシャで製作され、13世紀初頭の十字軍によるコンスタンティノープルからの戦利品である4頭立ての馬のブロンズ像(複製)を正面入口に頂きます。黄金のモザイクで覆い尽くされた内陣は、ビザンチンを基調に、ロマネスク・ルネサンス様式が交差するヴェネツィア共和国ならでは空間。交易で栄えた海の都は、冬場に頻発するアクア・アルタ(高潮)を見ての通り、21世紀を迎えた今、海に沈みゆく街として黄昏の時を迎えています。(リド島を除き)ヨーロッパで唯一、自動車が走らない本島の人口は6万人ほどですが、世界中から年間1,200万人とも1,500万ともいわれる観光客が訪れます。

 かようにディズニーがモデルとした浦安の某テーマパークさながらの観光地ではありますが、イタリアで私が最も魅力を感じるのは、何を隠そう、この水の都なのです。いかに俗化してもなお色褪せぬ高貴さを湛えたヴェネツィア。この水の都のほかに1日の中で万華鏡のように表情をさまざまに変化させる場所を私は知りません。

St_Marco_Basilica.jpg 177の浮島からなる本島は、浅瀬に杭を打って人為的に造られているゆえ、縦横無尽に張り巡らされた150を超える水路で結ばれています。一般的にいわれる運河ではなく、あえて水路と私が呼ぶのは、陸地に刻まれるのが運河であり、ヴェネツィアのそれは、人とモノが行き交う道としての海にほかならないからです。

 水面を音もなく進む黒一色のゴンドラに揺られながら見上げる商館の崩れかけた壁面や傾いた鐘楼。ゴンドラが往き来するゆらめくカナーレ(運河)に射す日差しは、歴史を刻んだ家並みに深い陰影を与えます。狭いリオ(水路)には、400は下らないというアーチ型の橋が架かり、観光客でごった返すリアルト橋やサン・マルコ広場へ通じるカッレ(表通り)から一歩先は、すれ違うのがやっとの狭いルーガ(路地)やコルテ(袋小路)。そんな迷宮を地図片手に進むうち、突如として現れるカンポ(広場)で開ける視界。この街では道に迷うこともちょっとした楽しみに変わります。

gondola_Veneziana.jpg そんな水の都を彷徨っているうち、そこがひとつの劇場装置であり、自分がその一部になっていることに気づくはず。有名観光地の例にもれず、宿泊や食事に要する代金は幾分高くつきますが、ヴェネツィアでは本島の中心部に泊まることをお勧めします。安全上、女性には無理強いしませんが、宿にお願いして早朝の散歩に出てみてください。

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 サン・マルコ広場には誰ひとりおらず、贅沢な空間を独り占めできるはず。大鐘楼を右に折れたドゥーカレ宮正面の小広場に立つ聖マルコの象徴である有翼の獅子と聖テオドロス像を頂く2本の円柱の間からは、係留されたゴンドラの先に朝もやに霞むサン・ジョルジョ・マッジョーレ島が望めます。

 無敵を誇った海軍力を背景に、ヴェネツィア人は地中海交易で得た莫大な富を多岐にわたる文化遺産へと転化しました。例えばカナル・グランデ(大運河)沿いに建つ12世紀から18世紀の壮麗な商館や邸宅。見事というよりほかにないガラス製品やモザイク、レース、絹織物などの工芸品。15世紀末から16世紀の爛熟期に登場したジョルジョーネティツィアーノティントレットらヴェネツィア派の絵画作品。そして衰退の影が忍び寄る17世紀末~18世紀のヴェネツィアに生を受けたアルビノーニヴィヴァルディマルチェッロらが紡いだ哀愁を帯びたバロックの旋律などなど。

bragadinsmarco.jpg【Photo】守護聖人・聖マルコになぞらえてヴェネツィア共和国の威信を描いた初期ヴェネツィア派の画家、ドナート・ブラガディンの「聖ヒエロスムスと聖アウグスティヌスを伴うサン・マルコのライオン」(1459・ドゥーカレ宮所蔵)

 今回のヴェネツィア展では、ヴェネツィアの守護聖人である聖マルコを寓意化したアルヴィーゼ・ビアンコと協力者による有翼の木製獅子(1490頃)が入口で出迎えてくれます。ヴェネツィアでは頻繁に目にする翼を持ったライオンを描いたドナート・ブラガディンの筆になるカンバス画も地中海世界で空前の繁栄を謳歌した海洋国家の威信を表現した作品とされます。

2Ca_Rezzonico.jpg【Photo】13の美術館・博物館から構成されるヴェネツィア市立美術館群のひとつで、共和国末期18世紀の美術品を蒐集する美術館となっている「Ca' Rezzonico レッツォニコ宮」

 今回の展示品は、サン・マルコ寺院と対峙する広場の反対側にある「Museo Correrコッレール美術館」をはじめとするヴェネツィア市立美術館群所蔵の作品。アカデミア美術館やベギー・グッゲンハイム美術館のほか、ティツィアーノの代表作「聖母被昇天」(1518)を主祭壇画とし、教会では珍しく美術館と同様に入場料を徴収するサンタ・マリア・グロリオーサ・デイ・フラーリ教会などとは違い、美術愛好家以外の観光客は訪れることが少ない美術館だけに、本邦初公開を数多く含みます。

 絵画だけではなく注目したいのが、往時の文化水準の高さを示す工芸品や装飾品の数々。地中海交易を独占し、繁栄の礎となったガレー船の模型、ドージェに次ぐ役職の財務官が羽織った二重織りベルベットの緋色の外套トーガや精緻な刺繍が施された貴族の衣装など、華麗なヴェネツィア共和国の姿を伝える品々が展示されています。

lampadari_rezzonico.jpg【Photo】 18世紀なかばの欧州で最もガラス工芸の技術水準が高かったムラーノ島。随一の職人といわれたジュゼッペ・ブリアーティ作のシャンデリア。華やかな色ガラスを多用するカ・レッツォニコ様式は、このレッツォニコ宮に由来する

 13世紀末、技術の流出を防ぐため職人が集団移住させられたムラーノ島では、さまざまな技法が編み出されます。Link to backnumber 18世紀のムラーノで、当代きっての職人といわれたジュゼッペ・ブリアーティが編み出した彩色ガラスを用いる技巧を凝らした巨大なシャンデリアは圧巻。

 カナル・グランデに面して建つバロック建築「Ca' Rezzonico レッツォニコ宮」は、18世紀美術館となっています。その一室に稀代のガラス職人・ブリアーティの手になる12灯の芸術品のようなムラーノ製のシャンデリア(上写真)があります。仙台展にはオリジナルを上回る下段20灯・上段8灯というシャンデリア(19世紀~20世紀)が展示されています。ヴェネツィアに魅せられた我が家にも、淡い水色のそれが型違いでありますが、同じ個人所有といえども仙台展の豪華なシャンデリアとは月とスッポン。

 ネタバラシになるため、身の丈の倍はありそうな赤や青などの色ガラス500片で形造られたシャンデリアの画像はここではご紹介しません。珠玉のヴェネツィア共和国の姿に触れるなら今。どうぞお見逃しなく。

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世界遺産 ヴェネツィア展-魅惑の芸術 ‐ 千年の都-
会期:2012年3月17日(土)~5月13日(日)
会場:宮城県美術館(仙台市青葉区川内元支倉34-1)
    Phone 022-221-2111
開館時間:9:30~17:00発券は16:30まで 月曜休館
観覧料:一般1200円 学生1000円 小中高校生500円
URL: http://www.go-venezia.com/   

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