あるもの探しの旅

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1年ぶりの青森美味巡礼

花の命は短くて...。2012春

 GW直前までは平年を下回る肌寒い陽気が続いていた東北各地。例年にない雪解けの遅れにより、稲作には平年と比べて2週間程度の遅れが出ています。本州最北の青森で田植えが始まったのは、5月の第2週に入ってから。植え付けの最盛期は、幾分とも水が温み始める3週目となりました。

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【Photo】岩木山と花ざかりの弘前城公園

 東北では2年ぶりの桜といわれた今年。事実、私も昨年は桜の記憶が全く飛んでいます。これは私に限ったことではなく、周囲でも多くの人が口を揃えてそう言います。震災による混乱の渦中にあった昨年は、被災地では誰もがそれどころではありませんでした。長かった冬の終わりを実感し、花鳥風月を愛でる心のゆとりを取り戻すため、2年ぶりの桜を愛でに連休後半は「弘前さくらまつり」開催中の弘前へと向かいました。

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【Photo】ライトアップされた夜桜があでやかに咲き誇る夜の弘前城公園

 桜の盛りに一度は訪れることを強くお勧めしたいのが、49.2haの園内に2,600本もの手入れが行き届いたソメイヨシノを中心に50種類の桜が咲き乱れる弘前城公園です。ニッポンに生まれて良かったと誰もが実感するであろう見事な桜との2年ぶりの再会は、一番の楽しみでした。とはいえ、美味との出合いのためなら野を越え山を越えることを厭わない私が、喰い気をなおざりにして満足するはずはありません。

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 そこで選ぶべきは、いま東北で最も注目に値する青森イタリアンです。その両雄たる「Osteria Enoteca Da Sasinoオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ)」(弘前市)と、「AL CENTROアル・チェントロ)」(青森市)の2店を桜の時期にあわせて予約したのは、当然の成り行きでした。

 5年前の8月、リンゴの自然栽培に挑んだ木村秋則さんのもとを訪れた日〈拙稿「奇跡のリンゴ」2009.9参照〉に初訪問、翌年5月の再訪で確信を深めた上でViaggio al Mondoでご紹介したオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ〈拙稿「自給率100%のレストラン」2008.5参照〉。オーナーシェフである笹森通彰さんは、同年7月にオンエアされたTBS系「情熱大陸」や専門誌・一般情報誌など各メディアから注目され、全国から訪れる食通を唸らせています。

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【Photo】1年間封印していた昨年3月10日夜@オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノのアンティパスト2皿 / 真ダラの白子のすり身をふっくら香ばしく焼き上げた「鱈のスフォルマティーノ 菊芋のピューレ」(左) 素材感の組み合わせが活きる「藤崎町産ホワイトアスパラガスのソテー 家飼いウコッケイ半熟卵と自家製フォルマッジョ」(右)
 

 東北新幹線が青森まで延伸した一昨年12月、青森駅近くに開業した複合商業施設「A‐FACTORY」2Fに「Galetteria Da Sasino ガレッテリア・ダ・サスィーノ」をJR東日本の依頼により出店、それに先駆けてジャジー牛乳の自家製モッツァレラを使うナポリピッツァの店「Pizzeria DA SASINOピッツェリア・ダ・サスィーノ」を弘前市内にオープンさせています。

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【Photo】プリモピアット2皿 / 自家菜園のカボチャとお米のトルッテリーニ(左) 大鰐町産青森シャモロックのクレスペッレ(=クレープ)(右)

 店舗を増やし拡大路線に転じた飲食店が、質の低下に陥るお決まりの轍を踏むことなく、業態が異なる新店は、信頼の置けるスタッフに任せる賢明さを持ち合わせていた笹森シェフ。ご自身は以前と変わらずオステリアに身を置き、全てを取り仕切っています。食べ手である客がいてこそ成り立つ飲食店の道義として当然のことながら、いかに名前が売れようと料理人の本分を貫き、いささかのブレもない「じょっぱり」の面目躍如たるサスィーノ再訪は、必須のミッションなのでありました。

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【Photo】セコンドピアット / 七戸健育牛サーロインのビステッカ(左) ドルチェ / ウコッケイ卵のティラミスとレモンのソルベ(右)
  
 そして私の中では昨年最大の発見だったAL CENTRO。翌日起こる事態を知る由もない昨年3月10日、東北新幹線延伸に関連した仕事で青森に出張しました。オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノを夜に予約していたため、昼に初見参したこの店。東通村で暮らす祖母に栽培を任せている野菜など地元の素材を中心に"手間を惜しまず 手を加えすぎない"という葛西 淳オーナーシェフが創意を凝らしたセンスが光る料理は、鮮烈な印象を残しました。

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【Photo】アル・チェントロのランチコース(Pranzo-b 2,800円) 付きだし / 豚肉のさまざまな部位を使う自家製ソプレッサータ、キッシュなどのアンティパスティ・ミスティと呼んで差し支えない内容(左) アンティパスト / 下北産タコのテッリーナと古代小麦ファッロ、ポモドーリセッキ(右)

 「ちゃんと出張先で仕事してんのかよ!!」とのごもっともなツッコミは、どうかなさらぬよう(笑)。14ヵ月ぶりの"じょっぱりイタリアン"を再訪することなくしては、青森を訪れる意義が半減するというもの。笹森シェフへの事前のヒアリングで、桜が見頃を迎えるであろうGW後半で予約を入れました。さらに今回は、本州最北端の地・大間まで足を延ばすことを画策。そう、築地市場経由で銀座の寿司屋で食そうものなら、ウン万円の出費を覚悟せねばならぬマグロ界のエース、世に名高い大間のクロマグロ(ホンマグロ)が目当てです。

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【Photo】プリモピアット / ファッロを練り込んだ自家製パッパルデッレ 春野菜と県産黒豚のラグー(左) 絶妙な火加減がもたらすカリカリの皮とジューシーな白身。陸奥湾の天然ヒラメのクロッカンテ(右)

 ところが、あれもこれもと欲張ったのが災いしたのでしょうか、出発前にギックリ腰をやらかした上、3日間の青森滞在中は、雨続きのあいにくの天候。加えて計算外だったのは、それまでの寒さが一転、GW直前に気温が一気に上昇したこと。これにより、平年より遅れると予想されていたソメイヨシノは4月27日に開花、5月1日には満開が宣言されました。そこに花散らしの雨が連休後半は降り続いたため、3日にAL CENTROで葛西シェフの料理を味わうべく前泊した強風と雨の青森市でも、弘前の桜がいかなる状態であるかが、気がかりでした。

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【Photo】ドルチェ / イタリア版のクレームブリュレ、「クレマコッタ」ないしは「クレマカタラーナ」。サルディーニャでは「クレマ・ブレチャータ」と名前を変える  Bevande / カッフェ

hotokegaura2012.5.4_.jpg【Photo】下北半島の霊場「恐山」ともども、この世のものとは思えない「仏ヶ浦」の奇観。大間まで足を延ばすのであれば、青森市から4.5時間を要するとこを覚悟の上で、車でのアクセスを

 相変わらずの雨模様となった4日朝、具合の思わしくない腰をかばいつつ北緯41度線を越え、奇岩が連なる景勝地・仏ヶ浦を経て訪れたのは、大間漁港すぐ近くの「浜寿司 Link to Website」。大将の伊藤晶人さんは、大間伝統の近海一本釣りで捕えるクロマグロでも、スジ目の少ない150 kg超級の高級品しか扱わないのだといいます。

oma_2012.5.4.jpg【Photo】「こヽ本州最本端の地」と刻まれた石碑が建つ大間崎の先は、クロマグロの漁場である津軽海峡にウミネコが群れ飛ぶ津軽海峡

 産地でとことんクロマグロを堪能しようと、はるばる訪れた大間です。ここは大間鮪丼 特上(1人前3,900円)を奮発。5月は漁期ではないものの、冷凍技術の進歩により、赤身からしてすでに異次元領域へと誘う大間産ホンマグロは期待に違わぬ旨さ。しつこさを感じさせない上質な脂が乗った中トロ、さらにノリノリの大トロに至っては・・・。画像を見てヨダレを垂らしておいでの皆さまご想像通り(笑)。

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【Photo】シャリが見えないほど豪勢に盛られた大間クロマグロの赤身・中トロ・大トロ(右写真)が存分に味わえる浜寿司の「大間鮪丼 特上」(左写真)

 幸福ではなく"口福"と表現したくなるクロマグロの余韻に浸りながら3時間を要して訪れたオステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ。アペリティーヴォ(=食前酒)ともなる1杯目は、自家製ワイン醸造挑戦2年目の「Sasino Bianco 2011」をオーダーしました。自家製ヴィーノの予想以上のバランスの良さに、笹森シェフが食材自給率100%を達成する日が、そう遠くないことを確認できたのは、この日持ち込みした「Brunello di Montalcino Pian delle Vigne1997 / Antinori」の素晴らしい熟成ぶりとともに望外の収穫となりました。

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 連休中とあって、満席でフル回転する厨房とフロアの両方を忙しく行き来しながらも、シェフ本人がきちんと手をかけてくれた料理は、いつもながらの完成度の高さ。前回は自家製リモンチェッロ(下右写真)を呑みながら、店が引けた後もシェフと語り合ったのですが、今回は23時までライトアップされる夜桜が、昼間とはまた違った妖艶な姿を見せてくれるはず。締めのカッフェ(下左写真)だけで食後酒を封印、一縷の望みを抱いて弘前城公園へと急ぎました。

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 しかーし、「もはやこれ以上、多くを求めるな」ということなのでしょうか。お濠には、散った桜が浮かぶ「花いかだ」が見られたものの、もはや盛りを過ぎたソメイヨシノは、すでにそのほとんどが枝先にはなく、そぼ降る雨に濡れながら地面を桜色に染めていました。まだ見ごろだったシダレザクラを愛でながら城内を散策して30分ほどで照明が落ち始め、2012桜シーズン@弘前は儚く散ったのでした。

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AL CENTRO アル・チェントロ
住:青森市長島2-15-2
Phone: 017-723-5325
営:‎11:30~14:30(L.O. 14:00)
   18:00~22:00(L.O. 21:00) 日曜定休   
URL:http://www.al-centro.jp/

AL CENTROイタリアン / 青森駅

夜総合点★★★★ 4.0
昼総合点★★★★ 4.0

大間 浜寿司
住:青森県下北郡大間町浜町69-3
Phone:0175-37-2739 不定休
営:17:30~22:00 (※昼は要予約)
URL:http://www4.ocn.ne.jp/~oma/index.html

Osteria Enoteca Da Sasino
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

住:弘前市本町56-8 グレイス本町2F
Phone:0172-33-8299
営:11:30-13:30(L.O.) 18:00-21:00(L.O.) 日曜定休
URL: http://www.dasasino.com/

オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノイタリアン / 中央弘前駅弘高下駅

夜総合点★★★★★ 5.0


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コメント

庄内系イタリア人様、初コメいたします。

免許停止の赤切符を食らわしたいほど、今年の桜前線が北上する猛スピードには間に合いませんでしたが、鮪丼特上を大間の浜寿司さんで味わって参りました。

青森市内からの移動は遠く感じましたが、時間をかけてでも訪れた甲斐がある、それはそれは幸せな時間でした。

次回はおいしそうな料理が並ぶアルチェントロにも行ってみたいと思います!!

津軽海峡春景色さま

初コメントありがとうございます。

マグロのために大間まで遠征されたのですか。私も浜寿司さんで頂いた本マグロの赤身の美味しさは忘れられない味です。

雨模様の中、大間から下北半島を縦断し、青森市を経て弘前・ダ・サスィーノまで3時間を要してノンストップで一気に移動した時の遠かったこと、遠かったこと…。

それでも、 アル・チェントロにしても、オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノにしても、素晴らしく美味しいから、また行きたくなるんですけどね(笑)。

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