あるもの探しの旅

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2012/09/30

Con Te Partirò

Time to say Goodbye

 

 盲目のイタリア人歌手アンドレア・ボッチェリの代表曲のひとつである「Con Te Partirò コン・テ・パルティロ」は、1995年のサンレモ音楽祭で発表されました。ベルギーとフランスではチャート1位を獲得したものの、イタリア本国ではさほど注目されなかったこの曲。英訳・和訳すると「I leave with you=私はあなたと旅立つ」という意味です。

sig.alfista20070102.jpg 原曲の歌詞の一部を「Time To Say Goodbye タイム・トゥ・セイ・グッドバイ」と言い換え、英国のソプラノ歌手サラ・ブライトマンとのデュエット曲として1997年にリリースされるや、軒並みビッグセールスを記録した欧州各国にとどまらず、日本でも広く知られるようになりました。日本で一般に認識されているようにグッドバイではなく、本来は新たな旅立ちを歌ったCon Te Partirò の調べに乗せ、食WEB研究所サイト閉鎖後の庄内系イタリア人の今後についてお知らせします。


【Photo】食WEB研究所 河北食ネタ版グルメランナーでシニョール・アルフィスタとして世に出た当時の庄イタ(写真上) 爆走系レポーター、シニョール・アルフィスタが訪問したピエモンテ州カネッリのエチエッタ(=ワインのラベル)デザイン工房では、女性デザイナーが手にするアルファロメオブランドのボトルデザインも手掛けていた(下写真)

sig.alfista20070101.jpg 2006年10月末にイタリア・トリノで開催されたスローフード協会主催の「Terra Madre テッラ・マードレ」にジャーナリスト枠で参加の機会を得て、河北新報紙上でその模様の紹介記事が掲載されました。庄イタは勤務先では営業職のため、新聞本紙に記事を執筆することはありません。東北から多くの生産者や料理人が参加したこの国際的な催しの意義を鑑みて、出張扱いの社用ではなく、あくまで個人の資格で参加した私がまとめた原稿に編集局のデスクが手を加えて写真入りで掲載となりました。これは社としては極めて異例な扱いだったようです。

 雨天時に頻発する故障に悩まされながら当時乗っていたAlfa Breraにちなんで、シニョール・アルフィスタのペンネームで食WEB研究所 河北食ネタ版「グルメランナー」でデビューしたのが翌2007年1月のこと Link to backnumber。テッラ・マードレと、同時開催された「Salone del Gusto サローネ・デル・グスト」、晩秋のピエモンテ州とリグーリア州食い倒れレポートが、フードライターとしての第一歩となりました。簡潔な表現が求められる新聞とは異なり、「Viaggio al Mondo ~あるもん探しの旅」で意の向くまま駄文を書き連ねる所在不明の庄内系イタリア人が世に出たのが同年6月1日。早いものでそれから5年あまりの月日が流れ、これまで多くの皆さんにご愛読頂きました。

sig.alfista20070103.jpg 「こんな私ですがよろしくお願いします」という自己紹介に始まったViaggio al Mondo ~あるもん探しの旅は、生命をつなぐ食べ物の背景を知る道程の記録です。前世のDNAが共鳴する美味の宝庫イタリアと、さまざまなご縁を頂いた食の都・庄内地方を中心に、金銭的な価値では推し量ることのできない希少な種を守る人や、その土地ならではの風土を体現する手をかけた美味の数々を、その作り手、担い手へのオマージュとして取り上げてきました。

【Photo】グルメランナー第二弾「サローネ・デル・グスト」。これらレポートは、のちに再編集されて Viaggio al Mondo に収録された

 サイト管理者の告知にあるように、あるもん探しの旅の拠点となった食WEB研究所は本日をもってその役割を終えます。これまで幅広い多くの皆さんに支えられてきたことはフードライター冥利に尽きますし、何にも代えがたい幸福でした。改めて感謝の気持ちをお伝えします。

 三陸沿岸では、再開した養殖海苔の種付けや、帰行のため南下してきた秋鮭漁が始まりました。実りの時季を迎えた東北を巡るViaggio al Mondo ~あるもん探しの旅は、まだ道半ばにあります。実名登録されている「かほくブログ」Link to Website で、庄内系イタリア人は生き永らえることになります。ブックマーク登録がお済みでない方は、これを機にどうぞご登録を。Con Te Partirò ♪ を口ずさみながら、これからも流浪の旅を続ける庄イタを温かく見守って下さいますよう、どうぞよろしくお願いします。
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2012/09/17

だだちゃ豆食べ比べ会

Road to だだちゃ豆食べ比べ会
湯田川朝ミュージアム#6 「続だだちゃ豆」より続き

白熱の食べ比べ審査
チャンピオン・オブ・ジ・イヤーは誰の手に?

tabekurabe_1.jpg【Photo】だだちゃ豆食べ比べ会の冒頭、ご挨拶に立つ月山パイロットファーム相馬一廣氏
 
 月山山麓にある月山パイロットファームの研修施設に到着すると、すでに20人ほどが集結していました。参加者は総勢28名。顔ぶれは同社の相馬一廣氏ご夫妻と同社第二農場を預る成沢昭信氏ら生産者のほか、山形大学農学部、庄内経済連、県農業改良普及所などで、だだちゃ豆の研究や普及に関わってきた方たち。加えて歴代の荘内日報社社長、日本の伝統食を考える会(本部:大阪)〈Link to Website、税理士、医師など地元庄内を中心に、京都・新潟・仙台(⇒庄イタ)からの多彩な顔ぶれ。

tabekurabe_2.jpg【Photo】生産者が腕によりをかけた無記名のだだちゃ豆が並ぶ。参加者がこれぞと思った番号に2票を投じ、獲得投票数で順位を決める。食べ進めてゆくうちに味と香りが重複しあってくるため、見極めは容易ではない。3回食べ直しをして悩んだ挙句に票を投じた

 国内の産学関係者からなるエダマメ研究会Link to Website会長を務め、今年3月に山大農学部を退官した赤澤經也氏が恒例により冒頭ご挨拶をするはずでした。ところが、食べ比べ会に提供する天然アユを調達に行く道すがら、車で自損事故を起こし、足に重傷を負って入院されたためパイロットファームの相馬一廣さんが代わってご挨拶をされました。

 食べ比べ会に出品されただだちゃ豆は12品。これでも例年より出品者数が少なかったそうです。今年は8月26日(日)の開催でしたが、春先の寒さが響いた今年は、全体に生育が平年より1週間ほど遅れたため、出荷のピークがずれ込んだ白山だだちゃや庄内3号の出品が多かったようです。6月以降の降水量が平年の1割と極端な水不足と酷暑のもとで育った本年産だだちゃ豆。食べ比べ会は、無記名で出品された豆を試食し、「これぞ!」と思う番号を2つ記入するというもの。順位は投票数の多さで決まります。

tabekurabe_3.jpg【Photo】12種の中から2つを選ぶ審査に臨む参加者の表情は真剣そのもの

 審査に臨む誰もが真剣な表情でモグモグ。私も順番に食べてゆくうち、この審査が容易ではないことに気付きました。だだちゃ豆は香りが強いため、ともすると食べ比べてゆくうちに風味が混ざってしまいます。神経を味覚に集中させて甘さの強弱、風味の良さ、コク深さなどを確かめてゆきます。1番から12番までひと通り食べた後で、もう一度食べ直し、5点ほどに絞ったところで、再びトップの二つを決めてゆきました。

tabekurabe_4.jpg【Photo】いずれ劣らぬ秀作揃いのだだちゃ豆の中から、悩み抜いた庄イタがオレンジ色の投票用紙に記した番号は3と12。厳正なる審査の結果はいかに?

 開票の結果、最多票を獲得したのが12番の月山パイロットファーム第二農場の成沢昭信氏が山場の畑で栽培した白山だだちゃ、次点が3番の元荘内日報社編集局長 松木(まつのき)正利氏夫人の道子さんが、鶴岡市内にあるご自宅の畑で育てた庄内3号のワンツーフィニッシュ。これは奇しくも庄イタが投じた一票と同じもの。ビギナーズラックというべきか、これまで鶴岡各地の産直でつまみ食いを重ねてきた成果というべきか...(´∀`*)

tabekurabe_5.jpg【Photo】栄冠に輝いた12番月山パイロットファーム成沢昭信氏の白山だだちゃ

 最多票を獲得した成沢氏は、輪作による資源低投入型月山パイロットファーム式無農薬有機農法を取り入れています。標高約300mの山場と平場にある畑から豆を出品した成沢さんによれば、気温が低い山場では平地と比べて収量が1/4しかないそうです。厳しい栽培環境がもたらす負荷がストレスとなり、糖分が増して風味が良くなったのではないかと勝因を語りました。次点の松木さんは、いつも相馬さんが優勝をさらってゆくので、打倒相馬を目指して精進してきましたと本音を披露。会場は笑いに包まれるのでした。

 和やかな中にも、この会が大真面目で行われていることを示したのが、「だだちゃ豆のおいしさ 香りについて」と題する慶応大学先端生命科学研究所の富田淳美さんによる解説。最新の研究結果に基づく未発表の内容を含むため、ここではその詳細は伏せます。湯田川温泉朝ミュージアムでお会いし、食べ比べ会にも参加しておいでだった山形大学農学部江頭宏昌(ひろあき)准教授(下写真左から2人目)の指導を仰ぎ、現在は鶴岡にある同研究所で植物に関する研究を行っているそうです。

 tabekurabe_6.jpg【Photo】慶応大学先端生命科学研究所の富田淳美さんによる科学的な分析データに基づく解説がなされた「だだちゃ豆のおいしさ 香りについて」。興味深い解説に一同興味津々

koino_kawa.jpg【Photo】出羽桜・くどき上手・東北泉・竹の露など、さまざまな銘柄の日本酒が用意された食べ比べ会は、飲み比べ会さながら(笑)。持ち帰りさせて頂いたのは、まだ飲んだことのない一本。最晩節に登場するだだちゃ豆品種「尾浦」をつまみながら、自宅で空けた鯉川酒造の純米吟醸「恋の川」生酒

 この日は所用で参加できなかった鯉川酒造の佐藤社長が、だだちゃ豆に合わせて選んだ山形各地の日本酒が並びました。それを庄イタが指をくわえて見ていたのは、塩引き鮭の調達に新潟村上まで車で移動することになっていたため。宴たけなわの酒席を中座せねばならなかったのも心残りでした。

 空気が乾燥し、強風が吹いた翌朝はだだちゃ豆の香りが弱くなるなど、興味深い皆さんの話をウーロン茶を飲みながら拝聴する私に、好きな酒を持ち帰っていいからと仰って頂いた相馬氏に後日連絡を入れました。電話口で「たまには勝ちを譲らないと」と悪戯っぽく笑ったものの、そこは「沈潜の風」を旨とする鶴岡の人だけに、来年こそはと捲土重来を目指していることでしょう。 

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2012/09/15

Road to だだちゃ豆食べ比べ会 

湯田川朝ミュージアム6 「続だだちゃ豆」

 鶴岡市羽黒町手向(とうげ)にある月山パイロットファームの研修施設で恒例の「だだちゃ豆食べ比べ会」が8月26日(日)に催され、会の存在を知ってから足かけ10年目にして念願の初参加を果たしました。だだちゃ豆については3年前のレポートをチェック・プリーズ《Link to Backnumber

compe12_dadacha.jpg【Photo】今年で17回目を迎えた「だだちゃ豆食べ比べ会」。並みいる腕自慢の挑戦を押しのけ、これまで高い勝率を誇ってきた月山パイロットファームの相馬一廣氏。食べ比べに臨む表情は真剣そのもの。果たしてその結果はいかに

 平成の大合併で鶴岡市と藤島町が合併する前の2003年(平成15)、藤島町の助役であった月山パイロットファームの相馬一廣氏から、8月の最終日曜日に開催される食べ比べ会に参加しないかとお誘いを頂いたことがあります。山形営業所が開設され、当時は月~金で仙台から山形まで通う毎日。山形県全域を車で回るなかで、内陸とは全く異なる庄内へと頻繁に訪れていた頃のことです。

【Photo】イタリア・マルケ州から2006年3月に有機農業を通じた民間交流を促進しようと訪れた一行の歓迎会。(写真奥から)相馬氏、スパール山澤清代表、鯉川酒造佐藤社長ら、食に関して一家言を持つお歴々が集ったテーブルの話題は「だだちゃ豆はどの旬が最も美味であるか」

benvenuti_arcevia.jpg その年は都合がつかず参加を見送りましたが、食べ比べ会で供される日本酒の調達係だという鯉川酒造の蔵元・佐藤一良氏や相馬氏らと、その3年後に鶴岡で催されたイタリア・マルケ州からのゲストご一行をお迎えする会合でご一緒しました。席上話題となったのが、だだちゃ豆食べ比べの会のこと。

 会の発足は、20年近く前に所用で郷土紙の・荘内日報社を訪ねた相馬氏が、当時の編集局長で園芸家としての顔を持つ松木(まつのき)正利氏と交わした会話がきっかけでした。だだちゃ豆栽培の最適地として地元で知られるのが、赤川に合流する大山川の支流・湯尻川沿いの白山から矢馳地区の一帯。収穫が行われる早朝に立ち込める朝霧の湿気と肥沃な土壌とが、一味違うだだちゃ豆を生むのです。それに相馬氏が、ご自身がだだちゃ豆を栽培する月山中腹の畑も負けてはいないと応じます。

dadacaha_watamae.jpg【Photo】次回のレポートで明かされる今年の食べ比べ会で栄冠を勝ち取った生産者が所有する畑に隣接する井上農場の「白山だだちゃ」。だだちゃ豆の商標を持つJA鶴岡のエリア外ゆえ、「たかくんの茶豆」として出荷。だだちゃの名を語らずとも、こだわりの土作りと糖蜜散布など、独自の工夫がもたらす風味の違いは歴然!!

 ならば味の優劣は、食べ比べによる投票で決めようと両者合意。だだちゃ豆という名の由来〈Link to Website〉からも、代々庄内藩主を務め「酒井の殿はん」と呼ばれ、鶴岡市民の敬愛を集めた酒井忠明(ただあきら)第17代当主(1917-2004)の参加は必須でした。腕自慢の育種家に声をかけ、毎年の恒例行事となって以来、スタート当初から事務局は、現・荘内日報社社長の橋本政之氏で、今年もお世話役を買っておいででした(一番上の写真で相馬氏の背後の階段に陣取り、参加者名簿の照合に余念がないお方デス)

dadacha_otaki.jpg【Photo】3年前に99歳で亡くなった鶴岡市小真木(こまぎ)の大滝武氏は、大滝ニンジン・金峰だだちゃなどの作物を選抜育種した篤農家。義父が遺した畑を守る大滝小菊さんを訪ねた8月26日早朝。ただ一人種を受け継ぎ、7月初旬に播種した大滝ニンジンの間引きの手を休め、こうして白山だだちゃを土産に下さった

 食べ比べ会には、長い歳月をかけ自家採種による選抜を重ねる地元の腕自慢が持ち寄る自信作が揃うと聞けば、いやがおうでも興味をそそります。早生から晩生種まで出回る時期と風味の特徴が異なるだだちゃ豆。それぞれ旬の走り・盛り・終盤で、いずれのだだちゃ豆が最も美味であるかという、相馬さんらが繰り広げる真剣な議論は、次第に熱を帯びてゆくのでした。

 今年の新物を漬けた民田ナス辛子漬特別仕様の調達に相馬さんのもとを訪れた8月25日(土)のこと。朝採りならではの風味豊かな自家製だだちゃ豆をご馳走になりながら、翌日食べ比べ会があることを教えて頂きました。千載一遇の幸運とはまさにこのこと。日帰りの予定を変更し、食べ比べ会に急遽混ぜて頂くことになったのです。

 食べ比べ会当日の26日朝は、湯田川温泉の若手が中心に旬の地域資産を見直す取り組みとして、昨年9月から実施している「朝ミュージアム」が開かれていました。6度目となる今回のテーマは第1回と同じくだだちゃ豆。その企画のひとつがテーマに沿った「朝カフェ」。ワンコインでだだちゃ豆が主役の定食が食べられるほか、葛餅、だだちゃ豆シェイク、変わったところではコーヒー豆ではなく、だだちゃ豆を焙煎したコーヒーも味わえるというもの。

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【Photo】毎回設定されたテーマに沿って展示やガイドツアーが実施され、見て・聞いて・体験できる仕組みが用意される。だだちゃ豆に関する豆知識の掲示(上左写真) 早生種の「小真木だだちゃ」の種(上右写真) だだちゃ豆の豆乳を使った「だだちゃ豆シェイク」(300円)は、朝カフェのおめざにふさわしい爽快な風味(下左写真) 日本酒がテーマとなった前々回は「SAGE(さげ)」(笑)。取り上げるテーマのスタンプが開催ごとに増えてゆくスタッフTシャツ。この逞しい後ろ姿は前回テーマの孟宗掘り名人・ますや旅館の齋藤 良徳専務(下右写真)
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 個人的に嬉しかったのは、前日の夕刻、湯田川郊外の畑にお邪魔したばかりの小田茂子さんが育てた「萬吉ナス」が田楽で登場したこと。今年は久方ぶりに納得のゆく出来だと語った小田さんが、大滝小菊さんと同じく先祖伝来の萬吉ナスを一人で受け継いでいます。ナス特有のアクやエグミがない透き通った味と爽快な香りが特徴の萬吉ナスと共に運ばれてきたのが「緑のいくらご飯」です。

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 【Photo】ワンコインで旬の恵みを頂ける充実の朝カフェ定食

 これはエビなどに見られる緑色の魚卵が入った炊き込みご飯などではなく、サヤからはじいただだちゃ豆を白飯に混ぜ、醤油をかけて頂くという極めてシンプルな鶴岡の郷土料理。ご飯と一緒にだだちゃ豆を炊き込む本格的だだちゃ豆ご飯もありますが、簡易版ともいうべきこの食べ方も一般的。炊きたてのご飯と茹でただだちゃ豆の濃厚な風味に、香ばしい醤油味が重なることで醸し出される、えもいわれぬ三位一体の旨さに言葉を失いました。

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【Photo】「萬吉ナス」の田楽(左写真) 緑のイクラご飯こと、お手軽だだちゃ豆ご飯の作り方に目を凝らしていると、お隣りの食卓ではアラ、山形大学農学部の江頭宏昌(ひろあき)准教授がご家族連れでお食事中(右写真)

 だだちゃ豆ご飯にはどうやら流儀があるようで、小皿に豆をのせてから醤油をかける派は、朝ミュージアムでお会いした在来野菜の写真を多く手掛ける写真家の東海林晴哉さん。ご飯に豆を直接はじいてから醤油をかける派は、厨房と客席との間を行き来していた理太夫旅館の太田百合若女将。旨みを倍増させる醤油の量はお好みでどうぞ。

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【Photo】サヤからはじいただだちゃ豆を小皿に載せて醤油を適量(左写真) 温かいご飯に載せて口に運ぶと...。旨いのなんのって、も~タイヘン!(右写真)

 鶴岡にある山形大学農学部の阿部利徳教授が著した「ダダチャマメ おいしさの秘密と栽培(2008:農山漁村文化協会刊)によれば、うま味成分であるグルタミンやアラニンなど遊離アミノ酸が、ほかの枝豆よりも元来だだちゃ豆には多く含まれ、新鮮なだだちゃ豆には芳香成分の「2-アセチル-1-ピロリン」という物質も通常の枝豆の含有量と比べて4~5倍に達するのだといいます。この物質は、炊きたてのご飯の香りと同じだといいますから、相性が悪かろうはずがありません。

 いつも変わらず湯触りの優しい湯田川の湯で癒された全身の細胞が、一口ごとに目覚めてゆくかのよう。カニ汁の風味に変化するはずの(⇒本当です)味噌汁に入っただだちゃ豆が、いささか加熱時間が長かったためか、栗のような味に感じられる新たな発見もありました。だだちゃ豆シェイクをデザート代わりに頂いてから、はやる気持ちを抑えつつ、11時の集合時刻に間に合うよう、食べ比べ会が行われる月山へと向かいました。

 白熱の食べ比べ会の模様はPart2でご報告!

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2012/09/01

Yeti イエティ @気仙沼

深遠なるスパイスのラビリンス(迷宮)
ネパール・インド料理レストラン「Yeti イエティ」

 北カフカス(コーカサス)のイングーシ共和国でYeti(イエティ=雪男)を捕獲したという、耳目をそばだてるような出来事をロシアのインタファクス通信が伝えたのが昨年末。捕えられ、奇声を上げながらオリを両手でゆするのは、全身を黒い毛に覆われた体長2mのUMA(未確認動物)のメスだとする触れ込みの生物。
 
     

【Movie】イングーシ共和国で捕獲されたYetiの正体が暴き出される衝撃の結末をお見逃しなく

 ここはロシア人のジョークに世界が振り回された格好ですが、それも無理からぬこと。極寒のツンドラ地帯であるロシア・西シベリア地方ケメロヴォ州で、ロシア・中国・モンゴル・アメリカ・カナダ・スウェーデンなど7カ国の専門家による国際会議が催されたのが同年10月。大規模な捜索が行われた上で、足跡や毛といった存在を示す物証が得られたことから、95%の確率で雪男が同州に存在するという結論が導き出されていました。

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【Photo】1951年にイギリス隊のエリック・シプトンらによって足跡が発見されて以降、空想による雪男=類人猿のイメージが出来上がった。日本のヒマラヤ登山隊を案内するシェルパのテントをイエティが夜襲した(左写真)、などと報じる当時のゴシップ誌

 ヒマラヤの山岳民族シェルパ族の呼び名でYeti 、北米ではBigfootと呼ばれる雪男。このイングーシでの噴飯もののイエティ捕獲劇はともかく、その存在の真偽はどうなのでしょう。今年6月に山と渓谷社から興味深い一冊「イエティ = ヒマラヤ最後の謎『雪男』の真実= 」が出版されました。長年にわたる現地での聞き取り調査を踏まえてその正体に迫ったのが、弘前市の登山家・ルポライターの根深 誠氏。そこで導かれる結論はここでは伏せますが、いずれにしても今回のタイトルから、"すわ一大事、気仙沼に雪男が出没したのかッ!?"などと早合点しないで下さい(笑)。

yeti_outlook.jpg【Photo】山岳用品をメインとするアウトドア用品店を併設する「Yeti イエティ」では、ネパールの定番料理「Daal bhaat ダルバートセット(1700円)」とネパール風居酒屋メニューが充実した夜も狙い目

 その正体は「Yeti イエティ」という名のネパール・インド料理店。内偵を進めていたYetiの実態に迫るため、このほど気仙沼を訪れて確認したのは、フカヒレやホルモンで知られる水産の街・気仙沼こそが、南三陸地域のみならず東北を代表するネパール・インド料理の紛れもない聖地であるという意外な事実。香辛料を多用するインド料理は日本でもポピュラーですが、気仙沼Yetiで食することができるのは、厨房を預るデバック・ケーシー氏の出身地であるネパールと料理と隣接する北インドの料理。

 Yetiとの邂逅は3年前の夏。家人の里帰りでお盆に訪れる気仙沼では、マンボウなどの新鮮な魚介中心の食事となります。生ものが続くと、夏場はスパイシーな料理が欲しくなるもの。そんな時に出合ったのが、田中前の表通りを少し入った路地裏に突如として現れたYetiでした。

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【Photo】大きなナンはフレームアウト(笑)。ある日のランチAセット。気仙沼Yeti にて

 どことなく場違いな印象がありながらも、美味しそうなオーラを放つその店。吸い込まれるようにドアを開いた初訪問では、定番インド料理をワンプレートで組み合わせたターリーを、ヒマラヤで発見されたYetiの足跡のように大きくフカフカのナンと組み合わせて頂きました。

yeti_2011.8.jpg【Photo】2011年8月のお盆休み、被災した店を同年7月末に再開して間もないYetiをランチタイムに訪れた際の忘れがたい再会のワンプレート。この時も5辛でお願いしたマトンカレー(写真奥)はほとんど真っ赤(笑)。串焼きにするシシカバブやタンドーリチキンと同じく、タンドール(石窯)で焼きたてをハフハフさせながらカレーと頂く大きなナンもまた美味で食べごたえ十分

 鼻腔から脳天まで鋭角的に突き抜ける辛さのワサビは別にして、唐辛子系の辛さに対する耐性が常軌を逸しているとまでいわれる庄イタ(爆)。特産のPeperoncino ペペロンチーノ(=唐辛子)を使った料理が多いイタリア南部カラブリア州出身Calabrese カラブレーゼの身内がどうやら前世では存在したようです。ゆえにこの時も、ネパールを離れたのち、北海道から岩手・滝沢村を経て気仙沼に来たという達者な日本語で話しかけてくるタカリ族のフロアスタッフに「辛さはVery very very Hot ね」などと図に乗って口走ったものです。

yeti_colors.jpg【Photo】最近Yetiでは、辛味の調整を後盛り可能なシステムに変更した

 マイルドな日本人仕様ではない満足のゆく辛さ、深みのある万華鏡のようにスパイスが渾然一体となってフルオーケストラのようにフォルテシモで響きあう美味しさ。予期せぬ本物との出合いでした。それからというもの、選択可能な7段階の辛さで一番ホットな「5辛」をお願いするのが常でした。現在は辛味調味料を後盛り可能な日本的システムに変更したので、どなたでも安心です。

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【Photo】充実のタルカーリが追加となるある日のランチBセット。気仙沼Yeti にて

 根深 誠氏とは同郷の出身で長年交流があり、ヒマラヤ山中の6,000m付近の雪渓で、イエティと思われる足跡をかつて目撃したと語るのが、店のオーナーである小野一太さん。ネパール人スタッフが本場の味を気仙沼で提供する店を胸まで届く高さの津波が襲ったのが昨年3月11日。山とカレーを愛する小野さんは、揺れが収まるや否やスタッフにパスポートを持って近くの高台に避難するよう促したのだといいます。彼らの無事を被災後まもなくTwitterで教えて下さったのが、仙台市泉区高森にある「カレーと珈琲の店 あちゃーる」のご主人、森 好宏さんでした。

 世界の屋根と呼ばれるエベレストをはじめとする8,000m級の山々と深い谷に囲まれた多民族国家ネパール。未曾有の津波を経験しながら、厳しい環境で生き抜く術を知っている山岳民族ならではのタフネスゆえか、再び気仙沼に戻ってきたスタッフのデバック・ケーシー氏を中心に店の再開に漕ぎ着けたのが昨年7月。

misoramen_hikadoshokudo.jpg 長いこと復活を待ちわびた滋味深い味噌ラーメンを食べさせてくれる気仙沼市本吉町日門「南三陸ドライブイン ひかど食堂」と同様、昨年の気仙沼へのお盆の帰省の折、営業を再開した南三陸ドライブイン ひかど食堂とYetiを訪れたのは申すまでもありません。

【Photo】気仙沼市本吉町日門のR45沿いに建つ「南三陸ドライブイン ひかど食堂」には、1m50cmほどの津波が襲い、自宅にいた先代が亡くなった。寄せられた支援と関係者の熱意で昨年も披露された地元の伝統芸能「平磯虎舞」復活にも奔走したご主人が研究を重ねた味噌ラーメン(700円)は、庄イタも20年来食べ続けている変わらぬ美味しさ

 気仙沼を訪れた先日、念願のネパール料理「Daal bhaat ダルバート」を食することができました。あちゃーるでも東京・小岩にあるネパール料理「サンサール」仕込みのスパイシーなダルバートに震災後力を入れています。

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【Photo】気仙沼Yeti のダルバート

 ダール(Daal=挽き豆を使った香辛料スープ)、バート(Bhaat=インディカ米飯)が語源となるダルバートは、ダールとバートに加えて香辛料を多用するタルカーリ(Tarkaarii=野菜中心の副菜・カレーといったおかず)、アチャール(Acaar=大根などの漬物)をワンプレートに盛り付けたネパール伝統の家庭料理。

 Yeti ではディナー限定で登場するダルバート(1,700円)は、以下の組み合わせとなります(ランチタイムにダルバートを希望する場合は、AM11:00までにお店にTELのこと)。さらっとした食感のインディカ米と混ぜて頂く2種類のスープ風カレー2種。鶏肉が入った野菜たっぷりのネパールカレーと、レンズ豆・ヒヨコ豆・皮なし緑豆ムングダルの3種豆入りダルスープ。

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【Photo】スープカレーのようなさらっとした食感が特徴のネパールのカレー。野菜たっぷりなチキンカレー(左写真) 豆を用いるダルスープ(右写真)はネパールでは馴染み深い料理。ネパール人は右手だけを使ってご飯とルーをせっせと混ぜながら食する

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 おかずとなるTarkaariiタルカーリはホウレンソウのカレー炒め物・サーグ(左上写真)と、ジャガイモのマサラ風味炒め。つけ合わせはダイコンとトマトのネパール風スパイシーな漬け物アチャール2種(右上写真)。締めはシナモンが香る<ミルクティー(右下写真)

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debag&sunita.jpg 故国の味を忠実に再現したダルバートは、まさに珠玉の逸品でした。連れがオーダーしたインドカレーも、サモサ(左上写真)などを含めて被災前と比べて更にワンステージ上がった印象。ふっかふかのナンの美味しさも以前と変わりません。デバックさんいわく、5辛が自分たちのスタンダードな辛さであり、その辛さが伴わないと本当の美味しさは生まれないとのこと。エスニック系の辛い物好きの方は、ぜひそのウマ辛ぶりをご堪能下さい。

【Photo】本国の調理師免許を持ち、カトマンズの有名ホテル、ジ・エベレスト・ホテルで腕を磨いたデバッグ・ケーシー氏と奥様のスニータ・ケーシーさんがYetiの厨房を預かる

 ラーメンと並ぶニッポン人の国民食カレー。その発祥の地インド・ネパールのマザーフードに触れ、その目からウロコの美味しさにノックアウトされたければ、昼食はひかど食堂の味噌ラーメン、夕食はイエティでダルバートと、飛びきりな国民食のハシゴができる気仙沼へ今すぐGo!

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ネパール・インド料理レストラン Yetiイエティ
住:宮城県気仙沼市田谷20-11
営:11:00~15:00 17:00~22:00
   月曜定休  P有り
Phone:0226-25-7096

   
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Yetiインド料理 / 不動の沢駅南気仙沼駅

夜総合点★★★★★ 5.0
昼総合点★★★★ 4.5

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