あるもの探しの旅

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2013/02/03

ワイルドだろぉ どん(胴)抜きどんがら汁

湯田川女将直伝「アク入り どんがら汁」
更にワイルド「胴抜きアク入り がらがら汁」

yura_winter.jpg【Photo】雪雲が低く垂れこめる日が続く1月半ばにしては珍しく、雲間から陽が差した鶴岡由良海岸。それでも荒ぶる冬の日本海は人を寄せ付けない厳しい表情を見せる

 寒さが最も厳しい季節、庄内各地で開催される「寒鱈まつり」。平成元年にスタートしたこの催しは、酒田・鶴岡とも毎年2万人以上が訪れる観光行事として定着しました。その呼びものが厳しい庄内の風土が生んだ野趣あふれる郷土料理「寒鱈汁」。荒れる冬の日本海で揚がる真ダラを余すところなく使い、味噌で味付けし、岩ノリを散らして振る舞われます。複数の出店が並ぶ酒田と鶴岡の寒鱈まつりでは、底冷えする屋外で食べ比べをするうち、心身ともに満たされてきますLink to Backnumber

yura_dongara_jiru.jpg【Photo】ガラが多めで地元の人たちからの支持が高い由良寒鱈まつりで振る舞われる寒鱈汁。他会場と同じ一杯500円

 日が近い「大山新酒酒蔵まつりLink to Backnumber」を優先した昨年と、雪が多かった一昨年は、寒鱈まつり参加を見送りましたが、Piatto3月号で特集する「日本海ひな街道」の取材で、先月末に酒田・鶴岡を訪れました。その折に投宿した鶴岡の湯田川温泉の湯宿「ますや旅館」で、これまで食してきたあまたの寒鱈汁の記憶をたどっても、とりわけ印象に残る"これぞ真髄っ!!"という文字通りの「どんがら汁」と出合いました。一般的には寒鱈汁と呼ばれるそれは、豪快で威勢のよいどんがら汁という庄内での呼び名の方が感覚的にはしっくりきます。

bagno_masuya.jpg【Photo】湯田川温泉ますや旅館2階の貸切檜風呂。源泉かけ流しの柔らかなお湯を心ゆくまで堪能できる至福のテルマエ

 春が遅い東北でも初夏の兆しが感じられる5月中旬ともなると、食べずにはいられないのが、初夏の庄内に欠かせない孟宗汁。メンタリティが庄内に帰化して10年になる庄イタをして、孟宗尽しの夕餉Link to Backnumberで唸らせてくれるのが、料理上手な女将の中鉢泰子さん。聞けば贅沢にも5kgクラス以上のオス鱈を仕入れているのだといいます。白子の需要が高まった近年では、庄内浜で揚がるオスはメスのおよそ倍。その対価として日本銀行券で福沢諭吉樋口一葉を差し出さなければならない高級魚。魚体へのダメージが少ない延縄漁法で捕れた型の良いタラともなると、、物によっては諭吉先生3枚近くの出費は覚悟です。

cena2013.1.28_masuya.jpg【Photo】出張で訪れたこの日は、ますや旅館の平日限定ビジネスプラン(2食付6,975円!!)を10年目にして初めて利用。華美な演出は無くとも、心尽くしの庄内ならではの手料理が並ぶ夕餉。嬉しいことに鍋には高価なオス鱈を使った郷土料理の「どんがら汁」が登場。ブラボー!!!

 開湯の伝説による「白鷺の湯」という別名を持つ湯田川温泉のお湯は、肌触りの柔らかい癒し系。全市町村にさまざまな温泉が存在する山形県下でも、庄イタが愛してやまない温泉です。飲泉するとその素晴らしさがより一層おわかり頂けるはず。仙台から撮影のため酒田まで赴いて頂いたモデルの高以さんとメイクさん、スタイリストさんをお乗せしての月山越えとなったこの日。ますや旅館自慢の檜造りの湯船に浸かっていると、心身ともに緊張が解き放たれてゆくのでした。

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【Photo】ますや旅館の夕食から。煮溶かした海藻を冷やし固めた庄内の郷土食「えご」と「ひろっこ(アサツキ)」、タコの酢味噌和え(左写真) 湯田川郊外の山で伝統的な焼畑農法で作られる藤沢カブ《Link to Backnumber》の甘酢漬と白菜の浅漬(右写真)

 同行したディレクター、ライター、カメラマンとともに頂いた夕食で、グツグツと音を立てる鍋の木蓋を開けると、白子やアブラワタが入った寒鱈汁がご開帳。寒鱈の旬真っ盛りだっただけに、密かに期待はしていたのですが、そのアラの多さは期待以上。寒鱈まつり会場では観光客向けにアラの量が少ないことが多く、正直ちょっと物足りなさを覚えることも。数年前、ますや以外の湯田川の宿で登場した寒鱈汁も、ちょっとお上品な印象でした。それだけにジモティ仕様のワイルドなどんがら汁と出合えたことは望外の幸せ。

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【Photo】小鉢に入った岩ノリを散らして頂く湯田川温泉ますや旅館のどんがら汁は、白子・アブラワタ・胃袋などのガラがたっぷり、うま味もたっぷり。その秘密は・・・。

 ところが、湯田川は初めてだというディレクターとライターの女性2名は、中骨やガラがたっぷりと入ったどんがら汁に戸惑っている様子。コクの決め手であるアブラワタ(肝臓)、タツ(白子の南庄内での呼称)、コリコリとした胃袋などに紛れて箸で探さないと白身が出てこない寒鱈汁は、「食べるところがない...(,,-_-)」と顔に書いてある初めての2人には、ハードルが高い上級者向けだったのかもしれません。

 庄イタが驚いたのは翌朝。女将に尋ねたところ、ますやのどんがら汁は、なんとアクを取らずに作るとのこと。鱈汁には家それぞれの作り方があって当然ですが、庄内の食に関する我がバイブルである伊藤珍太郎の名著「改訂庄内の味」(「本の会」刊・昭和56)には、とある料理通から聞いた話として、アクをすくい取らないと汁に生臭さが残ると記されています。鶴岡の鮮魚店や大方の作り方指南にも、必ず"アクは取る"とあります。これは天動説が信じられていた17世紀、ローマで異端裁判にかけられたガリレオ・ガリレイが唱えた地動説に等しい衝撃の新説!!

garagara_jiru.jpg【Photo】真鱈のガラだけで作った自家製「アク入りがらがら汁」。土曜の朝と言うことで、つい庄内の酒に手が伸び...

 かくなる上は真偽を試さずにはいられない庄イタ。由良港直送の魚介が手に入る鶴岡IC近くにある鮮魚店「魚神(うおしん)」でタラ汁セットを入手したまでは良かったものの、自宅冷蔵庫に入れた翌日、鮮度の大切さを知る家人が普通どおりに寒鱈汁を作ってしまったのです。それはそれで当然美味しかったわけですが、幸運にも再度の機会がすぐ巡ってきました。石巻に本店がある「津田鮮魚店」の支店「石巻マルシェ(旧「三陸おさかな倶楽部」)」が仕事場の近くにあり、そこで三陸沖で揚がった真鱈のアラを発見したのです。

 原発事故以来続いていた出荷規制が、先月17日に解けた宮城県産の真鱈。被災前の石巻は、北海道の漁港を差し置いて真鱈の水揚げ高が日本一だったこともあります。ちょっと前に取り上げた木の屋石巻水産の「金華さば味噌煮缶」ほか、石巻の産品で埋め尽くされた店内。毎朝実施しているスクリーニング検査をパスした魚介だけがセリにかけられる石巻魚市場直送のアラは鮮度抜群。しかも400円というバーゲンプライス!!

garagara_jiru2.jpg【Photo】作り置き3日目の味が浸みわたったガラガラ汁。「木川屋山居倉庫店」の阿部泉さんご推奨の一本「初孫赤魔斬」と

 さっと具を水洗いし、昆布と鰹でとった出汁で火が通りにくいアブラワタと胃袋を30分煮込みます。その茹で汁に白子以外の全ての部位を(白身があればここで)入れ、浮いてくるアクは放置したまま約10分間煮立てます。火が通ったところで味噌と酒粕で味付け。ますや旅館では酒粕を加えませんが、庄イタは酒粕入りが好み。平田赤葱と短冊切りし、あらかじめさっと茹でた大根に白子と豆腐を加えてひと煮立ちしたところで完成です。器に盛ってから岩ノリを散らすのをお忘れなく。

 泰子女将直伝のアク入りどんがら汁のお味やいかに。石巻直送の新鮮なガラゆえ、世人が言うような生臭さは感じません。栄養価が高くコクのもととなるアブラワタの量が半端ではないため、食べ応え十分。ますや旅館で頂いたどんがら汁は、中骨に貼りついた中落ちやコラーゲンたっぷりのゼラチン質も入っていましたが、今回の具はガラ100%。淡白な白身からは決して得られないうま味たっぷりの出汁が出ています。

 具それぞれの持ち味が際立つ出来たてもいいですが、汁ものが一般にそうであるように、一晩置いたどんがら汁は、奥行きが加わります。まして今回は"白身抜き(胴抜き)がらだけ汁"だけに、「がらがら汁」とでも呼びたい超ワイルド仕様。鍋物のアクはすくい取るものという既成概念が、初孫 特別純米 魔斬 生原酒を相伴にした、どんだけガラディナーで見事に崩れ去ってゆきました。そう、ガラガラと音を立てて。 お後がよろしいようで.../(;^△^)
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ますや旅館
住: 鶴岡市湯田川乙63
Phone: 0235-35-3211
Fax: 0235-35-3210
URL: http://www.yu-masuya.com/baner_decobanner.gif 

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