あるもの探しの旅

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お雛様めぐりは「日本海ひな街道」へ Piatto3月号こぼれ話

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毎月第一土曜日発行のPiatto3月号は本日発行。仙台市区部中心エリアの河北新報読者の皆さまには、山形県山辺町ふるさと資料館所蔵の古今雛が表紙となった広告特集「山形百彩 山形春紀行雛物語」と同日配布となりました。

 春の観光シーズン幕開けを飾る催しが、ここ数年、東北各地で開催されるようになった「雛まつり」です。いち早く雛祭りを観光の目玉にしたのが、紅花商人が最上川交易で得た富で得た京都や江戸のひな人形を公開した山形県河北町谷地のひなつり。紅花の産地となる山形内陸には、そうした上方や江戸で作られた時代雛が今に伝えられ、各地で「雛街道」と称する観光行事が行われています。

【Photo】色とりどりの傘福と、辻村寿三郎氏の妖艶な創作人形「さかたの雛あそび」が展示される酒田市日吉町の国指定文化財「山王くらぶ」で撮影されたPiatto3月号表紙(上写真) 酒田きっての料亭だった相馬屋を改装した相馬樓。茶房くつろぎ処では、大型の雛段の上段で次郎左衛門雛(左)と享保雛(右)が並んで訪れる人をお出迎え(下写真)

1303-tokusyu1.jpg 谷地のほか各地の雛まつりをこれまで10年にわたって訪れてきた庄イタが、これぞ珠玉!!とお勧めするのが、最上川交易における内陸への中継地点として、そして北前船交易の拠点として「西の堺・東の坂田(=酒田)」と日本永代蔵で井原西鶴に繁栄ぶりを称えられた酒田と、徳川四天王に数えられる譜代大名の酒井家が治めた城下町・鶴岡を中心に珠玉のお雛様が伝わる庄内地域。現代に作風が受け継がれる時代雛、古今雛の祖とされる原舟月の作になる雛人形が数多く残るなど、いずれ劣らぬお雛様の質の高さと数の多さには圧倒されるほど。

 その象徴が、Piatto3月号日本海ひな街道特集の導入を飾った二対のお雛さま。それは「本間さまには及びもないが せめてなりたや殿さまに」とまでいわれた酒田を代表する豪商・大地主の本間家のお雛さまと、明治以降も旧領地に残った数少ない大名・酒井家伝来の由緒正しきお雛さまです。

本間家旧本邸_相生様.jpg【Photo】交易で大いに栄えた湊酒田を代表する豪商の並はずれた繁栄ぶりが伺える本間家旧本邸に4月上旬まで展示される「相生様(百歳雛)」

 本間家繁栄の礎を築いたのが本間光丘(みつおか)。幕府の巡見使を迎えるため、明和年間に光丘が建造したのが、武家屋敷と商家造りが合体した本間家本邸です。天井まで届きそうな高さ2m、幅1間半(約2m72cm)の赤い雛段に飾られる京都で江戸末期に作られた古今雛(男雛31cm、女雛27cm)を今月号ではご紹介しました。見逃してならないのは、古今雛と並んで微笑む白髪の「相生様(あいおいさま)」(男雛26cm、女雛22cm)。ともに白髪になるまで連れ添えるようにという願いが込められたお雛様です。

1303-tokusyu2-03.jpg【Photo】今年も酒田夢の倶楽で無料公開される加藤家古今雛(江戸後期・江戸製) 惜しげもなく金糸を使った刺繍が施された衣装、ガラスを組み込んだ優しげな眼差しと穏やかな表情、ともに40cm以上ある堂々たる見事な造り...。いずれを取っても訪れる価値十分  (写真協力:コマツコーポレーション)

 庄イタの意向で、一昨年のPiatto3月号でご紹介したため、今号では取り上げませんでしたが、酒田を訪れたならば是非ともご覧頂きたいのが、洛中洛外図屏風を背に柔和な微笑みを浮かべる江戸時代末期に江戸で作られた加藤家の古今雛(男雛43cm、女雛40cm)。華麗な鳳凰の刺繍を施した衣装と透かし細工の冠を戴くお雛様、端正なお顔立ちの内裏様、そして雅楽五人囃子は、今年も酒田の観光スポットとして外せない山居倉庫内の「酒田夢の倶楽」で出合うことができます。

sannnou_kasafuku2009.jpg【Photo】映画「おくりびと」がアカデミー外国語映画賞を受賞し、空前の賑わいとなった2009年に訪れた「山王くらぶ」の999個の飾りが下がる傘福。今回の取材で目にした下げ飾りは、4年前よりはるかに手が込んだ造りだった

 国登録文化財「山王くらぶ」は、料亭「宇八樓」であった時代、竹久夢二も訪れた1895年(明治28)築の風情ある木造建築。取材に訪れた日も地元の女性たちが下げ飾り作りに励んでいました。最近では4年前にも999の飾りが下がる大きな傘福を目当てに訪れていますが、当時と比べると一つ一つが、明らかに手の込んだ作りになっているのがわかります。リピーターの方でも決して見飽きることはないはずです。
 
 「鶴岡雛物語」として初公開された1995年(平成7)から18年目となる今年も、会期中は「致道博物館」の御隠殿に展示される酒井家伝来の有職雛(男雛20cm、女雛18cm)。今号の制作スケジュールの都合で、鶴岡を訪れたのは、まだ展示が始まる前。そのため、酒井家十八代当主の忠久氏・天美さんご夫妻のお宅に伺っての取材となりました。

hina-tool-hosokawa.jpg【Photo】徳川四天王筆頭格の酒井家伝来のお雛さまと同様、見逃せないのが、極小サイズの雛道具に精緻な蒔絵が描かれた逸品の数々。庄内藩酒井家酢漿草・熊本藩細川家九曜雛道具(上写真・江戸中期 致道博物館蔵) 田安徳川家葵雛道具(下写真・江戸後期 酒井家蔵)

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 お殿様のもとに参上するとあって、世が世なら"失礼があっては打ち首獄門"と緊張しきりだったこの日。前日スタッフで撮影前に昼食を頂いた酒田「ル・ポットフー」や投宿した湯田川温泉の宿などで、「酒井の殿様のご自宅に参上して取材する」と明かすと、かつての領民の末裔である皆さんから「へぇ~」ときまって感心されるのでした(笑)。2006年7月に酒田市産業会館で行われた「奇蹟のテーブル」出版記念パーティやその他の会合でご夫妻とはお会いしたことがあったほか、寒河江に嫁がれた長女の賀世さんに仲立ちをお願いしていたこともあり、忠久さん・天美さん夫妻は笑顔で出迎えて下さいました。

8th_tonohan.jpg 国の名勝に指定された庭の雪景を望むお座敷の床の間には、藤沢周平の小説「義民が駆ける」で描かれる幕府の三方領知替え案に対し、領民挙げての反対が巻き起こった10代藩主忠器(1790-1854)の筆になる立雛の掛軸が下がります。忠器公治世下の天保3年、酒田で創業した「御菓子司 小松屋」の精緻な芸術品のような雛菓子と、江戸後期に京都で作られた公家の装束の有職雛と愛らしい笑顔の稚児雛が、そこで待っていてくれました。それらが一般公開されるひな街道期間中は、田安徳川家から輿入れした姫君持参の見事な細工が施された必見の雛道具や、その小ささに感嘆する貝合わせもあわせて展示され、必見です。

【Photo】酒井忠器(ただかた)公が描いた立雛。封建時代ゆえ男雛の大きさが目立つが、形勢がすっかり逆転した現代では、女雛をはるかに大きく描かなくてはならないだろう(右上写真)
 
1303-tokusyu2.jpg【Photo】ひな街道開催期間中の4月3日(日)まで致道博物館の御隠殿に展示される酒井家の有職雛と稚児雛(上写真)

 荘内銀行の前身となる貸金業を営み、明治期の庄内では本間家に注ぐ大地主であった風間家の邸宅「丙申堂」。2005年に公開された映画「蝉しぐれ」で、牧文四郎(市川染五郎)とおふく(木村佳乃)の再会シーンの撮影が行われました。独自の発展を遂げた庄内の雛菓子作りを、この道60年の本間三男さんの手ほどきのもと、丙申堂で体験できるのが3月10日(日)。Link to backnumber翌週17日(日)に菓子作り体験が行われる鶴岡市本町の三井家蔵屋敷では、全国でも現存する人形が数えるほどしかない「古今斎」を名乗った名工・三代目原舟月(しゅうげつ)の内裏雛と雅楽七人囃子が穏やかな笑みを浮かべて出迎えてくれます。

 健やかな女児の成長を願う雛まつり。そんな優しい日本の伝統の精華の数々が、これだけ揃う地域は東北では他にありません。寒さが一段と身にしみたこの冬。水温む優しい春のきざしを探しに日本海ひな街道を訪れてみませんか。

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