あるもの探しの旅

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水が合うハナシ

力水@湯沢 vs 神泉の水@遊佐

 
 食べ物・飲み物ではなく、湧水に関するトピックスが続いて恐縮ですが、カテゴリーのタイトルにある通り"水はすべての始まり"です。出張先の旧久保田藩(秋田藩)で、栗駒水系の伏流水と出合うも、結局は旧庄内藩領内で鳥海水系の湧水の類い稀な魅力を再認識した次第。

kurikoma_buna.jpg【Photo】岩手・秋田・宮城の3県にまたがる栗駒山(1627m)秋田県側の標高1000m付近。6月上旬とはいえ直射日光が射さない斜面には雪が例年以上に多く残る。幾層にもなったブナの腐葉土は保水力が高く、地中へと浸透してゆく。ブナの森は豊富な伏流水の供給源でもある

 出張で秋田県南部の湯沢市稲庭を訪れた先日、次なる目的地にかほ市へ車で移動する道すがら、湯沢市古館山にある名水百選「力水」に立ち寄りました。鎌倉期に小野寺氏が古館山の頂きに築いた湯沢城は、関ヶ原の合戦以降、佐竹南家の三代目佐竹義種の居城となるも、1620年(元和6)の一国一城令により廃城となりました。現在は散策コースとして整備された古館山の一角が中央公園となり、市民憩いの場となっています。酒処・秋田だけあって人口24,000人弱の湯沢市街地には、爛漫で知られる秋田銘醸の大きな醸造所のほか、大小7軒の造り酒屋が点在しています。

fukukomachi_yuzawa.jpg 欧州最大かつ国際的に最も権威ある酒類評価会とされるインターナショナル・ワイン・チャレンジSAKE部門の金賞受賞酒「純米大吟醸 雪月花」を醸す両関酒造、同鑑評会出品292蔵元689銘柄の最高峰「Champion Sake チャンピオン・サケ」に昨年度輝いた「大吟醸 福小町」や「角右衛門」銘柄などを展開する木村酒造など、栗駒山系の豊富な水資源を活かした酒造りが行われています。

【Photo】秋田湯沢・木村酒造の福小町(右写真)。馥郁としたコメの旨味と酸味が醸し出す綺麗な造りの純米吟醸(左)、山田錦を精米率40%まで磨き、伝統の寒造りで頂点を極めたチャンピオン・サケ大吟醸(右)

chikara_mizu1.jpg【Photo】古館山を居城とした佐竹南家の御用水として使われた力水は、緑豊かな山裾に今もこんこんと湧き出す(左写真)

 名水百選・力水の標柱が建つ山裾の水場からは二筋の清らかな伏流水が湧き出ており、そこが水汲み場として整備されています。手入れが行き届いた水場の入口には「飲むと力が出る」という力水の由来を記した石碑があり、それによるとこの水は佐竹南家の御膳水として用いられ、殿様はこの水を「体に力がつく」と好んで愛用したのだとか。されば鳥海高原を越え、日本海に面するにかほ市まで移動後、仙台へと日帰りする力を得ようと飲んでみました。

 力水は年間を通して水温12℃前後、硬度約39、pH8.2の中性の軟水です。毎分およそ20ℓの湧出量がありましたが、次第にその量が減少しているとのこと。きりっと冷えた力水は、その名の通りロングドライブで疲弊した交感神経を覚醒させるのでした。

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 佐竹南家の屋敷跡に建っていた小学校では、飲用水として用いたこの水を「おしず(=清水)さん」と呼び、水温10~15℃の湧水でしか棲息できない淡水魚イバラトミヨを飼っていたのだといいます。力水を水源とする池には日本各地で生息数が激減するモリアオガエルも棲息していたといいますから、よほど自然豊かな環境だったのでしょう。

 佐竹の殿様が愛でた力水で元気回復、西馬内盆踊りで有名な羽後町から矢島街道と鳥海高原を経て、最終目的地にかほ市役所に駆け込んだのは17時をわずかばかり過ぎた頃でした。打ち合わせを終え、そこから仙台に戻るには、酒田みなとICから山形自動車道を使うのが時間的には最も早いルートとなります。その経路となるR7の遊佐町女鹿には、Viaggio al Mondo~あるもん探しの旅~で幾度か登場した湧水ポイントがあります。そう、女鹿集落のシンボルともいえる「神泉の水(かみこのみず)」です。

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 「水が合う、水が合わない」という言い回しがあります。あわただしく出張帰りに寄ったこの日、つくづくその言葉を実感しました。口あたりが極めて柔らかいだけでなく、飲み込んだ水がすぅ~っとカラダに浸み込んでゆく独特の感覚を体感できる稀有な湧水が神泉の水なのです。そのため、庄内系にメタモルフォーゼした10年前に初めてここを訪れて以来、神泉の水は過剰な塩分を含むスポーツドリンク類よりも遥かにスムーズに最もカラダに同化し、しっくりと馴染む水として私の中では最上位に君臨する水であり続けています。

【Photo】地区の暮らしとともにある遊佐町女鹿「神泉の水」

 熱帯に匹敵する年間降水量がある鳥海山周辺には、湧水ポイントが数多く存在しています。火山性土壌の影響で酸性度が高く飲用に適さない北側の湧水を除き、そのいずれもが庄内きっての美味しい伏流水ばかり。これまでViaggio al Mondoに登場しただけでも、牛渡川Link to backnumber、釜磯Link to backnumberゆりんこ・湯ノ澤霊泉Link to backnumber、胴腹滝Link to backnumber、さんゆう・鳥海三神の水同左etc ・・・。

 仙台に帰着するまで150km以上の距離を残し、すでに400kmを走破していたこの日。飲み込んだ神泉の水は、特異な浸透圧を備えた分子構造なのか、体感的には胃壁からたちまちにして体と同化してゆきます。その独特な感覚はこの湧水特有のもの。力水が交感神経を活性化させるムチ入れの水ならば、神泉の水は緊張が解き放たれカタルシスが得られる水。いわば副交感神経のスイッチが入る癒しの水。

kamiko_mizu-3.jpg【Photo】できることなら仙台の自宅まで誘引したいくらいの(笑)塩ビ製のパイプから直接水が注ぐ最上段が飲用。とりわけそこは汚さぬように気をつけたい

 夕刻を迎え、鍋やペットボトルを手に地区の人たちが水を汲んでは持ち帰ってゆきます。佐竹南家の殿様が愛飲した力水も間違いなく美味しい伏流水ですが、神泉の水ほど速やかにナノレベルの細胞にまで水が浸透してはゆきません。それほど水が合う庄内系にとっては奇跡の水である神泉の水は、集落から離れた上手の湧出地点から水場へと引かれています。不動尊が見守る水場は、女鹿の人々が大切に伝えてきたもの。

 6段に分かれた神泉の水は用途がそれぞれ決まっています。最上部は水汲み用、次が食べ物の冷却保存用、3・4段目が食品の洗浄、次が生活用具の洗浄、最下段がおむつ洗い。水場の周囲は人家なので、車は路肩に停車させアイドリングストップ。水場を守る地元の方優先です。


より大きな地図で 栗駒水系「力水」 vs 鳥海水系「神泉の水」 を表示

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