あるもの探しの旅

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2013/07/21

箸で食するソフトクリーム

マルカン百貨店のあっぱれソフトクリーム
昭和ノスタルジアな王道デパート大食堂@イーハトーブ花巻


 北上山地育ちの日本短角種を目当てに盛岡市紺屋町のイタリアン「Due Mani ドゥエ・マーニ」を訪れた日のこと。ここには短角牛のスペシャリスト、久慈市山形町の短角牛専門店「短角考房北風土」の佐々木透さんが牛肉を納めていますLink to Backnumber。これまで食したテールのボッリートやハツのソテーなど、産地ならではの素材を活かした小澤智範シェフの丁寧な仕事ぶりが光る小さな店ゆえ事前予約は必須のミッション。

 bollito_tankaku20130303.jpg grillo_tankaku20130526.jpg
  
【Photo】ソフトクリームのはずが冒頭から肉塊の登場で恐縮ですが。。。稀少な日本短角種のさらに稀少な部位テールとハツのアレンジが光る盛岡ドゥエ・マーニの2皿。黒毛よりも強い短角牛のうま味が滋味に満ちた冬野菜と混然一体となったテールのボッリート(左写真)は骨までしゃぶり尽くす美味さ。 春から秋は野山を駆け巡っていた健康体の短角牛のハツは赤身肉のような食味。レアに火入れしたソテーに合わせてオーダーしたIL VEIの「Val Tidone Rosso」を使ったバルベーラ+ボナルタベースのソースとの相性はPerfetto!!(=完璧)

 予約時刻に遅れてはならじと早めに仙台を出発したので、予約を入れた12時までは時間の余裕がありました。そこで最寄の盛岡ICから4つ手前の花巻南ICで途中下車。目指すは花巻市中心部にある「マルカン百貨店」6Fの大展望大食堂。何故ならそこは噂に漏れ聞く名物があるのです。

MARUKAN.jpg【Photo】現社長の佐々木一(はじめ)氏の先代、故・四郎氏が1951年(昭和26)に創業した洋品店「丸乾」が発祥。当時隣にあった壽デパート跡地に建つ現在の「マルカン百貨店」は1973年の竣工。以来「マルカン」の略称で花巻市民に愛され続けている。金太郎飴のように画一的なテナントで構成される郊外店には真似のできない"新しきがゆえに尊からず"な店づくりで末永く頑張ってほしい。花巻が誇るべき文化遺産6階大食堂を擁する商業施設なのだから

 宮沢賢治の童話を寓意化したステンドグラスがある上町商店街のアーケード「メルヘンプロムナード」裏手側に2層の立体駐車場があり、誘導にあたる2、3人の男性の案内で下層に車を停めました。入庫時刻を刻印することも、駐車券を渡されることもないその駐車場は、太っ腹にも駐車無料なのでした。

 下町テイストの商品が並ぶ1F婦人服売り場は日曜日というのに人影まばら。エレベーターに乗り合わせた7名は、脇目もふらず全員が6Fまで直行です。その扉が開くと、デパートの食堂で高揚感を覚えた幼少の頃にタイムスリップしたかのよう光景が広がっていました(下写真)。日本橋と同じ「ランドマーク」という名に変わる前の仙台三越にも、かつては食堂がありました。半ズボンをはいてヤマハ音楽教室に通っていた頃はショーウインドーの中で燦然と輝くお子様ランチに胸ときめかせたものです。

MARUKAN DPT.jpg

 そんな記憶をフラッシュバックさせるホール両サイドのショーウインドーには、蛍光灯で照らされた食品サンプルが目移りするほどバリエーション豊かに並びます。その数およそ250点!! 盛岡の予約をしていなければ、左右のウインドーをじ~っくりと品定めした上で「Cotoletta alla Milanese=(本来は牛肉を用いる)ミラノ風カツレツ」のように薄めのトンカツとスパゲティ・ナポリタンがサラダとともにハイブリッドにドッキングした驚愕のスペチャリテ(?)「ナポリカツスパゲティ」(550円)を注文したことでしょう。

marukan_reception.jpg【Photo】対面式の食券売り場

 プリンに誇らしげに立つ日の丸やシロップ漬けのサクランボが、今も昔も子ども心をわしづかみにするお子様ランチ(510円)ほか、卵焼きにたっぷりとケチャップがかかったオムライス(470円)、「いいね!」サインをしながらシュワちゃんが燃えたぎる溶鉱炉に消えていった「ターミネーター2」のようにカニのハサミがトロけたチーズの中でVサインをしているグラタン(450円)、アルデンテなパスタが日本で市民権を得る前に活躍したパルメザン粉チーズとタバスコがセットされるケチャッピーな「ナポリタン」(420円)など、昭和世代の郷愁をそそるメニューが満載!!

 生クリームてんこ盛りのいちごパフェ(580円)、どう見てもココアパウダーを振ったパフェにしか見えないティラミス(410円)など、お手頃価格でも盛りが良いメニューが多いように思います。盛岡にベツバラを確保しておかなくてはならないこの日は、花巻のローカル百貨店マルカンデパート大食堂の名をとりわけ有名にしている名物ソフトクリーム(150円)を一点買い。

 いかなる原価計算なのか、わずか40円の価格差で一気に1/3サイズとなるミニソフト(110円)、中ジョッキサイズの透明なカップに8合目まで収まった安定度が高いカップソフト(150円)や、コーヒーパウダーが載った大人のカップソフト(250円)といったバリエーションも。コーンからうず高くトグロを巻くソフトクリームの尋常ならざる大きさを目の当たりにして、連れと二人で一個をシェアすることにしました。

marukan_inside.jpg【Photo】番号札の立つテーブルの島ごと、ほうじ茶の入ったポットが律義に置かれる。食事を終えても追い立てられることなど決してないはずの全560席。近所から買い物に来ました的な寛いだ雰囲気に満ちた憩いのオアシス

 とやかくするうちにも、「今日はここで市民集会でもあるのだろうか?」と思うほどエレベーターで次々とお客さんが上がってきます。面白がって眺めていたウインドー前にはいつしか人垣が。営業開始から30分あまりを経た11時過ぎだというのに、すべからく先客がいる窓際だけでなく、広大なフロアのテーブルは4割ほどがすでに埋まっています。

marukan_inside2.jpg 「花巻市民は日曜ブランチでマルカンデパートの大食堂を利用しているのか??」 そんな疑問を抱きつつ人だかりをかき分けて食券を購入。省力化が進んだ昨今では当たり前な自販機ではなく、売り子の店員さんから食券を手渡されます。食券を手に番号札の立つテーブルにつくとフロア係がやって来て半券だけを残して厨房にオーダーを入れるのが、ここでのローカルルールのようでした。

【Photo】お母さんがナポリタンを食べる隣でお父さんがソフトクリームを食し、短パン姿の息子が向かいでラーメンを食する。遠野への鉄路の道すがら花巻にも寄ったであろう柳田國男が言うところの「ハレ」と「ケ」が一体となった家族の肖像がマルカンデパート大食堂の日常

 11時10分を過ぎ、周囲のテーブルは老若男女を問わず幅広い客層で埋まってゆきます。従業員食堂を兼ねているのか、館内で働く仕事着姿の人もちらほら。オープンキッチンのため、白衣姿の調理スタッフが立ち働く中の様子はカウンター越しに眺めることができます。席からざっと見回しても、先客はかなりの割合でソフトクリームを注文しています。厨房にはソフトクリームマシンが確認できるだけで6台も並んでおり、この大展望大食堂はソフトクリーム目当ての観光客はもちろん、花巻市民の広範な支持を受ける様子が窺えます。

marukan_softcream.jpg 広々としたフロアには、客を「ご主人さま」と呼ぶイマドキのアキバ系「メイド」ではなく、年齢層は幅広くともカチューシャ+制服姿のウエートレスがテーブルの間を行きかっています。久しくお会いしていない正統派ウエートレスさんに昭和世代の庄イタは萌え~ すべからくフロア係は制服ウエートレスではなく、ゆえに食券を手渡したのは偶然目が合ったアルバイト風のお兄ちゃんだったのが心残りでしたが(笑)。

【Photo】鎮座するだけで特別なご馳走に見えるステンレス製ソフトクリームホルダーを見るのも久方ぶり。高さ25cmはあろうかというマルカン百貨店名物のソフトクリーム

 正統派ウエートレスさんのみならず、時代が平成に変わって久しいことを忘れさせる店内の雰囲気を楽しめるのもこの食堂のサービスであるように思えます。例えばオレンジ色のプラスチック製割り箸入れ(上写真)や、ど~んと大きな醤油さしなどの卓上備品、楽しげに語らう周囲の人たちも大切な店の一部に映ります。

 運ばれてきたソフトクリームは噂に違わぬ難攻不落の巨大サイズ。周囲のテーブルではこれを箸を使って食べています。それに倣って時に横をこそげ落とすように、時に挟むように割り箸を使って食べてみると、それが理に叶った方法であることがわかります。軸は空洞になっており、こそげ落とす際に横向きに力をかけると、全体がピサの斜塔のように傾いてしまいます。バウムクーヘンのように箸で輪切りにするのが最も安定した食べ方なのでした。
marukan_soft2.jpg
【Photo】庄イタの鉄則「Quando sei a Roma, vivi come i romani(=郷に入っては郷に従え)」に従い、世界をアッと言わせた旧グランドプリンスホテル赤坂新館解体工事のように箸で輪切りにして上から攻め落とすのが正解のマルカンソフトクリーム。焦ってヘタをするとこうなる

 2011年9月、被災地慰問で勤務先を訪れて下さった日世ソフトクリームキャラバンでご提供頂いた日世プレミアムソフト「北海道ソフトクリーム」や大崎市R47沿いの「あ・ら・伊達な道の駅」で扱うROYCEのレシピによる「伊達なソフトクリーム」(250円)ほどキメ細やかで乳脂肪分が多いタイプではありません。

 農水省の統計による人口10万人あたりの生乳生産量では、北海道に次ぐ岩手だけに、酪農県の心意気をソフトの並外れた大きさで表現したのでしょう。通常より低温で固めに練り上げるため、粘度が高く腰砕けになることも、溶けて流れ落ちることもほとんどないため、焦ってパク付く必要はありません。大柄だから、お手頃価格だからといって、決して雑な仕事などしないのがこの道10年以上の精鋭女性スタッフ。

 一人ですべてを平らげるとおなかが冷えることもあるでしょう。その時はポット備え付けのお茶を頂けばオッケーと至れり尽くせり。いやはや恐れ入りました。次回訪問時は胸ときめく食事メニューも頂くことにします。
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 【マルカン百貨店の場所を大きな地図で見る】
   

マルカン百貨店(通称:マルカンデパート)
住: 岩手県花巻市上町6-2
Phone: 0198-23-2968
URL : http://www.marukan-group.jp/
6F大展望大食堂: 営 10:30~19:00(L.O.18:50)全席禁煙
他フロア:営 10:00~19:00 無休 
※メニューの値段は2013年7月時点
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2013/07/07

革フェチ散財記

Io sono il feticismo di cuoio Ⅱ 私、革フェチなんです。第2章
Pelle conciata al vegetale な型押しを衝動買い


 「フィレンツェ銘菓(?)黒砂糖まんじゅう」もどきなPeroniのコインケースを取り上げて以来の革フェチな話題を一席。質感の高いクロコ型押し仕上げのメンズバッグが今回のお題です。

 "機能性のためにデザイン性を犠牲にせず、男の遊び心を満たす"をコンセプトとするブランドが「Kiefer neuキーファーノイ」。製造元は1948年(昭和23)に名古屋で創業、ランドセルも手掛ける国内メーカー「株式会社松本」ですが、ベスト・クオリティを標榜する同社のプライベートブランドであるKiefer neu の素材感と仕上がりは、高い品質とデザイン性で定評あるMADE IN ITALYに引けを取りません。

windowdisplay testoni.jpg【Photo】イタリアの街をそぞろ歩きしていると、所有欲を刺激する品々が絵画のようにディスプレーされたショーウインドー前から立ち去りがたいことが時としてある。その強気な値付けを見て溜息と共に立ち去るのが常なのだが・・・。たとえば革フェチの庶民には目の毒な「a.testoni ア・テストーニ」。創業は皮革産業が盛んなボローニャ。ローマとミラノの直営店ほか、今やファストファッションが浸食する東京銀座に直営店を構える。時流に流されないデザイン性と高い品質の靴やバッグなど皮革製品を展開する大人のイタリアンブランド

bottega_veneta.jpg つい先日入手した同ブランドAMOREシリーズのボディバッグは、a.testoniのような高級品ではありませんが、それと相通じる妖艶な大人の雰囲気を漂わせます。

 高級感漂うクロコ調の表面処理を施したカーフレザーの深い藍の色調、BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)に代表されるイントレチャートを取り入れたデザイン。短冊状の皮革をメッシュ状に編み込むイントレチャートは、ボッテガ・ヴェネタ創業の地であるイタリア北部ヴィチェンツァのあるヴェネト地方で発展した技法です。

【Photo】柔らかな風合いの最高級レザーを編みこむ高度なイントレチャート技術を用いたBOTTEGA VENETAのキーリング

 自然な光沢を放つクロコ調の型押しカーフバッグには、革フェチには見覚えのある手形マークのタグが付いていました。それはPelle conciata al vegetale in Toscana(=トスカーナ植物なめし皮)というトスカーナ地方伝統の樹木由来の植物タンニンを用いたなめし技術によって鞣(なめ)された皮製品であることを示す偽造防止のホログラムと通し番号が入った品質保障タグなのでした。

certificato_PCAVT_1.jpg このタグが付いたKiefer neu のAMOREシリーズは「Consorzio Vera Pelle Italiana Conciata al Vegetale (=イタリア植物鞣し本革組合)」加盟タンナー(=鞣し工房)である「Conceria Nuova Grenoble Srl コンチェリア・ヌオヴァ・グレノブレ」が加工する食用として出荷された生後6カ月以内の子牛のしなやかな牛革を使用しています。この保証書が付いた製品の鞣し作業には、栗や南米原産の樹木ケブラッチョの樹皮から採取される植物性有機化合成分を用い、30以上の工程をかけて柔軟性や耐久性を得る完成までの日数は40日を要します。

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 安価な皮革製品には硫酸クロムを使って短期間で仕上げるクロムなめし皮が使われますが、植物なめし皮のように使い込むにつれ艶が増し、飴色に変化するなど、独特の風合いを持つには至りません。近年では環境への配慮から天然由来成分を用いる植物なめしの良さが再評価されています。

kiefer.neu_amore3.jpg Consorzio Vera Pelle Italiana Conciata al Vegetale は、この技術を受け継ぐトスカーナのタンナーの呼びかけで1994年に発足し、現在23の工房が組合に加盟。セミナーや新作発表会などの活動を通じ、伝統技術の伝承と技術発展に寄与しています。

 海外の高級ブランドの多くが生産拠点を中国などアジア諸国に移しています。素材を吟選、社是のベスト・クオリティを追求しつつ中国でも品質管理を徹底させたことは、AMOREシリーズの高い質感からうかがえます。

 実はイントレチャート好きな庄イタ。ラムナッパ革ならではの柔らかな手触りが心地良いBOTTEGA VENETAの長財布を最近は使っています(下写真)。そこからKiefer neuを入手するために飛んで行ったのは福沢諭吉先生と野口英世博士が各2枚。

purse-bottega-benetta.jpg

 AMOREシリーズのカラーバリエーションであるブラック・チョコ・レッド・ネイビーの4色から選んだのは、深いグランブルーのネイビー。末永く愛用することで粋なクロコ姿となった子牛も天国で喜んでくれることでしょう。

AMORE/ボディバッグ 参考上代 22,050円(税込)W17×H33×D9
Kiefer neu URL : http://kiefer-neu.jp/

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