あるもの探しの旅

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2013/08/24

庄内系イタリア人的青森〈後編〉

燃え立つ夏2013@青森 Part2:津軽編

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【Photo】毎年1基が制作される高さ20mを越す大型の立佞武多を常設展示・保管する施設として2004年(平成16)に竣工した「立佞武多の館」。女性が打ち手となり、重低音を轟かせる直径2.8mの大太鼓を二段重ねにし、高さ8.5mの立佞武多「本能寺の変」を上に据え付けた「忠孝太鼓」(右下)を先導するのは、五所川原が生んだあの大スター!!
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【Movie】五所川原市では最も高い地上7階の施設から引き手によって高さ17m・重量18tの立佞武多が出現するさまは、特撮怪獣映画の世界さながらの迫力
 

 開幕初日に訪れた五所川原の夏の宵を熱く燃え立たせる「立佞武多(たちねぷた)」の興奮さめやらぬ夜は、硫黄の香り漂う弘前の嶽(だけ)温泉の宿「山楽」を予約していました。五所川原から移動すると1時間ほどを要する岩木山麓の湯宿をあえて選んだのには、1年で最も多くの観光客を集める立佞武多初日の五所川原市内では、宿泊施設をリーズナブルに確保することが難しいことが予想されただけでなく、れっきとした理由がありました。

sanraku_rotenM.jpg【Photo】早朝ゆえに極めて残念ながら貸切状態だった(笑)嶽温泉「山楽」の混浴露天風呂〈another image〉。この時の湯量は何故か寝湯のごとき少なさ。ゆえに内湯(→男女別)へすぐ移動した

 まずは今月26日、めでたく開店10周年のアニバーサリーを迎える弘前「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」笹森シェフお勧めのこの宿の露天風呂(混浴~♡(〃▽〃)♡)に浸かりたかったこと。そして色気より食い気優先の庄イタの常で、時季が少し早いことを承知で、あわやくば地物にありつきたいと思っていた嶽特産の比類なき濃厚な風味のトウモロコシ「嶽きみ」が狙いだったのです。

azienda_dakekimi.jpg【Photo】岩木山麓南側、標高400m~500mの嶽地区周辺で産出する香り高く甘味の強い嶽きみ。8月のお盆時期前後に迎える旬の真っ盛りには、糖度が18度にまで達し、ブチッとした食感を堪能できる生食も可能。最盛期には岩木山を周回するロードサイド各所に期間限定で嶽きみ直売施設が立ち並び、通称「嶽きみロード」が出現する

 肌触りの良い濁り湯で朝風呂を浴びてから宿を早めに出発し、岩木山を周回する道を反時計回りに進みました。最盛期ほどは多くない出始めの直売所数軒を渡り歩き、さらに観光案内所で嶽きみの作況を尋ねると、嶽地区より標高の低い場所で採れたものが出始めたばかりとのこと。7月下旬まで例年にない寒さで暖房を入れる日すらあったという今年の嶽地区。嶽きみは全体に生育が遅れ気味なのでした。

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【Photo】足湯につかりながら嶽温泉街をそぞろ歩きした早朝、弥生地区で朝採りされた「(ほぼ)嶽きみ」が店に持ち込まれて下処理される(左写真) 店頭で食する分は鍋で茹でる(中写真) 6本1000円で購入した(ほぼ)嶽きみ

 ならばと温泉街に今一度立ち帰り、マタギ飯が名物の「山のホテル」売店「めへやっこ」(→「小さな店」というニュアンスの津軽弁)」へ。ここは9:30開店で、山楽の出立時はまだ閉まっていたのです。めへやっこでのお目当ては、"ここだけ(嶽)にしかない"が売り文句の「元祖嶽きみシェイク」、そして"うまくてゴメンね"のフレーズに思わず喰いついた「期間限定アムさんメロン生シェイク」。

dakekimi_shake.jpg amusan_shake.jpg【Photo】ツブツブ感の高い「元祖嶽きみシェイク」(左) 津軽特産「つがりあんメロン」でも香りの良い品種「アムさんメロン」を使った「期間限定アムさんメロン生シェイク」(右)各400円

 まだ実入りが充分ではないきみ畑の様子から、嶽地区産を入手するのは無理そうだと踏みつつ、庄イタが産地を尋ねると、嶽だと答える店もありましたが、眉唾な店はスルー。正直に事実を明かしてくれたお母さんいわく、信頼のおける嶽地区の農家が、嶽から少しばかり離れた標高がわずかに低い弥生地区の畑で育てているという「ほぼ嶽きみ」を購入することにしました。本物の嶽きみは、後日その「藤喜商店」から送ってもらえば良いのですから。

 嶽温泉から岩木山を時計回りに下り、鰺ヶ沢の夏を彩る風物詩「イカカーテン」で知られる名物のイカ焼き(300円)を購入がてら、立ち寄ったのが「菊谷商店」。炭火で焼いた香ばしいイカ焼きの旨さは相変わらずでしたが、目を疑うほど変わってしまった光景がありました。

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【Photo】鯵ケ沢漁港で水揚げされた肉厚のイカ(右)が日干しされる菊谷商店。3,4年前にTV番組でこの店を志村けんが訪れ「日本一うまい」と言ったとか(左)

 それが1年ぶりに対面したブサカワ犬「わさお」です。飼い主の菊谷節子さんが体調を崩して入院した今年、施設に預けられた挙句に激ヤセが伝えられたわさお君。毛がフサフサだったかつてのメタボな姿恰好とは打って変わり、同じ犬とは思えないほどスリムに。酸素吸引をしつつも店においでだった菊谷さんともども、一日も早く健康体を取り戻してほしいものです。

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【Photo】わさお三態。一躍ブレイクして間もない2010年5月(左) 映画が制作され人気者の常でお疲れ気味の2012年6月(中) 飼い主不在のもとで激ヤセした2013年8月(右)

lago_13.jpg【Photo】大和シジミが特産の津軽半島の汽水湖「十三湖」。時として湖水がシジミ色に見えるのは、平均水深が1~2mという浅さゆえ、湖底のシジミがそうさせる???(上写真) 白いご飯が進む新岡商店の瓶入りしじみ佃煮は極めて美味(下写真)

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 目指すハニーハントのアイテムは二つ。まずはヤマトシジミの一大産地、十三湖畔に並ぶ店で試食用の佃煮をあらかた食した上で、「ここのが一番!!」と庄イタが太鼓判を押す「新岡商店」のお婆ちゃん、新岡てささんが手作りするうま味の塊のような絶品しじみ佃煮(700円)。味付けは醤油・砂糖・水飴だけと至ってシンプルながら、自然な味わい深さ。仕込みには膨大な量のシジミを必要とします。そのため気合を入れないと、てさ婆ちゃんは佃煮を作らず、良い出汁がとれる冬シジミに対して、食して旨い夏シジミの旬だった今回、結論から言うと残念ながら欠品中なのでした。う~ん、これを目当てに十三湖まで足を運んだというのに、返す返すも残念!

ganryo_ramen.jpg 気を取り直し、すぐ向かいにある民宿を兼ねた食堂「岩亮」へ。昨年出張で青森を訪れた時は、同行した後輩の希望で元祖店「ドライブイン和歌山」もハシゴしました。人気ラーメン店のインテリアとして欠かせない有名人の色紙で壁一面を覆い尽くされた店内で、白味噌を和えて少し白濁したスープのしじみラーメン(750円)を食しましたが、家族帯同の今回ハシゴはパス。岩亮では店主の岩本剛亮さん自ら漁に出るという大和シジミと昆布で出汁をとった透明感のあるスープが、細めの縮れ麺となじみます。そんなシジミの風味たっぷりの「しじみラーメン」(700円)で溜飲を下げました。

strada_melone.jpg【Photo】鯵ケ沢から、つがる市までまっすぐの道が延びるメロンロード一帯では、生産量全国6位の青森県産メロンのおよそ8割が産出される。砂地で日本海が近いため夜間は海風が吹き込み、昼夜の寒暖差が大きい。そのためハウス物の「アムさんメロン」ほか、トンネル栽培の露地物ともに統一ブランド「つがりあんメロン」の一大生産拠点となった

 鰺ヶ沢から十三湖方面へと向かうには、津軽半島西側を北へ伸びる全長22kmの通称「メロンロード」を通ります。そこには今回楽しみにしていた素晴らしい芳香を放つメロンがあるのです。糖度15度以上を基準とする津軽ブランドメロン「つがりあんメロン」の中でも、糖度18度まで達する完熟期には、クラクラするほど官能的な香りを漂わせる知る人ぞ知るアムスメロンの改良種「アムさんメロン(品種名:ゆうかメロン)」こそが目指すハントアイテムです。

amu_melon.jpg なれど6月に出荷が始まるアムさんメロンは終盤に差し掛かっており、半円形の雨除けビニールの中は、出荷が始まったアーバンデリシャスやハニーゴールデンといった品種がほとんど。メロンやスイカを扱うロードサイドの直売所でも、運転席からの傍目にも分かりやすい特徴的な色合いのアムさんメロンは数が少なめなのでした。

【Photo】ゆうかメロンをハウス栽培し一定糖度に達した完熟ものだけに許される「アムさんメロン」の称号。追熟する必要がない代わり、ネット通販以外は地元流通にほぼ限られる。箱入りではなく山積みされた完熟アムさんメロンの売り場には心地よい芳香が漂う。画像から香りをお届けできないのが残念

amusan_2012.jpg 昨シーズン、青森市羽白沢田の県民生協はまなす館で遭遇したアムさんメロンとの出合いは衝撃でした。淡い黄色の外皮のネットメロンが山積みされた売り場一帯は、えも言われぬ良い香りが漂っているのです。直観的に「これはウマそうだ」とフェロモンに誘われるように買い求めた完熟アムさん。皮際まで柔らかい透明感のある薄緑色の果肉は、メロンの既成概念を覆すジュルジュルの美味しさ。あれから1年。指折り数えて待ち焦がれた愛しのアムさんとの再会は、十三湖を経て五所川原市内で果たされます。次回は地元事情通が勧める旧木造町の腕利きメロン農家が直接持ち込む期間限定の直売所を目指すとします。

青森滞在3日目は、青森ねぶたも制覇したかったのが本音です。なれど仙台から南部、さらに津軽まで野を越え山を越え700kmを走り続けたため、同行者を含めて気力・体力の限界を感じていました。そのため五所川原から西方の青森市を目指すことなく、断腸の思いで進路は南へ。

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houhai_tsurushi.jpg【Photo】弘前城址から岩木川に架かる富士見橋を渡り、鰺ヶ沢に至る街道を北西へ。同市石渡の辻角にある三浦酒造店でポリタンクに仕込み水を頂く之図(上)。限られた特約店のみに出荷されるため、左党が入手に躍起となる「豊盃」。その頂点「豊盃つるし酒大吟醸」(右)とコスパ抜群の「ん」(左)

 北米原産の黒ブドウ「スチューベン」生産高日本一の鶴田町ではブドウ畑を訪れた後、産直施設でスチューベン果汁100%ジュースを購入。弘前では希少な「豊盃つるし酒大吟醸」と「ん」、つまり三浦酒造店のアッパーエンドとボトムエンドという両極端な2本を幸運にも入手。道すがら三浦酒造店の蔵に立ち寄り、岩木山水系の甘く柔らかい女性的な口当たりの仕込み水もたっぷりと汲ませて頂きました。芳醇な「豊盃」に仕込まれる前でも、冷やさずに常温でも美味しいんですよ、ホントこの水。

 こうして大鰐・弘前ICから青森方面に向かう東北自動車道下り線ではなく、上り線に乗ったのが15時頃。余裕を持って仙台を目指した筈が、そろそろお腹が空いてくる18時過ぎに花巻南ICで下車した理由は、Vaggio al Mondo ‐ あるもん探しの旅をご覧頂いている皆さまなら、とうにお見通しのはず(笑)。

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2013/08/18

赤川花火大会2013

3年ぶりの感動日本一@鶴岡

 第23回「赤川花火大会 翔habataki-感動日本一への挑戦」が、8月17日(土)、鶴岡市赤川河畔を会場に開催されました。27年ぶりの復活となった1991年(平成3)、1,500発で再スタートして以降、質量ともにスケールアップし、目の肥えた花火ファンの支持を不動のものとしている赤川花火大会。こと知名度の点では、600m上空に直径550mの大輪の花を咲かせる正三尺玉やフェニックス花火など、2日間で延べ2万発を打ち上げ、その起源が1879年(明治12)まで遡る「長岡まつり大花火大会」や、1910年(明治43)から開催され、今年87回目を数える全国花火競技大会「大曲の花火」などの伝統ある大会と現状で比べれば、赤川は一歩譲るかもしれません。

akagawa2013poster.jpg【第23回 赤川花火大会 「翔 habataki」 実行委作成ポスター】 花火撮影:井上真也氏click to enlarge

 しかしながら、歴代の青年会議所有志が中心となって運営し、全国デザイン花火競技会でもある同大会には、世界的にもレベルが高い日本屈指の花火師が全国から参加します。夜空を彩る1万2千発のデザイン花火や割物の尺玉が、赤川に架かる羽黒橋と三川橋の間の羽黒町側河川敷の全幅700mを使って打ち上げられ、すぐ目の前の天空を色とりどりの光で埋め尽くします。さまざまなジャンルの音楽と静と動を組み合わせた光の芸術の大迫力は、"感動日本一"の呼び声に違わぬもの。大会運営の良さもあり、開催地の人口を遥かに超える観客が会場に殺到し、終了後に大渋滞に巻き込まれ疲労困憊、フィナーレの感動が吹き飛ぶ残念な結果を見ることもありません。

akagawa_2013.jpg【Photo】第20回記念大会に訪れて以来、3年ぶりに訪れた今年の赤川花火大会で夜空を焦がすデザイン花火。Bravooooo(=たまや~)!!!!!

 通称「アカハナ」こと赤川花火大会に庄イタがデビューした2004年(平成16)。作家・藤沢周平への再評価の機運が高まって「海坂の大花火」が大会テーマだった第14回大会の印象は鮮烈でした。10・9・8・・・のカウントダウンに続く1曲目Queenの「I Was Born to Love You」でセンセーショナルに幕開けしたオープニングのワイドスターマインで、一気にヒートアップ。シェフの好意で一緒に花火を楽しませてもらったアル・ケッチァーノの若手スタッフたちは感動のあまり瞳を潤ませています。ビバ青春!

 「You raise me up-あなたがいれば立ち上がれる」が大会テーマだった翌15回大会。そのエンディングは、TBS系「世界遺産」のテーマ曲「The Song of Life」が使われた市民花火との2部構成でした。さまざまな歌手がカバーしたこの年の大会テーマと同名の曲ですが、ここで使われたのは、日本では最も知られるケルティック・ウーマンのバージョンではなく、ジョシュ・グローバンの力強い美声。「エレクトリック・ミュージカル・ワイド花火」と形容されるデザイン花火が、曲とシンクロしながら百花繚乱のクライマックスへと至り、鳥肌が立つほどの感動を覚えたのを鮮明に記憶しています。

 クラシック音楽あり、J-POPあり、子ども向け演出ありで、幅広い世代が楽しめる大会全体の構成に感心したものです。それ以来、赤川花火大会の日は、ランチ営業だけで店を切り上げ、スタッフ全員で花火見物をするアル・ケッチアーノ特設席に同席させてもらうのが庄イタ家の恒例行事となりました。

akagawa_poster2011.jpg 【第21回 赤川花火大会「希望の光」 実行委作成ポスター】  花火撮影:加藤隆志氏click to enlarge

 東日本大震災が発生した2年前の夏は、実行委が当初予定していた「飛躍の翼」から「希望の光-復興に勇気 子どもたちに笑顔 東北に未来を」へと大会テーマを変更。全国で催事の中止が相次いだ中、被災地に勇気と希望を届けようと、震災で最大の犠牲者を出した石巻や南三陸町の子どもらを招待してくれました。この「希望の光プロジェクト」は、「飛躍の扉-明るい未来へ天空からのメッセージ」をテーマとした昨年は福島から、今年は岩手の小学生が招待され、鶴岡の子どもたちと共に仙台・八軒中で有名になった合唱曲「あすという日が」をオープニングで披露しました。

【Movie】10分に及ぶフィナーレ「輝け! 響け! 未来へ、翔け!!」は長野県の(有)伊那火工 堀内煙火店による感動スペクタクル巨編。心震える感動日本一体験をどうぞ

 混乱のさなかにあった2年前の8月、そして昨年も赤川花火を見ることはできずにいましたが、3年ぶりに訪れた今回、やはりアカハナは素晴らしいとつくづく実感できました。効果のほどは???ですが、夕凪で時おり立ちこめる花火の煙を河川敷を埋める観客が一斉にうちわで追い払う恒例「パタパタ」にも参加。尺玉が上空で炸裂する空気の振動を肌で感じ、上空から燃え尽きた花火の灰が降り注ぐライブの素晴らしさには及びませんが、33万人(実行委発表)が体感したフィナーレの感動を少しだけお裾分けします。抑制の利いた前半から一転、5分過ぎから堰を切ったように溢れ出す光の洪水は圧巻!!

 仙台七夕花火祭や泉区民ふるさとまつりなど地元の花火は勿論のこと、隅田川や大曲の花火も体験した庄イタがイチオシする赤川花火大会。その素晴らしさを知らなかったというアナタ、来年の開催日は8月16日(土)です。Don't miss it.
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 ■ 赤川花火大会実行委員会(公益社団法人鶴岡青年会議所内)
   URL:http://akagawahanabi.net/
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2013/08/11

庄内系イタリア人的青森〈前編〉

燃え立つ夏2013@青森 Part1:南部編

hachinohe_sanjya2013.jpg 標高2000mのチロリアンアルプスに広がる楽園「アルペ・ディ・シウジ」や、古代ギリシャ・ローマ時代の遺構とグランブルーの海が美しいコントラストを描く南イタリアでのヴァカンツァは今年もお預けの庄イタ。里帰りを封印して目指した本州最北端の青森には、彼の地に生まれ、ねぶたを愛した棟方志功が板画に刻んだ情念のように熱く、生命力に溢れ、そして美味しい夏が待っていました。

【Photo】波をかき分ける千石船の波山車や中南米に見られるウルトラバロックのごとき過剰なまでの装飾を凝らした山車27台と神輿行列、神楽、虎舞などが次々と目抜き通りに繰り出し、一大スペクタクルを繰り広げる「八戸三社大祭」お還(かえ)り。高さ10mにもなる仕掛けが展開すると、沿道からはやんやの歓声click to enlarge

tachinebuta_2012.jpg 訪れたのは、極彩色の仕掛け人形山車と時代行列、厄祓いの一斉歯打ちが見どころの法霊神楽、ユーモラスな虎舞などが繰り出す重要無形民俗文化財「八戸三社大祭」、さらには「ヤッテマレ、ヤッテマレ」の掛け声に乗って、電柱よりはるかに大きい高さ23mの巨大な山車ねぶたが五所川原市街地を巡行する「立佞武多(たちねぷた)」。本州最北の青森各地は、8月の到来とともに熱く激しく燃え盛ります。

【Photo】平安の陰陽師、安倍晴明を題材にした今年の新作「陰陽 梵珠北斗星」よりは、東日本大震災発生前日に「立佞武多の館」で見て以来となった「義経伝説・龍馬渡海」の憤怒の形相や、迫力満点の昨年の新作「復興祈願・鹿嶋大明神と地震鯰」が個人的には好みclick to enlarge

michi_kaiihigashiyama.jpg この八戸と五所川原で開催される二つの夏祭りと、夏の味覚を求め、今月初旬青森を旅しました。今年5月、三陸復興国立公園に指定された種差海岸では、1940年に初めてそこを訪れた若き日の故・東山魁夷が描いたスケッチをもとに1950年に発表した名作「道」のモデルとなった海沿いの場所を訪ねました。波打ち際まで続く天然芝生地や鳴き砂で知られる大須賀浜など、恐らくは70年前とさほど変わらぬ風景がそこにはありました。戦後の復興期にあって人々の共感を呼んだ清々しい夏の早朝の道を描いた作品が生まれた地に、画家と同じ目線で立てたことは望外の幸せであり、心からの感動を覚えたのでした。

【Photo】大須賀浜沿いに延びる道を北へ進むと、見覚えのある風景が眼前に現れる。戦後の日本画壇で一躍注目を浴びる契機となった東山魁夷の出世作「道」の記念標柱が道沿いに立つ。この場所を訪れた新進気鋭の若き画家は、放牧される馬や地平線正面にある鮫角灯台などを省略し、潤いある一筋の道だけを描こうと今も残る大平牧場に泊まりがけで完成させたという。9月1日(日)まで青森県立美術館で開催中の三陸復興国立公園指定記念「種差 よみがえれ浜の記憶」でこの名作と出逢える

 昼食は予約していた八戸のイタリアン「Casa del Cibo カーサ・デル・チーボ」へ。これまで訪れた青森イタリアンは、それぞれに地域性や個性があっていずれもハイレベル。食材の宝庫・東北では最も粒が揃っていると庄イタは思っています。今回お邪魔したこちらの店のオーナーである池見シェフは、惜しまれつつ3年前の12月末をもって閉店した名店「エノテカ・ピンキオーリ銀座店」にも籍を置いたと聞けば、いやが上にも期待が高まるというもの。昼に伺った今回は初訪店ということで、3つのランチコースの中でプリモとセコンドが選べるプリフィックスのBコース(2,800円)をお願いしました。

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【Photo】下北産天然ホタテ、グリーンオリーブとズッキーニのタルターラ、ボッタルガ・ムジーネがけ(左) 八戸産エゾバフンウニとフレッシュトマトの冷製スパゲッティーニ(右)

 5つの選択肢から選べるアンティパスト。「下北産天然ホタテ、グリーンオリーブとズッキーニのタルターラ、ボッタルガ・ムジーネがけ」(+300円)は、半生に仕立てた鮮度抜群の下北半島産天然ホタテの甘味と、クリーミーなペースト状になった夏野菜が見事に調和した一皿。ボラのカラスミが風味に幅を生み、抑制の利いたピンクペッパーが香りの変化を生みます。同行した家族の注文品「活真ダコの厚切り冷しゃぶとテリーナ ドライトマトソース」と「ピオトジーニ社製パルマハム、ルーコラ・セルバティコ、パルミジャーノ・レッジャーノのピアディーナ」ら3品ではピカ一。

casa_cibo5.jpg【Photo】和牛頬肉のグーラッシュ(トマト・パプリカの煮込み)トレンティーノ=アルト・アディジェ風、カネデルリとポレンタ添え

 プリモは夏の人気定番メニューだという「八戸産エゾバフンウニとフレッシュトマトの冷製スパゲッティーニ」(+300円)。八戸周辺の潮汁料理「いちご煮」でも使われる濃厚な味が特徴のエゾバフンウニでも、ロシア産ではなく東北以北の寒流域で育った国内産は高級品です。鮮度の良い地物の生ウニとフレッシュトマトクリームを、細めのスパゲッティーニと和えたスペチャリテ。ひんやり・ツルツル・シコシコの食感はクセになりそう。盛りがお上品なので、すぐ食べ終えてしまうことが玉にキズ(笑)。

 セコンドは「和牛頬肉のグーラッシュ(トマト・パプリカ煮込み)トレンティーノ=アルト・アディジェ風、カネデルリとポレンタ添え」。これぞアルト・アディジェ料理!!と唸らせる深みのある牛肉にハンガリー風のパプリカとトマトの旨味が加わったホッとする優しい味付け。前回アップしたサン・ミケーレ・アッピアーノ講習試飲会で登場したサンクト・ヴァレンティン・カベルネ・ソーヴィニョンと完璧な相性を見せるでしょう。

 付け合せは北イタリアではポピュラーなポレンタとカネデルリ。南ドイツ・バイエルン地方やオーストリアの「Knödelクヌーデル」は、牛レバーのすり身を使う肉団子ですが、イタリア北西部ではパン生地を丸めたニョッキのような「Canederliカネデルリ」と変化します。味付けが重くなりがちなドイツやオーストリアの煮込み料理とは違い、軽やかでもコクのある絶妙のバランスは、味にうるさいイタリアならでは。こうして庄イタ流"また行きたい店リスト"イタリアンカテゴリーで、青森では4番目に新規登録を果たしたカーサ・デル・チーボを後にしました。

1er_renshuki.jpg 八戸から移動した三沢では、青森県立三沢航空科学館を見学しました。そこで2年前に公開された映画「連合艦隊司令長官山本五十六」で実際に使われた零式艦上戦闘機二十二型復元機と共に展示されていたのが、昨年9月、十和田湖の湖底から69年ぶりに引き揚げられた旧日本陸軍「一式双発高等練習機」。能代から八戸までの訓練飛行中、エンジントラブルで十和田湖に不時着したという機体です。乗員4名のうち3名が犠牲となったという色褪せた銀色の機体には、くっきりと日の丸が。

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 軍属230万人・一般市民80万人が尊い命を失った太平洋戦争の終結から68年。今年も8月が巡ってきました。日本全体で8割を占める私たち戦争を知らない世代は、平和な世の中がさも当たり前であるかのように思っています。時の経過による腐食が進みながらも原型を留めた機体は、それが多くの犠牲の上にあるのだという史実を思い起こさせてくれました。

 石窯焼本格ナポリピッツァの店「ピッツェリア・マッシモ」訪問も、必須のミッションです。店が入居する複合施設「スカイプラザミサワ」は、三沢駐留の米軍基地正面ゲート正前にあります。軍払い下げのミリタリーグッズやアメリカンサイズな米国製品などを扱う店が入居する同施設1Fにあるピッツェリア・マッシモは、多くの客で賑わっていました。テーブル席は一杯とのことで通されたカウンター席と背中合わせのテーブルにはネイティブ・アメリカン男女4人連れ。これも基地の町ならではでしょう。

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 赤のタイルモザイクで装飾された石窯は、ナポリの石窯工房Stefano Ferrara ステファーノ・フェッラーラにオーダーメードしたもの。気取らないナポリの下町にありそうな雰囲気の中、庄イタが注文したのは「マリナーラ」(600円)。ナポリピッツァの生命である生地の味を知るには、ナポリ伝統のピッツァであるマリナーラが一番。プロの料理人からの信頼が厚い六戸町にある「大西ハーブ園」の野性味溢れる香り高い「ルッコラ・セルバティコのインサラータ」(450円)も追加です。連れの家人は手堅く「マルゲリータ」(650円)を、肉食系の娘は、「ラニチキン」(半身・700円)と「グリーンサラダ」(280円)を所望。飲み物はジンジャエールで決まりです。

 massimo_rani.jpg massimo_margherita.jpg 

 炭火焼ラニチキンは、鶏一羽の半身ゆえ、娘1人では持て余す結構なボリュームなのでした。ケージ飼いのブロイラーのごとき体型で山盛りのラニチキン(一羽・1300円)にコーラ片手にかぶりつく共喰いさながらのネイティブの姿にゲンナリしながら、「ええい、ままよ!!」とアメリカンサイズの肉塊を手づかみで助太刀喰いし完食。ハワイ・ホノルル生まれの屋台料理「フリフリチキン(別名:バーベキューチキン)」の味を再現したスパイシーでジューシーな照り焼きチキンは初体験でしたが、ホノルル出身のスリムなオバマ大統領もお好きなのでしょうか?

 翌朝、日本初の近代洋式牧場を三沢の荒野に切り開いた旧会津藩士、廣澤安任(ひろさわやすとう)の功績を軸に斗南藩開墾の歴史を紹介する「斗南藩記念観光村」内の先人記念館で会津の歴史に触れ、八甲田を越えて青森市に移動しました。2泊3日の行程のうち、八戸・三沢の旧南部藩エリアに関するレポートはここまで。次回あるもん探しの旅は津軽編へと続きます。

To be continued ...

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イタリア料理 Casa del Cibo カーサ・デル・チーボ
  住:青森県八戸市湊高台1-19-6
  Phone:0178-20-9646
  営: 11:30-13:30(L.O.) 18:00-20:30(L.O.)
     日曜・毎月第2月曜定休
  URL: http://www.casa-del-cibo.com/index.html

石窯薪焼き本格ナポリピッツァ Pizzeria Massimo ピッツェリア・マッシモ
  住:青森県三沢市中央町2-8-34 スカイプラザミサワ 1F
  Phone:0176-51-7270
  営:月~土/11:00-21:00(14:00-16:00はピッツァお休みのカフェタイム)
     日・祝/11:00-20:00(15:00-16:00はピッツァお休みのカフェタイム)
     火曜定休
  URL: http://beresford.co.jp/pizzeriamassimo/shopinfo.html
      (上記URLに記載のビル名「MGプラザ」は旧名称)


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2013/08/10

ビアンキスタ、面目躍如。

サン・ミケーレ・アッピアーノ醸造責任者
ハンス・テルツァー氏解説による試飲会@仙台

 時間が若干遡りますが、6月上旬、イタリア屈指の白ワインを生産する協同組合組織「San Michele Appianoサン・ミケーレ・アッピアーノ(独語表記St.Michael-Eppan)」で醸造責任者を務めるハンス・テルツァー氏が、輸入元「モンテ物産(株)」の招きで来日しました。テルツァー氏は、権威あるワイン評価本のひとつ「ガンベロ・ロッソ」が1997年度最優秀エノロゴ(醸造家)10名の1人に選んだ人物。サン・ミケーレ・アッピアーノも2000年に同誌によって最優秀カンティーナ(醸造所)に選出されています。

hans_terzer.jpg【Photo】参加者を前にサン・ミケーレ・アッピアーノのワイン造りを語るハンス・テルツァー氏

 とりわけ世評の高い「Sanct Valentinサンクト・ヴァレンティン」シリーズのピノ・グリージョやソーヴィニヨン・ブランといった数々の傑作ヴィーノ・ビアンコ(白ワイン)を生み出すテルツァー氏は「Bianchista ビアンキスタ」の異名を持ちます。ワイン造りにおける氏のモットーは"La qualità non conosce compromessi(=品質のためには妥協しない)"。土壌や畑の向きに適したブドウ栽培の戸別指導も行う屈指のビアンキスタ自身の解説による試飲会は千載一遇。プラハをイメージした中欧の薫り漂う「ホテルモントレー仙台」での業務店向け試飲会を主催したモンテ物産仙台支店の小嶋啓介支店長にお誘い頂き、勇んで参加しました。

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 アルプスを挟んでオーストリアと国境を接する特別自治州トレンティーノ=アルト・アディジェが、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州と並ぶイタリアきっての優れた白ワイン産地であることを、イタリアワインラヴァーであれば知らぬ人はいないでしょう。サンジョヴェーゼとネッビオーロを双璧とする赤ワインは良く知られるイタリアですが、およそ20種のブドウ品種が栽培されるこの地では、赤と白の生産比率は1対2と白ワインが主力。

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 ライチ・ピーチ・ローズ・キンモクセイ・蜂蜜などの特徴的な芳香を備えた「ゲヴェルツトラミネール」は、作付面積が広いフランス・アルザス原産と思われがち。なれど「トラミネール・アロマティコ」の品種名で呼ばれ、素晴らしいヴィーノ・ビアンコを生むれっきとしたアルト・アディジェ原産のブドウです。ご存知でしたか?

【Photo】オーストリアと国境を接するアルト・アディジェでは、耳に届く言葉は多くがドイツ語。一部東部地域で話されるラディン語を例外として、この特別自治州の公用語はイタリア語とドイツ語。上地図クリックで拡大 対して州都Trentoトレント(人口11.5万)を擁する南部トレント自治県は、伝統的にイタリア語文化圏に属する。ブドウ畑の間に延びる道沿いに立つ標識は、ドイツ語のWeinstraßeが上、strada del vinoというイタリア語は下に併記される(下写真)

weinstrase.jpg 州北部のボルツァーノ自治県は、第一次世界大戦の終結までオーストリア・ハンガリー帝国に帰属していたため、イタリア語は通じるものの、住民の2/3はドイツ語を日常的に話す土地柄。県都Bolzanoボルツァーノ(人口10万・独語名:Bozenボーツェン)市民の表情からもラテン系とは異なるオーストリアの雰囲気を感じます。

 ドイツ語でSüdtirol、イタリア語ではAlto Adigeと呼ばれるこの地方。イタリアらしからぬ壁絵で装飾された建物や、白壁と木組みのドイツ風の家もちらほら。イタリアでは例外的に路上にゴミが見当たらず、街中の落書きも比較的少なめ。カフェのメニューにはザッハトルテ。仮に目隠しをされて連れて来られたなら、ドイツ人ほどはいかつくない道行く人々が交わす言葉から、多くの人がそこをオーストリアと勘違いするかも。

bolzano_platz.jpg【Photo】ボルツァーノ市庁舎前広場。絵描きや染色屋などの姿を描いた壁絵や南ドイツ風の装飾がある建物が軒を連ねる

 国内最大規模のクリスマス市が、11月下旬から駅にほど近いPiazza Walther(ヴァルター広場。独語名:Waltherplatz)で開催されます。広場の中心には12世紀末に活躍したドイツの詩人ヴァルテル・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ像があります。ムッソリーニ率いるファシスト党政権下には町外れに追いやられる憂き目を見たこのネオロマネスク様式の台座に立つ石像だけでなく、広場の名前にも歴史の変遷が刻まれています。

bolzanoDuomo.jpg【Photo】ヴァルター広場に立つヴァルテル・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ像。屋根のダイヤ柄の文様にウイーンのシュテファン寺院との共通点を見るゴシック様式のドゥオーモ。高さ65mの尖塔はボルツァーノのランドマーク

 1808年に広場の造営を命じた初代バイエルン王マクシミリアンは自身の名を冠し「マクシミリアン・プラッツ」としますが、オーストリア帝国ヨハン大公にちなんだヨハネス・プラッツに変更されます。20世紀初頭に現在と同じヴァルテル・フォン・デア・フォーゲルヴァイデ・プラッツと変わるも、イタリア併合後にヴィットーリオ・エマヌエーレ3世広場に変わり、再び現在の偉大な詩人の名に落ち着きます。こうした紆余曲折にも、この街が歩んだ複雑な歴史が見て取れます。

 周囲を山に囲まれた海抜260mの盆地に町が開けたボルツァーノは、年間300日以上は乾燥した好天に恵まれます。3000m級の岩山が連なるドロミテアルプスが、北からの冷気の侵入を遮るため、真夏の日盛りはイタリアで最も暑いといわれる盆地のフィレンツェと双璧をなす酷暑に見舞われることも。対して夜間はドロミテ山塊から吹き下ろす冷気によって生じる寒暖差で、ブドウに理想的なアロマが生じるのです。

Alpe di Siusi.jpg【Photo】欧州最大の牧草地が標高1700m~2200mの高地に息をのむような大パノラマを描いてみせる「Alpe di Siusiアルペ・ディ・シウジ」の絶景。ボルツァーノからオーストリア国境のブレンナー峠を結ぶ独語の「Autobahnアウトバーン」と伊語「Autostradaアウトストラーダ」が併記される高速A22とケーブルカーを使えば余裕で日帰り可能。緑のじゅうたんの彼方は標高3181mの「Sassolungoサッソ・ルンゴ」と右手に「Sassopiattoサッソ・ピアット」(2955m)

 州全体の85%が急峻な岩肌の山岳や森林・牧草地で、海抜200m~1000mのブドウ栽培に適した土地には限りがあります。そのためブドウ栽培農家1軒あたりの耕作面積は大きくありません。ゆえにアルト・アディジェでは多額の投資が必要となる自前の醸造設備を生産者自身が持つことなく、伝統的に組合組織が発達しました。

Cantina S. Michele Appiano.jpg【Photo】ボルツァーノ市街からAppiano sulla Strada del Vino(=アッピアーノ・ワイン街道)の別名で呼ばれるSS42(国道42号線)を南西方向に進み、アディジェ川を越えてAppiano-Eppan地区へ。独語で醸造協同組合を意味する「Kellerei Genossenschaft(ケラーライ・ゲノッセンシャフト)St.Michael」と壁面に浮彫文字があるサン・ミケーレ・アッピアーノ。イタリア語の名を頼りに醸造所を探しても、通り過ぎてしまうかもしれない

 ボルツァーノ周辺のブドウ生産農家350軒が組合員として加盟する1907年設立のサン・ミケーレ・アッピアーノのほか、歴史あるゲヴェルツトラミネールの原産地、Termenoテルメーノ(独語名:Traminトラミン)で1898年に創業し、現在は290の生産者がいる組合組織「Cantina Termenoカンティーナ・テルメーノ(独語名:Kellerei Traminケラーライ・トラミン)」、200のブドウ農家が加盟する1908年創業の「Cantina Bolzanoカンティーナ・ボルツァーノ(独語名Kellerei-Bozenケラーライ・ボーゼン)」、など、州全体で生産されるワインは75%が協同組合によるものです。

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【Photo】講習会でのフリー試飲コーナーに並んだサンクト・ヴァレンティン・シリーズより。(左から順に)「ゲヴェルツトラミネール2011」、「ピノ・ビアンコ2009」、18℃にキープしたステンレスタンクでの14~21日間の発酵によって澱となった酵母を除去せず、そのままタンクで6~8ヵ月静置するシュール・リー熟成を行う「ソーヴィニヨン・ブラン2011」。素晴らしい天候に恵まれたと醸造家が太鼓判を押した最新2012年ヴィンテージから、総量の12%を大きさの異なる大小のオーク樽熟成を採用。とはいえ、カリフォルニアのようなあざとい樽香は感じず、ラベルデザインの変更とともに、これまでの繊細なクリーンさに複雑味が加わった印象の「ソーヴィニヨン・ブラン2012」

 全生産量の7割が白ワインというサン・ミケーレ・アッピアーノでは、古代ローマ時代まで遡るブドウ栽培の歴史を有する南チロル原産の赤品種「スキアーヴァ」が創業当時の主力でした。これはアルプス以北の冷涼な旧オーストリア領内では、赤ワイン用ブドウの栽培適地がなかったため。オーストリア・ハンガリー帝国の崩壊に伴うイタリアへ編入による世相の混乱で、第一次大戦前の4割までに激減したこの地のブドウ栽培が、徐々に持ち直すのは'50年代に入ってから。オーストリアやスイスなど近隣国向けにバルク売りされていたスキアーヴァに代表される赤ワイン用品種から白ワイン用ブドウへの植え替えが進んだ"80年代に、量から質への大転換がなされたといえます。

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【Photo】講習会試飲アイテムより。醸造所の名にちなんだSt.Michael(大天使聖ミカエル)をあしらったエチケッタにデザインを一新、定番商品化した「ラーン・ソーヴィニヨン2012」は、海抜500m近辺の冷涼な環境を好むこの品種の特徴である青草に加え、完熟によるハチミツやリンゴの風味。リリース後3~5年の熟成が可能(左)。バリック樽だけで樽熟するサンクト・ヴァレンティンとは異なり、18ヵ月の熟成期間は同じながら、樹齢の若いブドウと大樽も70%併用する「ピノ・ネーロ・リゼルヴァ2009」。ポルチーニ茸・生マッシュルームやベリー系のニュアンスも。北イタリアのピノ・ノワールらしい目の込んだベルベットのようなエレガントさが低めの適温でサーヴされたことで際立った。「6~7年の熟成で更に味わいが向上するだろう」とはテルツァー氏の弁(右)

 ボルツァーノのブドウ栽培農家に生まれ、農学校で醸造を学んだテルツァー氏がサン・ミケーレ・アッピアーノで働き始めたのが1977年のこと。350の組合員は、2~3haの畑を所有する専業農家から、わずか0.2ha程度の畑でブドウ栽培を行う兼業農家まで、その営農スタイルはさまざま。総面積が380haに及ぶ組合員の畑で収穫されたブドウのなかでも、より品質が高いブドウを高値で買い取り、組合員の意識向上につなげています。収穫時期の異なるブドウを標高や土壌ごと適地で栽培することで労力の分散をはかり、成熟を見計らいながら収穫がなされます。年産2万ヘクトリットルに上る安定感のある高品質なワインが、イタリア国内のみならず北米や日本などへも輸出されるようになったのは、低温輸送が確立した1990年以降。

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【Photo】ファーストヴィンテージの1995年がまだ熟成途上にあるように、卓越した熟成能力を備えた「サンクト・ヴァレンティン・ピノ・ネーロ2009」。ワイン単体でメディテーション・ワインとしても楽しめる複雑味のある優美なフルボディ。この出来でブルゴーニュ産のピノ・ノワールならば、倍付けの価格となるであろう参考上代4928円はご立派(左)。完熟メロン・洋梨・アップルマンゴーなどのフルーツ系とバタートーストの香り。2年目・3年目のオーク樽と各1/3の割合で使用する新樽由来のバニラ香が嫌みなく溶け込む。素晴らしい資質をグラスの中で垣間見せるのに時間を要するため、"猫の足"と形容される「サンクト・ヴァレンティン・ピノ・グリージオ2010」は、10年以上の熟成が可能(右)

 古代ギリシャ人が「Enotria Tellusエノトリア・テルス」(=ワインの大地)と賞賛したブドウ栽培に適したイタリア。その最北部ながら、豊富な日照のもとでゲルマンの勤勉さと緻密さが出逢うトレンティーノ=アルト・アディジェは、真の理想郷かもしれません。自社ブランドではベーシックラインにあたる青いエチケッタの「クラシック」は年産9,120ヘクトリットル。千円台のお手頃価格で入手可能です。1986年に登場し、サン・ミケーレ・アッピアーノの名声を不動のものとした「サンクト・ヴァレンティン」は年産3,040ヘクトリットル。国内実勢価格が三千円台から五千円ほど。1994年がファーストヴィンテージで、二千円台から三千円と両者の中間にあたる年産3,840ヘクトリットルの「セレクション」が新たに取り扱いアイテムとして加わりました。そのお披露目も兼ねたモンテ物産主催の試飲会には、東北6県すべてから料飲関係者が集結しました。

st.michael-appan_deg.jpg テルツァー氏解説のもとで試飲したアイテムは以下の赤3本白4本の合計7種。
・ メロール・シャルドネ 2012
・ ラーン・ソーヴィニョン 2012
・ ピノ・ネーロ・リゼルヴァ 2009
  (以上:セレクション・シリーズ)
・ サンクト・ヴァレンティン・ソーヴィニョン 2012
・ サンクト・ヴァレンティン・ピノ・グリージョ 2010
・ サンクト・ヴァレンティン・ピノ・ネーロ 2009
・ サンクト・ヴァレンティン・カベルネ・ソーヴィニョン 2006
  (以上:サンクト・ヴァレンティン・シリーズ)

merol_chardonnay.jpg【Photo】初お披露目となった「メロール・シャルドネ2012」。ブドウ畑全体のおよそ7%にあたる10アールの区画「Merolメロール」は海抜420mにあり、土壌は氷河由来の土砂堆積層。380haに及ぶ全区画の中でも暖かい場所ゆえ、完熟には暑さが必要なシャルドネを植えている。こうしたスケールメリットを生かした適地適作も高品質の一要因

 この他サンクト・ヴァレンティン・ゲヴェルツトラミネールなど、モンテ物産取り扱いのサン・ミケーレ・アッピアーノのラインナップほぼ全てが取り揃えられ、思い思いに試飲できました。メロール・シャルドネ2012とラーン・ソーヴィンヨン2012という初お披露目のセレクションシリーズの品質の高さを確認したことは勿論、欧州でも最高のソーヴィニョン・ブランと目されるサンクト・ヴァレンティン・ソーヴィニョンの醸造法を切り替えた2ヴィンテージを比較できたのはとりわけ幸運でした。会場で試飲し尽くしたいずれ劣らぬ試飲アイテムの中で、最も琴線に触れたのが「サンクト・ヴァレンティン・ピノ・グリージョ2010」。美辞麗句を書き連ねても形容しきれない美酒の感想は上記キャプションを参照願います。

 南チロルの清涼な環境のもと、高低差や畑の向きなど変化に富んだ地形を生かして多品種が栽培されるトレンティーノ=アルト・アディジェ。より高みを目指して切磋琢磨する生産者との信頼関係の上に成り立つサン・ミケーレ・アッピアーノのワイン造り。畑とセラーで並外れた手腕を発揮する醸造家の言葉から、風土の個性を感じさせる壮麗なヴィーノが生まれる秘訣を見た思いで講習会場を後にしました。
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【Photo】直営ワインショップ外観
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San Michele Appiano
St.Michael-Eppan

 Via Circonvallazione 17-19
 I-39057 Appiano sulla Strada del Vino
  (BZ) ITALIA
 URL: http://www.stmichael.it/en/


◆醸造所見学:月~金/ 8:00-12:30  14:30-18:30  
         土/ 8:00-12:00 (5月~10月/14:00-17:00)
◆ワインショップ:月~金/ 9:00-13:00  14:30-19:00
          土/ 9:00-13:00 (5月~10月/15:00-18:00)

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