あるもの探しの旅

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2013/10/27

すわ119番

お役目ご免。かかしの悲哀@新潟

 所用で遠征した新潟でのこと。9月中旬から10月半ばにかけてが稲刈りシーズンとなるコシヒカリの本場は、ほとんど収穫を終えて新米が出回る時季を迎えていました。

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 大正4年、油田の採掘を試みたところ湧出したという目にも鮮やかなエメラルドグリーンの出で湯、新発田市郊外の月岡温泉のお湯(上画像)で浮世の憂さを洗い流した遠征初日。月岡の温泉街ではなく、敢えて新発田の街中に宿をとったのは、訪れてみたい店が市内にあったからです。

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 天井の梁に「明治12年5月18日建立」との旧加茂町の棟梁による銘が読み解ける古民家を移築改装した「Orga(オーガ)」で、イタリアンのエッセンスを取り入れたビストロ料理のお薦めコース(メイン魚料理5,000円・同肉料理6,000円)を予約していました。

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 前菜は「新発田産イチジクと切りたてハモン・セラーノ カッテージチーズ風味」、「鴨のテリーヌ・ピクルス添え」、「秋鮭のカナッペ」3種盛り(左写真)。2皿目はバジル風味のクスクスにトッピングされた軽く炙りにした鮮度の良い「北海道産イワシのカルパッチョ」(右写真)

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 バジルオイルが香り、火入れ感が絶妙な「サヤインゲンと北海道産ホタテ貝柱のグリエ・プロヴァンス風」(左写真)。パスタ料理は、濃厚なワタリガニの旨味がトマトソース&生クリームソースと重なる「新発田・松塚漁港産ワタリガニのトマトクリームスパゲッティ」(右写真)。皆さまが画像から想像される通りのお味(笑)。

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 電話予約の際、提示されたメインディッシュの選択肢から庄イタが所望した肉料理は、グリエした秋野菜とオーセンティックな「アイガモのロティ」(左写真)。魚をリクエストした相方は「佐渡産目鯛とホタテ貝柱のポワレ・クリームソース」(右写真)

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 庄イタ選択のデセールは「栗の焼きタルト ピスタチオとバニラアイス」(左写真)、相方は「リンゴのオーブン焼とバニラアイス」(右写真)

orga_y.kato.jpg【Photo】加藤シェフ(写真奥)が調理し、盛り付けはアシスタント。その連携が小気味良いOrgaの厨房(右写真)

 (庄イタは崇拝も信用もしていない)「ミシュランガイド東京・横浜・湘南2012」で二つ星を獲得している六本木ヒルズ「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」で2年間腕を磨くなどした加藤雄一郎オーナーシェフ。その料理は、フレンチ仕込みとはいえ、素材とソースの掛け合わせの妙より、地元を中心に調達した旬の素材感を活かした外連味(けれんみ)のないもので、飾らないビストロ料理といった印象を受けました。

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marui_niigata.jpg 再び月岡温泉で目覚めの朝風呂(上画像)を浴びてから新潟市に移動した翌日。昼食は古町の寿司・割烹「丸伊」で、北陸の高級魚ノドグロを炙り丼を、南蛮エビは握りで注文しました。

 新潟県が南蛮エビの名でブランド化を進める甘エビ。鮮度抜群の南蛮エビは、専用の南蛮エビから作ったというエビの香りがする魚醤との相性も良く極めて美味でしたが、軽くレモンを絞った藻塩が合うノドグロは、いかにも美味しそうに写っている炙り丼の品書きの写真ほどの大きさはなく、ゆえに脂の乗りも控えめ。

【Photo】花街の風情を残す新潟市古町東堀通りの一角にある寿司・割烹「丸伊」(上写真)で食した「ノドグロ炙り丼」(左画像・1,500円) 「南蛮エビ握り」 (右画像400円)

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 金沢・近江町市場で食した4年前の味が忘れられない絶品ノドグロ炙りのような大トロ白身の丼ものなら、この値付けでは無理でしょう。期待が大きかっただけに、ちょっと残念な思いをしましたが、致し方ありません

 その足で新潟伊勢丹で開催中のイタリア展を視察。それは前世イタリア人を納得させうる衣・食・住の粋が集う新宿伊勢丹のクオリティとスケールには及びませんが、充分満足のゆく物産展でした。かたや仙台では、地元の老舗百貨店が景気後退の煽りを受けてか、華のある海外物産催事を全く開催しなくなって4年が経過します。

Tsunenaga_Hasekura.jpg【Photo】幕府の許可のもと、交易を求める伊達政宗の親書を携えた支倉常長は、二つの海原を越えた2年後、マドリードで洗礼を受けた。バチカンで謁見したローマ法王パウルス5世お抱えの画家クロード・ドリュエが1615年に描いた支倉常長像(ローマ・ボルゲーゼ美術館蔵)。11月17日(日)まで仙台市博物館で開催中の「慶長遣欧使節出帆400年・ユネスコ世界記憶遺産登録記念特別展『伊達政宗の夢―慶長遣欧使節と南蛮文化』」に出品され、400年の時を経て郷里での初公開となった。目ぼしい交渉成果が得られぬまま、失意のうちに7年後帰国した常長を待ち受けていたのは、禁教令と鎖国で情勢が激変した故国だった。帰国後間もなく病没したとされ、消息すら定かではない悲運のサムライが欧州から持ち帰った資料類は、今年ユネスコ世界記憶遺産に認定された

 慶長18年(1613)、欧州との直接交易を志した伊達政宗は、家臣の支倉常長ら慶長遣欧使節をスペインとイタリアに派遣しました。九州のキリシタン大名が、領内への布教を目的に伊東マンショら4名の少年を遣わした天正遣欧使節に遅れること30年。スペインとイタリアが近世の幕開けに接触した数少ない日本人は、仙台からはるか太平洋と大西洋を帆船で渡り、両国に鮮烈な足跡を残した伊達藩のサムライでした。

delsole_yokoyama.jpg スペイン・イタリア両国との因縁浅からぬ仙台の史実からすれば、内向きで金太郎飴のような物産催事ばかりの現状が、どうしても物足りなく思えるのです。

 仙台では唯一のイタリアフェアを春に開催するのは仙台三越ですが、かつては秋にイタリアフェアを開催していた地元百貨店で、トップバリスタの妙技を披露しておいでだったのが、今回の新潟伊勢丹イタリア展会場にいらした六本木「Bar del Sole バール・デル・ソーレ」の横山千尋氏(右写真)でした。


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 日本にエスプレッソの魅力を紹介したバリスタの草分けである横山さんに数年ぶりでカプチーノ(601円)を注文すると、イタリア製エスプレッソマシン「cimbali チンバリ」で淹れたエスプレッソに注いだフォームドミルクに目の前で庄イタには細やかなリーフ柄(右写真)を、相方には似顔絵と思しきラテアート(左写真)をそれぞれ施して下さいました。

 カプチーノのオーダー前に済ませた夕飯は、世界チャンピオンが焼き上げたマルゲリータS.T.G.(981円)

 各国のナポリピッツァ職人が技能を競うため、ナポリで毎年開催される「Pizzafest ピッツァフェスト」2003年(平成15)第9回大会で、初めてイタリア人以外で世界チャンプの栄冠に輝いたのが、当時23歳でイスキア島「Da Gaetano ダ・ガエターノ」で修行中の身だった大西誠さん。現在は札幌から熊本まで多店舗展開する「サルヴァトーレ・クオモ」で、ピッツアィオーロとして活躍中です。

 会場には、師弟関係にあり今年9月にナポリで開催された「12゜Campionato mondiale del Pizzaiuolo 第12回ナポリピッツァ職人世界選手権」のメイン部門であるS.T.G.部門(マルゲリータ&マリナーラ)で、女性初の準優勝という快挙を果たした同僚の梅澤千絵ピッツアィオーラもおいででした。

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 本来は薪窯の対流熱で焼き上げるナポリピッツァ。消防法の制約を受ける百貨店内のイタリア展会場で、火を扱う薪窯は設置できません。そこで設えられたのが、薪窯と同じ摂氏500度を保つ高性能電気窯。これは「真のピッツァ・ナポレターナ」国際規約第3条第3項第1号に定めるピッツァ窯の規定を満たしてはいません。それでもハンデ戦を強いられた世界チャンプが、持てる技量を駆使したピッツァ・マルゲリータS.T.G.(右写真)は、熱膨張で盛り上がった生地の縁(コルニチョーネ)の食感に微細な差異を感じ、薪香が漂わない点を除けば、まごうことなき真正ピッツァ・ナポレターナ。さすが世界チャンプは弘法筆を選ばず!

 トスカーナ州サンジミニャーノで購入し、長年使用してきた丈夫なオリーブ材のカッティングボードの傷みがこのところ目立ってきたため、代替えを購入。そのほかグラニャーノ産パッケリやスパゲッティーニ、ワイン数本を調達。営業終了時刻まで会場に留まり、ついつい財布の紐が緩んだ翌朝。アメリカン・ドリームをワイナリー起業で実現したカリフォルニアの「ナパ・ヴァレー」を目指すべく、欧州系ブドウ品種を中心にワイン製造を行う「Cave d'Occi カーブドッチ」など、ワイナリー村の訪問が、この日最大の目的でした。

koshino_shizuku.jpg【Photo】JA越後中央が5年前から普及に努める統一ブランド「越の雫」の旬は8月末から11月半ば。生のまま皮を剥き、風味を増すイタドリの蜂蜜をトローリ。パルマやサン・ダニエレ産のしっとりとした生ハムとの相性は最高♪

 新潟市郊外、西蒲区下山にある「越後西川あぐりの里」で、この地域で栽培が盛んな日本イチジクの代表品種・桝井ドーフィンの特産品「越の雫」と、特別栽培コシヒカリ「寿々喜米」を玄米で購入。車に荷物を積み込んで直売所を出ると、あらかた稲刈りを終えた圃場の先に、葉が赤く色づいた遠目にも明らかな収穫期を迎えたブドウ畑が小さく見えてきました。そこだけが日本の田園風景とは異なる雰囲気を醸し出しています。

 遥かに望むブドウの丘から、田んぼの間をまっすぐ延びる道に視線を落とした時、事件は発生しました。歩道のない片側1車線の道沿いに人がうつ伏せに倒れているではありませんか。すわひき逃げ事件発生かっ?!

call_119.jpg 車を止めた脇道から50mほど離れた田んぼでは、1台のコンバインが稲刈りをしていました。人が倒れているのは、今しがた立ち寄った越後西川あぐりの里がマガモ栽培で育てたコシヒカリの刈り取りを終えた田んぼの畔(あぜ)。ここはコンバインの男性に助けを求めるか逡巡しました。鼓動の高まりを感じつつ、およそ10m前方の草むらに横たわる被害者のもとに駆け寄ろうと車を降りて近づいてゆきました。跳ね飛ばされて頭を強打したのか、頭部が大きく腫れ上がっているようにも見えます。

 「まずい。これは緊急を要する事態だっ!!

call_119-01.jpg 昨年夏、猛暑のもとで開催した「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町」〈2012.8拙稿「杜王銘菓『ごま蜜団子』 盛況御礼ッ! 閉幕迫るジョジョ展 in S市杜王町」参照〉実行委メンバーだった庄イタは、来場者が熱中症を発症する事態に備えて、市消防局員によるAED心肺蘇生法などの応急救命講習を受講していました。

 119番で救急搬送を要請しようと、スマホを手に被害者に歩み寄る庄イタは、被害者の様子がいささか妙ちくりんであることに気付きました。その間も目の前で横たわる男性は身動き一つしません。

 ぐったりした体を抱きかかえ、仰向けにして容態をつぶさに観察した庄イタは、疑念が確信へと変わり、こう直感しました。

call_119-03.jpg  「これは手の施しようがない」

 被害者はご覧の通り血の気が失せて顔面蒼白。救命措置を施すことなく現場を立ち去った庄イタは、こみあげてくる笑いをかみ殺しつつ、カーブドッチへと道を急いだのでした。

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2013/10/20

Bigでビックリ、西明寺栗。

日本一の栗とカタクリの里、仙北市西木町でクリ拾い

 JR秋田新幹線ならば、角館駅で角館と鷹ノ巣とを結ぶ秋田内陸縦断鉄道に乗り換え、2つ目の「西明寺駅」か次の「八津駅」で降車。秋田自動車道経由なら「大曲IC」下車、R105で25Km離れた角館経由で。秋田空港からは40kmほどR46を進み角館を経て。そこは実りの季節に訪れたい日本一大きいといわれる「西明寺栗」の里。観光栗園でクリ拾いが始まったという知らせを受け、秋のすがすがしい陽気のもと、仙北市角館と同西木町西明寺小山田地区を訪れました。

saimyoji_01.jpg【Photo】佐々木栗園の娘さんが手にした西明寺栗は、ズシリと重い40g超の4Lサイズ

 2005年(平成17)の広域合併で仙北市となった旧角館市・旧田沢湖町・旧西木村は、古来「北浦」と呼ばれており、藩制期は佐竹北家の領地でした。伝承では佐竹の殿様が飢饉に備えるため、平安初期に栽培が始まった丹波(京都)や養老(美濃)からクリを取り寄せ、岩手境となる秋田駒ケ岳の山麓で栽培を奨励したのが始まりとされます。

saimyoji_02M.jpg【Photo】西明寺栗の産地、大仙市西明寺八津・鎌足地区。秋田内陸線八津駅には、鷹ノ巣駅方面への上りが1日9本、角館駅方面への下りが1日8本停車。そこは雄物川水系の河川が創った肥沃な穀倉地である横手盆地(仙北平野)最北端に位置する

 夏の最高気温が37℃前後までに達する一方で、夜間は涼しい盆地性気候のこの地域。この寒暖差で風味を増し、かんじきを履いて根雪の上で剪定を行う冬場の耐寒性に優れているため、特別豪雪地帯に指定される雪深い条件下での省力栽培に適合し、北浦栗はクリ栽培に適した田沢湖西畔の西木や西明寺へと次第に広まってゆきました。

saimyoji_03.jpg【Photo】収穫期を迎えた西明寺栗。並外れたその大きさ・重さゆえ、食べ頃を迎えた完熟のクリは、ほとんどがパックリと開いたイガの開口部が次第に大きくなり、実が1個づつこぼれ落ちるようにして落下する

 西明寺周辺では、現在も一般家庭の庭先で栗の木が育っている光景が珍しくありません。300年前まで遡る長い栽培の歴史において、大きな実を付ける個体が生まれます。先人の努力により選抜と改良を重ねて優良種を固定し、今日に至っています。1998年(平成10)に収穫された天地47mm×左右57mm、重さ66gを最高記録とする日本一大きい西明寺栗として、その名を轟かせています。

 秋田県広報協会発行の県政広報誌「あきた」162号(1975年11月発行)によれば、クリの新芽に産卵し、枝を枯死させる害虫クリタマバチによる被害で、県全体の栽培面積が1/5の40ヘクタールまで激減したのが1950年代末から1960年代初頭にかけて。

saimyouji_04.jpg【Photo】昭和中期、日本各地でクリを枯らしたクリタマバチ禍を乗り越えた古木が、今年も大玉の実を結んだ佐々木栗園の栗林。200年の樹齢を物語る幹の太さが印象的(上写真) 現在の主力品種は、西明寺1号・2号。市場には滅多に流通しない3Lクラスが珍しくない(下写真)

saimyoji_1.jpg 害虫被害を免れた木が多かった旧西木村西明寺に県営試験農園が造られたのが1961年(昭和36)。耐性の強いクリから育成した苗木が移植され、現在の主力となる西明寺1号(善兵衛)、2号(茂左衛門)のほか、3号(寒月)、4号(駒錦)、5号(早生種)が選抜されます。これが県奨励品種として採用され、今日に至ります。

 自然交配の野性種シバグリを品種改良したニホングリは同品種間での受粉率が著しく低いため、栽培においては異なる品種同士を混植するのが普通。西明寺では奨励5品種を中心に収穫時期の分散を図りながら栽培が行われています。「あきた」162号による各品種特性は以下の通り。

◆西明寺1号=樹勢が極めて強く大樹となる。果実は20~30gの大粒が中心で、甘味があり、生乾食用・加工用ともに向く。熟期は10月中旬で収量が多い

◆西明寺2号=優れた樹勢、樹姿、収量、品質、食味は1号とほぼ同等だが、果実は大きさ3cm強・重さ25~35gとより大きめ

◆西明寺3号=昭和39年に選抜。樹勢・樹姿よく、大樹となる。果実は25~30g。堅密で甘味強く、煮崩れしないためシロップ詰めなど加工用に向く

◆西明寺4号=2号の予備品種として選抜。果実は35gと最も大きいが、風味がやや劣る

◆西明寺5号=早苗種として選抜。樹勢・樹姿は他と同じだが、果実は15gほどと比較的小ぶりで収量が少ない。熟期は9月上旬

 クリ拾いに伺ったのは、角館市街から6kmあまり北に位置する仙北市西木町小山田鎌足の「佐々木栗園」。  【Photo】観光栗園の受け付けは農家民宿「くりの木」(下写真)へ

saimyoji_05.jpg そこは出羽山地と奥羽山脈とに囲まれた肥沃で平坦な穀倉地帯である横手盆地の最北部。10代の頃から父親のクリ栽培を手伝ってきたというご主人の佐々木茂義さんは、先代から受け継いだ西明寺栗を栽培して47年のベテラン。奥様の弘子さんは農家民宿「くりの木」も営んでおいでです。

 ランチタイムと重なった角館からの道すがら、木元恵子さんと料理研究家の千恵子さん親子が営む「ガーデンカフェ&デリカ kimoto」に寄りました。R105沿いにあるこちらの「秋の味覚ランチ」(1,500円)には西明寺栗を使った栗ご飯がつくからです。ローズヒップが色付いたバラが絡まる窓の外には、稲刈りを終えた秋の田園風景が見渡せます。(下写真)

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 田沢湖・角館観光連盟から「秋田美人証明書」を公布された千恵子さんは留守でしたが(残念っ!)、「Tale Padre tale Figlio(=この親にしてこの子あり)」という諺を地でゆくお母さまの恵子さんがいらっしゃいました。この日は仙北市主催の観光誘客会議出席のため不在だった千恵子さんは、10月から始まった「秋田ディスティネーションキャンペーン」のPRで角館町観光協会が結成した「秋田美人100人隊」隊長として、今年5月に観光キャラバンで仙台にいらしていたのです。

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【Photo】西明寺栗の栗ご飯(左写真) 西明寺栗のシフォンケーキはテークアウトも可能

 おかずのワンプレートは、花好きの恵子さんが摘んだ秋の生花や、自家製のニンジン、イチゴの葉を彩りに盛り付けてあります。ほっこりと優しい和栗の甘味と、有機栽培の自家製ひとめぼれ新米で炊いた栗ご飯の美味しさが、クリ拾いへの期待感を否応なく高めます。西明寺栗のシフォンケーキも完食し、店を後にしました。

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【Photo】日本一大きな西明寺栗と日本一の群生地が見られるカタクリの里・西明寺のロードサインは、「くり」&「クリ」のオンパレード。佐々木栗園がある八津・鎌足地区へは「かたくり館」の看板が目印

 西木温泉ふれあいプラザ「クリオン」と市営交流施設「かたくりの館」と、"クリつながり"な施設前を通り過ぎ、秋田内陸線八津駅の踏切を渡り、バイカモが流れにたゆとう堀沿いの道を進むと、ほどなく農家民宿「くりの木」に到着しました。最寄駅の秋田内陸線「八津駅」からは徒歩10分前後の距離でしょう。

saimyoji_09.jpg【Photo】段々に整地された斜面に植林されたクリは、日照を考慮してか、木の間隔が広い。西明寺栗といえど、適切な間伐と剪定、施肥などの手入れが十分でないと、大きな実は結ばないという。日本一大きな栗の称号は、生産農家のたゆまぬ努力が生んだ結晶でもある

 娘の佐々木こう子さんから、2kgほどのクリが入る袋を渡され、裏手の栗林に案内されました。長靴や手袋の用意が必要かを事前に確認しましたが、全て不要とのこと。なぜなら西明寺栗は食べ頃を迎えると、イガがパックリと開いて巨大なクリの実が大きな音を立てて落ちてくるのでした。生い茂った下草は害虫クリシギゾウムシにとって格好の棲息場所となり、落ちたクリに卵を産み、幼虫が果実を食い荒らしてしまいます。そのため下草は丹念に刈り取られます。

katakuri_2012-5.jpg【Photo】八津・鎌足地区の栗林は、4月中・下旬にかけて国内最大規模で群生するユリ科の多年草「カタクリ」の花畑と化す。うつむき加減に淡い紫の花を咲かせるカタクリの花言葉は「初恋」。楚々として可憐な秋田美人のようなカタクリの自生面積は20haにも及び、ローマのコロッセオや東京ドームがすっぽり4個分という広さに相当する。西明寺全体で50haの栗林がある日本一大きなクリの里は、日本一のカタクリの里でもある 

 某老舗和菓子処が所有する栗園でクリ拾いをした数年前。クリを食い荒らして逃走したクマの巨大な置き土産(笑)にビビっただけに、「ここにクマは出没しますか?」と問うた庄イタ。すると「出ますよ~」と、こう子さんは事もなげ。「大きいクリを選んで下さいね~」と言い残して戻ってゆきました。

 そうして栗林に残された庄イタ。クマの足音に聞こえなくもないガサッ!という、枝から落ちたクリがたてる音にビビりながらも、日本一大きいクリの誘惑には勝てません。西明寺栗としては出荷されないLサイズに満たないものや、虫喰いを慎重に除きながらの宝探しが始まりました。

saimyoji_12.jpg【Photo】イガごと落ちるこうしたクリは珍しく、ほとんどは大きく開いたイガからバラバラにこぼれ落ちるのが西明寺栗の特徴。3Lサイズの西明寺栗と比較すると、ひときわ小さく見えるスズムシは、深まる秋に何を思う

 口を開けた特大サイズのイガごと落ちているクリも、一応あるにはありますが、ほとんどは落下した実だけが転がっています。なるほど、これならば長靴で踏みつけてイガを開き、トングでほじくり出す必要はありません。1964年(昭和39)に発足した「西明寺栗生産出荷組合」では、無農薬・有機栽培による丹念な土作り、剪定と整枝による日照の確保や適切な施肥などで味と大きさの追及に余念がありません。

saimyoji_13.jpg【Photo】クリ拾いの成果(右写真)

 クリには大きさと重さによって統一規格が存在します。組合員が西明寺栗として出荷するのは、大きさ33mm以上、重さ11g以上クラスのLサイズ以上としています。およそ30分ほどで大きさ40mm以上重さ21g~30g以上の3L~4Lサイズのクリを中心に1.9kgほどが収穫できました。

 観光栗園として開放している丘陵部の栗林は赤土土壌で、40年もすると樹勢が衰えるため、若木に植え替えをしなければなりません。私が案内された自宅裏手の栗林と桧木内川(ひのきないがわ)の中州に所有する栗畑には樹齢200年を越える現役の古木もあるのだといいます。

 3ヵ所都合5haの栗林で奨励5品種の西明寺栗を栽培するという佐々木さん。その作業場には、朝から昼前まで近所のクリ拾い名人に収穫を手伝ってもらったという西明寺栗が、大きなカゴ入りで4つ。収穫したクリの選別は、傾斜のついた目の大きさが異なる金網を振動させることで移動しながら行われます。こう子さんは分別作業を実演して下さいました。

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【Photo】午前中に収穫された西明寺栗が大きな赤いカゴ入りで4箱(右写真)。5haの栗林を所有する佐々木栗園では、収穫シーズンを迎えるとパートを雇わないと収穫が追いつかないという。収穫したクリの大きさ選別は、最上流のSから最後のLLまでブロックごとサイズが異なる網目に高低差をつけ、網目部分を電動で振動させることでクリが移動し、最後まで残るのが3Lという具合のブラボーな専用選果機で行う(左写真)

 収穫したクリは入園料200円+1kg当たり800円で持ち帰りができます。生栗は放置すると虫が発生するため、佐々木栗園では虫止め処理をしてから直接販売、発送にも対応します。生産者によって栽培する品種が異なるため、収穫の旬は異なります。自宅に持ち帰ったクリは虫止めしてあれば冷蔵室で1ヵ月程度置くか1~2日天日干しすると甘味が増します。

 佐々木栗園では、年によっては3週間、平年で2週間程度クリ拾い体験ができますが、伊豆大島に甚大な被害を与えた台風26号による強風のため、ほとんど落果してしまった今年は、今月17日で観光栗園を切り上げたそうです。開花期の6月末に天候がぐずついた今年は、ただでさえ収量が少ないうえ、収穫期に台風が来襲したため、わずか1週間での終了となった次第。自然相手の仕事には、人の力ではどうしようもない領域があるものです。

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 帰路、西明寺栗を用いた生ケーキや焼菓子を取り揃えた角館の洋菓子店「プチフレーズ」で、トッピングのマロンクリームと1個丸ごと甘露煮にした西明寺栗がスポンジ生地に隠れた「西明寺モンブラン」(右写真/368円)と、マロンペーストに包まれた中身の甘露煮のサイズによって400円~700円と価格に幅があるパイ生地で包んだ「西明寺栗くん」(左写真)も買い求めました。和菓子がお好きな方なら、ペーストにした西明寺栗を練り込んだ「くら吉」の期間限定商品「西明寺栗生あんもろこし」という選択肢もあります。

 青森・三内丸山遺跡からも多数のクリが発見されたという事実から、日本で稲作が始まる以前、豊かな狩猟文化が花開いた縄文人の食を支えたことが分かっているクリ。西明寺栗は、圧力釜で茹で栗にしたり、定番の栗ご飯でも美味ですが、佐々木栗園でも全国発送に対応する渋皮煮や甘露煮のほか、栗きんとんといった加工品にも向きます。びっくりな大きさに歓声を上げながら、童心に帰ってクリ拾いに興じる秋の一日。ホント楽しいですよ。来シーズンはぜひ!
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農家民宿くりの木 (佐々木栗園)
住:秋田県仙北市西木町小山田字鎌足186
Phone:0187-47-3046 
※ 栗拾いは要予約 入園料200円 拾った栗は1キロ当たり800円で持ち帰り可
  今年度のクリ拾いは終了。直接販売は在庫が無くなり次第終了につき、要問合せ
  全国発送可 P:あり
※ 宿泊:1泊2食付き 6,000円 1泊素泊まり 4,000円/ 母屋に宿泊/冬期間暖房費別途
Facebookで最新情報をチェック:https://www.facebook.com/farm.kurinoki

ガーデンカフェ&デリカ kimoto
住:秋田県仙北市西木町西荒井字熊野田107-3
Phone:0187-47-2948
営: 9:00~19:00 (ランチ&カフェ 12:00~16:00)
定休:第2・第4水曜
P:あり
URL: http://www.e-kimoto.jp/ Blog:http://kimotosan.exblog.jp/

角館プチ・フレーズ
住:秋田県仙北市角館町大風呂2
Phone:0187-54-1997
営: 9:00~20:00 年中無休
P:7台分
URL: http://www.kakunodate-puchi.com/


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2013/10/06

ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ

winevinvino_frier.jpgこれは楽しいゾッ!!
ワイン・フードとも
豊富な選択肢で内容充実。
ワインの祭典@福島市


 澄み切った秋空から、まばゆい日差しが降り注いだ9月29日(日)、歩行者天国として開放された福島駅前通り商店街で「ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ2013」が開催されました。会場となったJR福島駅東口の目抜き通りには、イタリアン・フレンチ・スペイン・トルコなど、多彩な21の飲食ブースが勢揃い。グラス売りで国内外のワイン・シェリー・シードル・グラッパなどのほか、各ショップのセレクトによるフード類も用意され、延べ1万人以上の来場者で賑わいを見せました。

 震災で疲弊した福島の活性化と福島のワイン文化・食文化の発展を目的として、2011年9月に8店舗が参加してスタートしたこの催し。春と秋に開催された昨年までは、復興庁福島復興局が現在入居する福島駅東口の複合ビル「AXC(アックス)」が会場でした。4回目の開催を迎えた今年は、福島駅前通り商店街の設立50周年を記念事業として、同商店街振興組合が主催。前回の9店舗から一気に21店舗へとスケールアップした会場は、芳醇なワインの香りに包まれました。

winevin_01.jpg【Photo】ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ2013の会場となった福島駅前通り商店街。地元の老舗百貨店「中合(なかごう)(写真右手)も開催に向け全面協力、通りはいつもの週末の数倍の人出で終日賑わった

 仙台でも年に数回開催される複数のワインインポーターによる業務店向け合同試飲会は、あくまで商談が目的。そのため会場には必ず吐き出し用ポットが用意されます。ゆえに、味覚と嗅覚は若干なりとも麻痺してくるかもしれませんが、その気になれば百本単位でワインを試飲できます。

winevin_03.jpg【Photo】相双・阿武隈地域からの避難生活を福島市で送る農家のお母さんたちが運営する産直「かーちゃん ふるさと農園 わいわい」の野菜ピクルス。シャキシャキした歯応えと爽やかな酸味が素材を引き立てる。新鮮な野菜を加工したピクルスの相伴は、ボルドーブレンドによるイタリア・ヴェネト州の名品「カーポ・ディ・スタート・エティケッタネラ

 一方、ワイン ヴァンヴィーノ フクシマは、一般市民を対象にしており、純粋にワインを楽しむのが目的。プラ製のグラスを一個200円で購入すれば、1杯あたり60mℓ目安でグラス売りされるワインを購入できるシステム。その価格帯は100円~10,000円(⇒ ロマネ・サン・ヴィヴァン1998/ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)と幅広い選択肢が用意されました。

winevin_06.jpg 前回まではワイン愛好家に向けたチケット制の催しでしたが、福島市の玄関口にあたる駅前商店街が会場となった今回。日頃からワインに親しんでいる人だけではなく、日曜日の買い物に訪れた子ども連れやカップル、ベビーカーを押したママ友同士など、幅広い客層が参加し、グラス片手にたくさんの笑顔が溢れました。

winevin_7S.jpg【Photo】各ブースではワインに合わせるフード類も用意。自家製塩麹に漬け込んだアオスタ風蝦夷鹿のロースト、チリエ風鴨腿肉コンフィ、トリッパのフィレンツェ風煮込、ノルチア風熟成プロシュット、キアンティ風フォカッチャが一皿1500円で味わえる本格的なアンティパスティ・ミスティ(左写真)が長蛇の列を呼んだ「オステリア・デッレ・ジョイエ」(上写真)では、ワインに加えてかつてピエモンテ州ネイヴェにある蒸留所を訪れたこんなレアものグラッパも30mℓワンショット2,000~3,000円で提供

 こうした催しが福島で行われていることは、昨年から噂に聞いていましたが、参加するのは今回が初めて。午前10時40分に福島駅に到着し、すぐに庄イタが行動に移したのは、開店準備中の各店ブースを一巡することでした。事前にWebサイトでワインリストフードメニューがアップされてはいましたが、店の前に並ぶワインの銘柄を改めて確認し、すっきりめの白ワインで喉を潤してから、フルボディの赤ワインに至るまで、飲む順番をざっと組み立てるのです。また、そうすることで、メニューの文字面だけは読み取れない各ショップの持ち味や個性、いわば"こっちの水は甘いぞ""というオーラの強弱を感じることもできますから。

winevin_09.jpg【Photo】スローフード運動発祥の地でスローフード協会本部があるピエモンテ州ブラで1年おきの奇数年に開催される「Cheese」には、小規模な生産者が伝統的な製法で造るチーズが世界から一堂に会する。「Cheese2013」で買い付けしたチーズが呼び物となった「クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ」のブース(左写真)

 フード類に関する一番のお目当ては、9月20日~23日までイタリア・ピエモンテ州Braブラで開催されたチーズの祭典「Cheese2013」を訪れた福島市「クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ」の安齊朋大(ともひろ)シェフが現地で調達したチーズ類。300種以上のチーズが存在するイタリア国内は無論のこと、各国の伝統製法で作られた小規模な作り手による個性豊かなナチュラルチーズは、スローフード協会の眼鏡にかなったものばかり。開幕20分前にいち早く会場入りしたのは、日本では入手困難な希少性の高いチーズを食べ逃してなるものかという一心からでした。

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【Photo】クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ安齊朋大シェフ(右写真)に見繕ってもらった白ワイン用と赤ワイン用のチーズ(各1,000円)。手前から時計回りにサフラン風味の羊乳チーズ、ボッタルガ(からすみ)を練り込んだ羊乳チーズ、ヴィナッチャ(ブドウの搾りかす)と灰に漬けた「バラディン」、牛と羊の混入フレッシュでクリーミーな「ロビオラ・ボシナ」は白ワインと(左写真)。 胡椒入り「ぺコリーノ・ペペ」、コク深い「モリテルノ」、カカオ豆とラム酒の香り「カルブル」、ヴェネト州の銘酒アマローネに漬け込む「ウブリアーコ」は赤ワイン用

 前日イタリアから帰国し、ブラから持参したチーズを前に準備に余念がない安齊シェフに話しかけたところ、こちらを一瞥して「庄内系さんですよね」と笑顔で一言。私とはこの日初対面でしたが、安齊シェフはViaggio al Mondoの読者でいらしたのです。 いきなり素性が知れて面喰らいましたが、それはそれ。時間が許す限り、そして体力・気力が続く限り、ワインの祭典を満喫するつもりでした。

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【Photo】口開けの1杯目は「北の巨匠」と称される醸造家ジャンフランコ・ガッロがイタリア最北部フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州で手掛ける「Vie di Romans Chardonnay ヴィエ・ディ・ロマンス・シャルドネ2010」(800円)。美しい酸味を基軸にクリスタルのように透き通った豊かな果実味とボリュームを備え、長~い余韻を残す。直筆サイン入りの5リットル容量の巨大ボトル入りゆえ、猪苗代「クッチィーナ・インコントラ」平山真吾シェフ(左写真)が、カラフェからサーヴしたこの珠玉のワインは20年は熟成を続ける。マグナム以上の大きなボトルはワインの熟成がゆっくりと進み、長い時間を要して到達する高みも通常の750mℓフルボトルより、より高みへと至る。「フルボトル6.5本分の巨大なボトルを収穫後わずか3年で開けるのは勿体ないなぁ」と思いつつ、北の巨匠は期待に違わぬ美味しさで魅了した

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【Photo】2杯目@ラ・セルヴァティカ。世界遺産の塔の町サン・ジミニャーノ原産で、レオナルド・ダ・ヴィンチが愛飲した歴史あるこのブドウ品種を手掛ける「Panizziパニッツィ」は1989年に出来た比較的新しい造り手ながら品質は折り紙付き。「Vernaccia di San Gimignano Riserva ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ・リゼルヴァ2009」(1,000円)。12ヵ月間のバリック熟成をしながらも嫌みな樽香はなく、ナッツや柑橘系にエキゾチックな苦味が加わる。10年近い熟成も可能(左写真)。 3杯目@福島市「アルソーニ」。"イタリアワインの帝王"こと「GAJAガヤ」が、メルロやカベルネの聖地として脚光を浴びるトスカーナ州ボルゲリで1996年に取得した醸造所「Ca'Marcanda カ・マルカンダ」。2009年初ヴィンテージの白ワイン「Vistamare ヴィスタマーレ2009」(1,500円)。ティレニア海を遠望する畑で育つ白品種ヴェルメンティーノとヴィオニエの混醸。このファーストヴィンテージからしてその名に恥じぬ高次元で調和する絶妙のバランス。有無をも言わさぬさすがの旨さに脱帽(右写真)

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【Photo】4杯目から赤ワイン@クッチィーナ・インコントラ。東京から駆けつけたインポーターAltolivello アルトリヴェッロ伊東長敏社長にお願いしたトスカーナ州ピサ県で天才醸造家ルカ・ダットーマがエノロゴを務める「SanGervasioサンジェルヴァジオ」の「Rossoロッソ2006」(600円)。サンジョヴェーゼを主体にメルロとカベルネをブレンドしたミディアムボディのコストパフォーマンスが良いワイン。良年ならではの伸びやかで溌剌とした風味は、赤ワイン用に見繕っていただいたチーズにも好相性(左写真) 5杯目@ラ・セルヴァティカ。2011年から単独のDOCGとして認められ、ドルチェットが堂々の主役を張るピエモンテ州ドリアーニ。かつて安齊シェフが訪れた思い入れのある造り手だという「Quinto Chionettiクイント・キオネッティ」の「Dolcetto di Dogliani Briccolero ドルチェット・ディ・ドリアーニ・ブリッコレーロ2010」(800円)。醸造はステンレスタンクだけを使い、一切の工程で樽を用いない稀有な存在。ブドウ由来の若々しいベリー系の香りと豊かなタンニン。ボリューミーな味わい(右写真) 

 あらかじめ決めていたもう一つの要チェックポイントが、福島市「オステリア・デッレ・ジョイエ」オーナーシェフの梅田勝実さんが用意する北イタリアおよび中部イタリアの地方料理。梅田シェフとは2年前の11月、イタリアからいわゆる自然派と呼ばれる醸造元15社を招いて仙台市内5店舗で同時開催された「ヴィナイオッティマーナ2011」の2次会場でお会いしていました。梅田シェフは自然派ワインに傾倒しておいでのようで、11本全てがそちら系の濃いラインナップ。味にばらつきが多く、造りが多少とも個性的ゆえ、庄イタは積極的にアプローチしないこのジャンルですが、気になるワインが数本置いてありました。「前菜盛り合わせ」は赤ワインとの相性が良さそうだったので、序盤はチーズから攻めることにしました。

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【Photo】6杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。1980年の自家詰め開始よりウンブリア州モンテファルコでビオディナミ農法を実践する孤高の造り手が「Paolo Beaパオロ・ベア」。風味を凝縮させるための低収量と選別を徹底、自然酵母の使用、そして清澄濾過を行わずにボトリングされる「Montefalco Sagrantino モンテファルコ・サグランティーノ2003」(1,500円)は、プルーンのニュアンスを強く感じ、元来厳格なタンニンを備えたサグランティーノにしては意外なほど柔和な表情を湛える。25anniで有名なアルノルド・カプライとは方向性が異なるが、この品種の可能性を示す(左写真)。 7杯目@ヴィヴィフィカーレ(福島市)。ヴェネト州ヴェネツィア北方の造り手「Conte Loredan Gasparini コンテ・ロレダン・ガスパリーニ」のフラッグシップ「Capo di Stato Etichetta nera カーポ・ディ・スタート・エティケッタ・ネラ'97」(800円)。公式晩餐会で出されたこのワインに感銘を受けた元フランス大統領シャルル・ド・ゴールが、国家元首を意味する「Capo di Stato」と名付けた逸話が残る。カベルネ・ソーヴィニヨン+カベルネ・フラン+メルロ+マルヴェックというボルドーブレンドの深みと複雑味を感じる隠れた名品。しかもグレートヴィンテージ'97!!(右写真)

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【Photo】8杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。"No Barrique,No Berlusconi"という辛辣なエチケッタを残した伝説のバローロ生産者「Bartolo Mascarello バルトロ・マスカレッロ」。バローロ・ボーイズの活躍で脚光を浴びたクリュの概念やバリック樽を否定し、伝統的なセメントタンクでの発酵と大樽熟成による造りを生涯貫いた。娘マリア・テレーザが醸造所を引き継いだ今も、カンヌビ・ロッケなど4つのバローロ地区最良の区画に所有する畑で栽培するネッビオーロから単一のBaroloを造る。この2007年(1,500円)は前年に続く優良年で、厳格さは残しつつも抜栓後4時間を経て柔らかさもあり、素晴らしい資質を遺憾なく発揮(左写真) 9杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。締めくくりはトスカーナ州シエナ東方のカステルヌオーヴォ・ベラルデンガのChianti Colli Senesiキアンティ・コッリ・セネージ地区に位置し、ジョヴァンナとステファーノ夫妻による「Pacinaパーチナ」のデザートワイン「Vinsanto del Chianti ヴィンサント・デル・キアンティ2005」(600円/30mℓ)。消毒用ボルドー液以外を用いない農法で育てた白ブドウのマルヴァシアとトレッビアーノを収穫後に陰干し、寒暖差が激しい屋根裏部屋などで5年以上熟成させると、ブドウの純粋かつ官能的な甘味が抽出された琥珀色のエッセンスへと昇華、贅沢な余韻に浸れる(右写真) 

 時間が経つのを忘れ、気がつけば4時間30分あまり会場をウロウロしていた庄イタ。ヴィンサントをお願いしたオステリア・デッレ・ジョイエでは「たくさんご注文頂いて♪」と奥様からサン・ペルグリーノの炭酸水の差し入れも頂戴してしまいました。そろそろ中合の地階へ移動して家族への福島土産を購入しなくてはなりませんが、午前中にラ・セルヴァティカのブースに立ち寄った際、ワインリストに記載された「Etlivin.s.r.l秘蔵のイタリアワイン」(1,500円)なる存在が気になっていました。そこには日本でイタリアワインが現在ほどの地位をマーケットで築く以前の'85年、イタリア専業のインポーターとして創業した「Etlivinエトリヴァン」の佐々木玲子さんがおいでした。

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 佐々木さんは、秘蔵のイタリアワインこと木箱入りマグナムボトルの「Linsieme l'Italia del Vino decennale selezione Fattorieリンシエメ・リタリア・デル・ヴィーノ・デッチェナーレ・セレツィオーネ・ファットリ」(左写真)という長たらしい名前のヴィーノがいかなるものかを説明して下さいました。かの「Sassicaiaサッシカイア」を生んだ醸造家、故ジャコモ・タキスが、イタリア各州の優れた造り手のワインをブレンド、1999年に2,265本だけマグナムボトルに瓶詰めした超レア物なのだといいます。バックラベル(右写真)にはブレンド用にワインを提供した32のそうそうたる顔ぶれの生産者名が列記され、しかもイタリアではGrande Annata(=グレートヴィンテージ)として名高い1997年がズラリ。

 日本市場では流通せず、国内では存在しえない貴重なボトルが目の前にありました。ここを素通りしては一生の不覚。末代まで禍根を残すことになります。条件反射のように「一杯飲ませて下さい」と口走り、残り少なくなった千円札を2枚差し出す庄イタなのでした。バルベーラ+ネッビオーロ+モンテプルチアーノ+サンジョヴェーゼ+ネレッロマスカレーゼ+カンノナウ+その他モロモロという、通常ではありえない「ちゃんぽん」に等しい組み合わせが破綻をきたさずに綺麗に熟成を重ね、しっとりとした落ち着いた表情で魅せてくれたのは、さすが稀代の醸造家ジャコモ・タキスの手腕なのでしょう。

winevin_26.jpg【Photo】太陽が少し傾き始める16時を迎えてなお、多くの参加者で盛り上がりを見せる会場。ムルソーやニュイ・サン・ジョルジュなど、ブルゴーニュの醸造所から提供されたワインが出品されたオークションの売り上げは、福島復興のための基金に寄付される。後ろ髪を引かれる思いで会場を後にした

 恐らくは一期一会となるワインとの出逢いを最後に果たしたワイン ヴァンヴィーノ フクシマ。集客目標として掲げた3,000人を結果的に3倍以上も上回る成功を収めた今回の催しにあたり、尽力された皆さんに心より敬意を表します。次回開催の折に仕事が入らなければ、必ずや駆けつけることをお誓いします。I shall return.
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