あるもの探しの旅

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すわ119番

お役目ご免。かかしの悲哀@新潟

 所用で遠征した新潟でのこと。9月中旬から10月半ばにかけてが稲刈りシーズンとなるコシヒカリの本場は、ほとんど収穫を終えて新米が出回る時季を迎えていました。

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 大正4年、油田の採掘を試みたところ湧出したという目にも鮮やかなエメラルドグリーンの出で湯、新発田市郊外の月岡温泉のお湯(上画像)で浮世の憂さを洗い流した遠征初日。月岡の温泉街ではなく、敢えて新発田の街中に宿をとったのは、訪れてみたい店が市内にあったからです。

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 天井の梁に「明治12年5月18日建立」との旧加茂町の棟梁による銘が読み解ける古民家を移築改装した「Orga(オーガ)」で、イタリアンのエッセンスを取り入れたビストロ料理のお薦めコース(メイン魚料理5,000円・同肉料理6,000円)を予約していました。

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 前菜は「新発田産イチジクと切りたてハモン・セラーノ カッテージチーズ風味」、「鴨のテリーヌ・ピクルス添え」、「秋鮭のカナッペ」3種盛り(左写真)。2皿目はバジル風味のクスクスにトッピングされた軽く炙りにした鮮度の良い「北海道産イワシのカルパッチョ」(右写真)

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 バジルオイルが香り、火入れ感が絶妙な「サヤインゲンと北海道産ホタテ貝柱のグリエ・プロヴァンス風」(左写真)。パスタ料理は、濃厚なワタリガニの旨味がトマトソース&生クリームソースと重なる「新発田・松塚漁港産ワタリガニのトマトクリームスパゲッティ」(右写真)。皆さまが画像から想像される通りのお味(笑)。

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 電話予約の際、提示されたメインディッシュの選択肢から庄イタが所望した肉料理は、グリエした秋野菜とオーセンティックな「アイガモのロティ」(左写真)。魚をリクエストした相方は「佐渡産目鯛とホタテ貝柱のポワレ・クリームソース」(右写真)

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 庄イタ選択のデセールは「栗の焼きタルト ピスタチオとバニラアイス」(左写真)、相方は「リンゴのオーブン焼とバニラアイス」(右写真)

orga_y.kato.jpg【Photo】加藤シェフ(写真奥)が調理し、盛り付けはアシスタント。その連携が小気味良いOrgaの厨房(右写真)

 (庄イタは崇拝も信用もしていない)「ミシュランガイド東京・横浜・湘南2012」で二つ星を獲得している六本木ヒルズ「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」で2年間腕を磨くなどした加藤雄一郎オーナーシェフ。その料理は、フレンチ仕込みとはいえ、素材とソースの掛け合わせの妙より、地元を中心に調達した旬の素材感を活かした外連味(けれんみ)のないもので、飾らないビストロ料理といった印象を受けました。

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marui_niigata.jpg 再び月岡温泉で目覚めの朝風呂(上画像)を浴びてから新潟市に移動した翌日。昼食は古町の寿司・割烹「丸伊」で、北陸の高級魚ノドグロを炙り丼を、南蛮エビは握りで注文しました。

 新潟県が南蛮エビの名でブランド化を進める甘エビ。鮮度抜群の南蛮エビは、専用の南蛮エビから作ったというエビの香りがする魚醤との相性も良く極めて美味でしたが、軽くレモンを絞った藻塩が合うノドグロは、いかにも美味しそうに写っている炙り丼の品書きの写真ほどの大きさはなく、ゆえに脂の乗りも控えめ。

【Photo】花街の風情を残す新潟市古町東堀通りの一角にある寿司・割烹「丸伊」(上写真)で食した「ノドグロ炙り丼」(左画像・1,500円) 「南蛮エビ握り」 (右画像400円)

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 金沢・近江町市場で食した4年前の味が忘れられない絶品ノドグロ炙りのような大トロ白身の丼ものなら、この値付けでは無理でしょう。期待が大きかっただけに、ちょっと残念な思いをしましたが、致し方ありません

 その足で新潟伊勢丹で開催中のイタリア展を視察。それは前世イタリア人を納得させうる衣・食・住の粋が集う新宿伊勢丹のクオリティとスケールには及びませんが、充分満足のゆく物産展でした。かたや仙台では、地元の老舗百貨店が景気後退の煽りを受けてか、華のある海外物産催事を全く開催しなくなって4年が経過します。

Tsunenaga_Hasekura.jpg【Photo】幕府の許可のもと、交易を求める伊達政宗の親書を携えた支倉常長は、二つの海原を越えた2年後、マドリードで洗礼を受けた。バチカンで謁見したローマ法王パウルス5世お抱えの画家クロード・ドリュエが1615年に描いた支倉常長像(ローマ・ボルゲーゼ美術館蔵)。11月17日(日)まで仙台市博物館で開催中の「慶長遣欧使節出帆400年・ユネスコ世界記憶遺産登録記念特別展『伊達政宗の夢―慶長遣欧使節と南蛮文化』」に出品され、400年の時を経て郷里での初公開となった。目ぼしい交渉成果が得られぬまま、失意のうちに7年後帰国した常長を待ち受けていたのは、禁教令と鎖国で情勢が激変した故国だった。帰国後間もなく病没したとされ、消息すら定かではない悲運のサムライが欧州から持ち帰った資料類は、今年ユネスコ世界記憶遺産に認定された

 慶長18年(1613)、欧州との直接交易を志した伊達政宗は、家臣の支倉常長ら慶長遣欧使節をスペインとイタリアに派遣しました。九州のキリシタン大名が、領内への布教を目的に伊東マンショら4名の少年を遣わした天正遣欧使節に遅れること30年。スペインとイタリアが近世の幕開けに接触した数少ない日本人は、仙台からはるか太平洋と大西洋を帆船で渡り、両国に鮮烈な足跡を残した伊達藩のサムライでした。

delsole_yokoyama.jpg スペイン・イタリア両国との因縁浅からぬ仙台の史実からすれば、内向きで金太郎飴のような物産催事ばかりの現状が、どうしても物足りなく思えるのです。

 仙台では唯一のイタリアフェアを春に開催するのは仙台三越ですが、かつては秋にイタリアフェアを開催していた地元百貨店で、トップバリスタの妙技を披露しておいでだったのが、今回の新潟伊勢丹イタリア展会場にいらした六本木「Bar del Sole バール・デル・ソーレ」の横山千尋氏(右写真)でした。


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 日本にエスプレッソの魅力を紹介したバリスタの草分けである横山さんに数年ぶりでカプチーノ(601円)を注文すると、イタリア製エスプレッソマシン「cimbali チンバリ」で淹れたエスプレッソに注いだフォームドミルクに目の前で庄イタには細やかなリーフ柄(右写真)を、相方には似顔絵と思しきラテアート(左写真)をそれぞれ施して下さいました。

 カプチーノのオーダー前に済ませた夕飯は、世界チャンピオンが焼き上げたマルゲリータS.T.G.(981円)

 各国のナポリピッツァ職人が技能を競うため、ナポリで毎年開催される「Pizzafest ピッツァフェスト」2003年(平成15)第9回大会で、初めてイタリア人以外で世界チャンプの栄冠に輝いたのが、当時23歳でイスキア島「Da Gaetano ダ・ガエターノ」で修行中の身だった大西誠さん。現在は札幌から熊本まで多店舗展開する「サルヴァトーレ・クオモ」で、ピッツアィオーロとして活躍中です。

 会場には、師弟関係にあり今年9月にナポリで開催された「12゜Campionato mondiale del Pizzaiuolo 第12回ナポリピッツァ職人世界選手権」のメイン部門であるS.T.G.部門(マルゲリータ&マリナーラ)で、女性初の準優勝という快挙を果たした同僚の梅澤千絵ピッツアィオーラもおいででした。

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 本来は薪窯の対流熱で焼き上げるナポリピッツァ。消防法の制約を受ける百貨店内のイタリア展会場で、火を扱う薪窯は設置できません。そこで設えられたのが、薪窯と同じ摂氏500度を保つ高性能電気窯。これは「真のピッツァ・ナポレターナ」国際規約第3条第3項第1号に定めるピッツァ窯の規定を満たしてはいません。それでもハンデ戦を強いられた世界チャンプが、持てる技量を駆使したピッツァ・マルゲリータS.T.G.(右写真)は、熱膨張で盛り上がった生地の縁(コルニチョーネ)の食感に微細な差異を感じ、薪香が漂わない点を除けば、まごうことなき真正ピッツァ・ナポレターナ。さすが世界チャンプは弘法筆を選ばず!

 トスカーナ州サンジミニャーノで購入し、長年使用してきた丈夫なオリーブ材のカッティングボードの傷みがこのところ目立ってきたため、代替えを購入。そのほかグラニャーノ産パッケリやスパゲッティーニ、ワイン数本を調達。営業終了時刻まで会場に留まり、ついつい財布の紐が緩んだ翌朝。アメリカン・ドリームをワイナリー起業で実現したカリフォルニアの「ナパ・ヴァレー」を目指すべく、欧州系ブドウ品種を中心にワイン製造を行う「Cave d'Occi カーブドッチ」など、ワイナリー村の訪問が、この日最大の目的でした。

koshino_shizuku.jpg【Photo】JA越後中央が5年前から普及に努める統一ブランド「越の雫」の旬は8月末から11月半ば。生のまま皮を剥き、風味を増すイタドリの蜂蜜をトローリ。パルマやサン・ダニエレ産のしっとりとした生ハムとの相性は最高♪

 新潟市郊外、西蒲区下山にある「越後西川あぐりの里」で、この地域で栽培が盛んな日本イチジクの代表品種・桝井ドーフィンの特産品「越の雫」と、特別栽培コシヒカリ「寿々喜米」を玄米で購入。車に荷物を積み込んで直売所を出ると、あらかた稲刈りを終えた圃場の先に、葉が赤く色づいた遠目にも明らかな収穫期を迎えたブドウ畑が小さく見えてきました。そこだけが日本の田園風景とは異なる雰囲気を醸し出しています。

 遥かに望むブドウの丘から、田んぼの間をまっすぐ延びる道に視線を落とした時、事件は発生しました。歩道のない片側1車線の道沿いに人がうつ伏せに倒れているではありませんか。すわひき逃げ事件発生かっ?!

call_119.jpg 車を止めた脇道から50mほど離れた田んぼでは、1台のコンバインが稲刈りをしていました。人が倒れているのは、今しがた立ち寄った越後西川あぐりの里がマガモ栽培で育てたコシヒカリの刈り取りを終えた田んぼの畔(あぜ)。ここはコンバインの男性に助けを求めるか逡巡しました。鼓動の高まりを感じつつ、およそ10m前方の草むらに横たわる被害者のもとに駆け寄ろうと車を降りて近づいてゆきました。跳ね飛ばされて頭を強打したのか、頭部が大きく腫れ上がっているようにも見えます。

 「まずい。これは緊急を要する事態だっ!!

call_119-01.jpg 昨年夏、猛暑のもとで開催した「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展 in S市杜王町」〈2012.8拙稿「杜王銘菓『ごま蜜団子』 盛況御礼ッ! 閉幕迫るジョジョ展 in S市杜王町」参照〉実行委メンバーだった庄イタは、来場者が熱中症を発症する事態に備えて、市消防局員によるAED心肺蘇生法などの応急救命講習を受講していました。

 119番で救急搬送を要請しようと、スマホを手に被害者に歩み寄る庄イタは、被害者の様子がいささか妙ちくりんであることに気付きました。その間も目の前で横たわる男性は身動き一つしません。

 ぐったりした体を抱きかかえ、仰向けにして容態をつぶさに観察した庄イタは、疑念が確信へと変わり、こう直感しました。

call_119-03.jpg  「これは手の施しようがない」

 被害者はご覧の通り血の気が失せて顔面蒼白。救命措置を施すことなく現場を立ち去った庄イタは、こみあげてくる笑いをかみ殺しつつ、カーブドッチへと道を急いだのでした。

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