あるもの探しの旅

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ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ

winevinvino_frier.jpgこれは楽しいゾッ!!
ワイン・フードとも
豊富な選択肢で内容充実。
ワインの祭典@福島市


 澄み切った秋空から、まばゆい日差しが降り注いだ9月29日(日)、歩行者天国として開放された福島駅前通り商店街で「ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ2013」が開催されました。会場となったJR福島駅東口の目抜き通りには、イタリアン・フレンチ・スペイン・トルコなど、多彩な21の飲食ブースが勢揃い。グラス売りで国内外のワイン・シェリー・シードル・グラッパなどのほか、各ショップのセレクトによるフード類も用意され、延べ1万人以上の来場者で賑わいを見せました。

 震災で疲弊した福島の活性化と福島のワイン文化・食文化の発展を目的として、2011年9月に8店舗が参加してスタートしたこの催し。春と秋に開催された昨年までは、復興庁福島復興局が現在入居する福島駅東口の複合ビル「AXC(アックス)」が会場でした。4回目の開催を迎えた今年は、福島駅前通り商店街の設立50周年を記念事業として、同商店街振興組合が主催。前回の9店舗から一気に21店舗へとスケールアップした会場は、芳醇なワインの香りに包まれました。

winevin_01.jpg【Photo】ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ2013の会場となった福島駅前通り商店街。地元の老舗百貨店「中合(なかごう)(写真右手)も開催に向け全面協力、通りはいつもの週末の数倍の人出で終日賑わった

 仙台でも年に数回開催される複数のワインインポーターによる業務店向け合同試飲会は、あくまで商談が目的。そのため会場には必ず吐き出し用ポットが用意されます。ゆえに、味覚と嗅覚は若干なりとも麻痺してくるかもしれませんが、その気になれば百本単位でワインを試飲できます。

winevin_03.jpg【Photo】相双・阿武隈地域からの避難生活を福島市で送る農家のお母さんたちが運営する産直「かーちゃん ふるさと農園 わいわい」の野菜ピクルス。シャキシャキした歯応えと爽やかな酸味が素材を引き立てる。新鮮な野菜を加工したピクルスの相伴は、ボルドーブレンドによるイタリア・ヴェネト州の名品「カーポ・ディ・スタート・エティケッタネラ

 一方、ワイン ヴァンヴィーノ フクシマは、一般市民を対象にしており、純粋にワインを楽しむのが目的。プラ製のグラスを一個200円で購入すれば、1杯あたり60mℓ目安でグラス売りされるワインを購入できるシステム。その価格帯は100円~10,000円(⇒ ロマネ・サン・ヴィヴァン1998/ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)と幅広い選択肢が用意されました。

winevin_06.jpg 前回まではワイン愛好家に向けたチケット制の催しでしたが、福島市の玄関口にあたる駅前商店街が会場となった今回。日頃からワインに親しんでいる人だけではなく、日曜日の買い物に訪れた子ども連れやカップル、ベビーカーを押したママ友同士など、幅広い客層が参加し、グラス片手にたくさんの笑顔が溢れました。

winevin_7S.jpg【Photo】各ブースではワインに合わせるフード類も用意。自家製塩麹に漬け込んだアオスタ風蝦夷鹿のロースト、チリエ風鴨腿肉コンフィ、トリッパのフィレンツェ風煮込、ノルチア風熟成プロシュット、キアンティ風フォカッチャが一皿1500円で味わえる本格的なアンティパスティ・ミスティ(左写真)が長蛇の列を呼んだ「オステリア・デッレ・ジョイエ」(上写真)では、ワインに加えてかつてピエモンテ州ネイヴェにある蒸留所を訪れたこんなレアものグラッパも30mℓワンショット2,000~3,000円で提供

 こうした催しが福島で行われていることは、昨年から噂に聞いていましたが、参加するのは今回が初めて。午前10時40分に福島駅に到着し、すぐに庄イタが行動に移したのは、開店準備中の各店ブースを一巡することでした。事前にWebサイトでワインリストフードメニューがアップされてはいましたが、店の前に並ぶワインの銘柄を改めて確認し、すっきりめの白ワインで喉を潤してから、フルボディの赤ワインに至るまで、飲む順番をざっと組み立てるのです。また、そうすることで、メニューの文字面だけは読み取れない各ショップの持ち味や個性、いわば"こっちの水は甘いぞ""というオーラの強弱を感じることもできますから。

winevin_09.jpg【Photo】スローフード運動発祥の地でスローフード協会本部があるピエモンテ州ブラで1年おきの奇数年に開催される「Cheese」には、小規模な生産者が伝統的な製法で造るチーズが世界から一堂に会する。「Cheese2013」で買い付けしたチーズが呼び物となった「クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ」のブース(左写真)

 フード類に関する一番のお目当ては、9月20日~23日までイタリア・ピエモンテ州Braブラで開催されたチーズの祭典「Cheese2013」を訪れた福島市「クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ」の安齊朋大(ともひろ)シェフが現地で調達したチーズ類。300種以上のチーズが存在するイタリア国内は無論のこと、各国の伝統製法で作られた小規模な作り手による個性豊かなナチュラルチーズは、スローフード協会の眼鏡にかなったものばかり。開幕20分前にいち早く会場入りしたのは、日本では入手困難な希少性の高いチーズを食べ逃してなるものかという一心からでした。

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【Photo】クチーナ・ルスティカ ラ・セルヴァティカ安齊朋大シェフ(右写真)に見繕ってもらった白ワイン用と赤ワイン用のチーズ(各1,000円)。手前から時計回りにサフラン風味の羊乳チーズ、ボッタルガ(からすみ)を練り込んだ羊乳チーズ、ヴィナッチャ(ブドウの搾りかす)と灰に漬けた「バラディン」、牛と羊の混入フレッシュでクリーミーな「ロビオラ・ボシナ」は白ワインと(左写真)。 胡椒入り「ぺコリーノ・ペペ」、コク深い「モリテルノ」、カカオ豆とラム酒の香り「カルブル」、ヴェネト州の銘酒アマローネに漬け込む「ウブリアーコ」は赤ワイン用

 前日イタリアから帰国し、ブラから持参したチーズを前に準備に余念がない安齊シェフに話しかけたところ、こちらを一瞥して「庄内系さんですよね」と笑顔で一言。私とはこの日初対面でしたが、安齊シェフはViaggio al Mondoの読者でいらしたのです。 いきなり素性が知れて面喰らいましたが、それはそれ。時間が許す限り、そして体力・気力が続く限り、ワインの祭典を満喫するつもりでした。

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【Photo】口開けの1杯目は「北の巨匠」と称される醸造家ジャンフランコ・ガッロがイタリア最北部フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州で手掛ける「Vie di Romans Chardonnay ヴィエ・ディ・ロマンス・シャルドネ2010」(800円)。美しい酸味を基軸にクリスタルのように透き通った豊かな果実味とボリュームを備え、長~い余韻を残す。直筆サイン入りの5リットル容量の巨大ボトル入りゆえ、猪苗代「クッチィーナ・インコントラ」平山真吾シェフ(左写真)が、カラフェからサーヴしたこの珠玉のワインは20年は熟成を続ける。マグナム以上の大きなボトルはワインの熟成がゆっくりと進み、長い時間を要して到達する高みも通常の750mℓフルボトルより、より高みへと至る。「フルボトル6.5本分の巨大なボトルを収穫後わずか3年で開けるのは勿体ないなぁ」と思いつつ、北の巨匠は期待に違わぬ美味しさで魅了した

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【Photo】2杯目@ラ・セルヴァティカ。世界遺産の塔の町サン・ジミニャーノ原産で、レオナルド・ダ・ヴィンチが愛飲した歴史あるこのブドウ品種を手掛ける「Panizziパニッツィ」は1989年に出来た比較的新しい造り手ながら品質は折り紙付き。「Vernaccia di San Gimignano Riserva ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ・リゼルヴァ2009」(1,000円)。12ヵ月間のバリック熟成をしながらも嫌みな樽香はなく、ナッツや柑橘系にエキゾチックな苦味が加わる。10年近い熟成も可能(左写真)。 3杯目@福島市「アルソーニ」。"イタリアワインの帝王"こと「GAJAガヤ」が、メルロやカベルネの聖地として脚光を浴びるトスカーナ州ボルゲリで1996年に取得した醸造所「Ca'Marcanda カ・マルカンダ」。2009年初ヴィンテージの白ワイン「Vistamare ヴィスタマーレ2009」(1,500円)。ティレニア海を遠望する畑で育つ白品種ヴェルメンティーノとヴィオニエの混醸。このファーストヴィンテージからしてその名に恥じぬ高次元で調和する絶妙のバランス。有無をも言わさぬさすがの旨さに脱帽(右写真)

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【Photo】4杯目から赤ワイン@クッチィーナ・インコントラ。東京から駆けつけたインポーターAltolivello アルトリヴェッロ伊東長敏社長にお願いしたトスカーナ州ピサ県で天才醸造家ルカ・ダットーマがエノロゴを務める「SanGervasioサンジェルヴァジオ」の「Rossoロッソ2006」(600円)。サンジョヴェーゼを主体にメルロとカベルネをブレンドしたミディアムボディのコストパフォーマンスが良いワイン。良年ならではの伸びやかで溌剌とした風味は、赤ワイン用に見繕っていただいたチーズにも好相性(左写真) 5杯目@ラ・セルヴァティカ。2011年から単独のDOCGとして認められ、ドルチェットが堂々の主役を張るピエモンテ州ドリアーニ。かつて安齊シェフが訪れた思い入れのある造り手だという「Quinto Chionettiクイント・キオネッティ」の「Dolcetto di Dogliani Briccolero ドルチェット・ディ・ドリアーニ・ブリッコレーロ2010」(800円)。醸造はステンレスタンクだけを使い、一切の工程で樽を用いない稀有な存在。ブドウ由来の若々しいベリー系の香りと豊かなタンニン。ボリューミーな味わい(右写真) 

 あらかじめ決めていたもう一つの要チェックポイントが、福島市「オステリア・デッレ・ジョイエ」オーナーシェフの梅田勝実さんが用意する北イタリアおよび中部イタリアの地方料理。梅田シェフとは2年前の11月、イタリアからいわゆる自然派と呼ばれる醸造元15社を招いて仙台市内5店舗で同時開催された「ヴィナイオッティマーナ2011」の2次会場でお会いしていました。梅田シェフは自然派ワインに傾倒しておいでのようで、11本全てがそちら系の濃いラインナップ。味にばらつきが多く、造りが多少とも個性的ゆえ、庄イタは積極的にアプローチしないこのジャンルですが、気になるワインが数本置いてありました。「前菜盛り合わせ」は赤ワインとの相性が良さそうだったので、序盤はチーズから攻めることにしました。

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【Photo】6杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。1980年の自家詰め開始よりウンブリア州モンテファルコでビオディナミ農法を実践する孤高の造り手が「Paolo Beaパオロ・ベア」。風味を凝縮させるための低収量と選別を徹底、自然酵母の使用、そして清澄濾過を行わずにボトリングされる「Montefalco Sagrantino モンテファルコ・サグランティーノ2003」(1,500円)は、プルーンのニュアンスを強く感じ、元来厳格なタンニンを備えたサグランティーノにしては意外なほど柔和な表情を湛える。25anniで有名なアルノルド・カプライとは方向性が異なるが、この品種の可能性を示す(左写真)。 7杯目@ヴィヴィフィカーレ(福島市)。ヴェネト州ヴェネツィア北方の造り手「Conte Loredan Gasparini コンテ・ロレダン・ガスパリーニ」のフラッグシップ「Capo di Stato Etichetta nera カーポ・ディ・スタート・エティケッタ・ネラ'97」(800円)。公式晩餐会で出されたこのワインに感銘を受けた元フランス大統領シャルル・ド・ゴールが、国家元首を意味する「Capo di Stato」と名付けた逸話が残る。カベルネ・ソーヴィニヨン+カベルネ・フラン+メルロ+マルヴェックというボルドーブレンドの深みと複雑味を感じる隠れた名品。しかもグレートヴィンテージ'97!!(右写真)

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【Photo】8杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。"No Barrique,No Berlusconi"という辛辣なエチケッタを残した伝説のバローロ生産者「Bartolo Mascarello バルトロ・マスカレッロ」。バローロ・ボーイズの活躍で脚光を浴びたクリュの概念やバリック樽を否定し、伝統的なセメントタンクでの発酵と大樽熟成による造りを生涯貫いた。娘マリア・テレーザが醸造所を引き継いだ今も、カンヌビ・ロッケなど4つのバローロ地区最良の区画に所有する畑で栽培するネッビオーロから単一のBaroloを造る。この2007年(1,500円)は前年に続く優良年で、厳格さは残しつつも抜栓後4時間を経て柔らかさもあり、素晴らしい資質を遺憾なく発揮(左写真) 9杯目@オステリア・デッレ・ジョイエ。締めくくりはトスカーナ州シエナ東方のカステルヌオーヴォ・ベラルデンガのChianti Colli Senesiキアンティ・コッリ・セネージ地区に位置し、ジョヴァンナとステファーノ夫妻による「Pacinaパーチナ」のデザートワイン「Vinsanto del Chianti ヴィンサント・デル・キアンティ2005」(600円/30mℓ)。消毒用ボルドー液以外を用いない農法で育てた白ブドウのマルヴァシアとトレッビアーノを収穫後に陰干し、寒暖差が激しい屋根裏部屋などで5年以上熟成させると、ブドウの純粋かつ官能的な甘味が抽出された琥珀色のエッセンスへと昇華、贅沢な余韻に浸れる(右写真) 

 時間が経つのを忘れ、気がつけば4時間30分あまり会場をウロウロしていた庄イタ。ヴィンサントをお願いしたオステリア・デッレ・ジョイエでは「たくさんご注文頂いて♪」と奥様からサン・ペルグリーノの炭酸水の差し入れも頂戴してしまいました。そろそろ中合の地階へ移動して家族への福島土産を購入しなくてはなりませんが、午前中にラ・セルヴァティカのブースに立ち寄った際、ワインリストに記載された「Etlivin.s.r.l秘蔵のイタリアワイン」(1,500円)なる存在が気になっていました。そこには日本でイタリアワインが現在ほどの地位をマーケットで築く以前の'85年、イタリア専業のインポーターとして創業した「Etlivinエトリヴァン」の佐々木玲子さんがおいでした。

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 佐々木さんは、秘蔵のイタリアワインこと木箱入りマグナムボトルの「Linsieme l'Italia del Vino decennale selezione Fattorieリンシエメ・リタリア・デル・ヴィーノ・デッチェナーレ・セレツィオーネ・ファットリ」(左写真)という長たらしい名前のヴィーノがいかなるものかを説明して下さいました。かの「Sassicaiaサッシカイア」を生んだ醸造家、故ジャコモ・タキスが、イタリア各州の優れた造り手のワインをブレンド、1999年に2,265本だけマグナムボトルに瓶詰めした超レア物なのだといいます。バックラベル(右写真)にはブレンド用にワインを提供した32のそうそうたる顔ぶれの生産者名が列記され、しかもイタリアではGrande Annata(=グレートヴィンテージ)として名高い1997年がズラリ。

 日本市場では流通せず、国内では存在しえない貴重なボトルが目の前にありました。ここを素通りしては一生の不覚。末代まで禍根を残すことになります。条件反射のように「一杯飲ませて下さい」と口走り、残り少なくなった千円札を2枚差し出す庄イタなのでした。バルベーラ+ネッビオーロ+モンテプルチアーノ+サンジョヴェーゼ+ネレッロマスカレーゼ+カンノナウ+その他モロモロという、通常ではありえない「ちゃんぽん」に等しい組み合わせが破綻をきたさずに綺麗に熟成を重ね、しっとりとした落ち着いた表情で魅せてくれたのは、さすが稀代の醸造家ジャコモ・タキスの手腕なのでしょう。

winevin_26.jpg【Photo】太陽が少し傾き始める16時を迎えてなお、多くの参加者で盛り上がりを見せる会場。ムルソーやニュイ・サン・ジョルジュなど、ブルゴーニュの醸造所から提供されたワインが出品されたオークションの売り上げは、福島復興のための基金に寄付される。後ろ髪を引かれる思いで会場を後にした

 恐らくは一期一会となるワインとの出逢いを最後に果たしたワイン ヴァンヴィーノ フクシマ。集客目標として掲げた3,000人を結果的に3倍以上も上回る成功を収めた今回の催しにあたり、尽力された皆さんに心より敬意を表します。次回開催の折に仕事が入らなければ、必ずや駆けつけることをお誓いします。I shall return.
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