あるもの探しの旅

« ワイン ヴァンヴィーノ フクシマ | メイン | すわ119番 »

Bigでビックリ、西明寺栗。

日本一の栗とカタクリの里、仙北市西木町でクリ拾い

 JR秋田新幹線ならば、角館駅で角館と鷹ノ巣とを結ぶ秋田内陸縦断鉄道に乗り換え、2つ目の「西明寺駅」か次の「八津駅」で降車。秋田自動車道経由なら「大曲IC」下車、R105で25Km離れた角館経由で。秋田空港からは40kmほどR46を進み角館を経て。そこは実りの季節に訪れたい日本一大きいといわれる「西明寺栗」の里。観光栗園でクリ拾いが始まったという知らせを受け、秋のすがすがしい陽気のもと、仙北市角館と同西木町西明寺小山田地区を訪れました。

saimyoji_01.jpg【Photo】佐々木栗園の娘さんが手にした西明寺栗は、ズシリと重い40g超の4Lサイズ

 2005年(平成17)の広域合併で仙北市となった旧角館市・旧田沢湖町・旧西木村は、古来「北浦」と呼ばれており、藩制期は佐竹北家の領地でした。伝承では佐竹の殿様が飢饉に備えるため、平安初期に栽培が始まった丹波(京都)や養老(美濃)からクリを取り寄せ、岩手境となる秋田駒ケ岳の山麓で栽培を奨励したのが始まりとされます。

saimyoji_02M.jpg【Photo】西明寺栗の産地、大仙市西明寺八津・鎌足地区。秋田内陸線八津駅には、鷹ノ巣駅方面への上りが1日9本、角館駅方面への下りが1日8本停車。そこは雄物川水系の河川が創った肥沃な穀倉地である横手盆地(仙北平野)最北端に位置する

 夏の最高気温が37℃前後までに達する一方で、夜間は涼しい盆地性気候のこの地域。この寒暖差で風味を増し、かんじきを履いて根雪の上で剪定を行う冬場の耐寒性に優れているため、特別豪雪地帯に指定される雪深い条件下での省力栽培に適合し、北浦栗はクリ栽培に適した田沢湖西畔の西木や西明寺へと次第に広まってゆきました。

saimyoji_03.jpg【Photo】収穫期を迎えた西明寺栗。並外れたその大きさ・重さゆえ、食べ頃を迎えた完熟のクリは、ほとんどがパックリと開いたイガの開口部が次第に大きくなり、実が1個づつこぼれ落ちるようにして落下する

 西明寺周辺では、現在も一般家庭の庭先で栗の木が育っている光景が珍しくありません。300年前まで遡る長い栽培の歴史において、大きな実を付ける個体が生まれます。先人の努力により選抜と改良を重ねて優良種を固定し、今日に至っています。1998年(平成10)に収穫された天地47mm×左右57mm、重さ66gを最高記録とする日本一大きい西明寺栗として、その名を轟かせています。

 秋田県広報協会発行の県政広報誌「あきた」162号(1975年11月発行)によれば、クリの新芽に産卵し、枝を枯死させる害虫クリタマバチによる被害で、県全体の栽培面積が1/5の40ヘクタールまで激減したのが1950年代末から1960年代初頭にかけて。

saimyouji_04.jpg【Photo】昭和中期、日本各地でクリを枯らしたクリタマバチ禍を乗り越えた古木が、今年も大玉の実を結んだ佐々木栗園の栗林。200年の樹齢を物語る幹の太さが印象的(上写真) 現在の主力品種は、西明寺1号・2号。市場には滅多に流通しない3Lクラスが珍しくない(下写真)

saimyoji_1.jpg 害虫被害を免れた木が多かった旧西木村西明寺に県営試験農園が造られたのが1961年(昭和36)。耐性の強いクリから育成した苗木が移植され、現在の主力となる西明寺1号(善兵衛)、2号(茂左衛門)のほか、3号(寒月)、4号(駒錦)、5号(早生種)が選抜されます。これが県奨励品種として採用され、今日に至ります。

 自然交配の野性種シバグリを品種改良したニホングリは同品種間での受粉率が著しく低いため、栽培においては異なる品種同士を混植するのが普通。西明寺では奨励5品種を中心に収穫時期の分散を図りながら栽培が行われています。「あきた」162号による各品種特性は以下の通り。

◆西明寺1号=樹勢が極めて強く大樹となる。果実は20~30gの大粒が中心で、甘味があり、生乾食用・加工用ともに向く。熟期は10月中旬で収量が多い

◆西明寺2号=優れた樹勢、樹姿、収量、品質、食味は1号とほぼ同等だが、果実は大きさ3cm強・重さ25~35gとより大きめ

◆西明寺3号=昭和39年に選抜。樹勢・樹姿よく、大樹となる。果実は25~30g。堅密で甘味強く、煮崩れしないためシロップ詰めなど加工用に向く

◆西明寺4号=2号の予備品種として選抜。果実は35gと最も大きいが、風味がやや劣る

◆西明寺5号=早苗種として選抜。樹勢・樹姿は他と同じだが、果実は15gほどと比較的小ぶりで収量が少ない。熟期は9月上旬

 クリ拾いに伺ったのは、角館市街から6kmあまり北に位置する仙北市西木町小山田鎌足の「佐々木栗園」。  【Photo】観光栗園の受け付けは農家民宿「くりの木」(下写真)へ

saimyoji_05.jpg そこは出羽山地と奥羽山脈とに囲まれた肥沃で平坦な穀倉地帯である横手盆地の最北部。10代の頃から父親のクリ栽培を手伝ってきたというご主人の佐々木茂義さんは、先代から受け継いだ西明寺栗を栽培して47年のベテラン。奥様の弘子さんは農家民宿「くりの木」も営んでおいでです。

 ランチタイムと重なった角館からの道すがら、木元恵子さんと料理研究家の千恵子さん親子が営む「ガーデンカフェ&デリカ kimoto」に寄りました。R105沿いにあるこちらの「秋の味覚ランチ」(1,500円)には西明寺栗を使った栗ご飯がつくからです。ローズヒップが色付いたバラが絡まる窓の外には、稲刈りを終えた秋の田園風景が見渡せます。(下写真)

vista_kimoto_otto.2013.jpg

 田沢湖・角館観光連盟から「秋田美人証明書」を公布された千恵子さんは留守でしたが(残念っ!)、「Tale Padre tale Figlio(=この親にしてこの子あり)」という諺を地でゆくお母さまの恵子さんがいらっしゃいました。この日は仙北市主催の観光誘客会議出席のため不在だった千恵子さんは、10月から始まった「秋田ディスティネーションキャンペーン」のPRで角館町観光協会が結成した「秋田美人100人隊」隊長として、今年5月に観光キャラバンで仙台にいらしていたのです。

 saimyoji_06.jpg saimyoji_07.jpg
【Photo】西明寺栗の栗ご飯(左写真) 西明寺栗のシフォンケーキはテークアウトも可能

 おかずのワンプレートは、花好きの恵子さんが摘んだ秋の生花や、自家製のニンジン、イチゴの葉を彩りに盛り付けてあります。ほっこりと優しい和栗の甘味と、有機栽培の自家製ひとめぼれ新米で炊いた栗ご飯の美味しさが、クリ拾いへの期待感を否応なく高めます。西明寺栗のシフォンケーキも完食し、店を後にしました。

   saimyoji_10.jpg saimyoji_11.jpg
【Photo】日本一大きな西明寺栗と日本一の群生地が見られるカタクリの里・西明寺のロードサインは、「くり」&「クリ」のオンパレード。佐々木栗園がある八津・鎌足地区へは「かたくり館」の看板が目印

 西木温泉ふれあいプラザ「クリオン」と市営交流施設「かたくりの館」と、"クリつながり"な施設前を通り過ぎ、秋田内陸線八津駅の踏切を渡り、バイカモが流れにたゆとう堀沿いの道を進むと、ほどなく農家民宿「くりの木」に到着しました。最寄駅の秋田内陸線「八津駅」からは徒歩10分前後の距離でしょう。

saimyoji_09.jpg【Photo】段々に整地された斜面に植林されたクリは、日照を考慮してか、木の間隔が広い。西明寺栗といえど、適切な間伐と剪定、施肥などの手入れが十分でないと、大きな実は結ばないという。日本一大きな栗の称号は、生産農家のたゆまぬ努力が生んだ結晶でもある

 娘の佐々木こう子さんから、2kgほどのクリが入る袋を渡され、裏手の栗林に案内されました。長靴や手袋の用意が必要かを事前に確認しましたが、全て不要とのこと。なぜなら西明寺栗は食べ頃を迎えると、イガがパックリと開いて巨大なクリの実が大きな音を立てて落ちてくるのでした。生い茂った下草は害虫クリシギゾウムシにとって格好の棲息場所となり、落ちたクリに卵を産み、幼虫が果実を食い荒らしてしまいます。そのため下草は丹念に刈り取られます。

katakuri_2012-5.jpg【Photo】八津・鎌足地区の栗林は、4月中・下旬にかけて国内最大規模で群生するユリ科の多年草「カタクリ」の花畑と化す。うつむき加減に淡い紫の花を咲かせるカタクリの花言葉は「初恋」。楚々として可憐な秋田美人のようなカタクリの自生面積は20haにも及び、ローマのコロッセオや東京ドームがすっぽり4個分という広さに相当する。西明寺全体で50haの栗林がある日本一大きなクリの里は、日本一のカタクリの里でもある 

 某老舗和菓子処が所有する栗園でクリ拾いをした数年前。クリを食い荒らして逃走したクマの巨大な置き土産(笑)にビビっただけに、「ここにクマは出没しますか?」と問うた庄イタ。すると「出ますよ~」と、こう子さんは事もなげ。「大きいクリを選んで下さいね~」と言い残して戻ってゆきました。

 そうして栗林に残された庄イタ。クマの足音に聞こえなくもないガサッ!という、枝から落ちたクリがたてる音にビビりながらも、日本一大きいクリの誘惑には勝てません。西明寺栗としては出荷されないLサイズに満たないものや、虫喰いを慎重に除きながらの宝探しが始まりました。

saimyoji_12.jpg【Photo】イガごと落ちるこうしたクリは珍しく、ほとんどは大きく開いたイガからバラバラにこぼれ落ちるのが西明寺栗の特徴。3Lサイズの西明寺栗と比較すると、ひときわ小さく見えるスズムシは、深まる秋に何を思う

 口を開けた特大サイズのイガごと落ちているクリも、一応あるにはありますが、ほとんどは落下した実だけが転がっています。なるほど、これならば長靴で踏みつけてイガを開き、トングでほじくり出す必要はありません。1964年(昭和39)に発足した「西明寺栗生産出荷組合」では、無農薬・有機栽培による丹念な土作り、剪定と整枝による日照の確保や適切な施肥などで味と大きさの追及に余念がありません。

saimyoji_13.jpg【Photo】クリ拾いの成果(右写真)

 クリには大きさと重さによって統一規格が存在します。組合員が西明寺栗として出荷するのは、大きさ33mm以上、重さ11g以上クラスのLサイズ以上としています。およそ30分ほどで大きさ40mm以上重さ21g~30g以上の3L~4Lサイズのクリを中心に1.9kgほどが収穫できました。

 観光栗園として開放している丘陵部の栗林は赤土土壌で、40年もすると樹勢が衰えるため、若木に植え替えをしなければなりません。私が案内された自宅裏手の栗林と桧木内川(ひのきないがわ)の中州に所有する栗畑には樹齢200年を越える現役の古木もあるのだといいます。

 3ヵ所都合5haの栗林で奨励5品種の西明寺栗を栽培するという佐々木さん。その作業場には、朝から昼前まで近所のクリ拾い名人に収穫を手伝ってもらったという西明寺栗が、大きなカゴ入りで4つ。収穫したクリの選別は、傾斜のついた目の大きさが異なる金網を振動させることで移動しながら行われます。こう子さんは分別作業を実演して下さいました。

   keiko_sasaki.jpg saimyoji_14.jpg
【Photo】午前中に収穫された西明寺栗が大きな赤いカゴ入りで4箱(右写真)。5haの栗林を所有する佐々木栗園では、収穫シーズンを迎えるとパートを雇わないと収穫が追いつかないという。収穫したクリの大きさ選別は、最上流のSから最後のLLまでブロックごとサイズが異なる網目に高低差をつけ、網目部分を電動で振動させることでクリが移動し、最後まで残るのが3Lという具合のブラボーな専用選果機で行う(左写真)

 収穫したクリは入園料200円+1kg当たり800円で持ち帰りができます。生栗は放置すると虫が発生するため、佐々木栗園では虫止め処理をしてから直接販売、発送にも対応します。生産者によって栽培する品種が異なるため、収穫の旬は異なります。自宅に持ち帰ったクリは虫止めしてあれば冷蔵室で1ヵ月程度置くか1~2日天日干しすると甘味が増します。

 佐々木栗園では、年によっては3週間、平年で2週間程度クリ拾い体験ができますが、伊豆大島に甚大な被害を与えた台風26号による強風のため、ほとんど落果してしまった今年は、今月17日で観光栗園を切り上げたそうです。開花期の6月末に天候がぐずついた今年は、ただでさえ収量が少ないうえ、収穫期に台風が来襲したため、わずか1週間での終了となった次第。自然相手の仕事には、人の力ではどうしようもない領域があるものです。

  saimyoji_19.jpg saimyoji_18.jpg

 帰路、西明寺栗を用いた生ケーキや焼菓子を取り揃えた角館の洋菓子店「プチフレーズ」で、トッピングのマロンクリームと1個丸ごと甘露煮にした西明寺栗がスポンジ生地に隠れた「西明寺モンブラン」(右写真/368円)と、マロンペーストに包まれた中身の甘露煮のサイズによって400円~700円と価格に幅があるパイ生地で包んだ「西明寺栗くん」(左写真)も買い求めました。和菓子がお好きな方なら、ペーストにした西明寺栗を練り込んだ「くら吉」の期間限定商品「西明寺栗生あんもろこし」という選択肢もあります。

 青森・三内丸山遺跡からも多数のクリが発見されたという事実から、日本で稲作が始まる以前、豊かな狩猟文化が花開いた縄文人の食を支えたことが分かっているクリ。西明寺栗は、圧力釜で茹で栗にしたり、定番の栗ご飯でも美味ですが、佐々木栗園でも全国発送に対応する渋皮煮や甘露煮のほか、栗きんとんといった加工品にも向きます。びっくりな大きさに歓声を上げながら、童心に帰ってクリ拾いに興じる秋の一日。ホント楽しいですよ。来シーズンはぜひ!
************************************************************************
農家民宿くりの木 (佐々木栗園)
住:秋田県仙北市西木町小山田字鎌足186
Phone:0187-47-3046 
※ 栗拾いは要予約 入園料200円 拾った栗は1キロ当たり800円で持ち帰り可
  今年度のクリ拾いは終了。直接販売は在庫が無くなり次第終了につき、要問合せ
  全国発送可 P:あり
※ 宿泊:1泊2食付き 6,000円 1泊素泊まり 4,000円/ 母屋に宿泊/冬期間暖房費別途
Facebookで最新情報をチェック:https://www.facebook.com/farm.kurinoki

ガーデンカフェ&デリカ kimoto
住:秋田県仙北市西木町西荒井字熊野田107-3
Phone:0187-47-2948
営: 9:00~19:00 (ランチ&カフェ 12:00~16:00)
定休:第2・第4水曜
P:あり
URL: http://www.e-kimoto.jp/ Blog:http://kimotosan.exblog.jp/

角館プチ・フレーズ
住:秋田県仙北市角館町大風呂2
Phone:0187-54-1997
営: 9:00~20:00 年中無休
P:7台分
URL: http://www.kakunodate-puchi.com/


baner_decobanner.gif

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.