あるもの探しの旅

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山伏ポーク

Taverna Carlo タヴェルナ・カルロ
或る夜のテーブルより

 食の都・庄内は品質の高い豚肉の宝庫でもあります。庄内地域全体では、大小80の生産者が年産8万頭を出荷しています。地元産の飼料用米で育ったヘルシーな「こめ育ち豚」〈拙稿:「応援しよう!こめ育ち豚」(2009.7)参照〉に関しては、とんかつと豚肉料理 平田牧場仙台ファーストタワー店がオープンした2009年7月に既報の通り。無敵のコストパフォーマンスも相まって庄イタがイチ押しするのが「山伏ポーク」。ゴールドでもプラチナでもない知る人ぞ知るこの銘柄豚は、修験と信仰の山、月山・羽黒の麓で育ちます。

kobaecha-2014.9.jpg【Photo】頭を垂れた稲穂が黄金色に染まる実りの季節。月山山系の裾野を進む庄内こばえちゃラインの沿道からは、鶴岡・三川・酒田方面と鳥海山の眺望が手に取るよう。あまたの食材に恵まれた食の都・庄内では、蕎麦を決して売りにしないものの、山形県内では鶴岡市が最多の産出地となるソバの白い花が咲く標高が高い地域で、山伏ポークは飼育される。鶴岡市羽黒町川代付近にて

yamabushi-shabu-2014.6.jpg 「庄内こばえちゃライン」の愛称で呼ばれる庄内東部広域農道からは、豊饒なる庄内平野と日本海が眼下に一望のもと。山伏豚は、月山の裾野に延びる庄内こばえちゃライン沿いの鶴岡市羽黒町地域の清涼な環境のもとで育ちます。その優れた肉質は、月山水系の滋養豊かな水と抗菌剤を使用しない穀物主体の配合飼料で180~190日をかけ、出荷に適した体重110kgまで肥育されることで育まれます。

【Photo】夏を元気に乗り切るため、積極的に食卓に取り入れたいのが豚しゃぶ。居並ぶ銘柄豚の中から庄イタがイチオシは山伏ポーク。新鮮な山伏ポークは、全くと言ってよいほどアクが出ない。ほんのり甘い脂と香りのよいキメ細やかな赤身のハーモニーが秀逸なバラ肉をぜひ!

 真っ白な良質の脂身とキメ細やかな肉質の山伏豚の魅力が発揮される部位の一つが、ほんのり甘く香りのよい脂身と淡いピンク色のシルキーなキメ細かい赤身との黄金比率を味わえるバラ肉。その美点を活かす山伏豚しゃぶで最強の共演者「平田赤ネギ」〈拙稿(2007.9)参照〉を得た山伏ポークは、飛ぶ豚、もとい飛ぶ鳥をも落とす無敵の風味で食べる人を魅了します。それは冷しゃぶとて同様。冬場が旬となる濃厚なネギの芳香が甘味に昇華する平田赤ネギとの共演は叶わぬものの、肉厚の「十三浜ワカメ」〈拙稿(2012.4)参照〉が脇を固め、堂々の主役ぶり。

yamabushi-roast-2014.6.jpg【Photo】肩ロース500gに対して岩塩7g、潰したホワイトペッパー3g、ニンニクスライス2片、ローリエ3枚で15時間マリネ。火を通しすぎないようローストすれば、たとえ藤沢カブはなくとも、雪がしんしんと降り積もるあの夜の感動が蘇るアル・ケッチァーノ風山伏豚のロースト

 バラ肉のカロリーを気にされる方でも、しゃぶしゃぶと湯煎して脂肪分を洗い落とすので安心。100gの豚肉には一日の必要量の半分を賄えるほどのビタミンB1が豊富に含まれています。ビタミンB類は糖質の代謝に関与してエネルギーを作り出すため、夏バテ予防にピッタリ。東北も梅雨明けまでカウントダウンとなったこれからの季節、独自の配合飼料を与えることでコレステロール分を通常比で2割カットしたという山伏豚の冷しゃぶで夏を乗り切りましょう!!

 肉の味がわかる方ならば、リピート必至の山伏豚との出合いは、もう10年以上前に遡ります。鮮烈な印象を残したのは、2004年(平成16)の暮れも押し迫った大雪の中、鶴岡「アル・ケッチァーノ」で食した在来作物フルコースの最後に「新作です」と奥田シェフが運んできた「山伏豚肩ロースマリネのロースト藤沢カブの焼畑仕立て」。料理の背景が見事なまでに表現されたその一皿で感涙に打ち震えた体験の顛末は、「奇蹟のテーブル」に記した通り。如才ないオーナーシェフがメディアの寵児と化し、店が変貌する以前の話で、ほぼ月3回の頻度で仙台から通っていた頃の事です。

rodano2004-con-yamabushi.jpg【Photo】山伏豚ローストには、ゲヴルツトラミネール+リースリング+シャルドネという珍しいセパージュの南トスカーナ・スヴェレート産ヴィーノ・ビアンコ「Lodanoロダーノ2004」をチョイス。「REDIGAFFIレデガッフィ」で知られるTUA RITAが年産3千本を極少生産

 鶴岡市羽黒町の養豚農家が生産する(ランドレース×大ヨークシャー)×デュロックの三元交配による銘柄豚「高品質庄内豚」の中でも、鮮度が良く、肉塊が程よい大きさで身肉がしまっている個体に限定される山伏ポーク。かつて羽黒農協が所有していたこの銘柄を、1981年(昭和56)から独占的に扱うのが、元々は羽黒町でお兄さんと一緒に養豚農家を営んでいたという鶴岡市みどり町の精肉店「クックミートマルヤマ」の丸山完さん。

 余談ですが、調理師免許を持つ二代目の浩孝さんは、先日まで鶴岡まちなかキネマで公開されたドキュメンタリー映画「ある精肉店のはなし」上映実行委の中心的役割を果たした行動派の一面を持っています。

kan_maruyama.jpg【Photo】店を継いだご子息の浩孝さんが商品化するも、委託製造先の事情で残念ながら現在は休止中で復活が待たれる「庄内カレー」を手にするクックミートマルヤマの丸山完代表

 山形県下の養豚農家として、法人化にいち早く取り組み、生産と販売を分業化。当初から自動給餌器を取り入れ、豚舎への第三者の立ち入りを制限するなど、衛生面に配慮した生産現場は兄が、販売は弟の完さんが担当。現在の店舗がある鶴岡市みどり町に直売所を出したのが1971年(昭和46)。以来、丸山精肉店、クックミートマルヤマと店名は変わりましたが、品質第一を貫く姿勢は、確かな目利きによる仕入れと店頭での丁寧な仕事ぶりから伺うことができます。

 ご自身もかつては生コンのミキサーで飼料の配合をした経験をお持ちで、生産者の立場を心得ている丸山さん。1995年(平成7)に当時の庄内1市7町1村の農協が広域合併した「JA庄内たがわ」発足当時、広域化したことによる庄内豚の品質のバラツキに危機感を覚え、独自に設けた厳しい基準に沿った肥育を実践する羽黒地域の生産者のみに仕入れ先を限定しています。

ja-n-japan-feeds.jpg【Photo】山伏ポークの飼料を生産する「JA全農北日本くみあい飼料石巻工場」(写真中央)は、宮城県石巻港に面しており、震災の津波で大打撃を受け、被災直後は飼料の生産・供給が全面停止。周辺はいまだ津波の爪痕が痛々しいが、白煙を上げる日本製紙石巻工場(写真左奥)ともども現在は復旧し、山伏ポークの変わらぬ美味しさを支えている〈撮影:2014年3月〉

 庄イタが山伏ポークと出合った当時は、意識の高い12軒の養豚農家が山伏豚として店頭に並ぶ高品質庄内豚を生産していました。安定した供給が可能な輸入食肉の増加と、生産者の高齢化によって、生産農家の数は現在6軒にまで減少しています。これは山伏豚に限った話ではなく、私が庄内系にメタモルフォーゼした2003年(平成15)、山形県内で240戸だった養豚農家は昨年の農水省統計では120戸に半減。全国ベースでは過去10年で9,430戸が5,570戸に減少。みやぎ野ポークの産地、宮城県に至っては460戸が165戸まで激減しています。〈*注1〉参照

s-miali-selvatica2005.5.30.jpg【Photo】毎年5月を迎える頃、「スタジオセディック(旧「庄内映画村」)」庄内オープンセットに隣接する自然豊かな月山山麓の100ha近い広大な放牧地で委託放牧される丸山光平さんの緬羊たち。「放牧を始めたよ」という知らせを受た2005年(平成17)5月上旬、月山高原牧場では、ストレスフリーな環境のもとで羊たちが草をはんでいた

 遺伝子組み換え(GMO)やポストハーベスト農薬への不安が拭いきれない飼料で育つ外国産食肉は、国産と比べて安価ではあります。山伏ポークはNON-GMO、ポストハーベストフリーのトウモロコシや大豆を主体とする原料だけを使用する「JA全農北日本くみあい飼料(株)」石巻工場で生産される飼料を生育に合わせて与えられ育ちます。そのため、東日本大震災で同工場が津波で被災して以降、指定配合飼料による給餌ができず、山伏ポークの名が店頭から消えた時期がありました。食の信頼を裏切る事例に事欠かない時代にあって、こうした真摯な姿勢は、さすがですね、丸山さん。

maiali-haguro_2012.8.jpg【Photo】ジンギスカンブームが去った1980年代後半には羽黒町内で唯一の緬羊生産者となった丸山光平さんの羊舎ですくすくと育つサフォーク。いわゆる羊臭さを感じさせない素晴らしい肉質は、未体験の方には未知のもの。もはや異次元の美味しさは決して他の追従を許さない

 山伏ポークと並ぶクックミートマルヤマの看板が、食の都・庄内にして唯一無二、孤高の風味を誇る緬羊(めんよう)を飼育する丸山光平さんが代表を務める月山高原花沢ファームの羽黒緬羊。品種は英国原産のサフォーク種です。冬季を除き、一般向けに羽黒緬羊を扱うのもまたクックミートマルヤマだけ。春に月山高原牧場で放牧され、秋に山を下りる間、自然交配で種付けされたサフォーク羊のベビーラッシュは翌春。月齢12カ月に満たないラムは肉が柔らかですが、丸山さんが出荷するのは、摂取した餌による肉質の向上が顕著に表れる月齢15カ月前後のフォゲットが中心。

haguro-miale-al.che.jpg【Photo】「行ってみたいから案内して」というメンバーに付き添いで5年ぶり(!)に訪れた鶴岡アル・ケッチァーノにリクエストし、西田シェフが調理して下さった「羽黒緬羊のシンプルロースト」。初めてこの肉を食したメンバーは一様に「こんなヒツジの肉は初めて」と予想通りのリアクション

 青草中心の飼料では、クセの少ないラムでさえ特有の臭みが必ず残ります。丸山光平さんは、出荷前になると穀類中心の給餌に切り替え、稲ワラや庄内ならではのとある飼料を与えることでこの問題を克服しました。それは加工用に大量に発生し、廃棄されていた特産の「だだちゃ豆」の莢(さや)。給餌の様子を見せて頂いたことがありますが、羊たちはだだちゃ豆の莢を一心不乱についばみながら、口々に「ウメェ~」。

 生産履歴がつまびらかな国産肉を食することで、日本国内の食料生産者を支えることになります。鮮度を大切にするため、注文した部位を目の前でスライサーにかけてくれるクックミートマルヤマのような精肉店は貴重な存在。意欲的な生産者と二人三脚で品質向上に努めるこうした小売店と繋がることは、食の安心・安全に無頓着ではいられない私たちには心強い味方です。生産者と小売店と消費者が近しい関係にあることを感じさせてくれるこの店に、庄イタはこれからも通い続けることでしょう。

【備考】スライサーで冷しゃぶ用に薄くスライスして頂いた山伏ポークのバラ肉と、ロースト用の肩ロースの調理事例ロケ地は、ワインセラーに常時300本近いイタリアワインのストックを抱える仙台市青葉区某所の超穴場「Taverna Carlo タヴェルナ・カルロ」。食材調達に費やす労力は厭わないが、ボルドーやブルゴーニュのストックが圧倒的に少ないため、赤い表紙の某グルメ評価本の覆面調査員からは見向きもされない(爆)
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クックミートマルヤマ
住:鶴岡市みどり町20-35
Phone:0235-23-5246 FAX:0235-25-7724
営:9:00~22:00 日曜定休
1kgより代引きで宅配可。送料別途。
URL: http://www.tawarayasan.com/umai/cmm/index.htm

〈*注1〉 「農林水産省畜産統計調査」による全国での豚の飼養頭数は、2003年(H15)9,725,000頭⇒2013年(H25)9,685,000頭。ほぼ半減している生産戸数と比して飼養数は、ほぼ横ばい。山形における飼養頭数は181,900頭(H15)⇒160,400頭(H25)宮城は233,100頭(H15)⇒211,800頭(H25)と各1割減。この数字から読み取れるように、養豚農家一戸あたりの平均飼養頭数が1,031.3頭(H15)⇒1,738.8頭(H25)と大規模集約化が進んでいる。
東北6県で目を引くのが福島県の推移。同年比での生産戸数は210戸(H15)⇒113戸(H23.2月調査)⇒81戸(H25)。飼養頭数が226,600頭(H15)⇒184,200頭(H23.2月調査)⇒141,400頭(H25)。過去10年で生産戸数が62%減、飼養頭数も6割ほどに減少。それもそのはず。東京電力福島第一原発から20km圏内で飼育されていた牛3,500頭、豚3万頭、鶏68万羽、馬100頭の多くは畜舎で餓死し、事故後に警戒区域や立ち入り制限区域とされた地域で今年1月までに人の手で安楽死処分された牛は1,692頭、豚は3,372頭にのぼる。飼い主の無念はいかばかりだろうか
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