あるもの探しの旅

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ブドウ畑でつかまえて

The Catcher not in the Rye but the Grape
ちょっと気難しい「安芸クイーン」にまつわるあれこれ

 夢中になってライ麦畑で遊んでいるうち、崖っぷちから転落しそうになる子どもを捕まえて助けるような大人を目指す16歳の少年、ホールデン・コールフィールドが主人公として登場するJ・D・サリンジャーの小説「ライ麦畑でつかまえて」とは全く無関係の動物に関するオチですが、今回もお付き合いのほど願います。

deraware2012.8_sakuma.jpg【photo】フルーツタウン櫛引西荒屋のブドウシーズン幕開けは、8月には収穫が始まるデラウエア(手前)とスチューベン(奥)から。佐久間良一・みつご夫妻のブドウ園地にて

 大粒ブドウがシーズンを迎える頃になると、毎年通っているのが、佐久間良一・みつご夫妻が育てるブドウが、たわわに実を結ぶ鶴岡市西荒屋のブドウ園。ご自宅近くの畑ではデラウエアとスチューベンを、少し離れた園地では、さまざまな大粒品種と甲州。そして変わり種では醸造用ブドウ品種のメルロを栽培。佐久間さん夫妻とは、もう10年来のお付き合いをさせて頂いています。

cortese-nishiaraya_2012.9.jpg【photo】イタリア・ピエモンテ州原産のブドウ「コルテーゼ」。アスティ県カネッリのアグリツーリズモ「Rupestrルペストゥル」を訪れた佐久間さんのため、オーナーのジョルジョが苗を調達した

 高温多湿な日本では栽培が難しく、納得のゆく収穫にはまだ至っていないようですが、DOCG白ワイン「Gaviガーヴィ」の原料となるピエモンテ州原産の醸造用ブドウ品種「コルテーゼ」の若樹も育てている佐久間さん。佐久間さんが晩酌で楽しむ知る人ぞ知る銘酒スーペル・ショーナイ同様、ガヴィ村で生産される「Gavi di Gaviガヴィ・ディ・ガヴィ」ならぬ「Gavi di Shonai」誕生の日を楽しみにしていますよ、佐久間さん。

 2003年(平成15)秋、櫛引町(現・鶴岡市)に店を構えて当時3年目だったイタリアンレストランのオーナーシェフ氏に案内されたのが同町西荒屋にある佐久間さんの園地。仕入れ契約を結んだばかりというブドウ畑では、イタリア原産の青ブドウ、ゴールドフィンガーや醸造用品種のメルロなど、さまざまな品種が栽培されていました。

pione-2014.jpg【photo】高級品種ピオーネ。ほかに黒ブドウは巨峰、ハニーブラックなどを栽培

 撮影がてら、あれこれ味見をした中で最も気に入ったのが、高貴で上品な甘さが持ち味の「安芸クイーン」。安芸国(広島)生まれのこちらの女王様は昨年のように雨が多いと実割れを起こしたり、色が乗らなかったりで、栽培が難しい品種だと語る佐久間さん。ご主人の体調が優れなかった一昨年は、あまり畑仕事ができなかった様子がブドウの作柄に表れていたりもしました。

aki-queen2014.jpg【photo】着色不良を克服した2014年ヴィンテージの安芸クイーン。糖度が高く、香りも良い。そのほか赤系ブドウはシナノスマイル、ゴルビーなど、青ブドウはハニーシードレス、シャインマスカット、瀬戸ジャイアンツなどを栽培

kerokero1_sakuma.jpg 樹皮のすぐ内側にある養分の通り道「師部」を取り除く環状剥皮(はくひ)処理を行うことで、果樹にストレスを与え、ここ数年の着色不良を克服した今シーズン。電話で畑の様子を問い合わせた上で、日帰りで慌ただしくブドウ狩りに赴いたのが9月末。昼夜の寒暖差が大きかった今年は、安芸クイーンの色付きや味の乗りも良く、風味の良い房を選んで大人買い。11年前に魅了された本来の風味を自宅で堪能することができました。

【photo】青系イタリア品種、ゴールドフィンガーの枝に陣取り、高みから睨みをきかせる小さな青ガエル。緑の葉に囲まれてじっと動かないその姿は、カメレオンさながらの忍者ぶり

 晩熟の甲州を残すだけで、もはや大粒種のシーズンは終了間近。過熟気味のブドウからは、なかば発酵した果汁が滴り流れ、その甘い香りに小バエが寄ってきます。そんなブドウ畑には体長3cmにも満たないニホンアマガエルの姿が見られます。ブドウの房の上で身じろぎひとつせず、じっと身を潜める小さなハンターは、小バエを捕食せんと狙っているのです。

kerokero_2013.9sakuma.jpg【photo】出来が良かった今年よりも色付きは今ひとつでも、味は乗っていた昨年9月末の安芸クイーン。ブドウの上で虎視耽々、もとい蛙視耽々(?)とブドウに寄ってくる獲物を待ちうけるニホンアマガエル

 ブドウ狩りの剪定バサミの先端を近づけると、パクっと喰らいついてくるお腹を空かせたそそっかしいカエルも。誰に教えられなくても餌の在り処と、自らの居場所をちゃんと心得ているのですね。


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