あるもの探しの旅

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2014/11/23

駅弁? 空弁? いいえ「道弁」です。

「みちのく潮風トレイル」の道連れには道弁を


shiokazetrail_press1.jpg 11月1日(土)、まさに〝雨降って地固まる〟空模様のもと行われた「みちのく潮風トレイル」のキックオフイベント「みちのく潮風トレイルフェスティバル! in 石巻・女川」。会場は宮城県石巻市中瀬の石ノ森萬画館に隣接した特設テントです。

 セレモニーの冒頭、みちのく潮風トレイルのうたが披露された会場には、東日本大震災の発生直後に山形市の東北芸術工科大の学生が立ち上げた復興ボランティア組織、「福興会議」のメンバーが核となり、全国から集結した大学生によるプロジェクト「あるいて、つないで、みちになる」に参加した3人の姿がありました。

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【Photo】全国から参加した大学生が、みちのく潮風トレイルを踏破するプロジェクト「あるいて、つないで、みちになる」23日間の行程を通して、メンバーが感じたままの印象を詳細に綴ったフリーペーパーの一部(上・右) 画像拡大可〈click to enlarge

 これは8月20日~9月11日までの23日間をかけて、青森県八戸市と福島県相馬市を南北の起点に岩手県大船渡市恋し浜で合流すべく、みちのく潮風トレイルを二手に分かれ1チーム4名で350kmを踏破するというもの。参加メンバーが行程で感じたことを日記風にまとめたフリーペーパーには、みちのく潮風トレイルを旅した記録がびっしりと記されています。

arahama_sendai2011.3.24.jpg【Photo】震災発生の翌朝、200から300のご遺体が海岸で発見されたという一報が駆け巡った仙台市若林区荒浜で2011年3月25日に撮影した1枚。屋上に避難した住民が助かった4階建ての荒浜小学校が原形をとどめる以外、基礎だけを残して流失した住宅の残骸が累々と続く。仙台市はともに震災遺構として保存する意向。彼方に遠望する仙台の街並みとのコントラストは、現在も固定化されたまま〈click to enlage

 家族や家財産を津波に持って行かれ、喪失感に苛(さいな)まれながらも、大いなる恵みをもたらす海から離れずに暮らす人たち。目の当たりにして言葉を失った南三陸町防災庁舎石巻市立大川小学校。そうした震災の痕跡や自分と向き合いながら一歩づつ歩みを進めた先々で、五感で感じ取ったままが切々と語られます。

arahama-sendai_2013.jpg【Photo】仙台市若林区荒浜に建立された荒浜慈聖観音は、この地を襲った9mの津波と同じ高さ。黒御影石に刻まれた荒浜地区の犠牲者190人の名前と年齢を凝視していた庄イタに、木製の慰霊塔に手を合わせていた年配の男性が「どちらからいらしたのですか?」と声をかけてきた。仙台市内のみなし仮設にお住まいというその男性は、私と同じ年齢のご子息を津波で亡くされたという。合掌(上写真)

 「日頃は仙台で暮らしており、ほとんどが初めて訪れる場所を自分の足で歩き、津波の痕跡が色濃く残る地域の実相に肌身で触れた体験は、得がたい財産になった」とは、相馬市を起点に北上する4人チームのリーダー格として参加した東北芸術工科大3年小松大知さん(仙台市出身)のコメント。

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 9月に開催された「ツール・ド・東北2014」で、キャロライン・ケネディ駐日米国大使など、出走者から「美味しい~❤」と大好評を博したサンマつみれ・木綿豆腐・長ネギ入りの郷土料理「女川汁」がセレモニー会場で振舞われました。

 そして試食販売ブースでお披露目されたのが、潮風トレイルのコースとなる石巻市や女川町の海の幸を使った3つのご当地弁当、名付けて「道弁」。お弁当とはいうものの、歩いて食することができるよう、中身は地元の具材を用いたおむすびが主役。女川町で寿司店併設の鮮魚店を再開した親子や、石巻市雄勝、同鮎川の漁師のお母さんたちが、地元の味をおにぎりに仕上げました。

 道弁のプロデュースには、「東北食べる通信」を創刊し、2014年度グッドデザイン金賞を受賞したNPO法人「東北開墾」が当たっており、セレモニー会場では代表理事を務める高橋博之氏が、食を通じた新しいコミュニティづくりと題するディスカッションに参加していました。

package-michiben.jpg 道弁のパッケージ(上写真)は、被災からの再起を目指す作り手の営みと産地MAPの紹介リーフレットを兼ねています。道弁を手にした人が、そこを訪れ、交流することで、食材の作り手と食する人とのご縁を繋ぎ、結ぶ媒介役を果たして欲しいという願いが込められているのですね。

 インターネットの普及で、情報を得ることは、いとも容易になりました。しかし、文字面や映像といったうわべの知識だけでは見えてこない作り手の想いや、産地の風土・文化に直接触れることで、初めて気づくことがあるはず。それが何よりの味付けとなり、人の命を支える食べ物の作り手への敬意や、食材への感謝に結びつくことを、庄イタもViaggio al Mondoを介してお伝えしてきました。

 以下、道弁のラインナップをご紹介します。まずは道弁エントリー番号1番、石巻市雄勝地区の行政区長が推薦した選抜女性メンバーで結成された「おがつスターズ」から。浜言葉で「人たち」を意味する「すたず」とスターズの秀逸な掛け言葉(笑)。

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【Photo】(写真左から)宮城で最もホタテ養殖が盛んな雄勝。水揚げしたての大ぶりな帆立貝を煮込んで一晩味を染ませ、炊き込みご飯にした看板メニューの「ホタテ」。活アナゴを天ぷらにしただけの素材の味が引き立つ「アナゴの天むす」。雄勝湾や追波湾の昆布を乾燥後、荒削りしたとろろ昆布で塩むすびをふんわり包み込んだ「とろろ昆布いずれも画像拡大可〈click to enlarge


 道弁エントリー番号2番、女川町小乗浜「おかせい」。女川で70年近く続く水産物加工卸会社。加工場や売り場を流失し、避難所暮らしの中で口にした寿司の味に発奮した兄が卸し担当、弟が小売担当となり、ふさぎ込んでいた父の背中を押す形で震災から7カ月後に寿司や海鮮丼を提供する寿司店を開業。

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【Photo】(写真左から)脂が乗って肉厚と築地の仲買人から指名買いが入る宮城産アナゴ煮を甘辛く味付けした「アナゴ煮」。おかあさんたちが殻むきし味付けしたホヤと紫蘇の香りが酢飯とベストマッチする「ホヤとしそ」。志津川に代表されるアワビを食した三陸のタコは、明石と並び称される逸品。「おかせい」の看板商品「たこめしの素」にも用いる煮付けたタコがたっぷり入った「タコ 画像拡大可〈click to enlarge


 道弁エントリー番号3番、石巻市鮎川「ぼっぽら」。牡鹿半島の先端部にある鮎川は、捕鯨の一大拠点だった。牡鹿の方言で「急に、備えなしに」を意味する「ぼっぽら」という名のお弁当屋を2012年7月に立ち上げたお母さんたちが、クジラやホヤを使った弁当を注文に応じて手作りする。

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【Photo】(写真左から)金華山沖は黒潮と親潮が出合う世界三大漁場。リアス式の入り組んだ地形が複雑な潮流を生み、肉厚のワカメが養殖される。冬に種付けして春には収穫できるため、浜復活に向けた第一歩となった磯の香が広がる「ワカメ」。近海で捕獲されたクジラを余すところなく使うのが、ニッポンの鯨食文化。種類によって食べ方を変える鮎川のお母さんがお薦め「ツチクジラのつくだ煮」。国内生産高の9割を占める宮城の養殖ギンザケ。脂が乗ったギンザケとベストマッチな海苔を巻いた「焼きギンザケ 画像拡大可〈click to enlarge
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 米どころ宮城ならではの冷めてもなお美味しいご飯のお味は、宮城の観光PRキャラクター「むすび丸」も太鼓判。さて、あなたはどの道弁を、みちのく潮風トレイルを巡る旅の道連れになさいますか?
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みちのく潮風トレイル
 URL: http://www.tohoku-trail.go.jp/

おがつスターズ
 住:宮城県石巻市雄勝町雄勝字伊勢畑24
 Phone:080-8221-1430
 営:電話での注文に応じて弁当販売、ケータリングに対応 不定休
 URL: https://www.facebook.com/ogatsustars
 メニュー:旬の素材を使ったお弁当 (例:ホタテご飯500円)

おかせい
 住:宮城県牡鹿郡女川町小乗浜字小乗115
 Phone:0225-53-2739
 営:11:00-16:00(鮮魚販売は8:00-17:00) 水曜定休
 URL: http://www.rakuten.co.jp/okasei/
 メニュー:寿司・海鮮丼ほか魚介料理(例:特撰女川丼2500円)

ぼっぽら食堂
 住:宮城県石巻市鮎川浜北18-4
 Phone:080-2816-1389
 営:11:00-13:00(売り切れ次第終了) 日曜定休 臨時休あり
 URL: http://mermamaid.com/
 メニュー:日替わり弁当500円 ※完全手作りのため当日10:00頃までに電話注文

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2014/11/16

発進! みちのく潮風トレイル

新たな地平を求め、歩く速さで旅しよう。

 旅を愛する者として、移動手段のスピード化がもたらす恩恵を否定はしません。仙台-函館間をおよそ2時間半で結ぶ北海道新幹線新函館開業は、確かに楽しみではあります。ですが、移動速度が増すほど、旅の印象は、希薄にならざるを得ない側面があることもまた否めません。

mutsuminato-stn2014.jpg【Photo】八戸市街から蕪島・種差海岸方面への道すがら、早起きしてでも訪れたいのが、「イサバのカッチャ(=市場のお母さん)」像が出迎えるJR陸奥湊駅前の朝市(上写真)

isaba-kaccha.jpg【Photo】日曜以外の早朝3:00~正午まで、水揚げされたばかりのピッチピチの魚介や惣菜などを扱う市が並ぶ「陸奥湊駅前朝市」には、大型の物販・飲食施設「八食センター」とは違った魅力が充満。今年7月中旬の訪問時は、店頭でウニの殻を剥くカッチャと馴染み客との南部弁を駆使したほとんど意味不明な会話や、爽やかな苦味のある八戸の伝統作物「糠塚キュウリ」とも出合えた

ichiba-gohan2014.jpg その土地の光や風を肌身で感じ、街並みや人々の暮らしぶりに触れることで、旅先の印象はずっと濃密になります。歩く速度で旅することで、あっという間に風景が切り替わってゆく車窓越しでは決して得られない出合いや感動が待っているはず。

【Photo】昭和の雰囲気漂う陸奥湊駅前通りや、入口に惹かれた市場の地階を一巡。店の下見をした上で、朝ご飯を食したのが朝市の一角、八戸市営魚菜小売市場にある「朝めし処」。活きの良い魚介とカッチャが居並ぶ市場で買った刺身や、脂乗りが良い大振りな八戸前沖サバの塩焼き(350円)など、店頭に並ぶ八戸の味を温かいご飯(100円)とともに早朝5時から10時まで頂ける(毎週日曜・第二土曜日・年始休)

 このほど青森県八戸市蕪島から岩手・宮城を経て福島県相馬市松川浦までの南北700kmを結ぶ新たな道、「みちのく潮風トレイル」が設定されました。これは東日本大震災からの復興に資する「グリーン復興プロジェクト」を推進する環境省による取り組みの一環です。

 山の頂きを目指す欧州発祥のアルピニズムとは違い、じっくりと時間をかけて里山を移動しながら自然と触れ合うことを目的とするロングトレイル。北米で1960年代に誕生し、総延長3,500kmに及ぶアパラチアントレイルをはじめ、米国では広く普及しています。
 
kosode-gyoko2014.jpg【Photo】放送終了から2年が過ぎた今も多くの「あまロス症候群」の観光客が訪れる久慈市小袖漁港。有村架純がブレイクした当たり役、若き日の天野春子の逃避場所であり、能年玲奈演じる主人公天野アキが海中にダイブした灯台はドラマそのまま。なれど昨年まで残っていた春子がマジックでなぐり書きした「 東京 原宿 表参道 海死ね ウニ死ね・・・」の文字は、もはやかすれて判読できないという

 信州・信越地域や北海道、九州など、日本には10箇所以上のロングトレイルが存在します(参考)。東北では初となるみちのく潮風トレイルは、社会現象化したNHK朝ドラ「あまちゃん」の舞台となった久慈市小袖と、八戸市でヒッチコックの名作「鳥」を実体験できる海鳥の一大繁殖地・蕪島の間が、昨年11月に先行開通しています。

kosode2-gyoko2014.jpg【Photo】天野アキが海女クラブの面々に素潜り漁を叩き込まれた小袖漁港。透明度が高い入江では、7~9月の間、観光客向けに海女による素潜りによるウニ漁の実演が披露される 

 北限の海女で一躍有名になった小袖を思い立って訪れたのは今年7月。まめぶ汁を味わい、能年玲奈演じる天野アキが劇中で海に飛び込んだ灯台、夏ばっぱや美寿々さん、安部ちゃんら海女クラブの先輩に素潜り漁を教わった「袖が浜漁港」こと小袖漁港など、ロケ地を訪れるうち、あまロス症候群がむしろ重症化した庄イタ。

mamebu-jiru.jpg【Photo】久慈市山形町にある「道の駅白樺の里やまがた」(ふるさと物産センター)食事処「食楽」のまめぶ汁(500円)。特産の山形村短角牛を使用した焼肉定食やハンバーグ定食(1,000円)といったメニューも見逃せない

 来訪客がどこから訪れたかをシールを貼って自己申告するボードは、国内用と海外用の2枚が用意されていました。いまだ衰えないあまちゃん人気を裏付けるように、くまなく日本全国にシールが貼られています。そこで庄イタはまだ空欄だったITALYに緑色のシールを貼り、北三陸に確かな足跡を残してきました。\('jjj')/

 青森・岩手に遅れること1年近くを経た10月9日にルートが開通したのが福島県相馬市松川浦と新地町区間。宮城で整備が遅れていた理由は、3年8カ月前に発生した東日本大震災で最多の犠牲者・行方不明者を出し、復興はおろか復旧すらままならない被災地の現状があります。

kesenuma_2014.7.16.jpg【Photo】被災前は事業所や店舗が並んでいた旧JR南気仙沼駅方向を、気仙沼市仲町の旧河北新報気仙沼総局ビルから見た今年7月の光景。これが震災から3年半を過ぎた被災地の現実〈click to open another cut

 五輪開催のために街並みが一変したという50年前を彷彿とさせる莫大な社会資本が、半世紀を経た今、再び東京に集中投入されています。建築資材高騰と人手不足が、人々の記憶の片隅に追いやられた感すらある被災地復興の重い足かせとなっている現状には、東北の視点から疑問を呈さざるを得ません。

 輝きを増す光と深い影とが交差し、複雑な想いが去来する中で、700億もの国費を投じて解散総選挙が行われようとしています。〝誰がやっても同じ〟という、よく耳にする諦めの連鎖からは決して潮目の変化は生まれません。来るべき師走選挙では、納税者の権利はしっかりと行使しようではありませんか。

frier-michinoku_trail.jpg 暦の上ではノヴェンバ―となった11月1日(土)、宮城でのキックオフイベント「みちのく潮風トレイルフェスティバル! in 石巻・女川」が、石巻市の中瀬公園で開催されました。次回「駅弁? 空弁? いいえ、道弁です」では、その模様をご報告します。

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