あるもの探しの旅

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2014/12/23

色彩の魔術師

北海道や北陸以北の日本海側で大雪となった昨日は冬至。新月と冬至が重なる「朔旦冬至(さくたんとうじ)」は、月と太陽が同じ日に生まれ変わる19年に1度の日。冬来たりなば春遠からじ。サーバ引越しで新規更新ができない情況に見舞われたViaggio al Mondo ~あるもん探しの旅ですが、試行錯誤の末、更新する手立てはつきました。リンクタグが貼れないという制約はあるものの、まずは復活を宣言し、前々回の続編をお届けします。

「レモン色づくアマルフィの海辺」より続き

 サレルノ「Creazioni Luciano s.r.l.クレアツィオーニ・ルチアーノ」で制作される陶板画は、月刊情報誌「Piatto」12月号の読者プレゼントとしてご提供頂いた「POSITANOポジターノ」(下写真)でもお分かりの通り、図柄の浮き立った輪郭の内側に目にも鮮やかな彩色が施されています。

pcreazioni-luciano-positano.jpg

【Photo】彩色タイルで装飾されたポジターノ「Chiesa di Santa Maria Assuntaサンタ・マリア・アッスンタ教会」のクーポラ(下写真参照)。釉薬を施して焼成した後の仕上がりを想定し、浮き彫りの高低(=型をとる石膏板に刻む溝)で円屋根の文様を表現したクレアツィオーニ・ルチアーノ作「POSITANOポジターノ」(上写真)

SMAssunta-Positano.jpg Amalfi-Duomo-Luciano.jpg

【Photo】9世紀に町が建設され、ヴェネツイア、ジェノヴァ、ピサとともに海洋都市として繁栄したアマルフィ。その中心に建ち10世紀当時の遺構が残るドゥオーモ周辺を淡い色彩を用いマットな仕上がりで細密に再現した「AMALFI DUOMO」(上写真)

 家族経営のクレアツィオーニ・ルチアーノ工房では、兄ルチアーノはマネジメント、弟ロベルトがデザインを担当。風景を題材とする作品では、キュビズムの影響を感じつつも、カラフルでキュートな先代ランベルトの作風(下写真)と、より具象的なロベルトの作品とでは、親子でも個性が異なります。

Mediterranean-Creazioni-Luciano.jpg

 絵柄のモチーフは前編で登場したレモンや風景・町並みのほか、ポンペイでモザイクが発掘された絵柄そのままの〝猛犬注意〟、ギリシャ神話に登場する12星座の意匠、ロッビア工房の作風を彷彿とさせる宗教上の題材など、多岐に渡ります。

 今夏、仙台市青葉区一番町の情報ステーション「仙台なびっく」に期間限定でクレアツィオーニ・ルチアーノ工房の作品を取り扱う「ベスト・オブ・サレルノ」がチャリティ出店しました。サレルノ在住で同店を運営する株式会社繋(けい)代表を務める藤原佳代さん(仙台市出身)がルチアーノ社に制作を依頼したのが、この「SENDAI」。

creazioni-luciano-sendai.jpg

【Photo】仙台の夏を彩る七夕飾りをデザイン化した作品「SENDAI」は、津波で親を亡くした震災遺児の支援に売り上げが寄付される

 この和洋折衷な作品を語るとき、避けては通れないのが1980年に南イタリアで発生したイルピニア地震です。同年11月23日午後7時35分、カンパーニャ州アヴェリーノ県イルピニア地方を震源とするマグニチュード6.9の大地震が発生(下図参照)。90秒続いた強い揺れで震源に近いアヴェリーノ県・サレルノ県・ポテンザ県では多くの建物が倒壊。20万人以上が家を失い、第二次大戦後のイタリアでは最悪となる2,914名が犠牲となりました。 Terremoto_irpinia1980_shakemap.jpg

 現在クレアツィオーニ・ルチアーノ工房の社長を務めるルチアーノ・タスタルディさんは当時18歳。東日本大震災の映像は、31年前にサレルノを襲った悲劇の記憶を呼び起こしました。藤原さんから相談を持ちかけられたルチアーノ氏にとって、サレルノからできる支援の一つのかたちが、岩手・宮城・福島の被災3県で1,724名にのぼる津波で親を亡くした震災遺児の支援に売り上げを役立ててもらおうと制作したこの作品だったのです。

 こちらはロベルト・タスタルディさんが「SENDAI」を制作する模様を収めた動画。作業は石膏板に下絵をトレースし、手作業で溝を刻み、基盤を作成します。前述のサンタ・マリア・アッスンタ教会のクーポラに見るように、溝の深さや幅は、輪郭と模様を表現する場合とでは異なります。


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 イタリアの観光地にある土産物店では、ご覧のような中国製のコピー商品(右写真)を置いているケースがあります。こうしたまがい物は、手彫りする溝の太さにムラや曲がりがあり、色が入り混じるなど彩色も粗雑。熟練の職人が作業にあたるルチアーノ工房の作品と比べると、仕上がりの落差は一目瞭然なのがお分かり頂けるかと思います。

 石膏の基盤に粘土を圧着し、厚さ8mmほどの絵柄の型をとります。次に原版を1050℃で素焼きします。凸状の輪郭で囲まれた内側にエナメル染料や色ガラスを鮮やかな手つきで流し込み、釉薬を表面に吹きかけて950℃で再焼成すると、色鮮やかな世界に1枚だけの陶板画が完成です。

 今回、サーバ移行に伴う不調により、後編のアップが10日ほど遅れました。リンク先のタグ付けができない歯がゆい状況は変わっておりませんが、何とかお約束は果たした格好です。

 ルチアーノ社の陶板画以外にも、前回ご紹介のセレクトショップ「ベスト・オブ・サレルノ」では、サレルノ発の食品も取扱っています。予定より遅れることは、南イタリアでは日常茶飯事ですが(苦笑)、お詫びとして次回はオイシイ番外編をお届けします。

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Creazioni Luciano s.r.l.
・Ufficio(本社):via G. Pastore,26 Località Cupa Siglia 84131-Salerno(SA)ITALIA Phone: +39.089.384.944 Fax: +39.089.893.856.710
・Negozio (ショップ):Vicolo della Neve 34/36-Salerno(SA)ITALIA Phone:+39.089.296.1469
URL: http://www.creazioniluciano.com/it
E-mail: info@creazioniluciano.com baner_decobanner.gif

2014/12/20

トラブル発生中です。

【お知らせ】

 サーバを引っ越して以降、リンクタグ付きで投稿ができない膠着状態が、ここ1週間ほど続いています。

 「レモン色づくアマルフィの海辺」続編のテキストは仕上がっているのですが、後編への更新のため、事態打開に向けて原因究明中です。

 現時点ではっきりしていることは、どうやら庄イタの手に負える案件ではないということ。Mamma mia!!(T_T)。

shoita_gaja_2006.jpg【Photo】庄イタ、もはやお手上げ状態之図\(× _ ×)/ ロケ地:イタリア・ピエモンテ州バルバレスコ村。敬愛する偉大な醸造家アンジェロ・ガヤが当主を務める醸造所「Azienda Agricola GAJA」にて

皆さま、しばしご猶予のほど、お願いします。
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2014/12/07

レモン色づくアマルフィの海辺

南イタリア・サレルノ発、
クレアツィオーニ・ルチアーノの彩色タイル

 Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn, 
 Im dunkeln Laub die Goldorangen glühn, 
 Ein sanfter Wind vom blauen Himmeln weht, ...
   レモンの花咲く国を知っていますか
   緑の葉陰には色付いたオレンジが輝き
   晴れ渡る空のもと爽やかなそよ風が吹く ...

Wilhelm Meisters LehrjahreMignon
Johann Wolfgang von Goethe

fiore-limone-Amalfi.jpg「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」3巻
「ミニョン」より抜粋 原作:J.W.ゲーテ

(現代語訳:不肖庄イタ)

 文豪ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」第3巻の書き出しは「ミニョン」と題するこの詩で始まります。幼くしてサーカスに売られた12歳の少女ミニョンが、遠い郷里への思慕を込めたこの詩は、森鴎外が文語訳した「君知るや南の国」など、多くの翻訳が日本でも知られます。

 ドイツ人青年ヴィルヘルム・マイスターにミニョンが語りかけるこの詩の内容から察するに、薄幸の少女が回想したのは、きっとこんな南イタリアの海辺の風景だったはず。

flamed-luciano-amalfi.jpg【Photo】南イタリア・サレルノの工房「クレアツィオーニ・ルチアーノ」で1枚ずつ手作業で彩色されたセラミックタイル。絵柄のイメージに合った額装をオーダーし、世界にひとつだけのアマルフィが完成

 ブーゲンビリアがピンクの彩りを添える白いテラスの眼下には紺碧のティレニア海。輝く太陽のもと、洋上では小舟が白い帆を張り、地上の万物は姿形と色彩をより鮮明に浮き立たせます。造形芸術の傑作の数々がイタリアで生まれたのは、この日差しがあってこそに違いありません。

 そこはソレント半島南岸の入り組んだ変化に富む地形が30kmほど続くアマルフィ海岸。急峻な岩肌に張り付く家々とともに、世界で最も美しいと称えられる海岸線には、急斜面に開墾された棚田式の畑で「Sfusato Amalfitanoスフサート・アマルフィターノ」と呼ばれるレモンが実を結びます。

amalfi terraced limone.jpg【Photo】さまざまな言語が飛び交うリゾート客で賑わうアマルフィの喧騒を離れ、家並みの背後に屹立する岩山の中腹に拓かれたレモン果樹園へ。車がやっとすれ違える坂道を延々と登ると、眼下にはアマルフィの街とティレニア海が広がる

 通常の倍はあろうかという大きさと、やや青みがかった黄色が特徴のレモンは、世界遺産に指定されるアマルフィ海岸沿いのナポリを州都とするカンパーニア州サレルノ県のAmalfiアマルフィ、Positanoポジターノ、Ravelloラヴェッロ、Cetaraチェターラなど11のコムーネ(行政単位)の特産品です。3月から7月が最も美味しい季節ですが、12月でも日中の最高気温が20℃を超す南イタリアゆえ、1年を通して収穫されます。

vietri Terraced limone.jpg【Photo】平地面積が限られるアマルフィ海岸では、棚田状の畑に栗の支柱を立て、テラス状に枝を這わせたレモン栽培が盛ん

 陽射しに恵まれたこの地域におけるレモン栽培の歴史は古く、紀元79年のヴェスヴィオ火山の噴火で滅びたポンペイの壁画にも豊かに実をつけたレモンの樹が描かれています。ポンペイに近いソレント近郊やカプリ島で栽培される「リモーネ・ディ・ソレント」と、アマルフィ海岸で栽培されるレモンは名前だけでなく品種が異なるのだそう。

case-del-frutteto.jpg【Photo】2000年前の街並みが、火山灰によって封印されたポンペイ遺跡。Casa dei Cubicoli Floreali(=花の寝室の家) またはCasa del Frutteto(=果樹園の家)と呼ばれる遺構は、ヴェスヴィオ火山の噴火時点で相当に古い家だったと推察される。レモン果樹が描かれた東側の壁画の一部(click to enlarge

 穏やかな酸味と、厚い果皮に覆われた「Limone Costa d'Amalfi(=アマルフィ海岸のレモン)」は、前菜からドルチェ、食後酒に至るまで食卓を彩ります。1999年にEUのI.G.P.(Indicazione Geografica Protetta=保護地域指定表示)に指定され、スローフード協会によって、保護されるべき貴重な食材を指す「プレシディオ」にも登録されています。

Limoni-amalfi.jpg【Photo】アマルフィ海岸の文化的な景観を成す重要な要素となるスフサート・アマルフィターノ

 レモン果樹の寿命は80年ほどといわれ、1本の樹からは年間200から600の果実が人の手で収穫されます。機械化が困難な急峻な畑には車両での進入が不可能。ゆえに収穫されたレモンは篭に入れられ、成人男性1人分の重さはあろうかというカゴを頭に乗せ、小さなトラックを停めた路地までの急坂を人力で運搬します。

 アマルフィの街並みを眼下に一望する凪いだ海からの穏やかな風と陽射しを感じる目にも鮮やかな陶板画。冒頭にある通り、絵柄にふさわしいイメージの額装をオーダーし、9月に登場したヴェルナッツァの貴石モザイク画との左右シンメトリーでコレクションに加わりました。

Creazio_Luciano.jpg【Photo】アマルフィやヴィエトリ・スル・マーレの街では陶器生産が伝統的に行われてきた。手彫りで作られる原版をもとにした浮き彫りの陶板に1枚ずつ職人が彩色を施すため、絵柄は同一でも微妙に色使いや表情が異なり、ひとつとして同じ作品は生まれない

 作り手である「Creazioni Luciano クレアツィオーニ・ルチアーノ」は、アマルフィ海岸の東の起点となるサレルノで1955年に創業。現在は初代ランベルト・タスタルディの息子、ルチアーノとロベルト兄弟が60年の伝統を守り続けています。原版の彫り出しから、素焼したセラミックにガラスや特別な釉薬で彩色を施し、再び焼成する全ての工程が手作りによるものです。

best-of-salerno.jpg【Photo】明るい色彩が溢れる「ベスト・オブ・サレルノ」。南イタリアらしい色使いの彩色タイルほか、革製品、パスタ・オイルなど、サレルノから選りすぐった商品を扱う〈click to enlarge

 教会のステンドグラスにインスピレーションを得て作り上げられたというルチアーノ社の作品。師走を迎えた途端、真冬の寒気が訪れた仙台に居ながらにして典型的な南イタリアの風景を鮮やかな色彩で描き出したこの陶板画やパスタ・オリーブオイル・革製品など、サレルノ発の商品が入手可能になりました。

 今年の夏、期間限定で青葉区一番町の情報ステーション「仙台なびっく」にチャリティ出店した「ベスト・オブ・サレルノ」が、このほど仙台市泉区歩坂町に常設店舗を開設しました。次回は南イタリア・サレルノの息吹を伝えるこの陶板画の制作の模様をご紹介します。
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Best of Salerno ベスト・オブ・サレルノ
住: 仙台市泉区歩坂町67-25ロイヤルプラザ103 (株)minekenショールーム内
phone: 022-204-4385
営: 10:00~12:00 13:00~17:00 火曜・日曜・祝日定休
URL: http://www.bestofsalerno.com
E-mail: info@minekentosou.co.jp
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