あるもの探しの旅

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レモン色づくアマルフィの海辺

南イタリア・サレルノ発、
クレアツィオーニ・ルチアーノの彩色タイル

 Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn, 
 Im dunkeln Laub die Goldorangen glühn, 
 Ein sanfter Wind vom blauen Himmeln weht, ...
   レモンの花咲く国を知っていますか
   緑の葉陰には色付いたオレンジが輝き
   晴れ渡る空のもと爽やかなそよ風が吹く ...

Wilhelm Meisters LehrjahreMignon
Johann Wolfgang von Goethe

fiore-limone-Amalfi.jpg「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」3巻
「ミニョン」より抜粋 原作:J.W.ゲーテ

(現代語訳:不肖庄イタ)

 文豪ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」第3巻の書き出しは「ミニョン」と題するこの詩で始まります。幼くしてサーカスに売られた12歳の少女ミニョンが、遠い郷里への思慕を込めたこの詩は、森鴎外が文語訳した「君知るや南の国」など、多くの翻訳が日本でも知られます。

 ドイツ人青年ヴィルヘルム・マイスターにミニョンが語りかけるこの詩の内容から察するに、薄幸の少女が回想したのは、きっとこんな南イタリアの海辺の風景だったはず。

flamed-luciano-amalfi.jpg【Photo】南イタリア・サレルノの工房「クレアツィオーニ・ルチアーノ」で1枚ずつ手作業で彩色されたセラミックタイル。絵柄のイメージに合った額装をオーダーし、世界にひとつだけのアマルフィが完成

 ブーゲンビリアがピンクの彩りを添える白いテラスの眼下には紺碧のティレニア海。輝く太陽のもと、洋上では小舟が白い帆を張り、地上の万物は姿形と色彩をより鮮明に浮き立たせます。造形芸術の傑作の数々がイタリアで生まれたのは、この日差しがあってこそに違いありません。

 そこはソレント半島南岸の入り組んだ変化に富む地形が30kmほど続くアマルフィ海岸。急峻な岩肌に張り付く家々とともに、世界で最も美しいと称えられる海岸線には、急斜面に開墾された棚田式の畑で「Sfusato Amalfitanoスフサート・アマルフィターノ」と呼ばれるレモンが実を結びます。

amalfi terraced limone.jpg【Photo】さまざまな言語が飛び交うリゾート客で賑わうアマルフィの喧騒を離れ、家並みの背後に屹立する岩山の中腹に拓かれたレモン果樹園へ。車がやっとすれ違える坂道を延々と登ると、眼下にはアマルフィの街とティレニア海が広がる

 通常の倍はあろうかという大きさと、やや青みがかった黄色が特徴のレモンは、世界遺産に指定されるアマルフィ海岸沿いのナポリを州都とするカンパーニア州サレルノ県のAmalfiアマルフィ、Positanoポジターノ、Ravelloラヴェッロ、Cetaraチェターラなど11のコムーネ(行政単位)の特産品です。3月から7月が最も美味しい季節ですが、12月でも日中の最高気温が20℃を超す南イタリアゆえ、1年を通して収穫されます。

vietri Terraced limone.jpg【Photo】平地面積が限られるアマルフィ海岸では、棚田状の畑に栗の支柱を立て、テラス状に枝を這わせたレモン栽培が盛ん

 陽射しに恵まれたこの地域におけるレモン栽培の歴史は古く、紀元79年のヴェスヴィオ火山の噴火で滅びたポンペイの壁画にも豊かに実をつけたレモンの樹が描かれています。ポンペイに近いソレント近郊やカプリ島で栽培される「リモーネ・ディ・ソレント」と、アマルフィ海岸で栽培されるレモンは名前だけでなく品種が異なるのだそう。

case-del-frutteto.jpg【Photo】2000年前の街並みが、火山灰によって封印されたポンペイ遺跡。Casa dei Cubicoli Floreali(=花の寝室の家) またはCasa del Frutteto(=果樹園の家)と呼ばれる遺構は、ヴェスヴィオ火山の噴火時点で相当に古い家だったと推察される。レモン果樹が描かれた東側の壁画の一部(click to enlarge

 穏やかな酸味と、厚い果皮に覆われた「Limone Costa d'Amalfi(=アマルフィ海岸のレモン)」は、前菜からドルチェ、食後酒に至るまで食卓を彩ります。1999年にEUのI.G.P.(Indicazione Geografica Protetta=保護地域指定表示)に指定され、スローフード協会によって、保護されるべき貴重な食材を指す「プレシディオ」にも登録されています。

Limoni-amalfi.jpg【Photo】アマルフィ海岸の文化的な景観を成す重要な要素となるスフサート・アマルフィターノ

 レモン果樹の寿命は80年ほどといわれ、1本の樹からは年間200から600の果実が人の手で収穫されます。機械化が困難な急峻な畑には車両での進入が不可能。ゆえに収穫されたレモンは篭に入れられ、成人男性1人分の重さはあろうかというカゴを頭に乗せ、小さなトラックを停めた路地までの急坂を人力で運搬します。

 アマルフィの街並みを眼下に一望する凪いだ海からの穏やかな風と陽射しを感じる目にも鮮やかな陶板画。冒頭にある通り、絵柄にふさわしいイメージの額装をオーダーし、9月に登場したヴェルナッツァの貴石モザイク画との左右シンメトリーでコレクションに加わりました。

Creazio_Luciano.jpg【Photo】アマルフィやヴィエトリ・スル・マーレの街では陶器生産が伝統的に行われてきた。手彫りで作られる原版をもとにした浮き彫りの陶板に1枚ずつ職人が彩色を施すため、絵柄は同一でも微妙に色使いや表情が異なり、ひとつとして同じ作品は生まれない

 作り手である「Creazioni Luciano クレアツィオーニ・ルチアーノ」は、アマルフィ海岸の東の起点となるサレルノで1955年に創業。現在は初代ランベルト・タスタルディの息子、ルチアーノとロベルト兄弟が60年の伝統を守り続けています。原版の彫り出しから、素焼したセラミックにガラスや特別な釉薬で彩色を施し、再び焼成する全ての工程が手作りによるものです。

best-of-salerno.jpg【Photo】明るい色彩が溢れる「ベスト・オブ・サレルノ」。南イタリアらしい色使いの彩色タイルほか、革製品、パスタ・オイルなど、サレルノから選りすぐった商品を扱う〈click to enlarge

 教会のステンドグラスにインスピレーションを得て作り上げられたというルチアーノ社の作品。師走を迎えた途端、真冬の寒気が訪れた仙台に居ながらにして典型的な南イタリアの風景を鮮やかな色彩で描き出したこの陶板画やパスタ・オリーブオイル・革製品など、サレルノ発の商品が入手可能になりました。

 今年の夏、期間限定で青葉区一番町の情報ステーション「仙台なびっく」にチャリティ出店した「ベスト・オブ・サレルノ」が、このほど仙台市泉区歩坂町に常設店舗を開設しました。次回は南イタリア・サレルノの息吹を伝えるこの陶板画の制作の模様をご紹介します。
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Best of Salerno ベスト・オブ・サレルノ
住: 仙台市泉区歩坂町67-25ロイヤルプラザ103 (株)minekenショールーム内
phone: 022-204-4385
営: 10:00~12:00 13:00~17:00 火曜・日曜・祝日定休
URL: http://www.bestofsalerno.com
E-mail: info@minekentosou.co.jp
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